不幸の足音…
私は部屋を出てると、頼りにしている姉さん方を探すも部屋では見つからなかった。
「ん〜2人とも自室にいないなぁ……どこ行ったんやろ?」
しょうがないかぁ、ハァ〜……またあの豚に話かけるのは、本当にかなり気乗りしないんだけどねぇ〜
けどこのままだと埒が明かないし、しょうがない……豚小屋に行くとしますか……
俺は溜め息を吐きながら豚小屋(オーナーの部屋)に向かうのだった、部屋の前に到着すると、部屋の中からかなりの怒声が聞こえてくる。
「引っ越すって何処に行くんだい!」
うわぁ〜なんか口論してんじゃん……ヤバいタイミングで来ちゃったかな?
入り口の隙間から中を覗くとフローレス姉さんがオーナーにかなり詰め寄ってる・
姉さんスゲー怖いっす、しかも豚の周りをイレナ姉さんやオリビア母さんにも囲まれて詰められて……なんだか豚ちゃん御愁傷様です。
「何処に行くって王都に行くしかないだろうがお前ら!!客から噂聞いてないのかぁ!?今回の法国の侵攻は、あの悪魔の勇者が出張って来るって話を!」
「はぁ?勇者様が何だって言うんだい?」
「そうよ!勇者様は私達の味方でしょ?」
「なんで勇者様が攻めて来るなんて妄想をするのょ!??」
母さん達が口々にオーナーを責め立てる……
いやぁ〜良く反論してるねぇ、俺だったらすいません〜!って言って波が去るまで受け流す所だが……
豚もある意味では立派だよ、うん!まぁ〜良く頑張ってると思うよ今だけは。
本当に本意ではないが〜今回だけ特別に、俺の心の中でだが黒豚に昇格して上げよう!
「勇者は3年前の大戦で負傷してから法国に戻ったのは知ってるな?」
「そうね……確かに、法国に戻る際に通って行かれたわね」
「勇者は負けて撤退したんだ……それでも大戦で結果を残したらしく、ディアーナ神聖法国では好き放題、ヤリ放題、更には奴隷を侍らせ昼夜を問わずお盛んな毎日……なのにそんな勇者が国境付近のクラーツ要塞に現れたっって話だ!!どう考えても、ここに残っても碌な事にならないだろ!!」
「そっ……そんなぁ……」
囲んでた母さん達の表情が、置かれている状況を察し、表情が急激に曇る……けどさ?
俺はオーナーの話を聞いて思ったんだが……なんか人生詰んでね??地理とか国同士の関係とか、学んだ事ないから正直詳しいことは知らないが、味方の勇者が敵ってヤバイでしょ!?……この国どうなの?
「その話はホントかい?」
「フローレス……俺が今嘘ついてどうする!!今だってクラーツ要塞を出入りしてるメスティーソ(デ○)の女供が勇者が来て要塞から出れなくなったって話だ!!戻れた女供ですら、勇者の好みじゃなかった絶壁の女だけの様だし……噂は間違いないだろう!それにメスティーソのオーナーは、要塞に行った女供を見捨てて、荷物を纏めてディミヌエンド港から北の海洋連合国へと逃げてる最中だ!!」
なんとなんと……
うん!どうやら〜法国の勇者様とやらは、生臭坊主も真っ青のクソ勇者の様だ……
確かにそれが本当なら、今この現在も街にいるのは危険だなぁ……黒豚は嫌いだがナイスな判断力だ!
流石!腐っても肥えて豚になっても、一国一城の主でいられる訳だ〜大いに死んで欲しいが見直したよ黒豚!!
「くそ!!……オーナー!!伯爵様はどうなっちまうんだい?」
伯爵様?……誰だろう、なんかそんな話が以前あった様な〜なかった様な。
「フローレス、ライ様の事か……おそらく迎撃には公爵様が出られる事だろう、ライ様達の出兵は恐らく間違いない……お家柄的に先陣を任される可能性が高いと思うが、何と言ったらいいか……ハッキリ言うが、希望を持つと苦しいだけだぞ」
オーナーがそう言うとフローレス姉さんは、普段の強気な感じとは裏腹に、泣き崩れるのだったんだ……
なかなかにこの世界は厳しい世の中の様だ……
それにしても人間同士の戦争に出張る勇者ってどうなんだ?正義の味方も真っ青だわ〜世も末だねぇ〜ホント。
……って呑気に見てる場合じゃなかった!こんな話を聞いちゃったら急いで荷物を準備しないと!!
最悪準備さえ出来ていれば逃げる時迅速に動けるし、ってかもう逃げるんだったか?
悔しいが黒豚の判断は間違ってない!
大丈夫!早め早めに対応出来てるはずだ!
街で逃げ出してる人は見てないしなんとかなる……俺は自分に言い聞かせる……んん?
逃げ出してる人はいない??……何だろう……何か妙に胸騒ぎがする、凄く嫌な感じだ……いや!違う!!
皆この事を知らないでしょ!?急ぎ知らせないと危ないでしょうが!!
え!?どうする!?大丈夫!?荷物の準備も不十分なのに向かうの?
まずは自分の命でしょうが!……クソ!なんでこんな時にトニー達の顔が浮かぶんだ!?
「クソっ!……漆黒の牙とか、トニー達と話するんじゃなかったぜ……」
俺は皆を思い急ぎ店を出る、しかし……大きな……大さな不幸の足音が、ひっそりと近寄りつつあるのを私は知らなかった……いや、まだ大丈夫だと楽観視していたのだった。
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