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finding of a nation online  作者: はちわれ猫
第一章 ゲームの説明……そしてモンスター討伐大会っ!
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finding of a nation 2話

 プレイヤー達の準備も整い、ブリュンヒルデによるゲームの説明が始まった。まずはブリュンヒルデとここにいるプレイヤ達の所属する国、ヴァルハラについての説明がなされた。


 「ではまず我々の所属する国、ヴァルハラについて説明いたします。簡単なデータが用意されているので、皆さん自身の端末パネルを開いてください。今ヴァルハラ国の概要を送ります」


 プレイヤー達が端末パネルを開くとそこにはヴァルハラ国の簡単なデータがあった。だがそこに掛かれているのは国名とその国の特性が掛かれているだけで、人口や兵力、資源などの国力に関するデータは載っていなかった。どうやら全くゼロの状態から国造りを始めるらしい。

 


 文明 ヴァルハラ 女王−ブリュンヒルデ

 文明特性−騎乗時のステータス上昇、軍馬の生産力上昇、弓、槍の生産力上昇、鶏の繁殖力と卵の収穫量上昇、戦死した場合稀に基礎能力上昇更に低確率でエインヘリャルへの転職可能無属性の魔法威力上昇、槍装備時の攻撃速度上昇、弓スキルのクリティカル率・クリティカル時のダメージ上昇

 固有建造物−ヴァルハラ宮、ヴァルハル山、天空牧場、オーディン像、山岳弓訓練場、養鶏牧場、ミーミルの魔法大学

 固有自然遺産−ユグドラシル、ミーミルの泉

 固有生産物−グングニル、スレイプニル、金冠鶏、オーロラメイル、白鳥の羽衣、コールドウッドの大弓・長弓、セーフリームエル、ヘイズルーン

 固有職業−ワルキューレ(ヴァルキュリア)…女性限定、エインヘリャル、ミーミルの魔術師、二槍術士、槍弓兵



 「今皆さんのパネルに映っているのがヴァルハラ国の概要です。槍、弓装備時、騎乗時のボーナス効果に加え、軍馬の生産量も上昇する戦争に強い国家です。また金冠鶏やセーフリームエルなど固有の食糧資源、そして鶏の繁殖力と卵の収穫量が上昇と人口が伸びやすい国でもあります。人口の伸びを生かして兵士を大量に集め、繁殖させた軍馬を与え騎兵隊の大軍を作り、敵国への侵攻と防衛に備えるのが定石でしょう。また建国時に与えられる固有遺産のユグドラシルとミーミルの泉も強力でしょう」


 ブリュンヒルデは自国の特徴をよく理解しており、プレイヤー達はその説明の分かりやすさに感心していた。これならば女王を任せても大丈夫だろうと皆安心していた。ブリュンヒルデは更に説明続けたが、何人かのプレイヤー達はヴァルハラ国の概要の画面とブリュンヒルデの説明を聞いてすでにこの国の欠点について気付いていたようだ。


 「……どうやら戦争時のボーナスが強力そうだが、資金繰りには苦労しそうだな。いくら人口が多くても、兵士を雇うには資金が必要になる。それに生産ボーナスがあるといっても軍馬を増やすのにも金が要るだろう」

 「今この国の長所についてお話しましたが、当然短所もあります。それは商業に関する固有特性がほとんどないことです。金冠鶏は高値で取引できますが、恐らく中盤以降でないと養殖は出来ないでしょう。序盤の資金繰りには苦労しそうですが、運よく金や宝石の資源が見つかれば改善できるでしょう」


 ブリュンヒルデの言う通りこのヴァルハラ国は資金を調達する手段が極端に少ない。国の収入は市場の大きさが一番影響が大きいが、それに関するボーナスが一つもない。他の国には恐らく市場を活性化させる建造物や、宝石などの特殊な加工技術などで高級取引品などがあるだろう。プレイヤー達はブリュンヒルデの説明を聞きながら自分達の国の特徴について考察していた。だがそんな中ナギ達は説明に全くついていけず職業を何するか考えていた。


 「う〜ん…、何か良く分かんないし今の内に戦闘系の職業だけでも何にするか決めとくか。特性を見る限り何かに騎乗できる職業がいいのかなぁ…でも騎乗出来るものって馬だけなのかな、像とかドラゴンとかに乗れたら面白いんだけど…」

 「なにっ、あんた説明聞いてないで職業何にするか決めてんの。まぁ、私もあんまり難しい説明分かんないから自分のなろうと思ってる職業のこと調べてたんだけどね」

 「ナミはもう職業決めてるの。こんなに沢山あるのによく決められたなぁ」

 「戦闘系だけだけどね。でもこのゲーム何だか自分で戦うより兵を集めて戦わせる方が重要みたい。はぁ〜…、私そういうの苦手なんだけどな〜、いつも前衛系の職業で突撃してばっかりだったし…」


 ナミはどうやら自分の選ぶ職業はもう決めているらしい。戦闘系の職業のみらしいがこのゲームにおけるプレイヤー自身の戦闘力はどう影響するのだろう。やはりシミュレーションらしく兵を指揮する能力が重要になってくるのだろうか。ナギ達がそんな事を考えているとブリュンヒルデから次の説明が始まった。どうやら与えられたマップから最初に城を建国する場所を決めるらしい。


 「では皆さん、ヴァルハラ国の説明も終わったところで最初に建国する場所を決めていこうと思います。また端末パネルに私たちの初期配置のマップを送りますのでそちらを開いてください。これは皆さんの意見も参考にさせていただきますので、他のことを考えてる人も一緒に考えてくださいね」

 「げぇっ…、私達が説明ちゃんと聞いてないことに気付いてるみたいよっ…」

 「本当だ…、この広いロビー中で…、かなり視野も広くて目もいい人なのかな…」

 「適当に言ってるだけだよ。こんなに人がいるんだ、説明に退屈して他のことに気を取られる人がいてもおかしくないだろう」


 ブリュンヒルデに自分達が説明を聞いていないことがバレたと思っているナギとナミだったが、そんな事ないとカイルに突っ込みを入れられてしまった。確かにどんなに目のいい人でもこの広いロビーでプレイヤーの取っている行動を視認することは不可能だろう。どうやらこの初期の建国場所を決める作業は重要なことらしく、皆に注目してほしかったのだろう。ナギとナミもブリュンヒルデの言葉に従いパネルに送られてきたマップの画面を開いた。

  挿絵(By みてみん)

 

 「何これ…、ここに表示されているマップのどこかに最初の城を築城するってことっ!。私パスっ、こんなのどこに作ったらいいかなんて分からないわよ。あんた達に任せるわ」


 ブリュンヒルデから送られたマップを見てナミはいきなり匙を投げだしてしまった。そのマップには大陸の一部が表示されており、南側にには海が広がっていた。マップの周囲には白い雲がかかっており、どうやら未開の地となっておりここからは実際にゲームをプレイして探索しなければどのような地形か分からないようだ。マップには六角形のマスが引き詰められており、ゲームを開始する前に無償の本城が一つ与えられるのだが、雲がかかっていない探索済みの地形の中から本城を建てるマスを選ぶらしい。本城の大きさは4マスの大きさで、菱形の形になるように城を建てる4マスを選ばなければならないらしい。


 「なるほど…、最初の本城をどこに建てるかで序盤の展開が大きく変わるってわけか…。マップの北側には山脈があり、その近くに高原が広がっている。南側には海か…、港町を建てられることを考えるとこれはラッキーだな」


 ナギ達の国に与えられた初期マップはどうやら大陸の南側が海に面した部分のようで、半島ような形になっていた。北側には山脈が連なっており、その近くは高台になっており高原が広がっていた。高原の下には森林地帯が多くあり、高台から滝続きに川が通っていた。全体的に少し閉鎖された地形になっており、他国からの侵攻は防ぎやすそうだったが領土を開拓して広げていくのは困難そうだった。


 「ではここで皆さんに最初にどこに城を築城するから意見を頂きたいと思います。端末パネルに解答用の画面が表示されますので、自分が考える立国場所とその理由についてご解答の後私への送信ボタンを押してください。AIが自動的に皆さんの解答の中から初期立地として適正率の高いものをいくつか私の元に表示してくれますので、その中から選ばせていただきたいと思います。またこの解答に選ばれるとゲーム開始時に経験値と功績ポイントにボーナスが入ります。もし選ばれなくても適正率の高さによって少ないですがボーナスも入りますので、皆さんよく考えてご解答ください。今から30分後に自動的に皆さんの解答を回収いたします。

それでは……よ〜い、スタートっ!」


 どうやらゲームの最初のステップは建国場所を決めることのようで、見事自分の意見が建国場所に採用された場合には経験値と功績ポイントにボーナスが入るらしい。功績ポイントとは恐らく自分に貢献することで手に入るポイントのことで、貯まればポイントと引き換えに役職を貰ったり、特別な支給品と交換出来たりするようだ。


 「ええぇ〜…、そんな事言われるとない頭を振り絞って考えなきゃいけなくなっちゃうじゃない…。普段シミュレーションゲームなんてあんまりやらないからな〜。ええいっ、こうなったら適当に決めちゃえっ。多分海の近くがいいのよ、魚も一杯捕れるだろうしお寿司も食べ放題ね。私、毎日大トロ食べよ〜うっと」


 この解答によってボーナスが得られると聞いてナミや他のプレイヤー達も真剣に考え始めた。だがこの解答は立国場所だけでなくその後の領土の拡大の仕方や、その場所を選んだ理由まで詳しく書かなければならなかったため、普段シミュレーションゲームをやらない者にとっては辛い問題だっただろう。因み今ナミが言った回答では適正率はEランクぐらいだろう…。当然選ばれるどころかブリュンヒルデの元へ候補とすら上がらないだろう。


 「やはり川の近くに建国するのがいいのだろうか…、だとすると低地と高地のどちらにするかが問題だが…」


 ある程度シミュレーションゲームの経験があるプレイヤー達は川の近くに建国するべきだと考えていたようだが、それを考えるだけで精一杯でその後の領土の拡大などは一切視野に入れていなかった。それではランクD、高くてもCが限界だろう。そんな多くのプレイヤーが苦戦を強いられる中あっという間に30分が過ぎ、皆の解答がが回収されていった。ナギも時間内に解答出来ていたようだが、一体誰の解答が選ばれるのだろうか。


 「はい、皆さん。30分が経過いたしました。では解答を回収いたしますのでそのまま端末パネルには触れないでいてください。因みにどのような解答が選ばれたかは発表いたしますが、それが誰のものかは公表いたしません。不用意な混乱を避けるためですのでどうかご了承ください」


 当然選ばれた解答の内容は発表されるが、その解答者は公表されないようだ。ゲームが開始されれば功績ポイント以外の情報は全て開示されるが、ゲームが始まるまでは全ての情報は伏せられたままのようだ。序盤に功績ポイントを多く取得した者が知れ渡るとそのプレイヤーが注目されすぎて他のプレイヤーからの嫉妬や羨望で混乱するのを避けるためだろう。


 「では私の方で解答を選ばせていただきますので少々お待ちください…。…っ!、Sランクの解答が20個以上…皆さん優秀なプレイヤーが揃っているようですね。ではこの中から最も相応しいと思われる解答を選ばせていただきます」


 解答の回収が終わりブリュンヒルデが建国場所の選定に入った。急にロビー内が静かになり、何度も自分の解答を見直したり、手を合わせて祈っていたり、皆自分の解答が選ばれるのかドキドキしながら待っていた。


 「……なるほど、決まりました。では結果を発表したいと思います。ゲームパネルの方に選定された方の建国案を送らせていただきますので各自ご確認ください。素晴らしい建国案ですので自分の案が選ばれていないからといって気分を悪くなさらないでくださいね」

 「……頼むっ、俺の案よ…、何とか選ばれていてくれ…っ!。……駄目だ…俺が考えてたのと全然違う…」


 端末パネルに選ばれた建国案が送られてきて皆自分の案かどうか確認した。見るからに自分の案と違うと分かった者は声を上げて落ち込んでいた。これが選ばれた建国案の内容だ。



 

 建国場所は高台の川の右側の付近が良いと思います。北側は山脈、南側は崖と敵国に責められにくく、山脈の上に城塞を気付くことで周囲の索敵と防衛を一度に解決することが出来ます。高原に広がった草原は軍馬の生産に向き、ヴァルハラ国の特性と相まって大量の軍馬が確保できると思われます。また家畜の放牧にも向き、農民達に酪農をさせれば食料も多く確保できるでしょう。領土の拡張はマップの右側がどうなっているかにもよりますが、まずは左ある川を渡り、高台を下に下りていって、海の付近に支城を建設し、周囲に港町を作ります。そして次は北上して高台の下にある森林を切り開きながらまた川を渡り、本城を建てた高台の下の付近の半島の、これも海の付近に支城を作り、周囲に港町を作ります。そして先程の支城と海上交易路を作り、市場を活性化させます。海洋資源の流通も良くなり、人口も更に伸びやすくなるでしょう。自然遺産のユグドラシルはちょうど本城を建てた高台の下の所に配置します。そしてその横にある滝の下にミーミルの泉を配置し、滝壺の役割も果たし川にもミーミルの泉の魔力が浸透するでしょう。



 以上が選定された建国内容だ。これを見たプレイヤー達はその整った建国計画に感心させられていた。皆が建国場所を考えるだけで精一杯だったにも関わらず、この建国案は防衛のための城塞、その後の領土拡大のための支城の築城案まで考えられていた。更に自然遺産の活用場所まで提示されおり、ほとんどのプレイヤーが納得する立案だった。


 「凄い…、自然遺産のことまで考えられてる…。これがSランクの建国案か…、それに比べて私のは……何度見てもEランク…。これじゃあゲーム開始時のボーナスは期待できないわね…」


 ナミは自分の建国案の採点と選定された者の建築案を見てすっかり落ち込んでしまっていた。Eランクとはかなり低い点数で、ゲーム開始時のボーナスもほとんどなかった。ナミは少しでも気を紛らわそうとナギの建国案を見せてもらおうとした。恐らくナギだったら自分と同じかそれ以下の点数だと期待したのだろう。


 「ねぇ、ナギ。あんたの建築案見せてみてよ。後で私のも見せてあげるから」

 「えっ…いいよ。恥ずかしいから遠慮しとくよ」

 「もうっ、いいから見せなさいっ!。……えーっと、何々…適正率97%…総合評価Sランクぅぅぅぅぅぅぅっ!。ちょっとあんたこれ選定されたやつと同じ解答じゃないっ、まさかあんたの解答が選ばれてたのっ!」


 どうせ碌な解答ではないだろうと思いナギの解答を覗き込んだナミだったが、いざ見てみると適正率97%のSランク、何と選定されたものと同じ解答だった。つまりナギがブリュンヒルデに選定された解答者だったのだ。


 「ちょ、ちょっと、あんまり大きな声で言わないでよっ。周りの人に気付かれちゃうじゃないかっ!」

 「うん…、何だ、どうしたんだ、あいつ…」


 ナミに自分が解答された選定された解答者だと叫ばれてナギは慌ててミルの口を塞ごうとした。当然周りのプレイヤー達はその様子を見てナギ達の方に視線が向いたのだが、それはナミがナギが解答者だと叫んだからではなかった。


 「んんーーー…っ!。ちょっと何するのよっ!。心配しなくてもちゃんと個人トークで話し掛けてるわよ。それよりあんたが全体トークで騒いでるせいで周りのプレイヤーがこっちに注目してるわよ」

 「えっ…あっ、そうか。その機能があったんだった。えーっと…個人トークに切り替えるには…」

 「なんだ…、もしかしたらあいつが選ばれたのかと思ったが、どうやら違うようだな。全体トークと個人トークの切り替えも知らない奴があの解答を出来るはずがない。大方点数が低すぎて周りに知られるのが嫌だったんだろう」


 ナミの声を周りに聞かれたと思っていたナギだったが、どうやらそうではなく全体トークに設定して騒いでいるナギを見て、皆こちらに注目していたようだ。中にはナギが怪しいと感じた者もいたが、ナギが全体トークから個人トークへの切り替えに戸惑っているのを見てやはり勘違いだと思ったらしい。ナギが個人トークに切り替えるとカイルも騒いでるのを見てこちらに寄って来た。そしてナギ、ナミ、カイルでグループトークに切り替えた。


 「ええっ、選ばれたのナギだったのっ!。凄いなぁ〜、でもナギってシミュレーションゲーム得意だっけ?」

 「あんまりやったことないよ。三国志シリーズを一作ぐらいはクリアしたことあるかな。実はこの地形僕の父さんが経営してる天川牧場の辺りにそっくりだったんだ。こんなに広大じゃないし、海もなかったけど…。で、僕いっつも自分が牧場の経営主になったらどんな牧場にしようかなぁ〜とか考えてたから、割と町の建造計画の本とか読んだりしてたんだ。それで一度取っ掛かりを掴んだら次々にアイデアが浮かんできて、気付いたらこの解答が出来てたってわけ」

 「…っ!、天川牧場って富士山の近くにあるやつじゃないのっ!。私近くって程じゃないけどあの辺りの地域に住んでるから知ってるわよ。母さんがいつもスーパーで天川牛乳買って来てるもの。あれ美味しいのよね。でもそうか…あれあんたの牧場で作ってる牛乳だったんだ…。ふ〜ん…」


 どうやらナギが自分が牧場の経営主になった時のことを考えて、土地の建造について色々勉強していたらしい。それが影響してあんな建国案を解答出来たようだ。そしてどうやらナミもナギの牧場について知っていたらしく、どうやら近くの地域の住人らしい。そのことを知ったナミは何やらとても嬉しそうだった。


 「ところでカイルは何点だったの。カイルだったらそこそこいい点数叩きだしてるんじゃあ…」

 「「おいおい…、90点以上出してSランク叩きだしてる人にそんな事言われても嬉しくないよ。でもまぁ、折角だし教えちゃおうかな。85%のAランクだよ。ナギと違って高台の下に本城を作った方がいいと思ったんだけど、高台に作って守りを固めた方が点数高かったみたいだね。ところで…、ナミは何点だったの」

 「えっ…私ぃっ!。………い、いいじゃない、別にそんなの…。見せるほどのものじゃないから私はやっぱり見せないでおくわ」


 ナミは予想外に高かったナギとカイルの点数を聞いて、自分の点数を見せるのが恥ずかしくなり何とかはぐらかそうとした。ナギとカイルも流石にEランクだとは思っていなかっただろう。


 「何だよ〜、自分から言い出したくせに〜。いいから画面見せて見てよ〜」

 「うっさいわねっ!。私が見せたくないって言ってるんだからそれで納得しなさいよっ!。それよりあんたの建国案が選ばれたんだからもし勝てなかったらあんたのせいだからね。ちゃんと私達の国が大きくなるよう責任持ちなさいよ、分かったわねっ!」

 「う、うん…、分かってるよ…」


 ナミはナギに自分も見せたのだからこちらも建国案を見せるよう言われると、大声出してナギを威圧して力尽くで誤魔化してしまった。自分の建国案に責任を持つように言われたナギはその言葉に言い返すことが出来ず、すっかり萎縮してしまっていた。


 「あっ、ブリュンヒルデさんから次の指示が出るみたいよ。もう点数のことはいいから、ちゃんと説明を聞きましょう」

 「ちぇっ、上手くはぐらされちゃったな…。まぁいいか、どうせ大したことない点数だろうし…」

 「…っ!。……今何か言った…」

 「い、いえ…、何も言ってないですっ」


 プレイヤー達が自身の解答と選定者の解答を比べ終わり、そろそろ雰囲気も落ち着いて来た頃、ブリュンヒルデから次の作業についての説明が始まった。次はいよいよ職業を選択するようだ。

 「ではいよいよ職業を選択していただきたいと思います。っと言ってもまずは戦闘系の職業だけですが…。それで実は職業の選択なのですが前衛、後衛、補助など、それぞれの役割の職業のバランスを取るためにこちらである程度制限を掛けさせていただいております。なのでご希望通りの職業に就くことが出来ないかもしれませんのでご了承ください。それでは端末パネルの方からご希望の職業を第3希望までお選びください。制限時間はまた30分です。職業が決まり次第まずは最初の城を築城するために、早速城を建設予定の3マスのモンスターの討伐に向かいます。最初の城はモンスターを全滅さえさせれば自動的に出現しますので皆さん気持ちを引き締めて自分の希望する職業を選んでください」


 ブリュンヒルデの説明が終わりゲームパネルの画面で説明を読みながらどの職業を希望するか決めていた。職業を決めた後早速戦闘が始まると聞いてプレイヤー達のテンションは一気に上がっていた。皆職業の説明見ながら自分がその職でモンスターと戦う場面を想像して胸をワクワクさせていた。


 「よ〜しっ…、いよいよ戦闘が始まるのねっ!。さっきまで頭使うシミュレーションの要素ばっかりで退屈で仕方なかったのよね〜。ちゃんと戦闘要素も多いみたいだし、これなら私も一安心ね。さっきの建国案では散々な点数だったけど、ここからが私にとっての本番よ。一気に遅れを取り戻してあげるわ。覚悟しといてね、ナギっ!」

 「やっぱりさっきの点数低かったんじゃないかぁ…。でも僕どうしようかな…。職業なんて全然決めてなかったや。ナミはもう決まってるんだっけ」

 「そうよ、もう第1希望だけ書いて送信しちゃった」

 「はやっ、って言うか第2希望と第3希望は書かなくていいのっ!。……第一希望が駄目なら何でもいいってことか。なんて大胆な…」


 ナミはすでに戦闘系の職業については希望するものは決まっており、思考時間が与えられてから1分も経たずに希望の職を選択して送信してしまっていた。第1希望のみしか書いていないようだが、もし第1希望が通らなかったらどうするつもりだったのだろうか…。


 「よしっ…、俺も決めたぞ。出来れば第1希望がいいが、第3希望までのどれかならまぁいいか」

 「ふっ、遅すぎるぜ…。真のMMOプレイヤーなら自分の心に誓った職があるはずだ。それを選べばいいだけなのだから考える時間など不要というものだ」

 「でももしお前の第1希望が人気で抽選に落ちでもしたらどうするんだよ」

 「………」


 どうやら他のプレイヤー達も続々と希望する職業を選択していったようだ。中にはナミのように開始一分足らずで送信した者もいるようだが、余程熟練したプレイヤーか少し馬鹿なプレイヤーのどちらかだろう。だがすでに時間が5分切っているというのに第1希望すら決まっていないナギよりマシかもしれない。


 「ふぅ〜…、僕も何とか第3希望まで決まったぞ。ナギはもう決まった?」

 「えっ…、あ、ああ…それが…」

 「何っ…あんたまだ決まってないの。……ってまだ第1希望も決まってないじゃない。早くしないと何も希望しないままで送信されちゃうわよ。それだと何の職業になるか分からないけど多分皆があまり選ばない不遇職になっちゃうんじゃないの」

 「分かってるよっ。今決めるからちょっと黙っててっ!」


 ナギはまだ第1希望も決まっていないことに焦ってナミ達を追い払って一人で職業選択画面と向かい合った。ナミとカイルもナギの切羽詰まった表情を見てそっとその場を退いた。どうやらからかわれる余裕もナギにはなかったようだ。だが折角ナミ達が気を利かせてくれたのに、結局ナギは第一希望すら決められないまま制限時間過ぎてしまい、希望なしの状態で回収されてしまった。これでは一体何の職業に就くことになるか検討もつかないだろう。


 「あっ、ああ…、結局何も希望を出せないまま回収されちゃった…。変な職業に就くことになったらどうしよう。きっと皆選ばないような不遇職に就かされちゃうんだ…」

 「なぁにそんなに落ち込んですのよ。いいじゃない完全にランダムプレイって感じでスリルがあって。それに不遇職って大体何かを切っ掛けにいきなり使いやすくなったり、アップデートで急激に強くなったりするじゃない。それにまだ不遇職に就くことに決まったわけじゃないんだし、元気出していきましょ」

 「う、うん…、まぁ優柔不断なの僕が悪いんだし文句言わずにやってみるよ」


 希望をまるで出せずに回収されてしまったことで落ち込んでいたナギだったが、悪いのは自分の優柔不断な性格であったため文句も言えず、渋々出来るだけいい職に就けるように祈ることにした。だがこのゲームのシステム上完全にランダムというわけでなく、不遇かどうかは分からないが他のプレイヤー達から不人気である職業に選ばれるだろう。不人気と言っても完全に新規のゲームで誰もゲームの職業の完全なデーターを持っているわけではないため、皆から選ばれていないだけで実は超優良職ということもあるかも知れない。


 「……よしっと。それでは皆さんの希望が回収し終わったためこれからゲーム内のマップに移動したいと思います。それぞれのプレイヤーの方々は本城建築予定地の4マスのどこかのマップにランダムに飛ばされます。自動的に8人ずつのパーティに振り分けられますので、一緒にプレイしたいプレイヤーの方がいましたら今の内にパーティを組んでおいてください。もしかしたら人数の調整で違うプレイヤーの方とパーティを組むことになるかもしれませんが、このゲームはここにいるプレイヤー達は皆一つの国の仲間です。互いに敬遠し合わずに協力して仲良くプレイしてくださいね。それでは5分後にマップ内へと転移いたします」


 希望の職業の回収が終わり、プレイヤー達はいよいよゲーム内のマップへと移動するようだった。どの職業に選ばれたかはゲーム内に移動してから判明するようだ。ナギはナミとカイルとパーティを組んでマップ内に移動するのを待っていた。他のメンバーはランダムでいいようだ。


 「いや〜、あんた達に声掛けといて良かったわ。危うく全然知らない人達とパーティ組むとこだったわよ」

 「最初はやっぱり何人か知り合いがいた方が安心するもんね。かといって8人全員固定メンバーとかだとつまらないけど」

 「ゲームの進行に準ずるプレイヤー達は皆固定メンバーで固まってプレイするみたいだけどね。でもこのゲームだとあまり同じメンバーばっかりで固まって行動しない方が良さそうだね。色んなプレイヤー達と交流を深めて一丸となって戦わないと勝てそうにないゲームだよ。同じ国のプレイヤー達からはぶられても大変だしね」

 「そうか…、他のMMOだとフレンド以外のプレイヤーとそこまで交流しなくても困らないもんね。フレンドが誰もいなくてブラックリストに入れられまくってでもしたら流石に大変だろうけど」


 ナミはこのゲームに知り合いが一人もいなかったのでナギ達とパーティが組めて嬉しかったようだ。ナギとカイルも自分たちは大人しめの性格だったので活発に自分の意見を言ってくれるナミとパーティが組めて良かったと思っていたようだ。このゲームはカイルの言う通り他のプレイヤーとの交流が重要になってくる。例えば自分がレアリティの高いアイテムを入手したとしてもそれは一度所属する国に献上しなければならい。そこで素材などを加工して、武器などを生成してプレイヤー達に支給されていくのだが、強力かつレアリティが高くあまり数を作れないアイテムなどは他のプレイヤー達からのある程度の承認がないと手に入れることは出来ないため、自分勝手なプレイばかりしているとレベルが上がっても強い装備は手に入らず、役職などにも就けなくなってしまう。また通報ポイントが貯まってしまうと支給品が完全にストップしてしまう場合もある。


 「……それでは時間となりました。ゲーム内のマップへと移動を開始します。マップに移動すると十分間の間行動範囲が制限され、その間はモンスターが出現しませんのでプレイヤーの方々はその間にパーティメンバーとの挨拶と自分が就いた職業を確認しておいてください。十分が経過いたしますと周囲にモンスターが出現し、制限も解除されますのでどんどん討伐していってください。マップ内のモンスターを全滅させるのがこのゲームの第1ミッションです。モンスターの討伐数に応じてボーナスポイントも入り、一番活躍ポイントが多い方には賞品も用意されていますので張り切って討伐してくださいね」


 ブリュンヒルデの説明が終わり端末パネルに転移までのカウントが表示された。表示されたカウントは10秒、プレイヤー達は皆討伐数で一位になってやろうとやる気になっていた。


 「ふぅ〜…、なんだか緊張してきたぁ。討伐数とかはどうでもいいからせめてまともな職に就けてるようにお願いします。……後怖い人達と一緒のパーティにならないように…」

 「よ〜しっ、絶対一番になって一気に他のプレイヤー達に差をつけてやるわ。待ってなさい、モンスター達っ!」

 「転移まで後5秒……4…3…2…もう転移が始まるぞっ!」


 カウントダウンが終わりナギ達は他のプレイヤー達と一緒にゲーム内に転移していった。一体ナギはどんな職業に就いて、どんなプレイヤー達とパーティを組むことになるのか。期待と不安を胸に抱き、ナギの体は転移のエフェクトの光に包まれていった…。

 

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 職業を決める流れのところで城を立てる予定の3マスにワープするとありますが4マスだと思います 面白そうなのでお気に入りしました
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