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finding of a nation online  作者: はちわれ猫
第一章 ゲームの説明……そしてモンスター討伐大会っ!
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finding of a nation 5話

 デビにゃんと共に再びモンスターの討伐に戻ったナギ達は、マップを更に北上してモンスターの集団の中に突っ込んでいっていた。ナミは相変わらず物凄い勢いでモンスターを倒していたが、果たしてデビにゃんを仲間にしたナギはどうなのだろうか。デビにゃんはモンスターに接近すると道具袋から自分の身長の倍以上ある槍、つまりは通常の長さの槍なのだが、それを取り出してモンスターの集団の前に立ち塞がっていた。だがすぐにはモンスターに向かって行かずナギに何かを要求していた。


 「ナギっ、僕にバーサクミートを食べさせてくれにゃっ!。ちゃんと加工できてない不味い肉でもこの際我慢して上げるにゃ」

 「えっ、でもそれじゃあデビにゃんが混乱しちゃって僕達にも攻撃して来ちゃうんじゃないのっ!」

 「ふふふっ、それが大丈夫なのにゃっ!。猫魔族には特殊な能力があって、バーサク状態になっても自我を失わず混乱状態にもならないのにゃ。勿論ステータスは上昇した状態でにゃっ!」


 デビにゃんはナギに先程モンスター達を同士討ちさせるのに使ったバーサクミートを要求してきた。どうやら猫魔族のモンスター達はバーサクミートを食べても混乱状態にはならず、凶暴化によるステータスアップの恩恵だけ受けられるらしい。もし本当ならかなり強力な特殊能力だが、果たしてどれ程の力を発揮するのだろうか。ナギは少し不安だったがデビにゃんにバーサクミートを投げ渡した。


 「…じゃあ投げるよ、デビにゃん。ちゃんとキャッチしてね」

 「よしにゃっ。“ムニャムニャムニャ…っ!”……うおぉぉぉぉぉぉぉっ…力が湧いて来たにゃ」

 「す、凄い…、本当にバーサクミートを食べても混乱状態になってない…。よーし、行けぇっデビにゃんっ!」

 「ニャァァァァァァァァァッ!」


 バーサクミートを食べたデビにゃんは本当に混乱状態になっておらず、物凄い形相でモンスターの集団の中へと突っ込んでいった。そして華麗な槍捌きで十体近くのモンスター達と互角に戦っていた。デビにゃんの槍の矛先はまるで猫の手のような形をしていて、

デビにゃんがモンスターが向かって行くと同時に矛先の部分から3本の小さい爪のような切先か突き出ていた。どうやらネコノテヤリという猫魔族専用に装備アイテムのようだ。


 「うおぉぉぉぉぉぉっ!、凄いよデビにゃん、一人でそんなに沢山の魔物を相手にするなんて」

 「ニャンッ、ニャンッ、ニャンッ、ニャあぁぁぁぁぁぁんっ!」

 「へぇ〜…、さっきデビにゃんが言ってたこと本当だったんだ。バーサク状態になっても混乱状態にならないなんてかなりレア度の高いアビリティなんじゃないの」


 ナギがデビにゃんの戦いぶりに興奮していると後ろからナミが声を掛けてきた。どうやら先程ナミが突っ込んでいったモンスターの集団はもう全滅させられてしまったようだ。そちらはモンスターが30体近くいたのだが…。


 「へっへ〜、そうでしょ……ってナミっ!。もしかしてもうさっきのモンスターの集団片付けちゃったの………っ!」


 デビにゃんの特殊能力を知って気持ちが高揚していたナギだったが、ナミがもう30体以上のモンスターを倒してしまったと聞いて、一気に気持ちが冷めてしまった。デビにゃんがバーサクミートを食べてようやく10体程のモンスターにと互角に戦えているのに対し、ナミは手を抜いた状態でも余裕で30体以上のモンスターを片付けてしまったのだ。


 「そうよっ、なんかもうレベルも21にまで上がってるし、この辺りのモンスターならもう楽勝ね。多分セイナがモンスターを倒しまくってくれてるおかげなんだろうけど、これじゃあもう討伐数で勝つのは無理そうね…。でもいくら何でもレベル上がりすぎな気がするんだけどなぁ…」

 「………」


 ナミの話を聞いてナギは先程のセイナに渡した大量のバーサクミートのことを思い出していた。恐らく全部モンスターに食べさせてしまったのだろうが、他のプレイヤーに迷惑が掛かっていないかナギは急に心配なっていた。そしてナミの一言によってナギは更に気を落としてしまうのだった。


 「でもデビにゃん…、威勢が良かった割にはそこまで強くないわね…。確かに攻撃力やスピードも上がってるみたいだけど、互角に戦ってるだけでまだ一体もモンスター倒せてないわよ。このままじゃあ数に押されてやられちゃうんじゃないの…」

 「そ、そんな…。ち、違うよ、きっとナミと違ってデビにゃんはまだレベルが低いだけだよ。端末パネルを見ればデビにゃんがいかに凄いかが確認できるはず…」


 ナミにデビにゃんの能力に疑問を持たれてしまったナギは、悔しかったのか端末パネルを開いてナミにデビにゃんの能力を見せつけようとした。だがそこに書かれたデビにゃんのステータスはナミの予測通りかなり低いものだった…。


 「えーっと…、デビにゃんのレベルとステータスは……あったっ!。…現在のレベルが12、STR、VIT、AGIの値はバーサク状態による能力上昇を入れて…36、28、82…」

 「何それっ、バーサク状態になっても私の4分の1以下のステータスしかないじゃないっ!。まぁレベルは私の方が高いけど。やっぱりプレイヤーに比べるとモンスターのステータスは見劣りするわね。まぁ序盤のモンスターだし仕方ないことだけど…」


 デビにゃんのステータスはバーサク状態による上昇分を含めてもナミのステータスには遠く及ばず、AGIの数値が辛うじて少し高いかなと思える程度だった。それでもナギのステータスよりは高かったが…。実際序盤に仲間出来るモンスターというのは総じてステータスが低く設定されていたため、ナミはやっぱりと言った感じで特に落胆もしていなかったようだ。だがナギは受け入れないようで、端末パネルを隈なく見て何とかデビにゃんのいいところはないか必死に探していた。


 「くっそ…。デビにゃんに限ってこんな事あるはずがない。きっとどこかに凄い能力が隠されいるはずだ。………あぁーーーーーーーーっ!」

 「な、なにっ!。一体どうしたのっ!」

 「これを見てナミっ!、なんとデビにゃんは僕達と同じように職業に就けてるんだよっ!。ほら、ここに槍術士って書いてある。しかも僕達と同じように他の上級職に転職していけるみたいなんだっ!」


 端末パネルを見ていたナギは何を発見したようで、急に驚いたように大声を上げて叫びだした。どうやらデビにゃんについて物凄い特徴を発揮したようで、なんとデビにゃんはプレイヤー達と同じように職業に就いていて、しかもより上級な職業にも転職していけるようだったのだ。


 「本当だ…。そうか、モンスターといっても魔族だから人間の知能も備えてるからプレイヤーキャラの恩恵も受けることが出来るんだ。ヴァルハラ国の特性の恩恵も受けてて槍の攻撃速度が上昇してるじゃない。あっ、しかも内政職と副業の職業欄もあるじゃない。私達と同じく3種類の職業全てにる就けるみたいね。やったじゃないっ、ナギっ!」

 「うんっ!。きっとデビにゃんは育てるととんでもなく強くて便利なモンスターになるんだよっ!。よーし、そうと分かれば気合入れてどんどんデビにゃんを育成していくぞぉ。そして他のどのプレイヤーにも負けない最強モンスターに育て上げるんだ」

 「ニャッ…ニャァーーーーッ!。二人ともそんなことばかり話してないで少しは手伝ってほしいのにゃ…っ!、ニャンっ!、こ、このままじゃ最強モンスターになるどころかヴァルハラ国が建国される前に力尽きてしまうにゃ…」


 ナギ達はデビにゃんがプレイヤー達と同じように職業、それも内政職、副業職も合わせた3つに就くことが出来る知ってかなり興奮して喜んでいた。だが二人が喜んでいる頃デビにゃんは相手のモンスターの数に押されて体力が尽きかけようとしていた。やはり序盤は大した戦力にならなさそうだが、終盤は一気に成長してプレイヤーに匹敵するぐらいの能力を身に着けるのだろうか。 


 「あっ、ごめんねデビにゃん。興奮してテンション上がってたけど…、今はまだ弱いままなのよね。今助けに行くわ。そんな奴ら私だったら楽勝だから。……てぇーーーーーーいっ!」


 ナミはデビにゃんが苦戦しているモンスターの集団い突っ込んでいくとあっという間に全滅させてしまった。やはりまだまだデビにゃんとプレイヤーキャラの差は大きいようだ。


 「ふぅ…、何とか助かったにゃ…」

 「ごめん、デビにゃん…。端末パネルの説明に夢中なってデビにゃんが苦戦してるのにほったらかしにして。しかも僕はデビにゃんの主人だって言うのにナミにばっかり助けてもらって…」

 「仕方ないにゃ…。魔物使いは序盤の戦闘力が他のどの職よりも低いにゃ。他の職に転職したりしてある程度の戦闘力を手にいてるまで戦闘は僕とナミに任せるにゃ」

 「そうよ、パーティを組んでればあんたにも経験値は入るんだし、デビにゃんを仲間したことであんたはもう十分働いたわよ。後は私達に任せといて」

 「う、うん、そう言ってもらえると助かるよ…」

 「それじゃあ今度はあそこに見える森の中に入るわよ。このマップはほとんどが草原地帯になってたからそんなに大きい森林じゃないと思うけど、きっと草原よりは強いモンスターがいるはずよ。そいつら倒して一気にレベル上げちゃいましょ」


 この辺りのモンスターも討伐し終わったナギ達は、今度は近くに見える森の中に行ってみることにした。基本的にMMOでは草原のような平坦な地形よりも、森林や山脈などの起伏とんだ地形の方が強いモンスターが出ることが多かったため、一気に経験値を稼ごうと森の中に向かうことにしたようだ。果たして森の中にはどのようなモンスターが待ち構えているのだろうか。

 



 ナギ達は強いモンスターを探して草原の中に広がる森の中を彷徨っていた。だが確かに強いモンスターは出てくるのだが出現する数が少なくナギ達は思うように経験値を取得できないでいた。


 「はぁ〜…確かに草原に出てくるモンスターよりは手応えあるし経験値も沢山くれるけど、単価が高くても数が少ないからこれなら草原で戦ってた方が良かったわね」

 「そうだね…。しかも茂みの中から飛び出して来たり、毒の追加のある攻撃をしてくる虫型モンスターも多くて何だか戦いずらいね。しかもデビにゃんだとほとんどダメージも与えられないから戦闘は全部ナミ任せだし…」

 「面目ないにゃ…。どうせならもっとステータスの高いモンスターで生まれてくれば良かったにゃ。この姿の方がナギ達が親しみやすいと思ってデビルキャットを選択したんだけどにゃ…」


 どうやらデビにゃんのステータスではこの辺りのモンスターに太刀打ちできず、戦闘は完全にナミに任せっぱなしになっていたようだ。ナギとデビにゃんはナミに申し訳なさそうな態度で後ろから付いて行っていた。


 「別にいいわよ。森の中に入ろうって言ったの私だし…。それに私がいれば結局楽勝だもんねっ!へへへっ」


 ナミのレベルは先程から更に上がり22になっていた。このゲームはどうやら時間の経過によって敵モンスターのレベルが上昇していくようで、ゲームが開始されて一日目の状態ではほとんどのモンスターのレベルは一桁台、それもレベル5を超えないことがほとんどだったようだ。すでにレベルが20を超えているナミに太刀打ちできるモンスターはゲーム内で2,3週間ほど経過しなければ出現しないだろう。


 「うん…、ちょっと待って。辺りから複数のモンスターが近づいてくる反応があるわ…。それもかなり数が多いっ!。って言うかもう完全に囲まれているわっ!」

 「えっ…、そんなさっきまでマップには何も反応はなかったのに…」

 「きっとステルスの値が高いモンスターなのにゃっ!。森の中のモンスター総じてステルスの高いモンスターが多く、完全に接近してくるまでマップに反応が表示されないことが多いにゃっ!」


 どうやらナギ達は気付くと周囲をモンスターの大軍に囲まれてしまっているようだ。目で確認することは出来なかったためかなり小型のモンスターだと思われるが一体どんなモンスターなのだろうか。集団で行動するモンスターは一体一体のステータスは高くないが知性が高く確実にプレイヤーに対して有利な状況で攻撃を仕掛けてくることが多い。もうこの辺りのモンスターは楽勝だと思っていたナミだが、流石にこの状況は不味いと判断し、ナギ達の前に立って周囲を警戒しながら臨戦態勢を取っていた。


 「どこから攻撃を仕掛けてくるか分からないわ。警戒を怠らないでね、ナギ、デビにゃんっ!」

 「わ、分かったよ…」

 「わ、分かったにゃ……うんっ!。でも待ってにゃっ!。何だか僕このモンスター達の会話してることが聞こえてくるにゃ。ちゃんと内容が分かる状態で」

 「えっ…それって一体どういう…」

 「…っ!。待って、正面から何か出てくるわ…。一体だけで出てくる気みたいだけど、一体どういうつもりなのかしら…」


 周囲を囲っているモンスターについてデビにゃんが気になることを口にした。ナギはどういうことかデビにゃんに確認しようとしたが、その時茂みの中からそのモンスター達の一体が出てくるのだった。


 “ガサガサッ…”

 「ニャっ……」

 「…っ!、あ、あの姿は…」

 「ぼ、僕と同じデビルキャットにゃっ!」


 なんとナギ達の前に姿を現したのはデビにゃんと同じデビルキャットだった。そしてそのデビルキャットは一人でナギ達の目の前まで来るとデビにゃんに向かって何か話し始めた。


 「ニャンッ……ニャニャニャニャニャッ……ニャン…」

 「な、何て言ってるの…デビにゃん…」

 「なんでお前は人間達と一緒にいる…、人間はこの土地に城を建築して自分達の住処を壊すつもりなのに…って聞いてるにゃ」

 「えっ…じゃあこの周りの反応のモンスター達って…」

 “ガサガサッ…”

 「み、皆デビルキャット…、いや、少し違うのも混じってるけど皆猫魔族であることは間違いないよ…」


 どうやらナギ達の周りを囲っていたモンスター達は皆デビにゃんと同じ猫魔族だったようだ。デビルキャットの他には妖精のように可愛らしいピンク色のフェアリーキャットや、水中を泳ぐのが得意な青色のアクアキャット、戦闘が得意な黄色のタイガーキャットなどがいた。どうやら自分達と同じ猫魔族であるデビにゃんが人間といるのが気になって話し掛けてきたようだ。


 「うわぁ…デビにゃんの仲間が一杯…。でも住処を壊すって事はやっぱり私達の事敵だと思ってるのかな…」

 「ちょっと待っててにゃ。魔物使いの仲間になったモンスターは自分と同じ種族のモンスターに人間の言葉を話せるようにできるのにゃ。今ナギ達と話が出来るように説得してくるにゃ」


 デビにゃんは一番初めにナギ達の前に出てきた群れのリーダーと思われるデビルキャットに近づき、ナギ達と人間の言葉で会話するよう説得した。どうやらそのデビルキャットもナギ達と話がしたかったようであっさり了承したようだ。


 「お前達この辺りに城を造るつもりなんだろ。俺達はこの森に住んでる猫魔族だが討伐するつもりなのか」

 「えっ…、ま、まぁそうなんだけど…。なんて答えればいいのかなデビにゃん…」

 「どうやらこれは猫魔族を討伐するかそれとも自分達の国に迎え入れるかを決めるイベントのようなのにゃ。きっと魔物使いの職業の人が猫魔族のモンスターを一体仲間にすることが発生条件にゃ。取りあえず城は建てるつもりだけど猫魔族は討伐する気はないって答えるにゃ」


 どうやらこれは魔物使い限定のイベントのようで、デビにゃんを仲間にしたことで発生条件を満たしていたようだ。ナギがデビにゃんに言われた通り答えると猫魔族のリーダーはヴァルハラ城を建築後に自分達の住処を確保してくれるならナギ達の国に加わってもいいと提案してきた。猫魔族を自国に迎え入れれば城を建築後の城下町に猫魔族が住むための地区が建設されるらしく、施設を建築するための敷地を消化してしまうが猫魔族を自国に迎え入れることにより様々な恩恵が受けられるようだ。


 「俺達は元々そこまで凶悪な種族ではなく、自分から人を襲ったりすることはほとんどないし人間達とも共存できるはずだ。当然お前達の国住処を作らせてくれるならお前達の国に協力して働くことを約束する。だけども俺達も住処を追われるわけにはいかないのでもし断るなら戦うことになる。多分相手にならないだろうが…」

 「そ、そんな…。僕達だってデビにゃんと同じ種族のモンスターと戦いたくないよ…」

 「そうよっ!、皆可愛らしいし一緒に住んでくれたら私達の国の住民達も喜んでくれるわよ。だからあなた達を討伐するつもりなんてないから安心してっ!」

 「でもお前達がいくら受け入れると言っても国のトップが了承しないと意味がない。もしお前達の国のトップが俺達を討伐すると決定したら嫌でも戦うことになる…」


 ナギ達は当然猫魔族達を自分達の国迎え入れようとしたがそれには国のトップであるブリュンヒルデの了承が必要だった。ブリュンヒルデなら恐らく了承してくれるだろうが、もし拒否すればナギ達は猫魔族を討伐せざるをおえなくなる。ナギ達は少し不安に思いながらブリュンヒルデに連絡してみることにした。


 「大丈夫にゃ。ブリュンヒルデちゃんならきっと優しく迎え入れてくれるにゃ。さっ、早く端末パネルでブリュンヒルデちゃんに連絡するにゃ、ナギ」

 「う、うん…、でも女王様ってやっぱり忙しいんじゃないのかな…。連絡しても出てくれなさそう…。他のプレイヤー達も何かしらの連絡はしてるだろうし」

 「心配しなくても大丈夫にゃ。連絡する時に端末パネルに伝達事項の内容を入力するとゲームの監視システムが自動でその内容の重要性を判断して高いものから順にブリュンヒルデちゃんに繋いでくれるにゃ。今回のはかなり重要な案件だからすぐに通信を繋いでくれるはずにゃ。逆に重要度の低い案件だと自動で通信が遮断されてしまうにゃ」

 「な、なるほど…、じゃあちょっと通信を掛けてみるか…」


 ナギは少し緊張した面持ちで端末パネルからブリュンヒルデに通信を掛けた。デビにゃんの言う通りこの猫魔族を迎え入れるという案件は自国にとってかなり重要な案件らしく、すぐに通信が繋がった。通信が繋がると端末パネルの画面にブリュンヒルデの綺麗な顔が映り、ナギは顔を赤面させてしまっていた。


 「……もしもし、こちらブリュンヒルデです。あなたは伊邪那岐命ですね。重要度Aランクの案件で連絡を下さったようですが、一体何があったのですか」

 「あ、あの…それがその…。あっ、僕のことはナギでいいです…」

 「は、はぁ…、ではナギ。一体何があったのですか」

 「もうっ、何自分の自己紹介なんてしてんのよっ!。ブリュンヒルデさん困ってるじゃない。ちょっと貸してっ!、私が説明するからあんたは黙ってなさい」


 ナギがブリュンヒルデの美しさにたじろいでしまい声を吃らせて全く関係のないことを話していると、ナギの姿を見て煩わしくなったナミが背後からナギを押しのけてブリュンヒルデとの通信に割り込んできた。


 「あっ、もしもしブリュンヒルデさん。私ナギとパーティを組んでいる伊邪那美命って言います。ナミって呼んでください。実はナギの奴がこのデビにゃん…、デビルキャットを仲間にしたことであるイベントが発生したんですけど…」

 「自分だって自己紹介してるじゃないか…」


 ナギを押しのけてブリュンヒルデとの通信に割り込んできたナミは丁寧にデビにゃんを仲間したことから猫魔族のイベント発生までの経緯を説明した。ナミの説明は非常に分かり易く声もはきはきしていたためブリュンヒルデも聞きやすそうだった。ナミの説明のかいあってブリュンヒルデはすぐにこちらの事情を理解したようだった。果たして猫魔族たちは無事ヴァルハラ国に受け入れてもらえるのだろうか。そしてナミは自分もちゃっかり自己紹介をしてブリュンヒルデに少しでも名前を覚えてもらおうとしていた。このゲームにおいて国のトップのプレイヤーに印象を強く残すことは自国内での地位を確立する上で重要なことなのかもしれない。


 「なるほど…、事情は分かりました。一応こちらで猫魔族についてのデータを調べてみたのですが…、結論から言いますとこちらとしても是非受け入れたい提案でもあります。よくこの良イベントを発生させてくれましたね。ナギ、ナミ、そしてデビにゃん」

 「い、いえ…、私は只自分達の国に少しでも尽くそうとしただけです。そのようなお褒めの言葉を頂き、誠にありがとございます。これからもヴァルハラ国の為に尽力を尽くしていく所存であります」


 どうやら猫魔族を引き入れることは自国にとっていい影響の方が大きいらしく、ブリュンヒルデも是非このイベントの内容を受け入れたいようだ。ブリュンヒルデから賞賛の言葉を貰ったナミはこれはチャンスだと思い、かなり謙虚な姿勢で言葉を返し自らの功績をアピールしようとした。だが今度はそれを見たナギが通信に割り込んできて、必死にこのイベントを発生させたのは魔物使いである自分の功績だと猛アピールした。


 「あっ!、自分ばっかりアピールしてずるいよ、ナミっ!。ブリュンヒルデさん、このイベントが発生したのはデビにゃんを仲間したこの僕のおかげです。きっとこんな事もあろうかと皆敬遠しているであろう魔物使いの職を自ら選んだんです。ここにいるナミは武闘家でこのイベントの発生とは何も関係ありません」

 「なっ!、何調子に乗ったこと言ってるのよっ!。あんたなんて私がいなけりゃ一生デビにゃんと向かい合ったままで仲間にすることなんて出来なかったくせに。それに何が自ら魔物使いの職を選びましたよっ!。自分の職業の第1希望すら決められなくてたまたま魔物使いになっただけの優柔不断な情けない男のくせにっ!」

 「なんだよっ!。数少ない魔物使いのいいところなんだからこういう時ぐらいアピールさせてよっ!。ナミはこれから戦場で一杯活躍できるじゃないか。この業突張り女っ!」

 挿絵(By みてみん)

 ナギとナミはブリュンヒルデの前で自らの功績をアピールしようとして喧嘩を始めてしまった。不遇職と言われている魔物使いの職に就いたナギの気持ちも分からなくはないが、ナミは関係ないと言うのは言い過ぎだろう。それにこのゲームの性質において魔物使いはむしろ優遇職と言えるのかもしれない。だがナギとナミの口喧嘩は止まらず、更に隙を見てデビにゃんまでもが背中に付いた小さな羽で端末パネルの前まで飛び、ブリュンヒルデに対して自身のアピールを始めてしまった。


 「ブ、ブリュンヒルデちゃん…。二人はあんなこと言ってるけどこのイベントが発生したのは正しくはこのデビルキャットことデビにゃんのおかげなのにゃ。今はまだステータスは低いけど最終的にはナギ達のようなプレイヤー達より凄い仲間モンスターになって見せるにゃ。だからブリュンヒルデちゃんもあんなプレイヤー達よりも僕のことを…」

 「(ブ、ブリュンヒルデちゃん…っ!)」

 「あぁーーーっ、ちょっとデビにゃんっ!。あんた何モンスターのくせに私達を差し置いてアピールなんてしてんのよっ!」

 「ほ、本当だっ!。ひ、酷いよデビにゃん…、こういう時は主人である僕のことをもっとアピールしてくれないと…」

 「ちょっと、主人だからアピールしろってのはずるいんじゃない。デビにゃんが仲間になったのは私のおかげだし、何より二人がここまで生き残れてるのは私のおかげでしょ。だからデビにゃん、こんな頼りにならない主人のことより私の事アピールしときなさいっ!」

 「にゃっ!、二人共酷いにゃっ!。モンスターにだって人権はあるのにゃ。仲間になった以上僕達も人と同等として扱うべきにゃ。僕だってブリュンヒルデちゃんにアピールしてもっとお近づきになりたいのにゃっ!」


 なんと今度はデビにゃんを含めた三人で大喧嘩を始めてしまった。画面の前で大声で怒鳴り合いを続けるナギ達を見てブリュンヒルデはあまりの不作法な振る舞いに呆気に取られてしまい言葉を失ってしまっていた。


 「お、おほんっ…、心配せずとも三人の貢献にはそれぞれちゃんと感謝しております。功績ポイントもしっかり配布されますので少しは気を落ち着けてください。勿論デビにゃんにもポイントは配布されますの安心してくださいね」

 「…っ!、やったにゃあっ!。よ〜しっ、これからも功績ポイントを一杯貯めて絶対ブリュンヒルデちゃんの側近まで上り詰めて見せるにゃ…」

 「わ、私達もごめんなさい…。ついいきなり女王様とお話しできたからって舞い上がちゃって…。お見苦しいところを見せて申し訳ございませんでした…」

 「申し訳ございませんでした…」

 「いえいいんです。それにこのゲームの役職や官位、レア度の高いアイテムなどの配給は、ゲーム内で加算された自国に対する貢献度ポイントを元に決定いたしますので、そんなにムキになって私にアピールせずとも大丈夫ですよ。まぁ少しは私の一存決められる範囲もありますが…。それより猫魔族リーダーの方とお話してこの提案を承諾する旨をお伝えしたいのですが…」

 「あっ、そうだった。すっかり忘れてた…」


 こうしてブリュンヒルデと猫魔族の間で受け入れ協定が結ばれ、ヴァルハラ国建国後はその首都となる第1本城に猫魔族の住む地区が作られることになった。協定が決まったことにより、この地域の猫魔族達は皆ヴァルハラ国の仲間ということになり、すぐに現在行われいるモンスターの討伐に参加し各方面に散って行った。


 「ふぅ…、何とか上手くいって良かった。デビにゃんの仲間達と戦うなんて流石に気が引けちゃうからね」

 「そうよね〜、あんな可愛いモンスター攻撃するなんて絶対に出来ないわよね〜。特に乙女のような純情な心を持つ私には」

 「(さっき何の躊躇もなく僕を上空に蹴り飛ばしたの一体どこの誰だったかにゃ…)」

 「三人共ご苦労様でした。それで猫魔族を仲間にした際の我が国に対する効果なんですけども、こちらの方で纏まったデータあるのですが、ご覧になりますか。もし閲覧するならそちらの端末にデータを送りますが…」

 「あっ、はい、是非お願いします。どんな効果があるのか楽しみだね、デビにゃん」

 「にゃんっ!」


 そしてブリュンヒルデから猫魔族についてのデータが送られてきた。自国の一員として猫魔族を迎えれた場合にもたらせる影響はこれだ。



 ※猫魔族を引き入れた際に自国にもたらせる影響

   猫魔族が入国したことにより人口が増加…他の国民達と同じように自国の為に働いてくれる

   自国全体の錬金術のレベル上昇、猫草薬草・マタタビ草・レッドブルーム草の栽培・流通が可能

   錬金術師が猫錬金のスキルを習得可能…錬金術によって作成できるアイテムが増える

   バステト像の建造が可能、バステト教の信仰が可能、バステト教の宗教施設が建造可能

   キャットハンズ制度の採用可能(猫魔族達が他の国民のありとあらゆる仕事をサポートする)

   猫魔族か街に滞在することにより自国の国民の幸福度が上昇

   低確率で雄三毛猫の猫魔族が出生…自国の市場が活性化し収入が増加

   猫魔族の兵団が編成可能…通常の兵団より移動・索敵・隠密能力上昇、奇襲成功時の相手の兵団の混乱状態の延長


 

 「以上が猫魔族の方々が我々の国に入国した際に得られる恩恵です。自国の領内に猫魔族の方々が住む居住区を作らねばなりませんが、それを差し引いても有り余る恩恵を受けられるでしょう。特に国民の幸福度の上昇は国を営む上でかなり重要なことです。恐らく猫魔族の方々の愛くるしい姿が人々を幸せな気持ちにさせるのでしょう」


 ブリュンヒルデから送られてきた猫魔族データを見る限りかなり優秀な効果を自国にもたらしてくれるようだ。因みに猫魔族のように特殊な効果はないがマップのマスの中には普通の人々が集落を作って暮らしている場合もあり、それらの場合は無条件で自国に取り込むことができ、初期の人口の値にプラスされるようだ。猫魔族のように特殊な効果はないが他にいくつかの集落を発見し、ヴァルハラ国への移住が決まっているらしい。城の建築予定地の外のマスで集落などを発見した場合も自国の傘下に取り込むことができ、城下町に移住してもらうかその集落に残ってもらうか選択することが出来る。基本的に自国の城の人口を増やすために移住してもらった方がいいが、そのマス内に大量の石材や木材の産出地、特殊な資源などがある場合はその場に残ってもらい集落を拠点に変えて運用した方がよい。


 「ふ〜ん…、じゃあ猫魔族を仲間に出来たことってかなりラッキーなことだったんだ。さっきはあんなこと言ってごめんね、ナギ。やっぱりあんたが魔物使いになってくれていて助かったわ」

 「ううん、こっちこそさっきは酷いこと言ってごめん。ナミがいなかったら僕今頃いきなり戦死しちゃってたよ。一人でも余裕でモンスターを討伐してたのに僕のことを心配して戻って来てくれたんしょ。わざわざありがとうね、ナミ」


 先程まで喧嘩していたナギとナミだったがどうやらブリュンヒルデの言葉と猫魔族の特性がかなり良かったことで落ち着きを取り戻し仲直りできたようだ。


 「ふふふっ、どうやら仲直りできたみたいですね。折角お似合いのカップル何ですからこれかも二人仲良くお国の為に頑張ってくださいね」

 「な、なんですってぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

 「な、なんだってぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

 「えっ…、もしかして恋人同士ではないんですかっ!。お二人の名前を見ててっきりそうだと思ったのですが…。勘違いとはいて失礼なことを言ってしまい申し訳ありません。……では私はこれで失礼しますね。あと少しでモンスターの討伐も終了しますので、皆さん最後の力を振り絞って頑張ってください。それでは…」


 ブリュンヒルデは最後に激励の言葉を送って通信を切った。だがナギとナミはそんな事よりブリュンヒルデに恋人に間違えられてしまったことに衝撃を受け放心状態になってしまっていた。


 「……わ、私達って恋人同士だと思われたのね…」

 「う、うん…、まぁこんな名前付けてるんだから今考えれば当たり前のことなんだよね…」

 「もうっ!、あんたが調子に乗って変な名前付けるからよっ!。これじゃあ他のプレイヤー達からも何て思われてるか分からないじゃないっ!。いくら何でもあんたと恋人同士だなんて間違えられるなんてごめんだわ。あんた、今すぐログイン画面に戻って名前を変更して来なさいよっ!」

 「なっ…やだよっ!、僕はずーっとこの名前でMMOをプレイしてきたんだから今更変えたくないよっ!。そっちこそ名前変えてきなよ。大体僕の名前を見つけて喜んで声掛けてきたのそっちじゃないかっ!」


 ブリュンヒルデに恋人と間違えられたせいでナギとナミは再び喧嘩を始めてしまった。…っというかブリュンヒルデだけでなく多くのプレイヤーがナギとナミのキャラ名を見て恋人同士でプレイしているのだと勘違いしていただろう。この時代のMMOはかなり主流になっており、恋人同士や夫婦でプレイしている人も多かったので特別目立つわけではなかったが、それでも全然関係ない異性と恋人と思われてしまうのには抵抗はあるだろう。だが逆に必死になって否定し合っている二人の態度を見ていると満更その気がないというわけではないように見える。もしかしたら将来的に本当のカップルになっているかもしれない。


 「も〜二人とも夫婦喧嘩ばかりしてないでモンスターを討伐しに行くにゃ。早くモンスターの討伐を終わらせてブリュンヒルデちゃんの為にヴァルハラ国を建国するにゃ」

 「だ、誰が夫婦喧嘩よっ!。言っときますけど私だってずっとこの名前使ってただけで、ナギに声掛けたのだって本当に私と対になる名前があって嬉しかっただけで、別に変な感情何て全然持ってないんだからねっ!」

 「でもそうやってムキになって否定したり喧嘩ばかりしていると余計恋人っぽく見えるにゃ。全然関係ないんだったら名前のことなんて気にしないで堂々とプレイするにゃ。他のプレイヤー達だって別にナギ達が本当カップルだろうがそうでなかろうかほとんど気にしてないにゃ。もし間違えられてもちゃんと否定すればいいだけにゃ」

 「うっ……」


 ナギとナミは喧嘩ばかりしていると余計恋人同士に見えるとデビにゃんに突っ込まれて口をつむいでしまった。


 「ぼ、僕は別に名前なんて気にしてないよ…。ただナミが名前変えろって言ってきたからそれっだったらそっちが変えろって思っただけ。別にナミと恋人に間違えられようが全然気にしてないよ」

 「あっ、ずるいっ!。あんただってブリュンヒルデさんに間違えられたとき凄く驚いてたじゃないっ!。私はあんたが気にしてるんじゃないかと思ってそれだったら名前変えたらって思っただけよっ!」

 「だったらもう喧嘩をやめてさっさとモンスターを討伐しに行くにゃ。この最初の討伐はパーティごとに討伐数をカウントして上位のパーティには経験値や貢献度にボーナスポイントが追加されるのにゃ。一気に自国内での地位を確立するチャンスにゃ。味方同士で争うのは良くないけど出来るだけ高い地位に上り詰めなければブリュンヒルデちゃんを優勝に導けないにゃっ!」

 「……そうだわっ!、もうセイナとの勝負には勝てないだろうけどこの序盤のボーナスは出来るだけ多く貰っておきたいわ。そうと決まれば早く討伐に戻るわよ、ナギ」

 「何だか上手くはぐらされた気もするけどその通りだね。このゲームに人類の滅亡が懸っていることを知っているのは僕達だけだし序盤で躓いてるわけにはいかないもんね」

 「おっ、ようやく自覚が出てきたのにゃ。よ〜しっ、それじゃあ張り切って討伐再開にゃっ!」


 こうしてナギ達は再び本城を建築するためにマス内のモンスターの討伐に戻って行った。この最初の全員参加の討伐イベントはパーティの合計討伐数で上位に食い込めば大量のボーナスを手にすることが出来る。猫魔族のイベントなどをこなしていたため思うように討伐数が伸びていなかったナギとナミだが果たして無事上位に食い込んでボーナスを手にすることが出来るのだろうか。そしてナギ達のパーティの期待のエースであるセイナは一体何体程討伐しているのだろうか。ナギ達は最後の力を振り絞ってモンスターを討伐していくのだった。




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