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finding of a nation online  作者: はちわれ猫
第十二章 探索開始……北の森の恐怖の館
81/144

finding of a nation 78話

 ・モンスター名 クーペ・サフラン レベル255

 ・種族 ゴースト  ・所持属性 闇 ・タイプ 陸 ・魂質 内

 

 ・戦闘ステータス

  HP 185 MP 202 EP 83

  物理攻撃力 128 魔法攻撃力 147

  物理防御力 27 魔法防御力 130


 ・属性耐性率

  火 −50% 水 +0% 雷 ±0% 土 ±0% 氷 +18% 風 −2% 闇 80% 光 −80%


 ・地形適正率

  陸 100% 海 10% 空 0% 森 60% 山 50% 川 15% 明 0% 暗 80%


 ・特性

  霊体……敵の物理攻撃を無効、但し自分の物理攻撃も相手に対して無効

  幽体……自身に霊体の特性があった場合、EPを消費することによって相手への物理攻撃が可能になる

  リスポーン……特定の条件を満たさない限りHPが0になったとしても特定の場所で復活し続ける


 ・主な使用技

  グラッジ・テレパシー……相手の心に自身の怨念の思いを送り精神的ダメージを負わせる

  ポルター・ガイスト……周囲に様々霊現象を起こし相手を攻撃、もしく自身と味方を援護する。どのような霊現象を起こすかは発動させる者の性質や、その時々の精神状態などによって変化する。INTの値が高いもの程現象を思い通りに制御できるようになる。


 ・備考

  ヴァルハラ国北の森林内にある館で家政婦として働いていたクーペ・サフランの霊。生前に余程苦痛や恐怖を感じることがあったのか完全に怨霊と化してしまっている。


 


 「クーペ……、確かスペイン産の最高級のサフランを言い表す言葉だったわよね。彼女がサフランの口紅を好んで使ってたのは自分の名前にちなんだからだったのね」

 「このデータを見る限りレベルやステータスは先程のゾンビとそこまで変わりないようだ。物理攻撃が利かないのは厄介だが魔法による攻撃だけでも十分に対処できそうだな。それにさっきは止め刺すかどうかで選択を迫られていたが、どうやら何か特殊な条件を満たさなければこの館内でリスポーンし続けるらしい。これならば先程のように襲い掛かって来ても遠慮せず撃退することができる」

 「でもそういう能力があるということはやはりこのダンジョンの攻略の為に彼女と何等かのイベントを起こさねばならないということなのでしょうか。そうでなくとも日記に書かれていた男の情報を教えて貰えるかもしれませんし……」

 「そうだな……。では一先ず捜索目標をクーペ・サフランの女性の霊にして探索を再開するか。転移の前に見た魔法陣の表記にも他のルートとの合流にも特殊な条件が必要なようであることだし今は何より情報収集が先決だ」


 どうやら先程セイナ達に襲い掛かって来た女性はこの館で家政婦として働いていたクーペ・サフランという女性の霊だったらしい。ステータスはそこまで高いというわけではないようだが、リスポーン能力を持っていることからこのダンジョンの攻略に関わる重要なキャラクターであると推察される。セイナ達はダンジョン攻略の為にまずはその女性の霊を探すべく日記を発見をした部屋を後にした。


 



 「はあぁぁぁぁっ!」


 “グオォォォォッ……”


 「ふっ、術技を使用せずとも一撃で敵を貫き倒してしまうとは流石だな、ゲイル。ステータス画面で確認できる物理攻撃力もかなりのもののようだし一体どれ程の性能の武器を装備しているんだ。見たところかなり年季の入った槍のようで柄に呪文のようなものが記されているが……、何か特殊な効果を持っているのか」


 ナギやセイナ達が探索を進めている中、部隊の司令官であるゲイルドリヴル率いるパーティもダンジョンの攻略を目指して廊下を進軍していた。今もゲイルドリヴルがセイナ達の元にも現れたマッド・ゾンビを槍で一突きの元に貫き倒したところだった。鷹狩の言う通り特に強力な術技を使用したわけではないようだが、一体どのような武器を装備しているのだろうか。


 ※レビンズ・スピア《サンダー・ボルト》の性能


  武器名 レビンズ・スピア《サンダー・ボルト》 武器ランクB 品質 88%

   物理攻撃力 278 対応ステータス(DEX 80% STR 50% CON 30%)

   魔法攻撃力 149 対応ステータス(MAG 100% CON 25%)

   物理防御力  38 対応ステータス(DEX 50% VIT 20%)

   魔法防御力  20 対応ステータス(MND 100%)

   属性    雷(属性変換率0、50〜100%)

   重量    1.7キログラム 

 

 「レビンズ・スピアか……。レビンというのは英語で稲妻という意味だな。サンダー・ボルトというのは武器の型でも表しているのか」

 「ああ、他にも《サンダー・ストーム》や《サンダー・クラウド》というものがあるらしい。ヴァルハラ国建国時の献上品の中から私がブリュンヒルデ様より特別に頂いた物だ。他にも性能の高い装備やアイテムが国の倉庫に保管されているようだが、私がこの部隊の司令官の任を引き受けたように何か特殊な条件を満たさねば進呈することはできないらしい」

 「なるほど……。ブリュンヒルデさんや文官達、そして司令官であるお前に選定されたプレイヤーというのはその装備やアイテムを渡すべき者達でもあるということか」

 「そういうことだ。単にアイテムを渡す為だけに特別な地位を与えるわけにはいかないからな。お前ならゲームの実力と判断力、人格ともに申し分ないし、私の参謀にして貰えるようブリュンヒルデ様に進言しようと思っていたところだったのだが……」

 「ほぅ……それは光栄だな。作戦の立案や敵の戦力の考察の役目は私自身も望むところだ。それにお前の力になれるのならば喜んで引き受けよう」

 「そうか……。ならばこれから頼りにさせてもらうぞ、鷹狩」

 「ああ。だがまずはこのダンジョンを攻略し与えれた任務を果たさねば……。でなければいくらお前が進言しようともブリュンヒルデさんも私を参謀に任命することができないだろう」

 「……そうだったな」


 そう言うとゲイルドリヴルと鷹狩は二人並んで再び進軍を開始した。前衛職でもない者を自分の隣に置く為に先頭に配置するとはどうやらゲイルドリヴルは相当鷹狩のことを気に入っているようで、それは後ろを歩いていた他のパーティメンバー達にも瞭然のことであった。今もそのことで馬子とマイが何やら話ているようだったが……。


 「なんか豪い気がうてるみたいじゃね……、あの二人。ゲイルドリヴルさんは鷹狩さんのことを大分気に入ってるみたいで、その鷹狩さんもまんざらでもないようじゃし……」

 「そうね……。二人共常に冷静沈着で周りに流されないし、何事も慎重に対処するところなんかで気が合うんじゃないないかしら。これは近い内にヴァルハラ国の司令官と参謀の名コンビが誕生するかもしれないわね」

 「名コンビか……。二人共超が付くぐらい美男子女子びなんしじょしじゃけぇなんか違う意味で有名になりそう……。そうなったらまたあの天丼頭の人の怒りが沸騰してしまうよ。折角このダンジョンに入る前に和解できたみたいじゃったのに……」

 「ま、まぁ自分達の国にそういった看板的存在ができるのはいいことじゃない。私的にはナギとナミの名夫婦の方も有名になって欲しいけど……ってそんなことより馬子も今の二人の話を聞いてたでしょ。他人のことばっかり気にしてないで自分達の評価を上げることも考えないと。このままじゃあ鷹狩さんに完全においていかれちゃうわよ」

 「い、いや……。私は別にそんな責任重大な立場になりたくないし元々そんな実力も……。この部隊に選ばれたのも偶々ナギ君達と出会えたからじゃろうし……」

 

 馬子とマイ、そして他のメンバー達からもゲイルドリヴルと鷹狩は相当息のあったコンビに見えているようだ。見た目の雰囲気もそうだが性格や思考から行動パターンまで互いに共感できる部分が多いのだろう。そんな二人を馬子とマイはある程度肯定的に見ているようだったが、同じく後ろを歩いていた不仲は何やら頭を悩ませていたようだ。


 「コンビ……ですか。確かにアニメや映画などにでも主人公に頼れる相棒がいるのはセオリーですわ。貧島まずしまさんや賢機かしきさんは私を慕ってくれて付いて来てくれていますが相棒とはあくまで自身と対等に接してくれる存在のはず……。どこかにそのようなお方はいらっしゃ……」

 「ル〜ルルンっ♪、ル〜ルルンっ♪。今日のご飯は何かしら〜♪、きっとお鮭にお味噌汁〜♪、いえいえパスタにハンバーグ〜♪、ねぇ、幽霊さんはどう思うっ♪。……ふふふっ」

 「リ、リリスさん……、。今の素敵な歌詞のお歌といい、その上品な振る舞いといい……。まさに私の相方に相応しいお方ですわ。そうと決まれば善は急げですわね。……リリスさんっ!」

 「……?。どうしましたの、不仲さん」

 「あ、あの……突然で申し訳ないのですが……。もしよろしければ私とコンビを組んでくださりませんこと、リリスさん」

 「まあっ!、私と不仲さんがコンビっ!。それは素敵なアイデアですわ。喜んで不仲さんのコンビを務めさせていただきます」

 「本当ですことっ!。いきなりこのような不躾なお願いをして断れるものと思っていましたが……やはり私とリリスさんは運命の赤い糸で結ばれていたようですわね」

 「ふふふっ、それでは折角ですので私のスピリット・メッセージで幽霊さん達にも私達のコンビのことを占ってもらいましょう。やっぱりこういうことは占い師さんに意見を求めるのが一番ですからね」

 「それまたナイスアイデアですわっ!。きっと占いにも私とリリスさんの相性はピッタリと出るはず……。是非とも占ってくださいましっ!」

 「……一体何をやってるんだ、あいつらは」


 馬子達がゲイルドリヴルと鷹狩にコンビについて話ているのを聞いた不仲の突然のアイデアにより、なんと不仲とリリスまでもがコンビを組むことになった。ゲイルドリヴル達は別に自らコンビであると自称しているわけではないのだが……。そんな会話で盛り上がっている二人をゲイルドリヴルは後目に呆れた様子で見ていた。


 “ピンッ♪、ポォ〜ンッ♪”


 「……っ!。メッセージが届きましたわ。早速内容を確認してみましょう」

 「ええ……。占いとはいえなんだかドキドキしてきましたわ……。この内容によって私達コンビの今後の運命が決まると言っても過言ではないことですし……」


 「“……っ!。よ、良かったっ!。まさか霊術士の職の経験がある者……、それもこのダンジョン内でスピリット・メッセージを使ってくれるプレイヤーに出会えるとは……っ!。じ、実は君達に頼みたいことがあるんだ。詳しく話をしたいからできればスピリット・チャネリングを使って私との通信チャンネルを開いてくれっ!。私のチャンネルIDは‘obentounishake’だっ!”」


 「……い、一体なんですの、このメッセージは。私達コンビの占いの内容は何処いずこへ……」

 「うん〜、本当に一体どういうことなんでしょうね〜」


 自分達のコンビの運命を占う為にスピリット・メッセージを使用したリリスであったが、この辺りにいると思われる霊からは占いとはまるで関係ないメッセージが返って来た。見当違いの内容に首を傾げる不仲達であったが、そんな様子を見兼ねてか先頭を歩いていたゲイルドリヴルが進行を止め二人の元へ近寄って来た。一体このメッセージの意味はどういうことなのだろうか。


 「さっきから何を二人で何をしている。お前達が先へ進まないから後ろのナイト達まで立ち止まってしまっているではないか」

 「ゲ、ゲイルドリヴルさん……。そ、それがリリスさんに私達のコンビの運勢を占って頂いたのですが……、何やら不可解な内容のメッセージが返って来まして……」

 「不可解なメッセージだと……」

 「はい。こちらのメッセージなんですけれど……、一体この霊さんは私達コンビの行く末をどのように占ってくださったんでしょうね〜」

 「どれどれ……」


 ゲイルドリヴルはリリスから提示されたメッセージに目を向けた。そんな三人の様子が気になったのか鷹狩やマイ、後ろを歩いてたナイト達もその場に集まって来た。結局パーティ全員がリリスのメッセージを見ることになったわけだが、あまりメッセージの意図を理解できていない不仲とリリスに代わってゲイルドリヴルと鷹狩が考察を始めた。


 「どのようにもなにもどう見てもこれは占いとは全く関係ない内容ではないか。どうやら霊の方から我々と話したいことがあるということだが……、確かに意味深な内容のメッセージではあるようだな、鷹狩」

 「ああ……、このスピリット・チャネリングというのも霊術士の使用する魔法のことなのか、リリス」

 「はい。スピリット・チャネリングは使うと端末パネルを通して霊さん達と直接お話できるようになります素敵な魔法ですの。普通に使うとこの辺りを彷徨ってる霊さんと勝手に繋がってしまうのですが、お相手のチャンネルIDがあれば特定の霊さんを選んで通信を繋ぐことができますの」

 「チャンネルID……、この“obentounishake”というやつのことか。少し怪しい感じもするが何か有益な情報を得ることができる可能性もある。できるならそのスピリット・チャネリングという魔法でこの霊と通信を繋いでみてくれないか、リリス」

 「かしこまりました〜」

 

 ゲイルドリヴルの指示でリリスはスピリット・チャネリングという霊術士の魔法でこのメッセージを送って来た霊と通信を繋ぐことになった。チャンネルIDの“obentounishake”は“お弁当に鮭”と読むのだろう。リリスは端末パネルに“obentounishake”のIDを入力してスピリット・チャネリングの魔法を発動させた。


 「レ〜イさ〜ん♪、レ〜イさ〜ん♪。いつも霊界に篭ってばかりのシャイな霊さ〜ん♪。偶にはお外に出てお姉さんと楽しいお話しましょ〜♪。え〜いっ!、スピリット・チャネリングっ!」


 “ピンッ・ポ〜ンッ!”


 「“あ……あ……、こちらチャンネルID‘obentounishake’。ヴァルハラ国のプレイヤーの皆さん聞こえますか”」

 「は〜い、ちゃんと聞こえてますよ〜、お弁当に鮭さんっ♪。今日はお姉さん達と楽しくお話しましょうね〜。いつも見守ってくれてるお礼にちょっとぐらい過激なお話にも付き合っちゃうわよ〜、ふふふっ」

 「“か、過激って……、一体どんなお話なんですか……”」

 「……ゴホンっ!。……通信を繋いで貰って悪いがリリス。この霊とは私が話しをするからお前は少し下がっていてくれないか」

 「かしこまりました〜」

 「ふぅ……、いや失礼した。私は現在ヴァルハラ国で司令官の任を務めさせて貰っているゲイルドリヴルというものだ。……そちらはこのダンジョンに関係する霊ということでいいのか」

 「“そ、そうですっ!。私は生前この館の厨房で料理長を務めさせておりましたベン・サーモンという者の霊でございます。この館でショックな死を遂げて以来成仏できずにずっと館内を彷徨っていたのですが……、他の者達のように悪霊になる前に話を聞いてもらえる方々に出会えて本当に良かったっ!”」

 「他の者……、では貴方以外にもこの館で亡くなった者達がいるということか。それも悪霊になっているとは一体この館で何があったんだ」

 「“は、はい……。実はこの館に住んでいた者達はこの私……、ご当主様も含め皆ある男によって惨殺されてしまったのです。その事件以来この館はその男と惨殺された我々の怨念による負の魔力に包まれ、今はアンデットとここの住民であった者達の悪霊の住処と化してしまっているのです”」

 「なるほど……、ホラーハウスになったダンジョンにはありがちな展開だな。それで先程のメッセージにもあったが我々に頼みたいこととは一体なんだ。それに我々の方からもそちらに情報の提供を願いことがあるのだが……」

 「“そ、それは勿論こちらの頼みを聞いて頂けるのであれば私の分かることや知っていることは全てお話しますっ!。それで私の頼みというのはこのダンジョンまで辿り着いたプレイヤーの方々であるなら大体察しがついていることと思いますが……、先程私が話した我々を惨殺した男を倒し、この館を支配する負の魔力から解放して欲しいのですっ!。そうすれば私も他に悪霊になった者達もきっと成仏できるはず……”」

 「確かにそれも今までゲームをプレイして来た者達にとってはありがちな展開だな。ではまず我々に討伐を依頼したこの館の者達を惨殺したという男についての情報を聞かせてもらおうか。当然その男もこの館……、それもダンジョン内の一番奥で恐らくボスとして待ち受けていることになろうのだろう」

 「“は、はい……。それは私もその通りだと思うのですが……、実はその男の情報に関しては我々を惨殺した者であるということ以外何もお話することができないのです……。生前その男から苦痛と恐怖が我々の魂を縛り、少しでもその男について詳しいと思われる内容を口に出そうとするだけで私の霊体が金縛りの状態になってしまうのです……”」

 「なんだと……」

 

 リリスが通信を繋げた霊との会話を進めるゲイルドリヴルであったが、その霊から依頼を受けた肝心のこのダンジョンのボスと思われる男についての情報は何も話すことができないという旨を告げられてしまった。これにはゲイルドリヴルも少しの動揺を隠せずにいられなかったようだが、他のメンバー達、中でも不仲が声を荒げて霊に対して文句を言い始めた。


 「まあっ!、我々にものを頼んでおきながらそれについての情報を話せないとは一体どういうことですのっ!。先程はご自分の分かることや知っていることは全てお話しますと仰っていたではありませんかっ!」

 「不仲さんの言う通りじゃけぇっ!。自分を殺害した男のことを思い出すのが辛いって気持ちは分かるけど……、それはあんたがその男のことを何よりも知ってることでもあるんじゃけぇちょっとぐらい我慢して話してもらわんとこっちも困るけんねっ!」

 「落ち着けっ!、不仲、馬子。これもゲームの設定である以上仕方のないことだ。それにこのダンジョンのボスと思われる者の情報が得られないのは不本意だが他にもこの霊から得ることのできる情報は多々あるはず……。まずは一通りベン・サーモンと言ったか、彼の話を聞いてみることにしよう」

 「わ、分かりましたわ……」


 馬子と不仲はこの霊達を惨殺した男、恐らくセイナ達が発見した日記にも書かれていた医者を名乗る男と同一人物の情報が得られないことに不満を露わにしてたが、流石にゲイルドリヴルは冷静で取り見出すことなくその後も無駄な会話を省きスムーズにベン・サーモンと名乗る霊との会話を続けた。そしてゲイルドリヴル達が転移してた場所は館内の厨房と会食場に通じるエリアだということ、自分以外の館の住民の霊は全て倒してもリスポーンする悪霊モンスターと化しており、その数は全部で200体以上で20あった魔法陣それぞれのエリアに約10体ずつ、それらを統括する為の魔族型のモンスターが1体配置されているということ、ダンジョン内を調べればその男の詳細に関する資料、ダンジョンの最奥に進む為の道の手掛かりがあるという情報を新たに得ることができた。更にこの霊がこのスピリット・チャネリングの通信が繋がっている限り自身がダンジョン内の案内をすることを買って出てくれたことにより、不仲や馬子達の不満も大分収まる結果になったようだ。


 「そうか……、大体事情は把握できた。そちらが道案内をしてくれるというのならばダンジョンの探索もスムーズに進みその男の情報やダンジョンの奥への道も逸早く見つけ出すことができるだろう。問題はあくまでそれは我々だけのパーティのみに言える話で他の魔法陣を潜った者達と連絡を取る手段がないということだ」

 「そうだな……、ゲイル。このままではもしダンジョンの奥まで辿り着くことができたとしても我々だけでそのボスの男の相手をしなければならないという事態もあり得る。他のパーティも一筋縄ではいかない者達だからそう簡単にこのダンジョンの攻略から脱落することはないだろうが……」

 「ああ……、突入のタイミングを合わせることができなければボスへと辿り着いた者達が各個撃破されていってしまう可能性が高い。何か他のエリアに転移したパーティと連絡、もしくは動向を知る方法などはないのか」

 「“さぁ……、それもダンジョン内を詳しく調べなければ私からは何とも言えません……。ただ先程話したこのエリアに縛られている悪霊とそれを統括する魔族を倒すことができれば更に有益な情報を得ることができるでしょう。それらの敵に関する情報なら私にもいくつか教えられます”」

 「そうか……、ならばまずはその話を聞いて情報を纏めてから奥に……」

 「あなた達……そこで何をしているの……」

 「……っ!。あれは……」


 ベン・サーモンから更なる敵の情報を聞き出そうとしたゲイルドリヴルだったが、そんな時ゲイルドリヴル達が進もうとしていた廊下の奥から何者かが声を掛けてきた。ゲイルドリヴル達はまるで気配を感じることができなかったようでその声を聞くと共に慌てて通信の繋がっていたらリリスの端末パネルの画面から顔を振り向けた。するとそこにはセイナ達の元に現れたクーペ・サフランと同じくメイドの格好をした女性の姿があったのだが……。


 「もしやのあの女性がベン……、お前の言っていた悪霊となったこの館の住民達の一人なのか。それにしてもまるで気配が感じられなかったが……」

 「“ゴ、ゴースト系のモンスターの気配を感じ取るのは熟練した霊術士系統の職に就いている者でないと難しいですから……。姿を消して移動して来たとなれば尚更です。ゲイルドリヴルさんの言う通り彼女もこの館で働いていたパラ・パメラというメイドです。主に給仕きゅうじや接客を担当していたのですが……、食事の時間になるとこのエリア内にいる者を全て会食場へと連れ出す為ああやって呼び回っているのです。そして彼女の言葉に従わない者には容赦なく……”」

 「つまりは我々も無理やりその会食に参加させようというわけだな。わざわざ道案内をしてくれるのは結構だが……、こちらから敵の陣中に出向くわけにもいくまい。できればこの場は退けてしまいたいが……」

 「“……ですがお気をつけ下さい。大抵のゴースト系のモンスターはこちらの物理攻撃を無効化する能力を持っています。如何に熟練した者の攻撃でも相手にダメージを与えるどころか体をすり抜けてしまいます”」

 「案ずるな……。魔槍術士である私は自身の魔法攻撃力を用いて槍による攻撃を行うことができる。多少のMPは消費してしまうがそれならばゴースト系の相手にもダメージを与えることができよう」

 「“確かにそれならば大丈夫でしょうが……”」


 ゲイルドリヴル達の前に現れたのはパラ=パメラというメイドの霊で、やはりクーペ・サフランと同じく悪霊モンスターと化しており物理攻撃がまるで効かない相手となっているようだ。だがゲイルドリヴル自身が話ていた通り魔槍術士ある彼女はセイナと違い通常の攻撃でさえ魔法攻撃力を用いて攻撃を行うことができる。物理攻撃力よりかなり低い値になってしまいMPも消費してしまうようだが敵への対応の幅の広がりを考えるとかなり有効な能力である。どうやらゲイルドリヴルはこの場はを一先ずパラ・パメラを

退けてしまうつもりのようだが、彼女は先程の話を続けた。


 「あなた達……、もうすぐお昼の会食の時間よ……。それなのに一体こんなところで何をモタモタしているの。今日はシェフリー様が腕に寄りを掛けてご馳走を作って下さったんだから早く会食場に向かいなさい。……それともまさかシェフリー様の手料理を食べないなんて言うつもりじゃないでしょうね」

 「シェフリー……」

 「“それもこのエリアに巣食う館の住民の悪霊の一人でシェフリー・チョーという女性料理人の一人です。元は私の下で働いてくれていたのですが、悪霊になってからは彼女が料理長となってこの館の厨房を取り仕切っているのですっ!”」

 「………」

 「さぁ……、いいから早く会食場へ向かいなさい。あなた達が出向かないと他の者達だって食事を始めることができないのよ。私だってもうお腹が減って死にそうなんだからあんまり手を煩わせないでちょうだい」

 「し、死にそうって……、あんた等はもう皆亡くなって肉体なんてないはずじゃ……」

 「“成仏できない霊という者は皆程度によって生前あった肉体の感覚に囚われていってしまうものなんですよ、馬子さん。そして霊体の意識は肉体は死亡したにも関わらず自分はまだ生きているのだと錯覚し場合によっては彼女達のように悪霊と化してしまうのです。基本的に私のように自分が肉体を失っていることが自覚できていれば負の魔力に取り込まれてしまうことはありません”」

 「訳の分からないことをグダグダと話をしてないでとっと会食場へ行けって言ってるでしょっ!。これ以上モタモタするようなら力づくで連れて行くわよっ!」

 「……確かパラと言ったか。悪いが今我々はそれ程空腹を感じてはいないのだ。我々の分の料理は取っておいてくれないか」

 「なんですって……っ!」

 「じゃけぇお腹は空いてへんてうとろうがっ!。本当はお昼まだやからちょっと空いとるけど……、あんたら悪霊が作った料理なんて食べとうないわっ!。それに食べ歩きできるスナック菓子とかおにぎりだってちゃんと用意しとるけんねっ!」

 「別にあんた等のお腹の具合や食べ物の好みなんてどうでもいいのよっ!。あんた達が揃わないと私が食事にありつけないってさっきから言ってるでしょっ!。……もういいわ。これ以上の空腹なんて我慢できない。こうなればあなた達から生気をふんだんに吸い尽くしてから会食場へ連れて行くことにしましょう。前菜代わりにちょうど良さそうだしね。……はあっ!」


 “グオォォォォ……”


 「……っ!。なんじゃっ!。急に周りから薄気味悪い黒い影みたいな物体が現れたよっ!。こいつらもあの女の人と同じ悪霊モンスターなんけぇっ!」


 ゲイルドリヴルが会食場への誘いを断るとパラはクーペの時以上の憎悪と怒りに満ちた殺気を放ち始め、それに呼応するようにゲイルドリヴル達の周囲に目と両手のようなものだけある黒い影のような物体が出現し取り囲んだ。どうやら敵モンスターであるようだが一体……。


 「“こいつらはこの館を包み込んだ負の魔力によって自然発生した低級の悪霊モンスター共ですっ!。パラと違って物理攻撃も多少は効果があるでしょうが……、恐らくパラがリスポーン・ホストとなっている為無限に沸き続けるはずですっ!”」

 「くっ……、どうやら早急にあのメイドを退けなければならないようだ。リスポーンできると話にあったはずだがこの場で倒してしまっても問題はないのだろう」

 「“はいっ!。恐らく30分程度経過しなければ蘇ることはないはずです。それに次に蘇えった時にはここで我々と出会ったことも忘れてしまっているでしょう”」

 「……では私が奴が仕留めるまでお前達はこの黒い物体の相手をしていてくれ。ある程度物理攻撃が効くようだが基本は魔法による攻撃が可能な者を主体として陣形を組むように」

 「騎士の職がメインの俺は魔法攻撃力が低く使用できる数も少ない……。この場は不本意だがお前達のサポートに回ってやるか」

 「わ、私も魔法を用いた攻撃手段は一切持ち合わせておりませんわ……。弓術士としてのサポートはあなたにお任せしましたわよ……、マイさんっ!」

 「ふっ、ちょっとは素直に人にものを頼めるようになってきたじゃない。任せといて、こんな奴等私の魔弓なら一撃よっ!」

 「よし……っ!。馬子は私の援護に付いてくれ。私が正面の道を切り開くからその隙にこいつらの囲いを突破するぞ」

 「りょ、了解じゃぇっ!」

 「ではいくぞ……はあぁぁぁぁっ!」


 パラの敵意によって低級の悪霊達が出現した同時にゲイルドリヴルは瞬時に皆に的確な迎撃の指示を出した。多少の魔術師の経験があるものの現在は物理攻撃が主体である騎士の職に就いているナイト、魔法による攻撃手段を持ち合わせていない不仲が前衛となってモンスター達の相手をし、魔弓術士のマイと霊術士のリリスが主に相手のHPを削る、鷹狩とイヤシンスが皆のHP管理をする陣形を取った。ゲイルドリヴルから自身の援護の指示を受けた馬子はゲイルドリヴルが正面の敵を槍で薙ぎ払うと共に黒い悪霊達の囲いを突破した。そして囲いからで一息入れる馬子を余所に間髪入れずに地面を蹴り凄まじい勢いでパラへと向かって行ったのだが……。





 

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