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finding of a nation online  作者: はちわれ猫
第十一章 緊急招集っ!、北の森でモンスター大量発生っ!
72/144

finding of a nation 69話

 「……着いたぞ。ここが俺達猫魔族の長老のいる場所だ」

 「うっわ〜っ!、すっごい大きな入り口だね。なんか中に入る門の前の左右に廊下が広がってて宮殿かなにかみたい」

 「その廊下はこの大マタタビの樹の縁を一周して繋がっている。そしてその門の中の樹の幹の部分が全て長老の住む場所であると同時に俺達猫魔族のやしろとなっているんだ」

 「ほぅ……。やはり長老とはその者達の住処で最も厳かな場所に住むものなのだな。つまりは長老はその者達にとっての神、もしくは神の意志を組み取って一族の皆に伝える代行者のような存在なのだろう。猫魔族のリーダーであったナイトや我々の国の女王であるブリュンヒルデさんとの偉大さとはまた一線を画す存在なのだろう」

 「ヴァルハラ国にもブリュンヒルデさんとは他にオーディンっていう崇拝すべき神がいるみたいだしね。猫魔族の神様はバステトっていったっけ。……でも一つに国に2人も神様がいて大丈夫なのかなぁ」

 「さぁな。だがそんなこと俺達が一々気にしていても仕方無い。さっきそこの黒猫も言ってたが国の体制についてはブリュンヒルデさんに任せて、俺達はこんな与太話を終わらせてとっとと中に入るぞ」

 「う、うん……。分かったよ」

 「にゃぁぁぁーーーっ!。だから自分だって黒猫だってにゃぁぁぁーーーーっ!」


 大マタタビという大木のほぼ天辺の辺りまで登って来たナギ達はくり抜かれた大木の中へと入り、長老のいる間へと入る為に門の横にあったインターフォンのようなものを鳴らした。どうやら事前に来客の予定のある者しか通れないことになっているようだが、そこは猫魔族の元リーダーであるナイトがいた為何の問題もなく素通りできたようだ。そして“ギギギッ”っと大きな軋む音を鳴らしながら長老の間へと入る為の巨大な門が開き始めた。


 「ようこそ、猫魔族の社へ。社の中は神聖な場所となっている為どうか神を敬う気持ちを持って慎まやかに行動なさってください」

 「くださいなのにゃっ!」


 門の扉が開くと淑やかな雰囲気の長い黒髪の女性とリディと同じくピンク色の体をしたフェアリーキャットと思われる猫魔族が出迎えてきた。どうやらこの社の管理と事務のような仕事をしている者達らしい。


 「あ、あれ……。ここは猫魔族にとって神聖な場所なのに僕達と同じ人間の人がいるよ。流石にプレイヤーじゃなくてヴァルハラ国の住民NPCのようだけど……」

 「確かに働き手とはいえこのような場所にまで自分達と違う種族の者を入れるとは驚きだな。だがそれはそれだけ我々のヴァルハラ国の住民達と猫魔族達の関係が上手くいっている証拠。我々にとっては嬉しいことのはずだ」

 「その通りにゃっ!。これも全部ナギ達が僕達猫魔族を暖かく迎え入れてくれたおかげなのにゃっ!」

 「……早く長老のところにいくぞ」


 門の中へと入ったナギ達は長老のところに向かう為正面の入り口から真っ直ぐ中央に向かって伸びた廊下を進み始めた。どうやらこの社は樹の縁に先程ナギ達を出迎えた事務員達の働く施設がいくつかあるものの、長老のいる中央の間まではこの長い一本道の廊下が敷かれているだけだった。ナギ達が進んでいる途中も廊下には分かれ道や何かの部屋の扉と思われるものは一切見当たらなった。そして5分程度ナギ達が廊下を進むとついに長老がいると思われる部屋の扉が見えてきた。


 「……よし、あの扉を潜れば長老の間だ。長老は気さくなお方であまり尊大な態度を取らないが一応最低限の礼儀はわきまえるようにな」

 「う、うん……」

 「(猫魔族の長老かにゃぁ〜……。ナギに会うまで群れで行動したことない僕には今一実感が沸かないけどそんなに凄い奴なのかにゃぁ〜。例え自分の種族の長であっても僕にはナギ以上に尊敬できる奴なんていないのにゃ)」

 「よし、じゃあ入るぞ」


 “ギギッ”


 ナイトと共にナギ達は扉の中に入るとそこには天井の高さが何百メートルもありまるでドームの中のような広大な空間が広がっていた。当然部屋の中の壁や床は全て樹の幹となっているのだが、樹の天辺だから天井にはマタタビの樹の葉や実が生い茂っておりその隙間からささやかな日の光が差し込んできていた。元々美しい光沢のある樹の幹と相まって何とも幻想的な風景を漂わせていたが、雨の日の対策などはできているのだろうか。


 「……お久しぶりです、長老」

 「……っ!。おおっ!、ナイトか。これは久しぶりじゃのぅ。無事固有NPC兵士になれたと聞いとったが今日はどうしたんじゃ。確か今ヴァルハラ国は北の森のモンスター達の対応追われてお主も駆り出されているはずじゃ……っとその後ろの方々はもしや……」

 「ああ。俺達猫魔族をこのヴァルハラ国に迎え入れて貰うきっかけを作ってくれた伊邪那岐命、それにその仲間プレイヤーであるセイナ・ミ・キャッスル、あとおまけの黒猫だ」

 「だれがおまけにゃぁーーーっ!。だからいい加減お前も黒猫だってことを自覚しろってにゃぁーーーっ!」


 そのドームのような空間の中央にある樹の幹を削ってできた椅子に猫魔族の長老と思われる人物は座っていた。体長や体格はデビにゃんやナイト、他の猫魔族達とほぼ変わらず、全身を真っ白な毛で覆われた所謂白猫のような姿をしていた。どうやら純白の猫という意味のスノー・ホワイト・キャットと呼ばれる種族であるらしい。右手にはデビにゃんのネコノテヤリと同じく先端が猫の手の形をした、こちらはネコノテヤリとは違い手の指の部分が招き猫のように内側に曲げられていたが、ネコノテ杖を携えており、如何にも長老であるかのような成熟した仕草を取っていた。


 「ほほぅっ!。やはりあなたがあの伊邪那岐命さんじゃったのかっ!。いつか我々猫魔族をヴァルハラ国に迎え入れてくれるよう取り計らってくれた礼を言わねばならんと思っとんたんじゃ。こちら出向かねばならぬところを態々お越し頂いて申し訳ない。改めてあの時の礼を言わせてもらいます」

 「そ、そんな……。僕は偶々あの森でナイト達と居合わせただけで……。ブリュンヒルデさんに報告したのも一般のプレイヤーとして当然のこと……」

 「いやはや。お主はそう仰るがその当然のことをしてくれないプレイヤーの方がどれだけいることか……。その居合わせたプレイヤーがモンスターと見ればなりふり構わず倒してしまうような浅はかなプレイヤーだったり、もしくは我々が移住を求めていると知って虐殺してしまうような残虐のプレイヤーであったりすれば今のこの我々の豊かな生活はなかった。それどころか早々にこのゲームから退場することになっていたじゃろう。お主だけでなく真にゲームを愛し我々NPCと対等接してくれるプレイヤーには皆わし等は感謝しとるのじゃよ」

 「長老さん……」

 「……して今日は態々このような場所までどのような用件で来なさったのじゃ。どうやらナイトが案内して来たようじゃがお主はわしにナギ殿を会わせる為だけにここまで登ってくるような殊勝な行動を取る奴ではあるまい」

 「ちっ……!。やはり長老には何もかもお見通しか。実は今俺達はブリュンヒルデさんからある重大な任務を仰せつかっている。その任務を果たす為……いや、その任務の一環として今このヴァルハラ国であらゆる準備を整えてるところなんだ」

 「ほぅ……」

 「それで今日俺を除くこの3人は新たな職業への転職を済ませたところで、その職業に合った武器を求めてここへ来たんだ。ついでに俺にも何か役に立ちそうなアイテムを貰えるとあいがたい」

 「なるほどのぅ……。恐らくその任務とは北のモンスター達の出現を止める為のものなのじゃろう。折角ヴァルハラ国にて我々猫魔族の安寧の地を手に入れたと思っとったのにそんなモンスターの大群なんぞに滅ぼされたとなればたまったもんじゃないわい。早く対処せんとこれから先のヴァルハラ国の発展に関わるかもしれんしこれは協力せんわけにはいかんのぅ。……して、お主らの新しく転職した先の職業とは一体どのようなものなんじゃ」

 「あっ……はい。僕は魔物使いから魔獣術士を目指して魔術師に転職しました」

 「私はすでナイトが就いている騎士を目指して槍術士だ」

 「僕は戦斧士だにゃぁっ!」

 「そうか……。では奥の倉庫から何か使えそうなものはないか探して来るからここで待っておれ」

 「わ、分かりました……」

 「………」


 ナイトからの話を聞いた長老はすんなりと頼みを受け入れこの巨大な間の奥に見える扉の方へと向かって行った。扉の数は3つ、左右2つの扉はこれまでと同じくマタタビの樹の材木を加工して作られたもののようだったが、中央の扉のみ白銀掛かった光沢のある金属か何かの素材で作られていて、扉の縁には2本の金の細い線とその間に真紅の太い線がある装飾が施されていた。また扉の上には金の光沢のある素材、恐らくこれも金属で作られた猫魔族の顔の彫刻のようなものも施されていて、左右の2つの扉とは明らかに豪華と思われる作りになっていた。長老はその扉の中の一番右の扉へと入っていったのだが、その様子を見たナイトは何故か浮かない表情を浮かべていた。


 「……ほれ、ちょちょっと倉庫の中を明後日使えそうな物をアイテム袋に入れてきたぞ。いまそこにアイテム化して出すから少し離れておれ」

 「は、はぁ……」


 “パァァ〜〜ン”


 「……っ!。うっわ〜っ!。すっごい量のアイテムの山だよ、デビにゃんっ!。剣に斧に杖、それに薬品から素材になりそうなものまで色々あるみたい」

 「にゃっ!。これなら僕達の新しい職業に適した武器も一つくらいは見つかりそうだにゃっ!」

 「ほほほっ!。まぁ、どれも倉庫の中に眠っておったガラクタばかりじゃから使い物になるかどうかは分からんがのぅ。わし等にはほとんど不要と言ってもいいものばかりじゃからなんなら全部持っていっても構わんぞ」

 「ええっ!。流石にこんなに沢山貰っちゃったら悪いですよ。僕達はブリュンヒルデさんから支度金も渡されてますから必要な分だけ頂かせてもらいます」

 「うむ。ガラクタと仰ったがどれもれっきとしたアイテムとしての効果を備えているはず。ヴァルハラ国の内部にいればそうそう危険な目に合うこともないかもしれないがいざという時に猫魔族の皆に役立てる為しっかりと保管しておいた方が良い」

 「それにいくらなんでもこんなに沢山僕達のアイテム袋の中に入らないのにゃ。素材アイテムはともかくとして装備品や消費アイテムなんかにはちゃんと所持制限が設けられているいるからにゃ」

 「そうか〜、別に遠慮せんでもいいんじゃがのぅ〜」


 奥の倉庫から戻って来た長老が持って来たアイテムをアイテム化するとナギ達の前に大量のアイテムの山が出現した。武器から薬品まで様々な種類のアイテムが織り交ざっており、どうやらナギ達の新しい職業に適した装備も見当たるようであった。だが大量のアイテムを目の前にして喜びを露わにしているナギ達に対し、ナギ達をここへ案内して来たナイトは一人浮かない表情を浮かべていた。


 「………」

 「どうしたのだ、ナイト。折角長老がこんなにもアイテムを持って来てくれたというのに一人で物騒な顔をして……。まさかこのアイテムの内容に不満があるというのか。確かにすでに騎士であるお前にとっては役不足の装備品しかないかもしれないが、それでも先程お前が言っていた戦闘で有効になりそうな消費アイテムなどは沢山含まれているのだぞ」

 「いや……、別にこのアイテムの内容に文句を言うつもりはないんだが……。やはり宝物庫のアイテムは取り出しては貰えなかったようだな」

 「……宝物庫?」

 「ほほっ。どうやらお主はもしかしたらわしが宝物庫のアイテムを取り出してくることを期待してナギ殿を連れて来たようじゃな。ナイトの言う宝物庫とはあの真ん中の銀の扉のことじゃ。あそこには先祖から代々伝わる我々猫魔族の文字通りお宝と呼べるようなアイテムが保管されてるんじゃが、流石にナギ殿とて今の段階であのアイテムを渡すことはできんのぅ」

 「そ、そんなに凄いアイテムがあるんですかぁっ!」

 「そうじゃよ。アイテムのランクでいうと大体Aランクぐらいのものばかりじゃかのぅ。武器や防具、先代の猫魔族の猫錬金マスターの調合した薬や猫魔族秘伝の術技が記された巻物とかもあったかのぅ」

 「猫魔族秘伝の術技にゃっ!。それは是非僕としては頂きたいものだにゃっ!」

 「ほほぅ。わしもあげたいのは山々なんじゃが、今の段階で渡してしまうとゲームのバランスを崩壊させてしまうものばかりじゃからもっとゲームが進行してからでないといくら我らの好感度を高めよと渡すことできんのぅ」

 「そ、そうなのかにゃ……」


 どうやら3つの扉の真ん中の部屋にはここに置かれたアイテムより一段と貴重なアイテムが保管されているらしい。ナイトが浮かない表情を浮かべていたのはもしやその中のアイテムを取り出して貰えるかもと思っていたかららしい。


 「仕方無いよ、デビにゃん。長老さんだってゲームの中のキャラクターなんだからそのバランスを崩壊させるようなことはできないよ。僕達が今までゲームを楽しくプレイできたのは絶対にゲームの中のルールを破らないNPCさん達のおかげなんだから。……でもよく考えたらこの世界の人や動物達は皆僕達同じく自分の意思を持ってるんだよね。それなのにきちんとゲーム内のルールをきちん守れてるってことはやっぱり僕達人間より精神やモラルが進化してるってことなのかな。僕達が長老さんの立場になったらきっとそんなルールなんて守らずに勝手に気に入ったプレイヤーに宝物庫のアイテムなんかをあげちゃうよ」

 「まぁ、わし等は意思があるといってもゲームのキャラクターとして逸脱した行動が取れないようしっかりARIAに管理されとるからのぅ。お主らの世界の人間等が皆ルールを守らず自分勝手に行動するのはわし等にとってのARIAのような全てを管理・監督するのに相応しい人物を見つけられておらんからなんじゃ。わしだってARIAによる制御がなかったらゲームのバランスなぞ無視して猫魔族の恩人であるお主に宝物庫のアイテムを渡してしまっていたかもしれんし、他の者達もプレイヤーに対して必要以上の好意を抱いて接したり、嫌いなプレイヤーに嫌がらせをしてこのゲームから排除しようとする者、場合によってはわし等NPC同士でお主らの世界の紛争のように勝手に争い始めたりするかもしれんからのぅ」

 「は、はぁ……。それってやっぱり僕達の世界でいう総理大臣や他の政治家達のことなのかなぁ。確かに僕達の世界の政治家達はあんまり皆から信用されてなくてその国の人々を上手く纏めらてない気はするけど、それでもそんなゲームのプログラムに他の存在の意思や行動を制御するのは無理なんじゃないかなぁ……」

 「ほほっ、そんなことはないぞよ。わし等にとってはプログラムじゃがお主達の世界にもちゃんとそれに代わるものが用意されておるじゃろう。ちょうど今お主達がこの“finding of a naton”、そしてその他のゲームで築き上げようとしている信頼や絆というものがな。それらを深めていけばARIAによってプログラム、管理されたわし等より調和のとれた世界を創り出すことも可能じゃろう」

 「長老さん……」

 「おおっ!、さっきまでどんなに凄い奴なのかと疑っていたけど流石僕と同じ猫魔族の長老っ!。ブリュンヒルデちゃん以上に深みと説得力の言葉だにゃっ!」

 「そうだね、デビにゃん。それじゃあ長老の期待に応えて他のヴァルハラ国のプレイヤーの皆と北のモンスターの討伐を完了させる為にも早く貰っていくアイテムを決めよう。作戦会議ではちょっと不穏な空気になっちゃったけど、皆で一丸となってこの任務をこなすことができればきっと互いの考えを分かり合えるようになるよ」

 「う〜んにゃ……。ナギの言うことは最もだけど流石にあのバジニールとかいう奴とは仲良くなれそうにないにゃねー……。でも早くこの任務を完了させないといけないことは向こうも分かってるはずだし最低限の協力ぐらいはしてやるかにゃ。よーしっ!、そうと決まれば僕も新しい職業の戦斧士の武器になる斧を……ってにゃっ!」

 「ど、どうしたの……、デビにゃん」

 「さっき長老はナイトは宝物庫のアイテムを出して貰えるかもしれないからナギを連れて来たって言ってたにゃ。っということはにゃよ……」

 「………」

 「にゃぁぁぁぁーーーっ!。お前始めからナギと一緒に来れば自分もアイテムを貰えることを期待して僕達をここへ案内したってことだにゃぁーーーっ!。ナギの猫魔族の好感度が高いことを利用して自分もアイテムにあり着こうなんて親切な振りしてなんて厚かましい奴なのにゃぁーーーっ!」

 「別に厚かましいことなどない。お前達と出会わずとも俺は元々ここに来るつもりだったし、この程度のアイテムなら別に俺が固有NPCになったことを知ればすんなり用意してくれただろう。だがどうせなら次の作戦を共にするお前達の装備の強化にも協力しておいた方が良いと思っただけだ。宝物庫のアイテムのことが気になっていたの事実だがな」

 「にゃ、にゃぁ……。まぁ、そう言われてみればその通りな気が……」

 「そうだよ、デビにゃん。ナイトは猫魔族のリーダーだったんだから。僕達だってナイトと出会わなかったからここに来ることもなかったわけだし、それに僕達だけだったらあの門の受付の人も通してくれなかったかもしれないよ」

 「た、確かにナギの言う通りだなにゃ……。僕としたことがあいつへの対抗心のあまり心が懐疑的になってしまってたのにゃ……」

 「さぁ、それじゃあ早くアイテムを選ぼう。欲しいアイテムが被ったからってナイトと取り合いしちゃ駄目だよ、デビにゃん」

 「にゃぁぁぁーーーっ!。僕はそんな心の狭い奴じゃないにゃぁぁーーっ!。僕の器が大きいのもあるけどなんたって僕にはナギっていう超優秀なご主人様がついてるんだから別に良さげのアイテムの一つや二つ譲ってあげても全然問題ないのにゃっ!」

 「そうか。ならばアロマタタビの樹のエキスは有難く俺が頂いておこう……」

 「にゃぁぁぁーーーーーっ!。やっぱりちょっと待つにゃぁぁーーーーっ!。そのアイテムだけは同じ猫魔族として易々と明け渡すことはできないのにゃぁぁーーーっ!。ここは公平にジャンケンで決めるにゃぁぁーーーーっ!」

 「くっ……確かにお前の言う通りだ。いいだろう。ここは恨みっこ無しのジャンケンで決着をつけてやる」

 「にゃぁぁーーーーっ!、絶対負けないにゃぁーーーっ!。最初はグー……」

 「ふふっ。何だかんだ言っても互いに同じ猫魔族だって自覚はあるみたいだね、二人共」


 どうやらデビにゃんとナイトは早速長老が持って来たアイテムを取り合ってジャンケン勝負を始めたらしい。最初はナイトに譲ると言っていたデビにゃんが血相を変えて前言を撤回していたところを見るとアロマタタビの樹のエキスとは猫魔族達にとって喉から手が出る程手に入れたいアイテムらしい。その後ナギとセイナも自分達の役に立ちそうな装備品や消費アイテムを選び、皆が選び終わった頃には長老の持って来たアイテムの山は半分程の大きさになってしまっていた。そして今回ナギ達が手に入れたアイテムはというと……。



※ナギの手に入れたアイテム


 ・澄水石ちょうすいせきのガラス瓶……ナギの持っているクリアブル・ドラゴンのエキス等と合わせてアルケミー・ソリューションの素材となる。 


 ・猫魔術の手袋……手の甲の面に猫魔族の紋章が入った猫の手の形をした手袋。手の内側の面の肉球を誰かに触って貰うと一時的に装備者のMAGの値が上昇する。またこの猫魔術の手袋を装備している間のみ肉球マッサージという自身以外を対象にできる回復術が使用できる。設定されている物理防御力、魔法防御力の値はそこまで高くはない。


 ・その他消費アイテム


※セイナの手に入れたアイテム


 ・アクチニディア・ウッド・スピア……アクチニディアとはマタタビ属の植物の分類のことで、マタタビやサルナシ、キウイフルーツ等が属している。その名の通りそれらの木を素材として作られた槍で、先端から魔物を誘き寄せる為の甘い香りを発している。効果範囲は半径15メートル程度なので、前衛職の者がモンスター達の攻撃対象を引き付けるのに効果的である。


 

 <アクチニディア・ウッド・スピアの性能>


   武器名 アクチニディア・ウッド・スピア 武器ランクD 品質 81%

    物理攻撃力 132 対応ステータス STR 50% DEX 50% CON 50%

    魔法攻撃力   0

    物理防御力  30 対応ステータス STR 100%

    属性     なし

    重量    0.9キログラム


  

 ・猫魔族の戦士のバッジ……ナイトのような一族の為に戦う戦士として選ばれた者に与えられる猫魔族のバッジ。このバッジを胸につけるとパーティ内の前衛職以外のキャラクター一人につき物理攻撃力が3%上昇する。


 ・その他消費アイテム



※デビにゃんの手に入れたアイテム


 ・ヴァイタルモス・ウッド・アックス……ヴァイタルモスというこけに覆われた木を素材に作られた斧。ヴァイタルの意味する通りこの苔や森林に住む虫や草食動物、その森林の他の植物達の生命力の源となっている。因みにこのヴァイタルモスのヴァイタルモス・ウッドの樹木の樹皮にしか発生することはない。その木を素材として作られたこの斧もまた装備者に強い生命力を与え、装備者のHPとRESを上昇させる効果がある。


 <ヴァイタルモス・ウッド・アックスの性能>


   武器名 ヴァイタルモス・ウッド・アックス 武器ランクD 品質 73%

    物理攻撃力 121 対応ステータス STR75% VIT75%

    魔法攻撃力  30 対応ステータス VIT100%

    属性     なし

    重量    0.7キログラム

    備考    装備者のHPとVITの値を5%上昇させる。


 ・その他消費アイテム



※ナイトの手に入れたアイテム


 ・アロマタタビの樹のエキス……ネコ科の動物や魔物、特にデビにゃんやナイト達猫魔族の大好物であるアロマタタビの樹から取れた樹液エキス。そのまま使用して回復効果と一時的なステータスの上昇が見込めるが、猫魔族であるデビにゃん達が自身に使用すれば特に高い効果が得られる。また猫錬金によって錬成できる様々なアイテムの素材にもなる。


 ・その他消費アイテム




  


 「ふぅ〜、これで皆アイテムを選び終わったみたいだね。必要な消費アイテムも大分補充できたしこれならもうブリュンヒルデさんから持った支度金も必要ないかも。それセイナさんとデビにゃんは一体どんなアイテムを……って結局ジャンケンには負けちゃったみたいだね、デビにゃん」

 「にゃっ……。あそこでグーを出しちゃったのは僕の人生で一番の失敗の経験なりそうだにゃ……。けど目当ての戦斧士の装備は手に入ったからまぁ良しとするにゃ」

 「私も中々良さげな槍が手に入った。これならば槍術士として戦っても剣士であった時とそう変わらない活躍ができるだろう。……ところでナギは魔術師としての武器を選んでいないようだが大丈夫なのか。確か魔術師が装備できそうな杖のようなものはあったはずだが……」

 「う〜ん……、僕もそれは見てみたんだけどどうやら魔術師の初期装備の杖みたいであんまり性能が高くないみたいなんだ。折角持って来てもらった長老には悪いけど僕にはどの職業でも制限なく装備できるアース・カルティベイションがあるし、物理攻撃力だけじゃなくて魔法攻撃力もそれなりに具えているみたいだし別にいいかなって」

 「ほほっ、ならばわしのこのネコノテ杖を持っていくが良い。これはわし専用のユニークアイテムとなっており通常のネコノテ杖より大分性能が高くなっとるから魔法攻撃力だけならお主のアース・カルティベイションを装備している時より高くできるじゃろう。初期状態のままでも装備として使用できる武器は3つまで所持して城の外で行動できるから状況応じて切り替えて戦うと良い」

 「えっ……、でもいいんですか……。こんなに沢山のアイテムに加えてそんな貴重な武器まで貰っちゃって……」

 「ほほっ、確かに性能は高いかもしれんが単にわしが使っとったというだけで価値的は普通のネコノテ杖とそう変わらんわい。代わりの杖もいくらでも用意できるからのぅ。まぁ、猫魔族を迎え入れるきっかけを作ったお主ならば貰って当然の物だと思っておれ」

 「そ、そうですか……。それじゃあ折角ですので頂いておきます」


 特に魔術師として使えそうな武器が見つからなかったナギだが、なんと長老が使用しているネコノテ杖を貰えることになった。その杖はただのネコノテ杖ではなく、“猫魔族の長老のネコノテ杖”というユニーク武器となっており通常のネコノテ杖よりも3割程高い性能となっていたようだ。因みにこのゲームにおけるユニーク武器やアイテムとは種別や形状は通常のアイテムと同じだが、アイテムの効果や性能が異なるアイテムのことを言う。


 <猫魔族の長老のネコノテ杖の性能>

   武器名 猫魔族の長老のネコノテ杖 武器ランクE 品質 98%

    物理攻撃力 3 対応ステータス STR100%

    魔法攻撃力 100 対応ステータス MAG80% CON80%

    属性     なし

    重量    0.4キログラム


 「……これだけの魔法攻撃力のある杖が手に入れば直接戦闘だけじゃなくて魔法をメインとしても十分戦えそうだね。これで僕も一端の魔術師になることができます、長老っ!」

 「ほほっ、では与えられた任務を頑張ってな。困った時があったらまたわしのところに来なさい。お主達ならブリュンヒルデさんからの要請がなくともできる限りの手助けをさせてもらうからのぅ」

 「はいっ!、色々ありがとうございました、長老っ!」

 

 こうしてナギ達は猫魔族の社を後にした。偶然にもナイトと出会ったおかげで思い掛けない量と質のいいアイテムを手に入れたことでナギ達のモンスター討伐の準備はすでに完了したようものであった。その後ナギ達は一度ゲームからログアウトし、ブリュンヒルデの待つ本陣でナミやリア達の合流した。そしてブリュンヒルデの“nations magic”の発動と共に経験値取得為モンスターとの戦闘を開始、あっという間に任務開始までの期間である1か月が経過した。


   

 

 

 


 


 

 


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