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finding of a nation online  作者: はちわれ猫
第七章 VSアイアンメイル・バッッファローっ!
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finding of a nation 46話

 突如塵童達の前に現れたドラワイズ・ソルジャー。マイにはナギ達の援護に集中してもらう為塵童と数人の下っ端の盗賊達で相手にすることになった。恐らく強力であろうドラワイズ・ソルジャーのステータスにマイは不安を感じながら援護を再開していったが、塵童は自信満々の様子で臨戦態勢に入っていた。一方その頃アイアンメイル・バッファローとの戦闘を継続していたナギ達は、マイからの援護が途絶えたことで雑魚モンスターへの対応が追いつかなくなってきていた。


 「……はぁっ!、……てぇいっ!、……はぁぁぁぁぁぁっ、祈祷弾っ!」


 “バァンッ!、バァンッ!、バァンッ!”


 「はぁ……はぁ……、やっぱり雑魚モンスターもどんどん出てくる……。そう簡単にボスモンスターの相手に集中させてくれんことなんじゃろうけど、さっきから急に数が増えて押され出した気がする……。こんなに頑張ってるのになんでじゃ……はっ!。そういえばマイちゃんの弓矢もさっきから飛んできてない気が……」


 アイアンメイル・バッファローの相手をしているセイナやレイチェル達に対し、ナギ、アイナ、馬子の3人は下っ端の盗賊達と共に周囲にした雑魚モンスターを討伐していた。祈祷師である馬子はナミやデビにゃんのサポートも兼ねていたのだが、マイの援護が途絶えたことにより雑魚モンスターに対応に追われ、とてもナミ達をサポートしている余裕はなかった。今も錫杖で2体のモンスターを薙ぎ倒し、更に祈祷弾を放って飛行能力を持つ小型の鳥と思われるモンスターを撃ち落したところだ。だが全力で対応しているのにも関わらずまるで討伐のペースが追いつかず、そのことに違和感を感じた馬子はマイの身に何か異変が起きたことに気付き始めていた。


 「……っ!。ま、馬子の言う通りにゃっ!。おかげで僕も雑魚モンスターの相手をしなくちゃいけなくなっちゃったにゃ。レイチェル達も大変だっていうのに一体なにやってるのにゃっ!」


 “モオォォォォォォッ!”

 “……ガキィンッ!、……ガキィンッ!、……ガッキィィィンッ!”


 「ぐぅっ……、全くだぜ……。只でさえ私じゃセイナの代わりは務まらねぇってのに……。このままじゃあマジで全滅しちまうぞ、私等……」

 「でぃえぇぇぇぇいっ!、ブロウィン・ウィンドォォォォォッ!」


 “ギャウゥ〜〜〜ン……”


 「もうぉ〜〜〜、私もレイチェルのHP回復ばかりに集中していられなくなったわっ!。……でもこれってもしかしてマイの身に何か起きたってことなんじゃ……。もうっ!、塵童の奴は一体何やってるのよっ!」

 「くっ……、まさか本当にマイが……。でもこの状況じゃシルフィーが疑うのも無理ないわ。……こうなったら自分で確かめるしかないか。お願いだから無事でいてよ……、マイっ!」


 馬子だけでなく他のメンバーもマイの援護が途絶えたことに気付き始め、その不安は一気に大きくなりながらメンバー全体に広がっていった。特に最悪の事態を想定したシルフィーはかなり取り乱した様子で、今アイアンメイル・バッファローの攻撃を受けているレイチェルの回復が覚束無おぼつかなくなってしまっていた。一方冷静ではあったがリアもシルフィーと同じ事態を予測し、不安ではあったがとにかく確認するしか術がなく、塵童とマイ達のいるポイントに向けて遠視を使い始めたのだった。


 「……っ!。良かった、どうやらマイは無事みたいね。皆ぁっ!、マイは無事よっ!、心配しないでっ!。もう援護を再開してくれるはずだから、私達も気を引き締め直して戦闘に集中しましょうっ!」

 「本当にゃっ!。マイの援護があれば百人力にゃっ!。もうこんな雑魚モンスターに手こず……」


 “ヒュイィィィィィィンッ!”


 「おおぉっ!、今の正しくマイの光の魔弓にゃぁっ!。やっぱりマイは無事だったのにゃっ!」


 リアが遠視で確認すると、そこには今にも援護を再開しようとしているマイの姿があった。マイの無事を確認したリアは自身で一安心した後、できるだけ大きな声でマイの生存を知らせ、皆の不安を一気に拭い去った。同時に激励の言葉を掛けることで沈みかけていた士気も持ち直すことに成功した。更にその直後にマイの援護も再開され、雑魚モンスターへの対処が楽になったナギ達は再びアイアンメイル・バッファローとの戦闘に集中し始めようとしていた。だが一時的にマイの援護が途絶えたことは事実であり、頭が働く何人かのメンバー達はマイや塵童達の身に援護を中断せざるおえない何かかが起きたことを確信していた。無論リアもその一人であり、マイの無事を確認した後も遠視を続け様子を探っていたが、また皆を不安にさせまいとこれ以上の情報を話すことはなかった。


 「ふぅ……、なんとかマイが無事でいてくれて助かったわ。だけど援護が途絶えたのには何か理由があるはず……。そう言えば塵童はどうしたのかしら……」


 もう少しの間遠視を続けマイ達の様子を探るリア。マイの周囲に見当たらない塵童と盗賊の頭を探すため視界を移動させると、そこには何者かと戦闘を繰り広げている塵童と盗賊の下っ端達の姿があった。当然相手はドラワイズ・ソルジャーで、塵童はやはり相手の武器であるバルディッシュの長いリーチに苦戦を強いられなかなか懐に飛び込めずにいた。周りの盗賊達も果敢に攻め入ってはいたのだが、バルディッシュの大きな刃先で薙ぎ払われてしまっていた。ソルジャーと言うだけあってパワーは相当なようだ。


 「はあぁぁぁぁっ!」


 “……ドッスゥーーーンッ!”


 「……躱したか。頭が切れるだけでなく戦闘の腕も中々のものじゃないか。その身のこなしから見て職業は武闘家といったところか……」


 一気に盗賊の下っ端を薙ぎ払った後、ドラワイズ・ソルジャーは瞬時にバルディッシュを構え直し塵童に向けて振り下ろしてきた。塵童は武闘家の身のこなしも相まってなんなく躱すことができたのだが、バルディッシュの振り下ろされた地面の周りは草原の植物ごと吹き飛ばされており、ドラワイズ・ソルジャーのパワーの高さを物語っていた。その形状から横に振ることで敵を薙ぎ払う使い方の方が有効でありそうなバルディッシュだが、真の威力を発揮するのはその重量のある刃を思いっ切り振り下ろして敵を両断する時だろう。まさに今ドラワイズ・ソルジャーが放ったような使い方だが、強度の低い武器の柄で防ごうとするものならばそれごと相手を叩き斬ってしまうだろう。


 「ちっ、やっぱりリーチの差は不利か……。それにパワーもかなりあるようだ。こりゃ直撃しようものなら即死ものだな」


 攻撃を躱しこそしたが塵童に反撃の手はなかった。リーチの差は勿論のことながら、これだけ重量のある武器をドラワイズ・ソルジャーはまるで手足と同じように振り回して来ていたのである。そして反応の速さもかなりのもので、懐へ飛び込もうとするものなら逆に斬り伏せられてしまうだろう。塵童もそう感じていたのかなかなか攻撃に転じることができず、今は敵の攻撃を躱すことに徹していた。


 「……はっ!、……はあっ!、……はあぁぁぁっ!」


 “ブンッ!、ブンッ!、ブゥーーンッ!”


 「どうした小僧っ!。さっきから躱してばかりで防戦一方ではないか。どうやら威勢が良かったのは最初だけのようだな」

「ふんっ……、精々今の内にほざいてなっ!」


 躱してばかりで攻撃に転じてこない塵童を見て、ドラワイズ・ソルジャーはこれ見よがしにバルディッシュを振り回してきた。だが勢いに任せて傲慢にはならず、脇を締めてコンパクトに武器を振り、必要以上に大振りにならないよう心掛けなるべく隙を作らないようにしていた。塵童も口では強気な態度を示していたが、内心ではドラワイズ・ソルジャーの決して警戒心を怠らない姿勢に感心させられていたようだ。一方その様子を遠視で見ていたリアは、まさかのドラワイズ・ソルジャーの存在に動揺を隠すことができずにいた……。


 「あれはドラワイズ・ソルジャーっ!。くっ……、まさかあんな奴がマイ達のところに現れていたなんて……。あれじゃあ塵童が苦戦するのも無理ないわ……。皆に知らせて誰かに援軍に向かってもらうべきか……。それとも塵童のことを信じて任せるべきか……」


 “モオォォォォォォッ!”

 “……ガキィンッ!、……ガキィンッ!、……ガッキィィィンッ!”


 「ぐっ……!。おい、リアぁっ!。マイが無事だったのは確かに良かったけどよぉ……、もう私の方が持ちそうにないぜ。いくらマイの援護が再開してもこいつが野放しになっちまったら意味ねぇんじゃねぇのかっ!」


 塵童やマイ達の元にドラワイズ・ソルジャーが現れたことを知ったリアは悩んでいた。当然ドラワイズ・ソルジャーはアイアンメイル・バッファローによって呼び出された雑魚モンスターではなく、塵童にマイの護衛を任せたリアの予想を大きく上回るステータスのモンスターだった。なんだかんだで塵童の実力を買っていたリアだったが、流石に塵童一人でどうにかできる相手ではなくこちらか増援を回すべきかどうか考えていたのだ。だがアイアンメイル・バッファローと戦闘している自分達もとてもマイ達のことを気に掛けている余裕はない。セイナの代わりを務めているレイチェルも攻撃の衝撃に耐えきれず悲痛の叫びを上げていた。すでに限界は近いということだろう……。


 「くっ……、レイチェルの言う通りだわ。今はなんとかしてこの状況を打開しないと……。皆ぁっ!、雑魚モンスターの処理はできるだけ下っ端の盗賊達に任せて、余裕があるようなら全力でこの牛を攻撃してちょうだいっ!。一度こいつの動きを止めないと本気で不味いわっ!。……頼んだわよ、塵童。厳しいかもしれないけどなんとかマイのことを守り切って……」

 「リアのあの様子……。やっぱりマイ達の身に何かあったんだわ。これは急いでこの状況をなんとかしないとヤバいわね……。こうなったらさっき覚えたあの技を使ってみるか……」


 迷ってはいたが、今にもアイアンメイル・バッファローの攻撃に耐えきれず吹き飛ばされそうになっているレイチェルの姿を見て、リアはまずはこの場を打開することが先決だと判断した。塵童達の元にドラワイズ・ソルジャーが現れたことは皆には伝えず、攻撃をアイアンメイル・バッファローに集中させるよう指示を出し、なんとか動きを止めようとした。リアの指示を受けたナギ達は、速やかに今に戦っている雑魚モンスターに対処し、アイアンメイル・バッファローに攻撃を仕掛けてるべく体勢を整えようとしていた。そんな中ナミはいつも以上に深刻なリアの表情と態度から塵童とマイ達の身に何かあったことを悟っていた。そして早急にこの場を打開すべく自身の今使える最大の威力を誇る技を放とうとしていた……。


 「はあぁぁぁぁっ……、祈祷光波きとうこうはっ!」


 “バァーーンっ!” 


 「こうなったら僕も喉が焼け切れるまで猫フレイムをぶち込んでやるにゃっ!。にゃぁぁぁぁっ……、猫フレイム3連弾にゃぁぁぁぁぁっ!。……にゃぁっ!、にゃぁっ!、にゃぁぁぁぁんっ!」


 “バァンッ!、バァンッ!、……バアァーーンッ!”


 アイアンメイル・バッファローを止めるべく、馬子は自身のエネルギーを光の波動に変えて放つ祈祷光波を、デビにゃんは自身の喉を精一杯振り絞って猫フレイムを3連続で放っていき、どちらもアイアンメイル・バッファローに直撃した。だがやはり僅かなダメージしか与えられず、相手の動きを止めるには到底及ばなかった。


 “モオォォォォォォッ!”


 「ううぅ〜……、やっぱり全然効いてへんよ〜」

 「ぜぇ……はぁ……、ぜぇ……はぁ……。ぼ、僕も本気で喉が潰れる覚悟で猫フレイムを撃ったのにこっちを振り返る素振りすら見せないにゃ……。レイチェルはまだ大丈夫なのにゃ……?」

 

 “モオォォォォォォッ!”

 “……ガキィンッ!、……ガキィンッ!、……ガッキィィィンッ!”

 

 「ぐおぉぉぉっ……、だ、大丈夫じゃねぇよっ!。余計なこと喋ってる暇あったらもっと攻撃を叩き込んでくれ……」

 「わ、分かったにゃっ!」


 レイチェルに言われ馬子は祈祷光波を、デビにゃんは猫フレイムを体力が続く限り放ち続けた。自分達の攻撃ではアイアンメイル・バッファローの動きを止めることはできないと悟ってはいたのだが、必死に攻撃を耐えしのいでいるレイチェルの姿を見てはこうするより他はなかった。


 「はあぁぁぁぁ……」

 「……っ!。あ、あれはなんにゃ……。リアの剣が凄い高熱を帯びたように赤く光ってるにゃ。まるでもう一度溶鉱炉で剣を打ち直してるみたいだにゃ……」

 挿絵(By みてみん)

 そんな中喉を枯らし尽くす勢いでデビにゃんが猫フレイムを吐き出し続けていると、溶鉱炉に入れられた鉄のように赤い光沢に包まれた剣を持つリアの姿が目に入ってきた。どうやらスラッシュ・レイピアの剣身にかなりの高熱を帯びているようだ。恐らく何かの技を放つつもりなのだろう。フレイム・スラッシュとは違い火ではなく熱で斬り付ける攻撃のようだ。属性変換率は火属性で変わりないだろうが、フレイムスラッシュのように斬撃を飛ばすことはできないだろう。つまりは相手を直接斬り付ける他ないわけだが、火を纏うより熱帯びた剣での攻撃の方が威力は高そうに思える。リアのこの技に掛ける集中力の違いから恐らくそうなのだろうが、果たしてアイアンメイル・バッファローの動きを止めることはできるのだろうか。


 「……これでなんとか怯んでくれることを祈るしかないわね。はあぁぁぁぁっ!、パイロ・ブレイド・スラッシュっ!」


 “ズバァァァァァァンッ!、……ジュゥゥ……”

 “モッ……、モオォ〜〜〜〜ンっ!”


 リアの放った斬撃はパイロ・ブレイド・スラッシュという魔法剣士の特技だった。パイロとは火を表す言葉であり、よく高温計を意味するパイロメーター等の熱に関連する機械や技術などに接続して使われる。実際にパイロ・ブレイドと呼ばれる道具はないのだが、この場合は熱剣ねっけんとでも訳せばいいのだろうか。つまりはリアの放った技は熱剣による斬撃という意味で、その名の通り斬り付けたアイアンメイル・バッファローの前足に焼け爛れたかのような火傷の跡を残していた。そして前足に走った凄まじい高熱に耐えきれず再び馬が嘶くように前足を上げる仕草を見せるのだった。だがそれは先程のように自分に勢いをつける為にではなく、まさにリアの攻撃に怯んでの行動だった。


 「やったけぇ、リアっ!。あいつを声を上げて怯んどるよ。よっぽどリアの剣が熱かったんじゃね。じゃけど根性焼きでも入れられたみたいでちょっと可愛そうかも……」

 「今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ、馬子っ!。レイチェルは今の間に少しでもいいから態勢を立て直して。他の皆はあいつを完全に怯ませるために全力で攻撃を叩き込むのよっ!」

 「ふぅ……、これでなんとか一息つけそうだな。後はこの間にセイナが復活してくれれば私もお役御免になるってわ……っ!」


 “……モオォンっ!、モオォォォォォォッ!”


 「な、なんだっ!」

 「こ、これは……。皆っ!、すぐにこいつから距離を取ってっ!。ショック・スタンプが来るわよっ!」

 「そ、そんなこと急に言われても……」


 前足を上げて怯んでいる姿を見て一安心していたナギ達。だが次の瞬間アイアンメイル・バッファローは急に気合を入れ直すように荒々しい鼻息をつくと、仰け反るようになっていた体勢を瞬時に整え、怯んで振り上げたはずの前足を勢いよく振り下ろしてきた。なんとそのままライノレックスも使用していたショック・スタンプの特技を放つつもりのようだ。


 「くっ……、流石にこのタイミングじゃ逃げられない……。皆っ!、最初の衝撃とその後くる地面の震動に気を付けてっ!ぐっ……、ぐうぉぉぉぉぉぉっ……」


 “ドッスゥーーーーーンッ!、……ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!”


 「あわわわわわっ……。ちょっとぉっ!、私この攻撃受けるの2度目なんじゃけどっ!。しかもライノレックスの時と同じように足が地面にへばりついて動けへんよぉぉっ!」

 「にゃぁぁぁぁぁぁっ!、僕の足もおんなじにゃぁぁぁっ!。肉球から変に震動が伝わって体が気持ち悪いにゃぁぁぁぁっ!」

 「私は立ってるのもやっとって感じだぜ……。な、なんとかヴァイオレット・ウィンドを支えにして踏ん張ってるけどよ……」

 「ならそのまま踏ん張り続けなさい、レイチェル。体勢が悪くなったり地面に触れてる面積が体の面積が大きくなるほど受けるダメージも上がるから。皆も絶対に震動に負けて倒れ込んだりしちゃ駄目よ」


 アイアンメイル・バッファローの放ったショック・スタンプは、ライノレックスのものと同じく足を踏み付けた周囲の地面に震動を巻き起こした。リア、レイチェル、馬子、デビにゃんの4人は震動に巻き込まれてしまい、身動きが取れなくなってしまっていた。


 「み、皆っ!。このままじゃまずい。なんとかしてあいつに攻撃を止めさせないと……」

 「でも私達の攻撃であの大きなモンスターを怯ませることができるでしょうか……。セイナさんは今ボンじぃさんの治療を受けていますし……。職業上私達はあまり高威力の技を習得できていません」

 「そうよ〜。さっきも私の攻撃じゃあビクともしなかったわ。この震動が終わるまで相手も動けなさそうなのは幸いだけど……」

 「それに僕達は雑魚モンスターの処理もしなくちゃいけないし……。取り敢えずアイナとシルフィーは皆に回復魔法を掛け続けてあげて。周囲のモンスターは僕が対処するから。……あれ?、そう言えばナミはどうしたんだろう。確か皆と一緒にアイアンメイル・バッファローを攻撃してたはずなのに……」

 

 飛行能力を持つシルフィー、そしてアイアンメイル・バッファローから距離があったナギ、アイナ、セイナ、ボンじぃは技の影響は受けていなかった。だが攻撃力に乏しいナギとアイナ、シルフィーではアイアンメイル・バッファローに有効な一撃を入れることはできず、ショック・スタンプの震動で苦しんでいるリア達を静観しているしかなかった。セイナならばこの隙に有効な一撃を入れることも可能だろうが、あいにくまだボンじぃによる回復の最中だった。両手の麻痺を取り除くのに時間が掛かっているらしい。このまま攻撃が止むのを待つしかないようだったが、そんな時ナギがリア達と共にアイアンメイル・バッファローを囲っていたはずのナミの姿がないことに気付いた。本来ならばリア達と共に震動に巻き込まれているはずだが……。


 「うぉりゃぁぁぁぁぁっ!」


 “ダダダダダダッ!”


 「ナ、ナミ……っ!」

 

 ナギがナミのこと気にし始めた直後、アイアンメイル・バッファローの後方から凄いスピードで近づいてくる姿が目に入ってきた。どうやら技を放つ為の力を溜めている間に置いてけぼりにされてしまったらしい。だがそのおかげでショック・スタンプの範囲内に入らなかったのは幸いだった。そしてナミは力を蓄えた右腕の拳をアイアンメイル・バッファローに叩き込むべく更にスピードを上げて突っ込んで来るのだった。


 「うおぉぉぉぉぉっ……」

 「だ、駄目だよ、ナミっ!。どうするつもりか知らないけど今アイアンメイル・バッファローの周りにはショック・スタンプによる震動が巻き起こっているんだよ。どんなに勢いを付けてもその震動に捕まって動きを止められちゃうよ。だから早まった真似はやめてっ!」

 「大丈夫よ、ナギっ!。心配なんかしなくていいわ。絶対こいつをぶっ飛ばしてやるから見ててねっ!」

 「ナ、ナミィィィィっ!」

 

 アイアンメイル・バッファローのショック・スタンプによる震動の範囲は後方にまで広がっていた。実際に地面を踏み付けたのは前足のみであったが関係ないらしい。このままではナギの言う通りナミは自ら震動の範囲内に突っ込んでしまうことなる。ナミのそのことは承知しているようだが決して止まる様子はなかった。ナギには心配するなと言っていたが何か考えがあるのだろうか……。


 「……とぉうりゃぁぁぁぁぁっ!」


 “ダッ……”


 「……ナ、ナミが飛んだっ!」


 震動の範囲内に入る直前、ナミは思いっ切り地面を蹴ってアイアンメイル・バッファローの右の後足に向かって飛んだ。当然震動に巻き込まれないためだが、ショック・スタンプの震動の範囲はアイアンメイル・バッファローの体の中心から直径約100メートル、ナミが飛んだ位置から右後足までは40メートル程の距離があった。現実世界ならば到底飛び越えることは不可能、このゲームの世界でも序盤では運動能力に関するステータスが格別高い職業、更にリアルキネステジーシステムを最大限使いこなしてる者でないと届かない距離であった。だがナミはそんな距離を物ともせず、地面離れた瞬間からすぐに届くと確信できるほど高く飛んでいた。勢いも全く衰えず、30メートル地点でようやく最高点に達する程であった。そして残りの10メートルは少しずつ減速して、ゆったり下降しながら進んでいた。まるでこれからナミが放つ大技の破壊力を予見する嵐の前の静けさのようだった。


 「……これであんたも終わりよ。今まで私の仲間を傷つけた分を万倍にして返してやるんだから。……闘神気功戦術とうしんきこうせんじゅつ羅喉らごの型、……てえぇりゃぁぁぁぁぁぁぁっ!、真空・正拳突きぃぃぃぃぃっ!」


 “ドゥバァーーーーーーンッ!”

 “モッ……!。……モモォ〜〜〜〜〜〜んっ!”


 ナミはそのままショック・スタンプの震動の範囲を悠々飛び越えると、アイアンメイル・バッファローの後ろの右足、大体地面から4メートル程の位置、ちょうど太ももの辺りに思いっ切り力を込めて正拳をぶち込んだ。闘神気功戦術とは、本来味方を癒す為の使う気功術を戦闘神の力を借りて攻撃的なエネルギーに変える術のことである。羅喉の型の羅喉とは、戦闘神として有名な神々、日本では阿修羅といわれている仏の一人のことである。阿修羅と呼ばれる仏は他に3人いて、恐らくこの技の型にもあと3つあるということだろう。そしてここからが本題なのだが……、真空・正拳突きの真空とはそのまま真空状態のこと、正拳突きもそのままの意味の通り拳相手を突く動作のことである。つまりは通常の正拳突きに真空状態による何かしらの効果が付与されるのだろうが、なんとこの技の場合、自身の拳の周囲の空間に真空状態を作り出し、その空間を正拳突きによって直接相手に叩き込むというなんとも凄まじいものなのであった。ナミは見事にこの真空・正拳突きを相手の後足に叩き込み、その直撃を受けたアイアンメイル・バッファローはあまりの激痛に声を荒げて苦しみだしたのだった。


 “モモォォ〜〜ンッ!、モモォォ〜〜ンッ!、……モモモモモモォォォォ〜〜〜〜ンッ!”

 “……ドンッ!、……デンッ!、……ドドドドドドドドドドデンッ!、……ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドンッ!”


 余程の激痛だったのかアイアンメイル・バッファローは完全に地面に倒れんでしまい、まるで赤ん坊のように泣き叫びながらのた打ち回っていた。なにしろ真空状態の空間を体にぶち込まれたのだ。普通なら想像もできない痛みである。真空状態によって引き起こされる現象の一つに鎌鼬かまいたちというものがある。鎌鼬とは日本に古くから伝えられている妖怪、もしくはその妖怪が引き起こす怪奇現象のことである。この妖怪、そしてこの現象に遭遇した者は肉体に刃物で斬られたような鋭い傷を受けるが、痛みもなく、その傷からは出血もなかったと言われている。勿論実際に刃物で斬り付けられたわけでない。この話が何故真空状態と関係あるかというと、実はこの鎌鼬として伝えられている現象は旋風の中心にできる真空に肉体が引き裂かれたのが原因ではないかとの仮設があるのだ。仮説なので実際にこのことが証明されたわけでないが、もしこの仮説が正しいのであれば真空状態に触れただけで肉体を斬り裂かれるのである。もし現実世界でナミの放った技を受けることになれば、体に直接真空状態の空間をぶち込まれるのだ、骨がぺしゃんこになるまで潰される、もしくは空間がぶち込まれた部分の肉体が破裂してしまうのではないだろうか……。ゲームの世界なので実際に肉体に損傷を受けることはないが、それだけの現象の痛みや衝撃の情報を受けているとなればあれ程の巨体を持つアイアンメイル・バッファローがのた打ち回ってしまうのも無理はない。あと真空状態に包まれているナミの右腕が無事なのかという疑問があるが、どうやら気功術で発せられる気によって拳の周りを包み込み真空状態に触れないよう守っているという設定らしい。


 「や、やった……っ!。凄いよ、ナミっ!。あのアイアンメイル・バッファローが悲鳴を上げてのた打ち回ってる。おかげで皆も震動から脱出できたみたいだよ」


 アイアンメイル・バッファローの攻撃が止まったことにより、震動に巻き込まれていたリア達も無事解放されたようだ。皆地面でのた打ち回っているアイアンメイル・バッファローに潰されないようすぐその場を離れたようだ。


 「た、助かったぜ、ナミ……。あのまま震動ダメージを受け続けたらHPも0になっちまっただろうしな。それにしてもこのアイアンメイル・バッファローをここまで苦しませるとはナミの馬鹿力には恐れ入ったぜ」

 「本当じゃけぇ。こりゃますますナミちゃんを怒らせんよう気を付けらんと……。それにしてもこれから今の技を受けることになるかもしれん相手プレイヤーは気の毒じゃね……」

 「ちょっとぉっ!。それだと私が凶暴な女って言われてるみたいじゃない。あくまでゲームの中のことで現実世界じゃ普通のか弱い女の子よ。運動神経にはちょっと自信あるけど……。それに私が使えるってことは他の国の武闘家のプレイヤー達も使えるってことでしょ。馬子は相手のことより自分の心配をしなさいよね」

 「うぅ……、確かにその通りじゃね……」

 

 馬子はナミの放った真空・正拳突きを自身が受けた時のことを想像して顔を引きつらせていた。真空・正拳突きは武闘家の職に就いた者が一番初めに習得する闘神気功戦術である。その為武闘家の職を選択した者ならほぼ全てのプレイヤーが習得することになり、敵国のプレイヤーが使用してくることも十分考えられる。ただし習得するのに比べて実際に技を繰り出す難易度は非常に高く、リアルキネステジーシステムを使いこなしているプレイヤーでなければほぼ間違いなく暴発してしまうだろう。更にナミの程の破壊力を出せるプレイヤーとなるとそうそういるものでない。恐らく最終的に武闘家の職を経験をした者の中で使いこなせるのは1割にも満たないのではないだろうか……。


 「にゃぁぁぁぁっ!。皆、今はそんなこと話してる場合じゃないにゃぁぁぁぁっ!」

 「デビにゃんの言う通りよ。確かにナミには助けられたわ、ありがとう。でも今はアイアンメイル・バッファローとの戦闘に集中しましょう。ナミの攻撃でかなり苦しんではいるみたいだけど、HPはまだ7割程も残っているわ。馬子とアイナは皆の回復を。残りのメンバーはこいつに出来る限り攻撃を叩き込んでちょうだい。この機を逃さず一気にHPを削り切るのよっ!」

 「……っ!。ちょっと待ってよぉっ!、リアぁっ!」


 ナミの攻撃を受け非常に苦しんでいる様子を見せているアイアンメイル・バッファローだったが、そのHPはまだ3割程しか削れていなかった。リアはこの機に出来るだけダメージを稼ごうと皆に攻撃の指示を出したのだが、その直後にナミがいきなり大きな声を上げ、指示を遮られてしまった。これから一気にアイアンメイル・バッファローに畳み掛けようという時に一体どういうつもりなのだろうか。リアは戸惑いながらナミの呼び掛けに答えていった……。


 

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