表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/40

第25話 タッグの聖女!

「空手チョップ!!」


「ウグワーッ!!」「ウグワーッ!!」「ウグワーッ!!」


 なぎ倒される金剛僧侶!


「そらそらそらあっ!」


「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」「ウグワーッ!」


 デストロイヤーの連続ヘッドバットで、額をかち割られて倒れていく金剛僧侶!


 反撃の拳や剣、槍や棒が聖女達を襲うが……。


「そんなもの、鍛え抜かれたプロレスラーの肉体には通用しません!」


 全てを正面から受け止め、金剛石の如き肉体でそれを粉砕するアンゼリカ。

 どちらが金剛なのか。

 金剛僧侶、名前負けである。


「ええい、何をしておるか金剛僧侶ども!! やれ! 合体だ!」


「ハイ!」


 どうにか起き上がった大僧正が叫ぶ。

 合体!

 その不穏な命令に応じて、金剛僧侶が集まってきた。


 どこにこれだけの数がいたのかという、凄い人数である。

 彼らは組体操を開始すると、あっという間に巨大な金剛僧侶に変身してしまったのだ。


「フォーフォーフォー! これこそ我がサウザー教の秘儀!! 金剛僧侶を束ねて作り上げる、巨大金剛僧侶よ! 本来ならば魔王軍に向けるはずだったこの力、ここで異教徒と勘違いをした下賤の聖女を潰すために使ってくれるわ!」


 なんたる本末転倒であろうか!

 敵を討つはずの牙が、本来なら味方である存在へ向けられる。


 これこそが、サウザン帝国が抱える腐敗。

 特権に溺れたサウザー教の悪徳であった!


「これほどの力を持ちながら、己の権力を守るための道具としか使わないとは……」


 アンゼリカは、巨大な金剛僧侶を見上げながら呟いた。

 その双眸に、炎が宿る。


「なんたる愚かさ!! なんたる邪悪さ!! あなたがたに!! 神の信徒を名乗る資格はありません!! 金剛僧侶、この場で粉砕する!!」


 おお、なんということであろうか!

 宮殿の高い天井に頭がつっかえると思えるほどの巨大金剛僧侶だが、その目線と同じ高さに、アンゼリカがいる。


 そう、威圧感である!

 あまりに強大な威圧感が、彼女を15mほどに見せているのだ!


「いいね! あんた、ボキャブラリーが豊富で、あたしの言いたかったことを全部表現してくれた! このデストロイヤーの奴、妙におじいちゃんっぽくて『お嬢ちゃんの好きにしな。道を違えそうになったら俺が正してやる。誤るのは若者の特権だ』とか言ってさ。ま、いいか!」


 聖女デストロイヤーは笑いながら、その姿を大きく変える。


 既に、巨大金剛僧兵に大きさ的なアドバンテージは無い!


「ば、ばかなーっ!!」


 サウザー教の僧侶たちは、驚愕と絶望に泣き叫び、失神したり失禁したりした。


 聖女相手に、大きさは何の意味も持たない!


『これはまさにドリームマッチ! 往年の英雄二人が肩を並べてファイトするこの光景を、我々はどれほど待ち望んだことでしょうかーっ!! 猛る聖女! 双璧! 二つの巨塔! 金剛などなにするものぞーっ! ダイヤモンドを砕くのが聖女の矜持ーっ!!』


「あっ、いきなり変なナレーションが聞こえてきたと思ったら神様がいるぜ!!」


「ほんとだ!!」


 後ろに下がって戦いを見学していたシーゲルとミーナは、柱の影でマイクを握る神に気付いた。


「か、神様じゃと!?」


 大僧正が驚く。

 彼が見ると、確かに柱の影から、眩いばかりの光輝を纏った美しい男が、マイクを握りしめて熱く実況を行っている。


「た、確かにあの姿は、教典に描かれた神の姿……。馬鹿な……! サウザー教千年の歴史において、一度もその姿を見せては下さらなかったと言うのに、どうしてここに!」


 異世界世紀末になってから数十年。

 その後で生まれた教えがサウザー教なので、大僧正はかなり盛っている。


 そして彼の疑問への答えは一つだ。

 それまで、異世界世紀末にはプロレスが無かったからだ。


『おおっと、金剛僧兵が仕掛けた! 力任せのパンチ! パンチ! パンチ! だが! だがーっ! プロレスにおいてパンチは反則だーっ! せめてナックルパートくらいに洗練してくれーっ!!』


「聖女様負けるなー!!」


「聖女様がんばれー!!」


 巨大聖女は微笑んだようだった。

 パンチを真っ向から受けながら、まっすぐ突き進む。


 そして、金剛僧兵を掴むと……!


「ウオオオオッ!?」


 力任せに持ち上げる!

 宮殿の天井が押し上げられ、砕けて崩壊していく。


 見よ、オリエンタル感溢れるサウザン帝国宮殿を背景に、巨大な聖女と金剛僧兵が組み合う光景を!

 高らかに持ち上げられた金剛僧兵は、いかにもがこうが逃れることはできない。


 正に、聖女の力、金剛力!

 高らかに掲げた状態から、ボディスラムの要領で繰り出されるこの投げをなんと呼ぼう。


 その名はパワースラム!


 投げ捨てられた金剛僧兵は地面を砕きながら、バウンドする。


「ウグワーッ!!」


 床一面に敷き詰められた真っ白な石は粉砕され、白い煙のようになって巻き上がる。

 むき出しになった土の上、金剛僧兵はのたうち回った。


「そ、そんな……! わしらの、我がサウザー教の秘儀の限りを尽くした金剛僧兵が!!」


「愛なき力は……ただの暴力に過ぎません! それはいつしか、その力で我が身を滅ぼすものです!」


 いや、明らかにただの暴力が、それを遥かに上回るアンゼリカの超パワーで粉砕されているのだが。

 自滅ではない……! 真っ向粉砕だ……!


「任せな! とどめはあたしだ!」


 聖女デストロイヤーは倒れた金剛僧兵に素早く組み付くと、その足を取った。

 何が繰り出されるのかを理解した、サウザー教の僧侶たちが絶望に満ちた表情で叫ぶ。


「や、やめてくれーっ!!」


 プロレス技は急には止まらない。

 見事な動きで、金剛僧兵の足は完全に極められていた。


 組み合わさった足が描くのは、見事な四の字!


「足四の字固め!」


「ウグワーッ!!」


 足を襲う強烈な痛みに、金剛僧兵はのたうち回った。

 そろそろオーバーキルなダメージを受けている。

 そこへ、デストロイヤーが追い打ちを掛けた。


「おらあっ!」


 地面を激しくバンバン叩くことで、四の字固めの破壊力を跳ね上がらせたのである!


「ウグワワワーッ!!」


 ついに、四の字固めによるダメージが金剛僧兵の耐久限界を超えた。

 組み合わさった金剛僧兵が、バラバラと解けていく。


 彼らは皆、パワースラムと足四の字固めのダメージを受け、戦闘不能だ!


 足を押さえながらじたばたとのたうち回っている。


 サウザー教、聖女タッグに敗れ去る……!

 これは即ち、サウザー教が魔王軍と戦うための秘密兵器を無駄に消費したことを意味していた。


「なんてことだ……」


 僧侶たちは皆、がっくりとうなだれた。

 サウザー教の全てを尽くして作り上げた最強の僧兵が、あっけなく敗れてしまったのである。

 もう、サウザー教から出てくる対抗手段は一切なかった。からっけつである。


 神がとてもいい笑顔でゴングを打ち鳴らした。


『素晴らしい勝負でした! ちょっと相手が弱すぎましたね。プロレスに関わってきた年月が勝負を分けたと言えましょう』


 そもそも金剛僧兵はプロレスなどしていない。


「おお……神よ……! なにゆえ、今姿を見せられ、聖女になど味方するのですか……」


 大僧正が弱々しい声で問う。

 すると、神はアルカイックスマイルを浮かべたままで応じた。


『では、次の試合でお会いしましょう! いやあ、今回の対戦相手はもっと頑張って欲しかったですね。サウザー教にはがっかりです』


 あまりにショッキングな言葉に、僧侶たちは次々目を見開き、泡を吹き、失神した。

 神に見限られたサウザー教はこの日を以て、解散した。


 例によって、聖女タッグvs金剛僧侶の戦いが空に映し出され、サウザン帝国全土に放映されていたのである。

 誰もが、サウザー教がぐっちゃぐちゃに粉砕されるところを目撃した。


 そして、新たな教義を持つネオ・サウザー教が誕生することとなるのである。


 聖女がサウザン帝国に到着して一日目のことである!


神は全てを見ていた( ˘ω˘)


お読みいただきありがとうございます!

本作のモットーは、ノーストレス、サクサク爽快世紀末風ファンタジーであります。

こんなちょっと暗くなってる世の中だからこそ、みんなが幸せになる聖女ものをお届けしたく思います!


面白い!

ん? まちがったかな?

ウグワー!

など感じていただけましたら、下の方の★をツツツイーッと動かしていただけますと幸いです。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] サウザー教にはがっかりです。 ウケましたww そりゃ神から否定されたら宗教なんか(笑)
[良い点] 神に直接ガッカリ言ってもらえる権利を与えてやろう なかなかないぜぇ!ヒャッハー
[一言] おおう! 神は、見ていた!←文字通り
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ