ボッチ兄貴の場合
初投稿です。よろしくおねがいします。
「んっ___と。ここ_は?」
眩しさで、うっすら覚醒したようだ。
寝ぼけながら体を起こそうとするが、動かないというか体の感覚すらない。
どうしたんだろう…。うーん、これ…金縛りかな?
こ、こういうときは、怖いからもう一度眠ろう。。としたとき。
『こ、こら、この場面で二度寝しようなどとは、いささか無粋であるぞ。』
と声が聞こえる…。えーーーーーーーーーー。怖いんですけどーーーー。
ギュッと目を閉じようとするが、よく考えたら、まぶたもないなこれは。
ハッとして今度はしっかりと覚醒する。
そこは何もない、真っ白い空間だった。そしてオレの目の前?に人が立っている。
よく見てみると、その人は宙に浮いているようだ。
『ようやく目が覚めたようじゃの。まあ、無理もない。
お主はすでに、肉体は死に魂のみとなっておるのじゃからなぁ。』
タマシイ、ですと?眼の感覚はなんとなくあるみたいなので、
キョロキョロとあたりを見回ししてみる。
手足がない。というか、うっすらと光っているようだ。
『ほれ、このとおりじゃぞ。』
目の前の人?が言うと、そばに鏡のようなものが現れる。
そこには、光の玉のようなものが浮いているのが見えた。
…これがオレ?
『そうじゃ。今のお主の姿じゃよ。』
あれ、声出してないのになんで?
『もはや口もないからの。思ったことはすべて筒抜けじゃよ。
まぁ、ここには、お主と、ワシしかおらんから安心せよ。』
ワシと言った人だが、どう見ても女性でしかも幼女だしなぁ…。
『ワシは幼女ではないぞ。お主が一番安心できる者の姿を借りておるのじゃ。
幼女に見えるということは、さてはお主…ロリコンとかいうやつじゃな?』
ククッと幼女は冗談めかして笑みを浮かべたのだった。
ロリコンとはロリータ・コンプレックスの略である。
性愛の対象を少女にのみ求める心理。ナボコフの小説「ロリータ」にちなむ!
オーノー!何なのこの奇妙な解説!!オレにはそんな性癖はない!断じて、断じてないぞ!
とよーく、幼女の顔を凝視すると、オレの妹の顔に似ている気がした。
オレの名前は、櫻井 遥斗16歳、県立高校に通う健全な男子だ。
小学生の時に両親が事故で他界し、妹の陽菜と叔母と3人で暮らしている。
母の姉で叔母の愛莉さんは、10歳のオレと1歳になったばかりの陽菜を引き取り、本当の子供のように育ててくれた。
叔母は若い頃から作家活動をしており、そこそこ名のしれた漫画家ということもあってか、
さほど金銭面で苦労してはいなかったと思う。まあ、締め切りやイベント前はとっても辛そうだったけども…。
そんな愛莉さんの影響か、オレがオタク道をひた走るのは必然というものだった。
もっぱらライトノベルや漫画、アニメを摂取して過ごしていたので、学校では当然の如くボッチだった。彼女いない歴は年齢と同じだけど真っ当に健全な男子ですが?
愛莉さんからは、顔は中の上かなという微妙な評価を受けてはいたが、リア充とは無縁の生活だった。
ま、美人な愛莉さんと、超可愛い妹のせいか、学校の女子なんか目に入りませんとも…。グスン。
陽菜とは10歳離れている。そのせいか、オレは兄というよりも父のような気持ちが強い。
今年から小学校に通うようになった陽菜の姿を見て感無量だった。
父さん、母さんがいなくなって寂しいけれど、陽菜と愛莉さんがいてくれるだけで、
明るく朗らかな生活にオレはとても幸せだった。
だけど、あの日の帰り道、それは起こってしまった。
「お、陽菜!今帰りか?」
道路の向こうに妹を見つけたオレは、何気なく声をかけてしまったのだ。
一人でうつむきトボトボと歩いていた陽菜はオレの声に気づき、ぱっと顔をほころばせ
「あ、おにーちゃーん!」
とこっちに走ってきてしまった。普段は比較的交通量の少ない道路だったが、夕方は買い物や帰宅する人の車が多く、下校するには危険な場所だったのに。だ。
「おい!ちょっと待て陽菜!車が来てるぞ!」
とその時、パッパーン!と激しくクラクションが鳴らされ、驚いて立ち止まる陽菜。
「ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバい!くっそ!陽菜ぁ!」
オレはとっさに、道路に飛び出し、陽菜を抱きかかえた。
次の瞬間、全身に物凄い衝撃が走った。
続きます。