ワシは、神じゃ。
そうか。あのときオレは事故に…って死んだのか…。
そ、そうだ!陽菜は?陽菜は無事なのか?
『無事じゃ。お主が身を挺したおかげで軽症で済んでおる。』
そ、そうか。よかった。
でも、死んでしまったら、もう陽菜や愛莉さんとは会えないのか…。
悔しさとか、寂しさ、悲しさが、徐々にオレの心を支配していった。
『じゃがな、自分の不注意でお主が事故にあったショックからか、意識は戻っておらんようじゃな。』
なん、だと…。そ、そんな。
陽菜の現状を聞き、オレの心は不安でいっぱいになる。
『しからば、様子を見せやろうかの。』
そう言うと、目の前にスクリーンのようなものが現れ、どこかの病室を映し出した。
ベッドには陽菜が眠っている。すぐそばには愛莉さんが椅子に座り心配そうに様子をうかがっている。
と、そこへ汗だくの医師が訪れ、暗い顔で顔を横にふった。
愛莉さんはその様子を見て、その場に泣き崩れてしまった。
それを見て、オレの命が助からなかったことを告げるものだと理解できた。
その後、数日経っても陽菜は意識が戻らないようだ。
くそ。なんでこんなもの見せるんだよ!
お前は誰だよ!オレは何もできないのかよ!
心が張り裂けそうに痛い。今は魂だけだが胸が苦しい感覚に襲われた。
『やっと現実に向き合えたようじゃな。
おっと紹介がまだじゃったな。ワシは、神じゃ。』
そう言うと、神と名乗った人物は、陽菜の姿から、杖をついた老人の姿になった。
神?__神様なのか?
『そうじゃ。それとの、お主には何もできないことはないぞ。』
なにかできることがあるのか? だったら、陽菜を助けたい!
神様はニヤリと口角を上げると
『じゃったら教えてやる代わりに、ワシの頼みをきいてくれるかのぅ。
ギブアンドテイクというやつじゃの。』
頼みでもなんでもきく!だから早く助け方を教えてくれ!
オレはすがる思いで神様に頼み込んだ。
『おうおう、わかった、わかった。では、方法を教えてやろう。』
そう言うと、神様は杖を天にかざした。すると杖の先の白い空間にポッカリと穴が空いた。
覗いてみると、三角ずわりをした陽菜がうつむいて泣いている様子が見える。
『これは、お主の妹の心じゃ。魂だけのお主なら、ここに入って会話をすることができる。
そこで、妹の意識を覚醒させるのじゃ。
意識の覚醒が始まったら、お主はこちらに引き戻されるからの。』
そうきくやいなや、オレは穴に飛び込んでいた。
『むう?なにやら気配がおかしいのぅ? こら待て!まだ話は終わっとらんぞ!』