finding of a nation 76話
「……どうやら皆それぞれのパーティの元へ戻ったようだな。では今後の方針を伝える。……言うまでもないことかもしれないが一度森林の探索を中断してこの館の調査を開始する。一先ず全てのパーティに調査に参加してもらうことになるが……、調査の進行度合いによって随時森林の探索へと戻って貰う」
カイル達の発見した館に全てのパーティが集合しゲイルドリヴルは皆に今後の指示を出し始めた。カイルの予想通り全部隊のプレイヤーを総動員して館の調査を行うようだが、いくら規模が大きいとはいえ240人ものメンバーを調査に内部の調査に動員するとは思えない。恐らく10部隊程は周囲の警戒に当たることになるのではないのだろうか。
「……では今言われた部隊のメンバーは周囲の警戒に当たってくれ。残った部隊は屋敷の調査を行うのだが……、皆が集まる前に屋敷の周囲を探索したところどうやらこの正面の入り口から侵入できないらしい。窓には特殊なエフェクトが施されていて破壊して侵入することは勿論中の様子を視認することもできない。まずは私のパーティが入り口近辺の内部の偵察を行い、その後順次間隔をおいて後続のパーティ達に調査を開始して貰うことにする。一度にあまり多くのメンバーで侵入しても後がつかえてしまうだけだからな」
やはり館内部への侵入に20、周囲の警戒の10ずつの部隊に分けて調査を行うようだ。内部の調査はまず入り口付近の偵察を行い、可能ならばその出入り口となる付近にも拠点と警戒を行うパーティを配置、そして各階の左右のフロアに分けてそれぞれのパーティに調査に向かってもらう段取りのようだ。外観から見たこの館の建物の階数は5階、各階の左右のフロアに2パーティずつ配置して調査を行うことになるのだろう。特に調査の段取りに問題はないようだが、やはり今回も調査と警戒に当てられたパーティの選定に不服を申し出る者がいた。
「ちょっと待てぇぇぇっ!。別にその作戦には文句はないがどうしてこの俺のパーティが調査チームに入ってないんだよっ!」
「そうだそうだっ!。天だくさんはここに来るまでに現れたモンスターを全部一撃でぶっ倒して来たんだぞっ!。その天だくさん率いる俺達のパーティを調査チームに入れないなんてナンセンスにも程があるぜっ!。もし館の中で俺達の目的の超強いボスモンスターが現れた時天だくさん無しで一体どうするっていうんだっ!」
「て、天だく……、またゲイルドリヴルさんのことが気に入らないからといってあのように突っかかって……。戦力の分散をさせる以上どちらのチームに組み込まれても仕方が無いことぐらいあなたなら分かっているでしょうに……。折角パーティのリーダーにも任命して貰えたのにあのような態度を取っては折角のこれまでの評価が台無しです……」
他のパーティ達は何も不満を口にしていないというのに横柄な態度で文句を垂れる天だくを見てゲーム仲間として親しい仲である大神官ラスカルも呆れた様子だった。確かに館の内部の調査に参加した方が今回の任務の目標となるものやそれ以外の強敵と言われるモンスターを討伐し多くの功績を得られる可能性が高い。何よりゲームのプレイヤーとしてはいくらナギ達の言っていたように不気味な雰囲気が漂っているとはいえ、むしろ逆に好奇心がそそられて内部を探索してみたいと感じる者である。だが周囲の安全の確保も重要な役割で、万が一内部の調査をしている間に館の周囲のモンスターの大群、今の段階ではまずあり得ないだろうが他国のプレイヤー達に占領されてしまった場合、調査を終え館の外に出て来たところを袋叩きにされ折角の調査も成果も全て掻っ攫われてしまう。その点を考えると如何に優れたプレイヤーであっても戦力の分散の為警戒側のチームに配置されるのは当然のことだ。これまでも仲間との連携や協力の必要性の高いゲームをプレイしてきた天だくならば当然そのことを理解できていただろうが、ブリュンヒルデを出迎えた時の一件以来どうもゲイルドリヴルが自分より上の立場にいることを不服と感じているらしい。この部隊の最高司令官としてそのような不服を持つ者を見過ごすわけにはいかないがゲイルドリヴルはどのような対応をするのだろうか。
「……悪いが君達のそのような不服の申し立てこそナンセンスだ。私もゲームのプレイヤーとして館の調査に加わりたいという君達の気持ちは分かるが……、任務を遂行するにおいてどちらも重要な役割であることは君達程のプレイヤーならば十分理解できているはず……。そちらのパーティのリーダーである君はあまり私に対して良くない感情を抱いているようだが……、私は君の他のプレイヤー達からの信頼と統率能力の高さを買って周囲の警戒に当たって貰うことにしたのだ」
「お、俺の能力を買ってだと……」
「司令官である立場上私が調査メンバーに加わらないというわけにはいかないからな。自らの地位を利用して功績を独占するつもりだと感じる者もいるからもしれないが、自身は安全な場所で待機して他の者に危険を押し付けていると思われるよりはマシだろう。そして私が不在となる以上、私以外の中で最も皆を纏める力のある者を館の外に配置するのは当然の選定だろう」
「つ、つまりは俺にあんたが不在の間の代役を任せようと……」
「そうだ。それでも不服があるというのならば今から君達のパーティを他のパーティと編成を入れ替えよう。恐らくはセイナの率いるパーティということになるだろうが……」
「ま、待ってくれ……っ!。どうやら俺の方があんたのことを誤解しちまってたようだ……。司令官だからって自分本位のメンバーの選定をしたんじゃないかと疑ってたがこの短期間でそこまで他のプレイヤーの能力や特性を把握できていたとは……そういうことなら喜んで周囲の警戒を務めさせてもらう。調査を終えた時やその最中であってもいつでもお前達が安心して戻って来れるよう全力でこの場所を確保しておくからお前達は心置きなく内部の調査に専念してくれっ!」
「そうか……。では私がいない間の統率はお前に任せたぞ、天だく」
「ああっ!」
「天だく……ふっ、どうやらもう私が心配する必要はなさそうですね」
不服を申し立てて来た天だくに対し、ゲイルドリヴルはゲームの中とはいえ上官に対して横柄な態度を取ったこと叱責するかに思われたが、意外にもこのメンバー選定の自身の考えを徐に諭すような対応を取った。どうやら天だくが自身に不信感を抱いていることを察し、それを取り除くことを優先したようだ。下手に叱責するよりも天だくの中の余計な拘りや感情を排除すれば自然と自分の選定の主旨を理解してそれに従ってくれると判断したのだろう。その考えが功を奏し天だくもゲイルドリヴルが自身に対する期待や信頼があることを感じ取り無事打ち解けることができたようだ。天だくに対する呼び名も“君”から親しみを込めて“お前”に変わっていた。天だくの持って生まれたMMOプレイヤーとしてのカリスマを慕う者も多く、加えてその天だくから好意的な協力を得てこの任務を達成したとなれば名実ともにこの国の司令官としてゲイルドリヴルの名は知り渡ることになるだろう。……そして天だくと和解できたところでいよいよ館の内部の調査を開始するようだ。
「よし……っ!。ではまず我々のパーティで内部の偵察を行う……。恐らく内部は複数の区画に分かれているだろうが、当初の予定通りまずはこの入り口を入っての近辺の区画の様子を探るだけだ。部屋へと入る為の扉などがあっても決して私の指示なく開けたりしないように」
「分かりましたわ……。少し慎重になり過ぎなような気もしますけど用心に越したことはありませんですしね。ですが我々と敵対するようなモンスターが現れた場合遠慮なく反撃させてもらいますわよ」
「ああ……、だがその時は内部の敵の情報を少しでもしる為にできる限りライブラの魔法を掛けてから止めを刺すようにしろ。このパーティの中で魔術師の職を経ているの者は……マイっ!。魔弓術士であるお前が一番経験が豊富だから頼んだぞ」
「分かってるわ。1体でも情報を得ることができるば内部に現れる他の敵の大体の強さも予測できるだろうしね」
「ひえぇ〜……、まさかこの私がトップバッターを務めることになるなんて夢に思わんかったよ〜。滅茶苦茶緊張するんじゃけどこんな事になるなら他のパーティに配属して欲しかったけぇ……」
「(マイ……、あなたのことだから要らぬ心配だろうけど気を付けて……。ナギ達にはああ言ったけど私もなんだかこの館には恐ろしい何かが待ち受けている気がする……。ゲームの登場キャラクターとしての制約を受けているとはいえ一体どれだけの力……、そしてどんな性質の電子生命体がこのゲームに参加しているかは私達にもまるで知らされていない……。もしかしたら私達とは比べ物にならない程の生命エネルギーを持った奴が敵として現れるかもしれないのよ……)」
「(最初の偵察だけだって言ってたけど気を付けて、馬子さん、それに鷹狩さん達もっ!。外に出て来てくれさえすれば僕達皆で援護できるんだから無理して自分達だけで戦おうとしなくていいんだからね)」
「どうやら皆心の準備はできたようだな……。私とナイトが先頭になって中に入るからすぐお前達も続き陣形を取って周囲に構えるように。……分かったな」
「了解っ!」
「……では扉を開けるぞ」
“ギギギッ……”
馬子、鷹狩、不仲、マイ、ナイト、リリス、そしてイヤシンスというもう一人の治癒術師と精霊術師の職を経ているプレイヤーの覚悟と意志を確認しゲイルドリヴルは館へと入る為の扉を開けた。その扉の高さは約3メートル、左右約80センチずつの横幅に分かれた両開き戸となっていて、非常に厚くそして重量のある素材で作られていたのか片方のドアをゲイルドリヴルが押し込むようにして動かすとまるで地獄の底から聞こえてくる雄叫びのような反響音が館内部から響き渡って来た。そして反対側の扉も前衛を務めるナイトが同じように内側へと押し込み完全に扉が開かれる形になったのだが、その目の前にはゲイルドリヴルとナイトが固唾を呑むような光景が広がっていた。
「こ、これは……、一体どういうことだ……」
「………」
「どうしたというんだ……、ゲイル。一体中はどんな様子に……っ!。こ、これは……、あの時の遺跡と同じ……っ!」
「遺跡だと……っ!。それは一体どういうことだ、鷹狩っ!」
「………」
満を持して館の扉を開けたゲイルドリヴル達だったが、その内部には皆が予想していたものと全く違う光景が広がっていた。複数の区画に分かれていると思われた屋敷の内部は開けてみるとまるでドームのようにだだっ広い空間が広がっているだけで、階を上がる為の階段も他の区画へと移動する為の廊下も、そして部屋に入る為の扉らしきものも何一つ見当たらなかった。あるのは薄暗い空間の中央付近広がる魔法陣のみ……、ちょうど鷹狩の言う通り数か月前にナギ達の訪れたヴァルハラ国の西の河川にあった遺跡の内部と同じ光景だけだった。
「………」
「なんだなんだっ!。どうして中に入らずにそんなとこに突っ立ったままなんだよ、お前等っ!。さっきは俺に外のことは任せるとか言ってたくせにとっとと中の調査を開始しろってこりゃ……。あの時と同じ魔法陣じゃねぇのかっ!」
「天だく……お前もこの光景に見覚えがあるようだな……。そして鷹狩も……。一体これがどういうことなのか説明して貰えないか」
「ああ……、実はな……ゲイル」
扉の前に呆然と立ち尽くすゲイルドリヴル達を見兼ねてか天だくも慌てた様子で駆け寄って来て屋敷の内部の様子を見渡した。そして鷹狩と同じようにすぐあの遺跡と同じ光景だと気付いたようだが、ゲイルドリヴルから説明を求められた二人は遺跡での出来事の経緯を説明した。
「なる程……、つまりはこの魔法陣は全て転移用のものでそれぞれちょうど1パーティ……、同時に8人ずつしか転移先に行くことができないということか……。そして当然転移場所もそれぞれ別で、恐らくはその奥に進まねばこの館……、もうダンジョンと言った方がいいだろうが攻略できないと言うわけか……」
「ああ……。私もあまりの敵の強さにその遺跡では早々に逃げ帰って来てしまった為その転移場所がそれぞれ同じ場所に通じているのかそれとも違う場所に通じているのか分からない……、確か最終的に合流すると表記にあったが恐らくその通りだろう」
「分かった……。だがまだ全てお前達の訪れた遺跡と同じとは限らない。一先ず予定通り皆で内部の様子を確認してみるか」
「そうだな……」
「よし……っ!。では当初の予定通り調査メンバーに選定されていたパーティは内部に入って調査を開始してくれ。見渡しがよく障害となるものも見当たらないが何が待ち受けているかは分からない。皆2つのパーティずつに固まって行動して互いに目を放さないようにして調査を進めてくれ。尚中央にある魔法陣は私と……、鷹狩達と同じくここと同じ光景があったという遺跡に訪れた者の多いレミィ、お前達のパーティと共に調査をすることとする」
「は、はい……っ!。喜んで同行させて頂きますっ!」
予想外の事態に直面したが鷹狩達の説明を聞いたゲイルドリヴルは取り敢えずは予定通りのメンバーで内部の調査を行うことにした。ただ一つの空間しかなく内部全体が見渡せる為ほとんど警戒の必要はないように思えたが、それでもゲイルドリヴルは皆に気を抜かないよう注意を促していた。ゲイルドリヴルの指示を受けたメンバーは続々と館の内部へと入り調査を開始して行った。
「はぁ〜、一々調査なんてしなくてもこんな床と壁と天井しかない空間になんて何もないっての。全くあの司令官さんは堅物な上に慎重過ぎと来て私の性と合わないぜ」
「僕は司令官ならこれぐらいでちょうどいいと思うな。ゲームの中だからリスポーンできるとはいえ皆の命を預かってるようなものだからね」
「カイルの言う通りだぜ、レイチェル。俺もちょっと慎重になり過ぎだとは思うがお前みたいに大雑把で軽率な奴よりよっぽど頼りになるんじゃないか」
「けっ……、ヴィンスまであいつの味方しやがって……。まぁ、私もこれまでの指示やさっきの天だくとのやり取りを見て上司として頼りになる奴だなっとは思ってるよ。現役OL女子の立場から見てもな。ただちょっと性格の相性が悪いってだけで……。っていうかそんなことよりあの魔法陣の調査はどうなってるんだよ。この中で調べる価値がある物なんて実際あれぐらいだろうが」
「さぁ……。ナギやレミィさん達のパーティもゲイルドリヴルさん達に同行して調査を行ってるみたいだけど……、もしかしたら遺跡にあったものとはまるで違う性質のものかもしれないね……」
「くそ……っ!。私もこんな床と壁なんかより魔法陣の方が気になるってのっ!。ここから見てあの魔法陣の数は……ひぃ、ふぅ……」
「それなら僕がもう数えてみたけど20個だったよ。ちょうど僕達の調査に参加してるパーティと同じ数だね」
「おっ!。それならもし遺跡と同じ魔法陣だった場合問題なく私等もダンジョンに突入できそうだな。あぁ〜、早くこんな壁とおさらばして早くモンスターをブッた斬りてぇぜ」
レイチェル達を含め他のメンバー達は魔法陣以外の館内部の調査をしていたのだが、皆レイチェルと同じように何もない床と壁に退屈を感じて不貞腐れているような態度を取っている者も多かった。中には床に座り込んだり端末パネルにインストールした身にゲームをやり始めた者もいたようだ。ゲイルドリヴルも流石に皆の心情を察してか調査開始時の時以上のことは言わず、ナギ達と共に魔法陣の調査に集中していた。
「“この魔法陣は一つにつき8人ずつまでしか利用することができません。その8人が転移先に止まっている限り他のプレイヤーやキャラクター達は転移することができませんが、一人のプレイヤーが転移先から離脱すれば新たに一人のプレイヤーが転移を行えるようになります。例えば戦闘不能状態のまま蘇生できず死亡してしまった場合等です。20個の魔法陣は全て別々の場所に繋がっていますが、転移した先は全て合流することができる可能性はあります。……また注意すべき点してこの魔法陣は魔物、そして特定のカテゴリに属しているゲーム内の存在はなんの制約もなく自由に出入りすることができます”……か。この魔法陣に対する端末パネルの表記はお前達が遺跡で見たものと同じ内容のものか、鷹狩」
「いや……、大方同じ内容ではあるが随所に違う点がある。まず我々が遺跡で見た表記には“先に進めば最終的に全て合流することになります”とあったがこちらは“転移した先は全て合流することができる可能性はあります”となっている。これはつまり全ての転移先が何等かの形で繋がっていることは同じだが、こちらの場合はただダンジョンを進むだけではなく何か特殊な条件を満たさなければならないことを示唆している。恐らく何等かの仕掛けを解かないといけないような……、隠し扉や通路のようなものがあるということだろう」
「ふむ……」
「そして気になるのが“注意すべき点してこの魔法陣は魔物、そして特定のカテゴリに属しているゲーム内の存在はなんの制約もなく自由に出入りすることができます”っという文言……。これは我々が遺跡で見たものには表記されていなかった。恐らく我々以外の者で制約なく自由に出入りできる存在がいることは遺跡の方も同じだろうが……、わざわざ“注意すべき”と付けられて表記されていることから考えてもこの館の外から我々以外の何者かがこの魔法陣を潜って来る、もしくはこの魔法陣の転移先からこちらに転移してくるといったことが高確率で起こるということだろう」
「私もお前の考察と同意見だ。これは尚のこと天だくに周囲の警戒、そしてこの魔法陣の監視を怠らないよう忠告しておいた方がいいだろう。……他の者達で何か気になった点のある者はいるか」
「えっ……私は特に何も……。皆はどう?」
「わ、私もレミィと同じで特に何も……。大体のことは今鷹狩さんが詳しく解説してくれたから……皆も同じよね」
「ああ」
「そうか……。ならばこれ以上ここで手を拱いても仕方が無い。調査はこの辺りで踏ん切りをつけてこの魔法陣の先のダンジョンと思われるものの攻略を開始するか」
やはりこの魔法陣のシステムも遺跡のものと同じで、この館自体同じようにダンジョンへの入り口として設置されているようだ。多少端末パネルでの表記に違う点があったようだが、鷹狩が丁寧な解説をしてくれたおかげでナミやレミィ、他の者達も特に問い質すようなことはなくスムーズに事が進みゲイルドリヴルも次の段階……、ダンジョンへの侵入の開始に入ることができた。
「よし……っ!、皆聞いてくれっ!。どうやらこの館は天だくや鷹狩達が訪れた遺跡と同じ形式のダンジョンとなっているようだ。これよりその攻略を開始しようと思う」
「おっ!、待ってましたぁ〜っ!。ダンジョンっていうからにはあの遺跡の時と同じくらい強い敵が出てくるってことだろ。この1か月でパワーアップした私とヴァイオレット・ウィンドで今度こそモンスター共をブッた斬ってやるぜっ!。……しかしようやくゲームらしいことが始まったな」
「これまでの調査だって十分このゲームらしいことだよ、レイチェル。それにいくら遺跡の時より格段に僕達のレベルが上がってるとはいえこのダンジョンにはその時以上の敵が待ち受けているかもしれないんだから油断は禁物だよ」
「へいへい。リーダーのカイルに言われたら気を付けないわけにはいかないなぁ〜」
「では私は周囲の警戒に当たってくれるメンバー達に改めて指示を出してくるからそれまでこの魔法陣前でそれぞれのパーティごとに並んで待機していてくれ。……間違っても勝手に魔法陣を潜ったりするんじゃないぞ」
そう言い残すとゲイルドリヴルは一度館の外に出て周囲の警戒メンバーの統括を任せている天だくの元へと向かった。恐らく先程鷹狩との会話で話していた内容等を伝えに行ったのだろう。ナギ達はゲイルドリヴルが戻って来るまでの僅かな時間を好奇心と不安にかられながら過ごしていた。




