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finding of a nation online  作者: はちわれ猫
第十一章 緊急招集っ!、北の森でモンスター大量発生っ!
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finding of a nation 73話

 「でりゃぁぁぁぁっ!、ザンバァーーーッ・スラァーッシュッ!」


 “ギャオォォォォォ”


 「おおぉーーっ!、流石我等がパーティリーダーの天だくさんっ!。あの馬鹿デカイ恐竜をたった一撃でっ!」

 「こりゃマジで凄げぇ……。任務が始まる前はこんな天パと寝癖の合体した奴本当に頼りになるのかと疑ってたが……。ここまで正面に現れたモンスターを全部一撃でブッた斬っちまってるぜ」

 「よっしゃぁぁーーっ!。もう森林の入り口は目の前だっ!。このままの勢いで一気にある程度奥まで突っ込んじまうから俺の後を遅れずについてこいよっ!」

 「ラジャーっすっ!。天だくの兄貴っ!」

 

 作戦開始から約4時間、天だくは自身の指揮するパーティの先頭に立って正面から来る敵を新しい装備と思われる大剣で薙ぎ払いながら順調に森林に向かって進軍していた。現在の天だくの職業はレイチェルも目指していた狂戦士、装備は以前使用していた斧でも構わないのだがどうやら戦士の間に使用していた大剣が思いの外フィットしたようだ。そして今もその大剣を用いた剣を振り下ろした先に更に風圧によって直線状の斬撃を発生されるザンバー・スラッシュという技で恐竜型のモンスターを蹴散らし、一気に目的地である森林の入り口をパーティメンバー達と突っ切って行ったのだった。



 

 「はあぁぁぁぁぁっ!」


 “グオォォォォッ!”


 「……よしっ。一先ずこの辺りのモンスターの出現は止まったようだな。それでは森林の中を探索していくぞ。皆陣形を崩さないようなるべく固まってゆっくり進軍していくぞ。……お前達もここまでの護衛ご苦労だったな」

 「い、いえ……。ゲイルドリヴルさんからそのような言葉を頂けて光栄です。任務……頑張ってくださいっ!」

 「ああ……。では再びモンスターが出現しないうちに森の中に入ってしまうか……」


 天だくのパーティとは対照的にゲイルドリヴルはまずは森林の入り口付近のモンスターを掃討し、一度自分達のパーティの陣形を整え直してから慎重な様子で周囲を警戒しながら森林の中へと入って行った。ここまで進軍に掛かった時間は約6時間……、天だく達よりも2時間遅れで森林へと侵入したわけだが、他のパーティ達の進軍速度も大体その程度であった。

 


 そして現在の時刻は昼の3時を回ったところだったのだが、森林の中に入ったパーティ達は今日の夕暮れまでに目的のものを探し出すのは困難だと判断しまずは今晩の寝床となる拠点を設置できそうな場所を探しながら森の中を探索していた。




 「う〜ん……、森の中だっていうのに本当にモンスターの姿が見当たらないわね〜。森に入るまではあれだけわんさか沸いて出て来たのに、入り口からここまで歩いて来て出会ったモンスターの数は10体ぐらいよ。リアにはまた注意されるかもしれないけどこれじゃあ折角の任務も拍子抜け……」


 “ピッ!”


 「……っ!。危ないっ!、ナミちゃんっ!」

 「えっ……」


 “サッ……バッ!”


 「……っ!。ナ、ナイスぅ〜、バジニールさ〜ん」


 森の中へと入ってから約1時間、レミィ率いるナギ達のパーティはゲイルドリヴル達と同じようになるべく皆で周囲を警戒しながら固まって探索を続けていた。偵察隊からの報告にもあったがモンスターの姿はほとんど見当たらず、ナミのような戦闘好きのプレイヤーには少し物足りなく感じられていたようだ。そんなていもあって少し気が緩んだ様子でぼやきながら森の中を進んでいたナミだったが、何かピアノ線のような固い糸の切れるような音がしたと思うとナミの背後右斜めの方向から勢いよく矢のようなものが放たれて来た。陣形の中央から皆のことを見守っていたレミィが慌てて声を上げたのだがナミの反応が間に合わず矢が直撃してしまうと思われたその時、レミィの後方から影のようなものが通り過ぎていったと思うと一瞬にしてナミの背後まで迫った。そして皆が気が付いた時にはナミのすぐ後ろで木の影から放たれたと思われる矢を受け止めたバジニールの姿があったのだった。


 「ふぅ〜……危ないところだったわね。今のゲイルドリヴルの言ってた森に張り巡らされた罠って奴でしょうね。モンスターがいないからって気を抜いて歩いてちゃ駄目よ」

 「ご、ごめんなさい……、危ないところを助けてくれてありがとう……」


 危機一髪矢の直撃を回避できたナミであったが、自分を助けたバジニールに対して礼を言ってはいたものの少し戸惑った表情を浮かべていた。やはり昨日の談話で少しは打ち解けたとはいえまだ共にパーティを組んでいることに抵抗があるのだろうか。そして今放たれた矢はバジニールの言っていた通りゲイルドリヴルの話ていた偵察隊の報告にあった罠だろうが、ここに罠が設置されていたということはいよいよこの森に潜むと思われる敵の警戒ラインに入ったということなのだろうか。


 「ふっ……、私になんかに助けられて複雑な心境って感じね。別にそんなに戸惑った顔しなくても同じパーティのメンバーなら当然の行動でしょ。それに陣形の先頭を務めるあなたにこんなことで倒れられちゃ困るのはこっちの方だしね」

 「わ、分かってるわよっ!、そんなことぉっ!。私だって同じパーティを組んでるメンバーに対してそんな疑った目を向けたりはしないわっ!。助けてくれてどうもありがとうっ!。次からは罠に掛からないよう気を付けますっ!」

 「ふふっ……」

 「………」


 自分に助けられたことへのナミの対応を見てバジニールは何やら不敵な笑みを浮かべて陣形の右側にいたリアへと視線を向けた。どんなにパーティの連携を取り繕っても所詮は皆自分の考えや感情が大事……、まるで今のナミの態度が昨日リアが言ったことへの当てつけであるとでも言いたげな様子だった。確かに今のナミの態度はとても助けられたことに対して心から感謝しているようには思えなかったが……。


 「う〜ん……そうか。あの木になってる実もそこに生えてる苔みたいなもの特に僕達が実用的に使えるような効果はないのかぁ〜。特別に錬金術の素材になりそうなものもないし……。一応簡単な回復役とかの素材にはなるだろうけどなんでもかんでもアイテム化できるからって漁って取ってばかりいたら森の生き物達に悪いし何か特殊な効果を持ったものが見つかった時だけ採取するようにしよう」


 そんなナミとバジニールとやり取りがあった中ナギは陣形の左の方をナミが罠に掛かったことなど気付いていないかのように端末パネルの画面をジッと見ながら歩いていた。どうやらた辺りに採取できるアイテムがないか探しているようだったが、罠の発動に気付かない程夢中になるとはナミと同じで気が緩み過ぎてるように思うのだが……。


 「ふぅ〜……、全くナミの奴はすぐ気を抜き過ぎだにゃ〜。確かにモンスターの姿は見当たらないけど罠が沢山あることは事前に会議で知らされてたのににゃ〜」

 「……あの実も駄目。……この実も駄目か」

 「にゃ〜、ナギもそう思……ってにゃぁぁぁーーーーっ!。それ以上進んじゃだめにゃぁぁーーーっ!、ナギぃぃっ!」

 「えっ……!」

 

 “ピッ!”

 

 「ちっ……!」


 “サッ……バッ!”


 デビにゃんがナミの気が緩み過ぎであることにナギを同意を求めようと声を掛けたのだが、そのナギもナミと同じどころか端末パネルの画面に夢中になって目の前に張られた糸にまるで気付かずに足を掛けようとしていた。慌ててデビにゃんがナギに向かって叫んだのだが、時すでに遅しでナギは足を糸に引っ掛けそれと同時にナミの時と同じように糸が切れる音と共にナギに向かって矢が放たれて来た。罠が発動してからの発射までも時間も放たれてからの矢のスピードもかなり速く、誰も罠に反応出来ず今度こそナギに直撃してしまうかと思われたのだがまたしてもバジニールが忍者のような素早い動きでナギの元に移動し矢を受け止めてしまった。ナミの時は余裕のある言葉を口にしていたバジニールだったが、流石にナミに注意した直後に罠に掛かってしまったナギに対しては激昂してしまうのであった。


 「ちょっとあんたぁっ!。ついさっきそっちの子が罠に掛かったの見てなかったのっ!。ボケぇっと端末パネルの画面なんて見てないで少しは周囲に注意を払って歩きなさいよっ!」

 「ご、ごめんなさい……。全然モンスターを見かけなかったからつい油断して……。でもありがとう、バジニールさん。僕の為にそんなに必死なんて助けに来てくれて」

 「えっ……べ、別に私は必死になんて……。あっちの女の子にも言ったけど助けたのはこんな罠なんかで同じパーティのメンバーに倒れられたらこっちが困るからよ。あんただってどんな嫌いな奴が相手でもパーティを組んでる以上協力するのは仕方ないことでしょう。そんなの別にゲームじゃなくても世間で生きていく為に誰もがやってることよ」

 「そうだね……。でも例え仕方無くやってることだとしても助けてもらったことにはちゃんと感謝しないと……。それにしてもさっきは凄いスピードだったね。デビにゃんの声が聞こえて矢が飛んでくるのを見た時僕もう自分でも駄目だと思っちゃったよ。よくあんな一瞬で移動してあの矢を受け止めることができたね」

 「これでも一応格闘士っていう武闘家と軽業師を掛け合わせた上級職に就いてるからね。DEXとAGLの値が高いから反射神経や動体視力がいいのよ。他の職業のステータスじゃ罠に掛かってから反応するのはちょっと難しいでしょうね。……それよりあんたの方こそなんで端末パネルの画面が見ながら歩いてたの。まさか今頃になって任務の為のアイテムの確認なんてしてたんじゃないでしょうね……」

 「い、いや……。ちょっと森の中に役立ちそうな木の実や薬草なんかがないかなって……。まぁ、どれも何の変哲もないものばっかりでわざわざ採取するようなものは見つからな……っ!。ってそんなこと言ってたら何か今までと違う反応の木の実があったぞ。えーっと……、あそこに実ってる青と黄色の木の実みたいだ」

 「にゃあ?。……っ!。……ってにゃぁぁぁーーーーっ!。あれはぁーーーっ!。ちょっと待ってるにゃぁぁーーーっ!、ナギぃぃぃーーーっ!」

 「で、デビにゃんっ!」


 端末パネルの画面に夢中になっていたことをバジニールに注意されていたナギだったが、その時端末パネルの画面にこれまで木になっていたものとは違う木の実の反応があった。どうやら近くの木になっていた青と黄色の木の実のようだが、その実を見たデビにゃんが豪く驚いた反応を示したと思うと慌ててその実のなっている木をよじ登っていき木の実を取ろうとした。何か珍しい効果のある木の実だったのだろうか。木の実を取ったデビにゃんは木から飛び降りると喜びの表情を浮かべてナギの元へ駆け寄って行った。


 「にゃっ……、こ、これは……おおっ!。やっぱりそうにゃっ!。……ナギぃぃーーーっ!」


 “バッ……ダダダダダダッ!”


 「どうしたの、デビにゃん。もしかしてその二つの木の実珍しいものだったの」

 「そうにゃっ!。青の方が知恵の実、黄色の方が敏捷の実っていうにゃっ!。知恵の実は食べると一時的にINTの値が、黄色の実は食べるとAGLの値を上昇させることができるにゃ。錬金術で薬品に加工すれば更に効果を高めることもできるけど……、このまま食べてもそれなりの値は上昇させてくれるにゃ」 

 「へぇーっ!、そんな珍しい木の実が見つかるなんてラッキーだね。……でも二つとも僕が貰っちゃっていいのかなぁ〜」

 「にゃぁーーっ!。ナギが見つけて僕が取って来たんだからナギがそんなこと気にしないでナギが貰っとけばいいのにゃぁーーーーっ!」

 「そうそう。リーダーの私から見てもそれはナギ君が取っておいて問題ないと思うよ。もし皆で分けないといけない時が来たらちゃんと私が皆に指示を出すからナギ君は気にしないで」

 「そう……あっ!、そうだっ!。それならさっき助けて貰ったお礼にどっちか一つをバジニールさんにあげるよ。はい、知恵の実と敏捷の実、どっちでも好きな方を選んで受け取って」

 「にゃぁっ!」

 「えっ……べ、別にいらないわよ……、お礼なんて……。さっきも言ったけどあんた達を助けたのは同じパーティメンバーの私に迷惑が掛かるからよ。そうじゃなかったら別にあんた達みたいなお人好しの連中のことを気に掛けたりしない……。それよりあんたの方こそあの会議の一件以来私のことをよく思ってないはずじゃないの……」

 「確かにリアやマイさん、それに僕の仲間モンスターのデビにゃん達NPCに対して酷いことを言ったのは許せないけど……、パーティメンバーのことを信じて戦わないといけないのは僕も一緒だからね。だから自分の感情に固執しないで助けてもらったことへの感謝の気持ちをちゃんと持たないと……。じゃないと真に皆と連携を取ることはできないよ。バジニールさんだってそのことが分かってるからあんまり好意を持ってない僕やナミのことを助けてくれたんでしょ」

 「……っ!」


 先程のナミとは違い助けてくれたことに対して純粋に感謝している態度を示すナギにバジニールは動揺を隠せずたじろいでしまっていた。同じパーティメンバーとして当然のこと……。同じ意味のあるような言葉を口にした二人であったがその言葉が相手に伝えようとしていることは正反対のものであった。どちらが正しいと感じるかは人それぞれであろうが、ナギの発した言葉の方がよりその思いがこもっており相手を圧倒していることはバジニールの様子から見て取れた。もしかしたら自分の取った行動の裏腹にはナギと同じ思いや考えがあったのかもしれない。今のナギの言葉と昨日のリアの言葉……、その二つがバジニールの心と思考に大きな途惑いを生じさせていることは間違いなかった。


 「ナギ……そうね。あんたの言う通りだわ」


 “ダダダダダダッ”


 「な、なによ……。あんたまで急に私の方に寄って来て……」

 「はい、これは私が最初の討伐大会の時に貰ったヴァイタル・リリースって魔法の封印された魔術札。これを使えば自身の生命力の力が解放されて一定時間の間全てのステータスの値を数十%以上上昇させることができるわ。その後魔法の副作用で一定時間の間今度は全てのステータスの値が少し減少した状態になっちゃうんだけど……、さっき助けてもらったお礼にこのカードをあんたにあげることにするわ」

 「なっ……!」


 なんとナギに続いてナミまでもがバジニールに自身の持つアイテムをお礼として手渡そうとして来た。予想外の事態に更にたじろいでしまうバジニールであったが、果たして二人のアイテムを受け取るのだろうか。


 「くっ……ふざけないでっ!」

 「……っ!」

 「私は他のプレイヤーを信じたりなんかしないわっ!。信じずに戦わなければならないからこそ最低限の連携だけ取ってあげてるだけよっ!。あんた達お人好しの友達ごっこなんか付き合うつもりはこれっぽっちもないわっ!。そんなアイテムなんていらないからとっとと私の前から消えてちょうだいっ!」

 「………」


 声荒げて激昂するバジニールにナギ達はどう言葉を返していいか分からず結局アイテムを手渡せぬままその場を離れるしかなかった。バジニールはナギの言葉に動揺する自分を必死に否定したかったのだろうが、バジニールの行動にはその言葉や態度とは裏腹にナギ達と同じく仲間への思い遣りといったものが少しでも混じっていることは周りにも明かであった。リアの言う通り自分は本当は他の存在を思い遣りそして信じて生きていたいのかもしれない……。バジニールは生まれて自分の本質というものに目を向け始め、そして今までの自分はその本質に沿った行いをして来たのか疑問を持ち始めていた。


 










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