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 いつも通り屋上から双眼鏡を眺めていた。もはや監視も不要な仕事だが、こうやってる方が良い暇つぶしになる。

 今日も平凡な毎日であり、校庭では赤牛族等が焼き払われていて、今日の食料も充分だとわかる。


「天羽、少したら休んで良いぞ。」


 もう少しすれば代わりのやつが来る。そいつは天羽程索敵範囲は広くない。だがそれでも100m程は検知出来るらしいので問題ないはずだ。それに範囲は少し狭ばった分、相手の姿まで大方だが分かるらしい。


「……そうだ。ポテトを作ろう。じゃがバターなんてのは最高だな。」


 バターはあまりないので、何かで代用するとしよう。そういえば牛乳が大量に余っていたはずだ。腐らないか先生が心配していたことだし、バターにしてどうにかするといいかもしれない。


 じゃがいもはあまりないが、監視の為といえば少し位は融通が効く。

 それにじゃがいもの生産は鹿島先生と涼雅や咲耶の担当だ。仲間なので許してもらえるはずだ。


「おやつにじゃがバターを作ってくる。少し待っててくれ。」


 俺はそう言って立ち上がると、誰かに手をぴっぱられる。誰かと思えば天羽であり、首を傾げてしまう。


「敵襲。」


 天羽の言葉に理解する。ポケットから緊急時用の花火を取り出して、空に投げる。赤い花火は敵襲の報せ。緊急時用に作っておいてよかった。

 それに教師らも気付いたのだろう。放送が流れて待避指示がされていく。


「相手は何者か分かるか?」

「不明……ただ加速中。あと3秒で来る。」

「分かった。天羽は屋上にいろ。生徒の逃げ遅れを見つけたら、村木先生に通信しろ。」


 俺は直ぐに学校内に避難すると、そのまま階段を駆け下りる。

 途中で混乱している生徒を見かければ大雑把にだが指示をしていると、1階から衝撃音が鳴り響く。まるで何かが破裂したような音でつい耳を塞いでしまう。


「クソ、何がきやがった。」


 かなり不味いと思い、直ぐに1階の職員室に駆け込む。そこには教師らが集まって何かの話をしていた。

 聞こえるキーワードからするに迎撃等の話だろう。


「圭か!よく分からない女が現れた!今んとこ暴れては居ないが、周りに警戒をしている。」


 まだ戦闘力は未定らしいが、あれ程の衝撃を起こして何事もない様子で生き残る程だ。少なくともロクな相手ではいないのは確実。となれば言うべきことは決まっている。


「迎撃は俺らの仲間でやります。だから先生達は他の生徒を連れて別館の地下に逃げてください。多分相手は俺たちを殺すと言うよりは、物資などの狙い等の可能性があります。」

「わかった!行くぞ!」


 教師らは頷くと、職員室から出て行く。

 ポケットからレシーバーを取り出すと、仲間たちを招集をかける。これで校庭に集まってくれるはずだ。


「いよし、久しぶりの喧嘩だ。」


 自分に喝を入れると、そのまま校舎に手を当てる。そしてコンクリートの刀を作り出すと、校庭に出てくる。

 そこに居た女性を見て、言葉が出なくなる。


「…………」


 綺麗な銀髪でロング。しかも若々しく美しい。服は布を羽織っただけのような貧相な感じがするが、それでもその質素さが逆に良さに感じる。


「あら、貴方が私の相手を?」

「ああ、俺が殺る。」


 相手の言葉で正気に戻ると、すぐに刀を構える。

 相手の明確な強さは分からない。だが少なくとも油断して勝てる相手ではない。となれば相当本気でやらないと不味そうだ。


「何分でつく?」

『危険物や貴重品ので遅れる。なんとか一分持たせてくれ。そしたら優らがつくはずだ。』

「無茶を言うなよな。マジで。」


 俺はレシーバーをしまうと、女に向かって切りかかる。

 だが女は何事もなかったかのように微笑むと、俺の刀を受け止める。そしてそのまま俺の刀を砕いてしまう。


「……おいおい、ゴリラかよ。」

「失礼な子ね。」

「俺からしたら褒め言葉だ。」


 地面から薙刀を作り出して、振るいながら暴れる。女はギリギリで避けながら掌底を飛ばしてきて、受身をとることしか出来ない。


「ダメだな。黒野よ、あれ使う。」

「わかった。みんな退避してるから問題ない。優らには伝えとく。」

「何を見せてくれるのかしら?」


 煽る女を無視して、手を地につく。手から青い光がゆっくりと地面に流れていき、広がっていく。


「……“解析”」

「何を?」

「……“共鳴”」


 俺が言葉を終えると、青い光は収まって何事も無かったかのようになる。


「不発かしら?」

「さぁな。」


 手をあげると、女を包むように土がドームを作り出す。そしてドームはどんどんと縮小しながら、地面を使ってどんどん圧縮していく。


「……『グランドクラッシュ』」


 手を握ると同時に土のドームが破裂して、中にいた女を痛めつける。

 これをもし赤牛にやったらぐちゃぐちゃになるほどの力を込めてあるはずなのに、少しボロボロになる程度で耐えていた。


「まだ効かないのか。」

「……な、なんで加護が……」


 加護の意味は分からないが、とりあえず攻撃するしかない。

 手に力を込めながら、両手を合わせて音を鳴らす。


「『ブラックアウト。』」

「……何かしたのかしら?」


 俺の技は、極微動な地震と大気の変化を起こすことで周りにいる人の脳にダメージを与える技だ。いくら精神が強くとも、人が人である限りはここからは抜け出せないはずだ。


「……お前、人か?」

「いい所に気付くのね。」

「人型のバケモンかよ。」

「どうかしら?」


 ムカついて殴りたくなるが、どうせ効かないのは理解してるので必死に落ち着く。

 さっき見せた二つの技があったが、あれが俺の奥の手だ。それ以外のものはまだ試作品にすらなってない。ただの付け焼き刃程度だ。


「……優、聞こえるか?」


 レシーバーに向かって声をかけるが意味が無い。多分ぶっ壊れたのだと思う。


「仕方ない。」


 手で印を刻むと、周りの土が変化していく。そして少しの浮遊感を感じると、俺と女を覆うドームが完成する。


「このドームは俺が生きてる限り解けない。どっちかが死ぬまで殺ろう。」


 ドームの厚さは大体十メートル。相手がいくらゴリラとは言え、圧縮して水分を抜いた土壁を貫けはしない。しかもこのドームは地中に作った。地下二十メートルの一種の防空壕のようなものだ。

 少なくとも俺が生きてる限りは、少しの傷でも元に戻せる。そしたら相手の逃げる方法は俺を倒すことのみ。その間に時間稼ぎ出来れば十分だ。


「……面白い子ね。」

「そりゃどうも!『岩弾』」


 壁から大量の弾を作り出して、放つ。ちゃんと凝縮して作った弾だから当たればいくら丈夫とは言え、骨にダメージは入れられるはずだ。

 それを理解してるのかこの女は避け続ける。


「穿て!」


 弾を避けきった場所の真下から槍が何本も飛び出して、女の片手にかすり傷を入れる。


「凄いわ。」

「……てめぇこそな。」


 この空間は真っ暗な空間だ。完全に密閉して、俺はこの空間と繋がってるから何が起きてるのか見える。だがこいつはそうじゃない。

 なのに技を避けていく。意味がわからない。空気の変化や超音波などなど考えられることはあるが、どれが理由か分からない。


「素直に帰るって今言えば見逃すが?」

「それは困るわ。」

「今なら飯も奢ろう。仲間の自慢料理だ。そこらじゃ食えるようなものじゃないぞ。」

「ごめんなさいね。さっき用事が出来たから、そう簡単には帰れないのよ。」


 ここまで言ってもダメらしい。

 俺としては今すぐに帰って欲しいし、出来ればやり合いたくない。それは実力的な問題もあれば、もう一つの欠点がある。

 この地下ドームは酸素濃度が低い。それに密閉された場所だ。今はまだなんとか呼吸は出来ているが、もう少ししたら息が出来なくなるだろう。


「なら無理やりにでも気絶させるだけだ。」

「やってみなさい。」


 手から出る青い光を身体中に巻き付ける。光は何かの文字になって四肢を巻き付けていく。

 まるで鎖のように繋がれていき、痛みで悲鳴をあげそうにすらなる。気絶して楽になりたいと考えてしまう。

 だがこんなとこで倒れては意味が無い。


「ギアは五まであげといて……」


 普段はギアはあげても二が良いとこだ。それ以上は命の危険が伴い、死んでもおかしくは無い。

 だが短時間のギア上げなら問題は無い。下手をすれば後遺症で体が動かし辛くなる。又は動かせなくなるが、その程度なら問題は無い。


「おらっ!」


 手に力を込めて、女の顔面に拳を叩き込む。そして体を仰け反らせた女に向かって連撃を叩き込み、再起不能になるまで打ち込み続ける。


 それが一分位続いた頃だろうか、何か違和感を感じて手を止める。

 その場で手を止めた時に、もし相手が動ける状態なら死ぬかもしれない。だがそれ以上に違和感が強かった。


「……もう終わりでいいのかしら?」


 女は何事もなく、片手で俺の拳を受け止めていた。


 それを見て、俺はぐったりと膝をついてしまう。

 ハッキリ言って体力は限界をキてるし、呼吸もままならない。このままやり合っても勝てないのは確実だ。


「マジで何が……」


 言葉を紡ごうとするが、段々とクラクラしてきて意識が落ちそうになる。

 血中の酸素濃度が相当低くなっているらしく、足や腕が麻痺して動かない。そのせいか体に巻きついていた青い鎖も溶けて消えてしまう。


「……話は上でしましょう。」


 女が天に向かって手を上げると、赤いレーザーが上へと伸びる。そして地面を貫きながら、地上への道を作り出す。


「……か、勝てるわけないや……ははっ」


 細々と絶望の言葉をこぼしていると、女は俺の首を掴む。

 少し前なら抵抗しようと思ったかもしれないが、今の俺は抵抗する気力も体力もメンタルもなかった。


 女にされるがままに首を掴まれた状態で地上へと送られるのだった。

この前スーパーに買い物に行ったんですよ。

それで私の好きな納豆、粢って名前の納豆が美味しいんですよ。だから買おうとしたら、おばはんに取られました。

私が取ろうとしたら、隣のババアに全部持ってかれました。

……私の納豆、納豆が……

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