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プロローグ



 臙脂色の表紙をめくったのはほんの昨日のことなのに、私はもっと前の出来事のように感じていたから少し不思議な気分になって、一瞬開くのを躊躇った。


 この日記をつけ始めてからというもの私の身辺は騒がしくて、信じられない。自分のことなのに全く現実味がないものばかりだった。


 だから私はそろそろこの辺で現実だったか自分に都合の良い白昼夢だったかをはっきりとさせる勇気が必要だ。


 私は意を決してえいや、とばかりに馴染み深い臙脂色の表紙をめくった。

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