コヨミ
『ヒャッハーーー!オマエも喰らってやるぜェェェェェェッ!』
オレは現在、陽菜の心の中で、体長3メートルほどの影と対峙している。
その影はオレに向かって接近する。
よく考えたら、オレ剣術なんてやったこと無いや?と考えていたら、
迫る影の直前で、突然、剣が何かに引っ張られるような感じで、横薙ぎにふるわれた。
「うわっ!な、なんだーーっ!剣が勝手に!」
その剣撃を咄嗟に躱す悪魔だったが、さっきまでの勢いが止まる。
それを見て、こちらは先程の勢いのまま、横に回転しながら更に剣が振るわれる。
ズバッと影の一部が切り裂かれた。
『グワッ!』
手応えは浅かったが、剣に触れた影の一部が霧散した。
攻撃をくらった影がうろたえ始める。
『ぐぬぅ。その剣はまぁさか!おのれぇ、神器かぁ!』
そう叫ぶと、更に凶暴な勢いでこちらに迫ってきた。
今度は、ピクリともしない剣。
「うわっ!なんで?ヤバい、すぐ近くに迫ってきてるぞ!」
『大丈夫よ。安心してなさい!』
「え。女性の声?」
不意に頭の中に、若い女性の強い声色が響いた。
っと。次の瞬間、目の前に影が迫った!
『一閃!』
また、声が!と思っている間に、上段の構えから、一気に剣が振り下ろされた。
迫っていた影とぶつかる!と思ったその時、突然、影は左右に別れ、
断末魔を上げることもなく、影は霧散した。
「倒した…のか?」
『そうね。もう悪魔の気配はないわ。』
オレは、声の主を探して、あたりをキョロキョロ見回した。
『どこを見てるのかしら?ここよ。あなたの目の前よ。』
「と、声はすれども姿は見えず…。はて?目の前?」
と、首を傾げながら、目の前を確認するが手にした剣以外何もない。
『だから、あなたが手に持っているものよ!ほんと無神経!』
「なんだか苛立った声が聞こえたが…。手に持っているのは剣だが…。
って、剣!?が喋ってるのか?」
と剣をまじまじと見つめる
『そうよ!私よ!ってジロジロ見ないでよはずかしい!』
とは言われても、今までの経験上モノがしゃべるのは初めてだったので、
ぼけーっと剣を見つめてしまった。
と、背後の気配に気づき、さっと身を翻し、剣を構える。
『おっと。ま、まてワシじゃよ!』
突然、剣を向けられ驚いたのか、腰を抜かし尻もちをついてる神様がいた。
「あわわ、申し訳無いです。神様。」
慌てて、剣を下ろす。
『プフッ。』
なんか今、吹き出したような声がしたけど、気にしないでいよう。
やれやれと言いながら神様は立ち上がると、
『いいかげんにせんか。コヨミよ。』
コヨミ?だれだろうと思っていると、剣が輝き出し、はじめの勾玉の形に戻った。
さらに輝きが大きくなり、今度は目の前に同い年くらいの女の子の姿に変わったのだった。