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finding of a nation online  作者: はちわれ猫
第四章 初めての出陣っ!、VSウィザードラゴンラプター&ライノレックス
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finding of a nation 27話

 ナギ達を正面で待ち構えていたドラゴンラプター達をセイナは見事撃退することに成功した。だが敵のボスであるウィザードラゴンラプターの動きを封じるために雷属性の束縛系魔法ライトニングバウンドを放ったアイナに向かい残党である2体のドラゴンラプターが襲い掛かろうとしていた。セイナはアイナのライトニングバウンドのおかげで窮地を脱し、更には敵のボスであるウィザードラゴンラプターを倒すことができたのだが、無情にもアイナの援護には間に合うことは不可能だった。精霊術師であるアイナは物理防御力が低く、2体のドラゴンラプターに噛みつかれれば一瞬でHPが0になってしまうだろう。体は小さいがドラゴンラプターの噛みつき攻撃はかなりの物理攻撃力を誇っている。


 「くっ…、アイナぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 “ガウゥゥゥゥンっ!”

 「くうぅぅぅぅぅっ……こ、怖いけどいいんです。どうせリヴァイブ・ストーンがあればすぐに蘇生してもらえるし敵のボスも倒せたんですから…」


 迫りくるドラゴンラプター達を前にアイナは恐怖を感じ目を瞑りながら必死に自分の取った行動を肯定していた。アイナのライトニングバウンドがなければセイナは逆にウィザードラゴンラプターに倒されていたため、パーティを守るためには最善の選択だっただろう。直前まで身を潜めていたことも前衛の負担を減らしウィザードラゴンラプターの隙を付けたことから正解だったと言える。自分はパーティの役に立ったんだと言い聞かしながらアイナはドラゴンラプターに噛み殺されるのを待っていた。だが2匹のドラゴンラプターがアイナに飛び掛ろうとしたその時、右側の方から凄い速さで草原の草を踏む音と共に何者かが近づいてくるのだった。


 「とうぉりやぁぁぁぁぁっ!」

 「ナ、ナミ…っ!」

 「えっ…」

 “ガウ?”

 

 なんとアイナがドラゴンラプターに飛びつかれる直前右側の迎撃に回っていたナミがまたまた得意の飛び蹴りを放ちながらドラゴンラプター達に突っ込んできた。そしてナミの飛び蹴りは横並びなっていたドラゴンラプター達に見事直撃するのだった。


 “ガウゥ〜〜〜ン…”

 「へへっ、一丁上がりっ!。大丈夫だった?、アイナ」

 「は、はいっ!、おかげで助かりました。もう駄目かと思ってたけどまさかナミさんが来てくれるとは思わなかったですっ!」


 横に並んで襲い掛かっていた2体のドラゴンラプターはナミに対して手前にいた個体に飛び蹴りが直撃すると2体纏めて吹っ飛ばされてしまった。不意を突かれたことと十分な助走のおかげナミの飛び蹴りの威力が上がっていたことから2体ともその一撃で力尽きて消滅してしまった。自分はもう駄目だと思っていたアイナもナミの出現には驚いていたようで、戦闘不能にならずに済んだことに感激していた。パーティの為とはいえウィザードラゴンラプターを倒す為にアイナを犠牲にしてしまうところだったセイナもアイナの無事にホッと胸を撫で下ろしたようで、安堵の表情を浮かべてナミとアイナの元に駆け寄って来た。


 「ナミ〜、よく駆けつけてくれた〜。私ももう駄目だと思っていたから助かったぞ〜」

 「まぁね。私の方はあんたと違って全部通常のドラゴンラプターだったし。ちょっと手こずったけどなんとか一人で撃退することが出来たわ」

 「それにしてもアイナには申し訳ないことをした。後衛をあんな危険な目に合わせてしまうとは私は前衛失格だな…」

 「そ、そんなことないですっ!。セイナさんは全力で戦ってくれてました。それにセイナさんやナミさんがドラゴンラプター達の相手をしてくれていなければ私なんてとっくに倒されてしまってます。だからセイナは前衛失格なんかじゃないですっ!」

 「その通りよ。特にあんたは私と違ってあの青いドラゴンラプター達も相手をしてたんだから苦戦して当然よ。私も通常のドラゴンラプターが相手とはいえ結構HP削られちゃったしね」

 「あっ、そうでしたっ!。二人ともすぐにHPを回復させますからそこに座ってください。その方が効果が高まりますから」


 どうやらナミは一人で右側のドラゴンラプター達を撃退することに成功したようだ。セイナと違い通常のドラゴンラプターしかおらず数もレイチェル達のところに比べると半分以下しかいなかった。そのため四方の中で一番早くドラゴンラプターを全滅させアイナの元に駆けつけてきたようだ。蘇生アイテムがあるとはいえアイナを救えたの大きいだろう。アイテムを節約できることもあるがセイナの精神へのダメージが避けられたのが大きい。セイナとナミはドラゴンラプター達との戦いでかなりのHPと体力を消耗しているようだった。そのことに気が付いたアイナはすぐに回復魔法を掛けようと二人に地面に座り込むよう促した。できるだけリラックスした方が回復魔法の効果も上がるようだ。


 「気持ちは嬉しいけど今は回復してる場合じゃないわ。レイチェル達は大丈夫そうだけどライノレックスを相手にしてるリア達はかなり苦戦してるみたい」

 「うむっ…。どうやら今はリアの詠唱時間を稼ぐために馬子とデビにゃんでライノレックスの気を引いているようだな。私達も早く駆けつけた方がいいだろう」

 「分かりました。では回復魔法は移動しながら掛けることにします」

 「よし…。じゃあ急ぐわよ、二人共っ!」


 アイナは回復を申し出たがナミとセイナは断ってしまった。どうやらライノレックスを相手にしているリア達の戦況が好ましくないのを見て急いで向かった方がいいと判断したようだ。アイナもそのことに同意し回復魔法を掛けながら二人と共にリア達の元へ救援に向かった。






 「……くっ、なかなか魔力が溜まらないわ…。やっぱりこのレベルの魔法を発動させるまで意識を高めるのはまだ難しいようね。早くしないと馬子とデビにゃんがやられちゃうっていうのに…」


 ライノレックスを倒すために火属性の上級魔法を放とうとしているリアだったが、どうやら魔力を溜めるのにかなり苦労しているようだった。魔法を発動させるための魔力を溜めるには単に時間が経過すればいいというわけではない。魔力を溜められる量は自身の集中力に依存し蓄えられた魔力が多くなればなるほどより魔力を溜めるのは難しくなる。0から100まで溜めるより100から110まで溜めるほうがより難しいというわけだ。もし途中で集中力が途切れればそれまで蓄えられていた魔力が暴発し自身にダメージとなって返ってくる。一度魔力を蓄えてしまったら魔法に変えて放つかその集中力を維持したまま今度は魔力を体から抜いていくしかない。リアが繰り出そうとしている魔法には相当な魔力量が必要なようですでに1分近くは経過していたがまだ7割程の魔力しか蓄えられていなかった。


 「うにゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!、また僕の方を踏みつけようとしてきたにゃっ!」

 “ドスゥゥーーンっ!”

 「にゃっ!。……ふぅ、なんとか躱せたにゃ…」

 「油断したらあかんよデビにゃん。どうせすぐ向かってくる……っ!」

 “ガオンっ!”

 「ひえぇぇぇぇっ!、今度はこっちに尻尾を振り回してきたっ!。やばいっ…!」

 “スカッ…!”


 リアが魔力を溜めるための時間を稼ぐために二人でライノレックスの相手をしていた馬子とデビにゃんだったが、ライノレックスの執拗な踏みつけ攻撃に防戦一方だった。元々こちらから攻撃をするつもりはなかったがライノレックスの激しい連続攻撃に周囲を走り回されてしまっていた。踏みつけ攻撃はショック・スタンプによる地震攻撃程ではないが僅かに範囲ダメージが発生するようで、馬子とデビにゃんのHPは着実に削られていた。おまけに体力もかなり消耗させられているようでいつライノレックスの巨大な足に直接踏みつけられてもおかしくなかった。そんな中ライノレックスはデビにゃんを踏みつけようとしながら同時に尻尾を振り回して馬子にも攻撃を放ってきた。馬子は咄嗟に身を屈めて振り向けられた尻尾を躱した。


 「ふぅ…、なんとか助かったけぇ。踏みつけと同時に尻尾を振り回して攻撃をしてくるなんてデカイくせいに意外と器用な真似するんじゃね」

 「馬子ぉぉっ!。安心してる場合じゃないにゃぁぁぁっ!。今度はそっちを踏みつけようとしているにゃぁぁぁっ!」

 “ドスドスドスドスドスッ…”

 「えっ…」

 “ガオォォォォォォォン”

 「ひえぇぇぇぇぇっ!、もう間に合わんけん〜〜〜っ!」

 “ドッスゥーーーンっ!”

 「馬子ぉぉぉっ!」


 ライノレックスの尻尾による攻撃を躱している馬子だったが、今度は標的をデビにゃんから変えて馬子を踏み潰そうとライノレックスが凄い勢いで激しい足音と共に迫って来た。近づいて来たライノレックスは攻撃を躱したことで安心し油断してしまっていた馬子を思いっ切り踏みつけようとその大きな足を振り下ろそうとしてきた。完全に不意を突かれた馬子は突如目の前に現れたライノレックスの巨大な図体とその凄まじい雄叫びに驚いてしまい全く反応が出来なかった。そしてライノレックスの足の影に馬子の体が包まれていったと思うとあっという間にライノレックスの足は地面に振り下ろされてしまった。馬子は完全に踏み潰されてしまったのだろうか。


 「きゃぁぁぁぁぁぁっ!」

 「ま、馬子っ!」


 完全にライノレックスの足の裏に踏み潰されてしまったと思われた馬子だったが、次の瞬間地面に振り下ろされたライノレックスの足の裏から急に吹っ飛ばされるようにして飛び出てきた。どうやら踏みつけ攻撃が直撃したからと即死判定にはならず例え踏み潰されてしまってもすぐにその場から吹っ飛ばされるようになっているようだ。だが即死ではなくともかなりのダメージを負ってしまうはずだ。吹っ飛ばされた馬子はそのまま地面に叩き付けられてしまいその衝撃で暫く体を動かすことが出来なかった。HPもさっきの一撃で赤ゲージまで削られてしまい、あとちょっとした衝撃のダメージでも受ければ戦闘不能に陥ってしまうという状況だった。


 「よ、良かった無事だったにゃ……ってライノレックスがまたそっちに向かって行ってるにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!。早くなんとかして起き上がるにゃぁぁぁぁっ、馬子ぉぉっ!」

 “ガオォォォォォォォン”

 “ドスドスドスドスドスッ…”

 「くっ…、もう無理じゃけぇ。叩き付けられた衝撃で体が思うように動けへんのじゃけん…。こりゃ私はここまでじゃね。後は頼むけぇね、デビにゃん…」

 「馬子ぉぉぉぉぉぉっ!」


 デビにゃんの叫びも虚しく馬子はまるで立ち上がることは出来なかった。どうやら叩き付けられた衝撃が抜けるまでは体に相当な負荷が掛かるらしい。かなりの高さまで吹っ飛ばされていたため相当な衝撃が馬子の体に走ってしまったようだ。そしてそんな馬子に止めを刺そうと再びライノレックスがその巨大な足音と共に向かってくるのだった。


 “ガオォォォ〜っ!”

 「にゃぁぁぁぁっ!、もう駄目にゃぁぁぁぁっ!」

 「くっ…」

 「はぁぁぁぁっ……ブレイズスラァァァァァッシュっ!」

 “ガオ?、……ガオォ〜〜ンっ!”

 「にゃっ!」


 馬子の前まで近づいたライノレックスは今度こそ止めとばかりに再び巨大な足を振り下ろし馬子を踏み潰そうとした。その光景を見たデビにゃんはもう駄目だと悟り馬子が踏み潰されるのを見ていることができず目を瞑って泣き叫んでしまっていた。だがその時に甲高い凛々しい叫び声と共にどこからともなく銀色に輝く斬撃が馬子へと振り下ろされようとしている足に向かって放たれてきたのだった。


 「セ、セイにゃっ!」」

 「ナミっ、今の内に馬子を頼むっ!」

 「もう向かってるわ。さっ、馬子さん、私の肩に掴まって。急いでこの場から離れるわよ」

 「ナ、ナミちゃん…、それにセイナまで来てくれたんじゃね…。ありがとう、おかげで助かったけぇ」

 “ガ、ガウゥ…”

 

 ライノレックスに向かって飛んできた斬撃は正しくセイナのブレイズスラッシュだった。間一髪ナミとセイナの救援が間に合ったようだ。ブレイズスラッシュを振り上げている状態の片足に直撃してしまったライノレックスはそのままバランスを崩し地面に倒れてしまった。その隙にナミが馬子の救出に向かい、なんとか馬子の腕を肩に抱えてその場を脱出することが出来た。地面に倒れ込んだライノレックスはその巨体を起こすのに手間取っているようだった。だがなかなか起き上がれずにいるもののダメージ自体はやはりほとんど受けていないようだった。


 「にゃぁぁぁぁっ、セイナにナミっ!。来てくれたのにゃぁっ!。ってことはもう他のドラゴンラプター達を片付けちゃったってことにゃ。やっぱり頼りになるにゃね」

 「私もいますよ、デビにゃんちゃん」

 「にゃぁぁぁぁっ、アイナまでいるにゃぁぁぁぁっ!」

 「ふふふっ、今回復させますからね、皆さん」

 「待って、それよりまず馬子さんの体の衝撃をなんとかしないと。……はぁぁぁっ、気功掌底・打抜うちぬきっ!」

 “バンっ!”

 「けふっ!、……ちょっとナミちゃん…、いきなりなにしてくれとるんよ。そんなに強く背中叩かれたら……ってあれ、なんか急に体の痛みが消えて動きが軽くなったような…。さっきまで全身が震えてまるで動けんかったのに…」


 ナミとセイナが駆けつけてきた以上当然そこにはアイナの姿もあった。馬子を救出したナミは何やら特技を繰り出しセイナの背中を強めに叩いた。急に叩かれて馬子は驚いていたが、どうやらナミの放った技は味方の状態以上を回復する技のようだ。


 「今のは武闘家の特技である気功術系の技よ。気功掌底・打抜きは相手の体に掛かっている打身や打撲なんかの外傷によって生じた負荷を取り除く技よ。このゲームHPは残っていても強い衝撃を受けた場合気絶しちゃうこともあるみたいでそういう時にこの技を使うの。まぁ気付け薬の効果のある掌底ってところね」

 「なんだ、そうじゃったんか。おかげでスッキリしたけん。全身が痙攣したみたいな感じで全く動けんかったんじゃけぇ」

 「うむ、どうやら馬子も電気になったようだだな。それではアイナ今の内に回復魔法を頼む」

 「分かりました。……大気を駆け抜ける風の精霊達よ、その無邪気な心でここにいる者達に癒しを与えたまえ。妖精の風・フェアリーウィンドっ!」

 “パアァ〜〜〜ン”


 馬子が動けるようになりアイナはナミ達の残りのHPも同時に回復すべく辺りに範囲回復魔法であるフェアリーウィンドを放った。精霊術師の多くの魔法は自然の中に存在する見えない精霊達と意識を通わせることで発動する。リア達のような魔術師の魔法は自身の高めた意識を魔力に変換して発動するが、精霊術師の場合は精霊から魔力を取得して魔法を発動する。その方法は人それぞれで、アイナのように精霊と心を通わせて力を得ようとする者、理性的に語り掛けて力を貸してもらえるよう説得しようとする者、場合によっては恫喝して無理やり従わせようとする者もいるだろう。基本的にどのようなやり方でも有利不利はなくどこまで意識を集中できるかが鍵となる。ただナギ達の世界の性質上恫喝するようなやり方は皆得意ではなくあまり上手くいかないだろう。力を貸してほしい理由を論理的に説明するように語り掛けるのが一番上手くいくのではないだろうか。因みに魔術師の魔力の高め方も人それぞれである。アイナの放ったフェアリーウィンドは風属性の回復魔法で、風の通る範囲にいる全ての味方プレイヤーを回復させる効果がある。属性変換率は風が100%で、回復魔法は攻撃魔法とは違い属性変換率のプラスとマイナスの効果を逆にして計算する。フェアリーウィンドならば風属性の耐性率がプラスならば回復量がまし、マイナスならば回復量が減るということだ。このフェアリーウィンドのおかげでナミ、セイナ、アイナ、デビにゃんのHPは全快まで、馬子のHPも8割近くまで回復していた。


 「ふあぁ〜、気持ちのいい風ね…。まるで体に被った埃が全て飛ばされいくみたい」

 「本当やね。まるで私の体も風になって一緒に飛んで行ってしまいそうじゃけぇ…。精霊術師の魔法はやっぱり私の祈祷とは一味違うね」

 「そ、そんなことないですよっ!。馬子さんの祈祷の方が力強くてよりパワーが沸いてくる気がします。きっと馬子さんの純粋な願いが力の源になってるんでしょうね」

 「ふふっ、アイナは人を褒めるのが上手いね」

 「にゃぁぁぁぁぁぁっ!、皆和んでるところ悪いけど僕達は今リアが魔力を溜め終わるまでの時間を稼いでるのにゃぁぁぁっ!。あいつの防御力は魔法も物理もそしてHPも凄く高いからリアの最大級の火属性の魔法で一気に仕留める作戦なのにゃ」

 「うむ、そのことはもう我々も承知している。あれ程の相手と持久戦を繰り広げるのはハッキリ言って無謀だろう。…っで、リアの魔力は今どれくらい溜まっているのだ、デビにゃんよ」


 アイナのフェアリーウィンドに心まで癒されていたナミ達だったが、デビにゃんの言う通りいつまでも和んでいる暇はなく、もう間もなく立ち上がってくるであろうライノレックスを再び相手にしなければならなかった。それもリアの魔力が溜まるまでだが、リアが魔力を溜め始めてからすでに2分近く経過していた。VRMMO以前のゲームならこれ程詠唱時間の掛かる魔法など存在していなかったが、VRMMO、特にリアルキネステジーシステムが採用されたゲームでは上級魔法を放つのに5分以上は掛かったりする。VRMMOでは威力の高い魔法にはこれぐらいのコストを設定しなければ魔術師の職業が著しく強くなってしまうようだ。下級魔法ならば詠唱もせずに瞬時に放てるようになるようだが。


 「多分もう2分近くは経過しているはずにゃ。でもかなり上級の魔法って言ってたから多分5分以上は掛かるんじゃないかにゃ」

 「なるほど…、じゃあ後3分ほどのあいつをリアに近づけさせなければいいってことね。それくらいならなんとかなりそうじゃない。あいつ体はでかいけど多分馬鹿だろうから私達を無視してリアに襲い掛かるなんてこともないだろうし」

 「そうだな。私とナミ、それに馬子とデビにゃんで四方を囲み翻弄するようにして時間を稼ぐか。アイナは出来るだけ後方でサポートしていてくれ」

 「分かりました」

 “ガオォォォ…っ!”

 「それじゃああいつも起き上がってきたことじゃし早い目に散開しとく?。あいつは後ろには尻尾で攻撃してくるけぇなるべく横から攻撃した方がええと思うよ」

 「OK。それじゃあ東と西、南と北のペアになって交互に攻撃しましょう。あくまで注意を引くだけでいいからあいつが一人を集中して狙わないようにするだけでいいからね」

 「うむ、万が一囲みを突破されそうになったら狙われた者はリアがいない北の方へ走ってくれ。では行くぞっ!」

 「了解っ!」


 アイナの魔法のおかげでHPを回復することの出来たナミ達は起き上がってくるライノレックスに立ち向かうべく四方に散っていった。四方を囲んでリアに近づけさせない作戦のようだ。デビにゃんの見立てではリアの魔力が溜まるまで後3分程度。果たしてそれまで時間を稼ぐことが出来るのだろうか。





 

 セイナとナミが右側のドラゴンラプターを撃退したことにより残るはリア達が相手にしているライノレックスと後方から追って来ていたドラゴンラプターだけだった。ライノレックスはリア、馬子、デビにゃんの3人にナミ、セイナ、アイナを加え6人で対応していた。一方後方のドラゴンラプターは当初はレイチェルだけで対応していたが途中からナギとボンじぃも参戦したこともありすでに残り数体にまで減っていた。ナギとボンじぃも微力ながら少しは戦力になったようだ。


 「てぇりゃぁぁぁぁぁっ!。……ふぅ、大分片付いたな」

 「本当だね。もう残りのドラゴンラプターは10体もいないよ」

 「ああ、それにしてもナギも案外やるじゃねぇか。ボンじぃのサポートも中々だったぜ。おかげで安心して突っ込んで行けるよ。もう回復魔法でセクハラなんてしようとするんじゃねぇぞ」

 「分かっとるわい。わしだってゲームをプレイする以上勝ちたいからの。前衛のサポートぐらいしっかりやらんとな。それよりライノレックスを相手にしとるリア達が心配じゃわい」

 「そうだね。どうやらナミとセイナさんがもう自分の持ち場のドラゴンラプターを全滅させて援護に向かったみたいだけど、やっぱりあのライノレックスが一番強力みたいだね」

 「じゃあ早く片付けて私達も援護に向かうか。さっさと片付けちまうぞ、ナギ、ボンじぃっ!」

 「OKっ!」

 「了解じゃっ!」


 ナギ、レイチェル、ボンじぃの3人ももう間もなく後方のドラゴンラプターを全滅させられそうだ。後は左側のライノレックスだけだ。ナギ達もライノレックスの元へ向かうべく残りのドラゴンラプター達に最後の攻撃を仕掛けていくのだった。

 

 

 


 



 「にゃぁぁぁぁぁっ、今度はこっちに向かってきたにゃぁぁぁぁっ!」

 「任せて、デビにゃんっ!。次は私達が仕掛けるわ。行くわよ、馬子さんっ!」

 「了解じゃけぇっ!」


 一方リアの魔力を溜める時間を稼ぐべくライノレックスの注意を引いていたナミ達は、東と西にセイナとデビにゃん、北と南に馬子とナミのペアに別れて四方からライノレックスを囲っていた。ライノレックスの尻尾による叩き攻撃を避けるために両側面から交互に攻撃を仕掛ける作戦だった。今もライノレックスの標的がデビにゃんに向かったことで今度は北と南の配置についていた馬子とナミがそれぞれ攻撃を仕掛けていくところだった。


 「はぁぁぁっ……祈祷弾っ!」

 “バンッ、バンッ、バァンッ!”

 “ガオッ!”

 「今度はこっちよっ!。飛翔空蹴撃っ!」

 挿絵(By みてみん)

 “ズドォーーーーンっ!”

 “ガオォ〜〜ンっ!”


 頭をデビにゃんに向けたライノレックスに向かってまず北側から、ライノレックスからして見れば左の横側から馬子が祈祷弾を放っていった。放たれたエネルギー弾はまたしても3つ、どうやらこの技はどんなに意識を集中しても一度に放てる数は3つが限界のようだ。だが威力は上昇しているようで、先程よりエネルギー弾の大きさが一回り程大きかった。それでもライノレックスにはほとんどダメージを与えることは出来ていなかったが注意が馬子に向いた隙に今度はナミが遥か上空から攻撃を仕掛けていった。いつの間にかそこまで飛びあがったのか、ナミは上空50メートル程の高さからライノレックスの頭に向かって急速に蹴りを放つ体勢で落下してきた。どうやら飛翔空蹴撃ひしょうくうしゅうげきという上空からほぼ垂直に落下する勢いで蹴り技を放つ武闘家の特技のようだ。空蹴という名は戦闘機から撃ちだされるミサイル等を意識して付けられたのだろう。ナミはそのままの勢いで落下していき、ライノレックは自身の頭の天辺に飛翔空蹴撃を直撃してしまった。その勢いはまさにミサイルそのものようで、ナミの蹴りが直撃すると同時に物凄い爆発音のようなものが響き渡っていた。威力もかなり高ったようで、脳天に強烈な衝撃が走ったライノレックスは足元がふらつき再び倒れ込んでしまいそうになっていた。


 「凄いですナミさんっ!。本当に空からミサイルが落ちてくるみたいでした」

 “ヒュー……スタッ…”

 「へへっ、ミサイルって言われるとなんだか暴力的な女みたいでか弱い乙女である私には似合わない言葉だけどね。でもこの技自体はかなり気に入ったわ。空から下りてくる時の爽快感がたまらないのよね」

 「(にゃぁ、僕は暴力的でなくともとてもか弱いだなんて思えないけどにゃ。レイチェルだったら暴力的って言葉で間違いないと思うけどにゃ)」

 「それよりさっきのナミちゃんの攻撃破壊力も抜群じゃったみたいじゃけぇ。見てん、あのライノレックスが意識を朦朧として足がふらついとるよ。両サイドからの交互の攻撃も見事に決まっとるし、この調子なら案外楽勝みたいじゃけぇ」

 “ガオッ…”

 “ビリッ、ビリッ……”

 「…っ!、不味い…皆っ!。急いで距離を取って防御の態勢をとるのだっ!」

 「えっ…」

 “ガオォォォォォォォンっ!”


 飛翔空蹴撃を食らい体をふらつかせているライノレックスを見てすっかり油断していたナミや馬子達だったが、意識が朦朧とするなかでライノレックスは自身の鼻の先に生えた巨大の角に力を蓄えていた。その角からは微弱な放電現象が起こっていた。そのことに気付いたセイナはすぐに皆に防御の指示を出したが、次の瞬間ライノレックスの咆哮と共に広範囲に渡って強烈な放電現象がライノレックスの角を中心に発生したのだった。


 “ビリビリビリビリビリィィィィィィッ!”

 「きゃぁぁぁぁぁぁっ!」

 「ニャニャニャニャニャァァァァっ!」

 「くぅぅぅぅぅっ…」

 「ぐぅ…、み、皆…、なんとか耐え切るのだ…」


 ライノレックスが放った放電攻撃は四方を囲っていたナミ達全員に襲い掛かった。体に強烈な電流が走り皆大声で悲鳴を上げてしまっていた。更に体に掛かる電圧もとてつもなく強力でまるで全身に流れている電流が溶けた鉛のように感じられていた。セイナの掛け声のおかげで何とか防御の態勢を取れたようだがそれ以上に強力な放電攻撃だったようだった。この放電攻撃はボーン・コンデンサー・ディスチャージという名称で、角蓄電器からの放電という意味だ。蓄電機能のある角を持つモンスター専用技で、他には雷角獣らいかくじゅうのユニコーンや、デーモンゴートというヤギの姿をした魔族型のモンスターがいる。放電攻撃に苦しんでいるナミ達を見てアイナは衝撃のあまり動けないでいたが、すぐに気を持ち直し回復魔法を放つための魔力を溜め始めた。


 「み、皆さぁぁぁんっ!。た、大変です、このままじゃあ皆やれちゃいますっ!。急いで回復魔法を放つ準備をしないと…」

 “ガオォォォ……”

 「……くはっ!。くっ……はぁ…はぁ…、なんとか耐えきったか…」

 「はぁ…はぁ…、そうみたいね。皆雷属性の耐性率はプラスだったおかげで少しは被害が少なくて済んだみたい。この4人で包囲して正解だったわね」

 「ほ、本当じゃけぇ。念の為にアイナを下がらせといて正解じゃったね。もう回復魔法を放つ準備をしてくれとるよ」

 「にゃぁ…にゃぁ…、でも流石に今の攻撃は効いたにゃ…。早く回復してくれないと僕死んじゃうにゃ…」

 「(くっ…、だがこの攻撃によって皆ダメージを受けただけでなく電流によって体が麻痺してしまっている。ライノレックスも一気に力を解き放った反動で動けないようだがそれ以上にこちらの麻痺が解けるまでの時間の方が掛かってしまうだろう。例えHPを回復で来てもこの状態では…)。皆っ!、急いで麻痺治しの薬を飲むのだっ!」

 「えっ…、あっ、そうかっ!。でもこの体が痺れた状態じゃまともに薬なんて飲めないわよ」


 必死に電撃に耐えていたナミ達だったがライノレックスの放電攻撃はなかなか終わらなかった。ようやくライノレックスの雄叫びが静まる共に放電が収まった時には皆HPのほとんどを削られてしまっていた。なんとか戦闘不能に陥ることだけは回避できたが皆ダメージを受けただけでなく電流により低度の麻痺状態になってしまっていた。このままでは例えHPを回復で来てもまともにライノレックスの攻撃を躱すことは不可能だ。そのことに気付いたセイナは皆に急いで麻痺治しの薬を服用するように言った。だが体が痺れているために皆薬を飲むどころかまともにアイテムを取り出すことすら困難なようだった。これがVRMMOの難しいところだろう。だがそんな時アイナが意外な言葉と共に回復魔法を放ってくるのだった。


 「その必要はありませんっ!。……水辺で憩いし温厚なる水の精霊達よ。その無垢な心を純水に変えて降りそそがんっ!。純水なる雨、ピュア・シャワーっ!」

 “パアァ〜〜〜ンっ!”

 「な、なに…、急に辺りに雨が降ってきたわよ。しかも雨なのにすっごい水が綺麗…」

 「にゃぁ〜、本当にゃぁ、まるで心の中まで洗い流される気分にゃぁ…」

 「本当やね…。どうやらこれがアイナの魔法みたいやね。HPが回復していってるよ」

 「…っ!。どうやらこの雨の効果はそれだけではないようだぞ。流石アイナ、この状況にピッタリの回復魔法だ」

 「えっ、それってどういうことっ!」


 アイナの放った回復魔法はピュア・シャワーという名称で、範囲内に純水の雨を降らせる回復魔法のようだ。その範囲の広さは広大でナミ達全員に雨が降り注いでいた。元々範囲が広く設定されているのもあるがアイナの魔法のセンスの高さも影響してるのだろう。そしてこのピュア・シャワーの効果はHPの回復効果だけではなかったようだ。


 「…っ!。ちょっとナミちゃん、なんか体が自由に動くようになってないっ!。体の麻痺がすっかり抜けてもうとるよ」

 「本当だわっ!。もしかしてアイナのこの魔法のおかげかしら…」

 「うむっ、純水は電気を通さないというが、この魔法は純水を体内に巡らせ体の電気抵抗、このゲームならば雷属性の耐性率を上昇させ体内の雷の魔力を押し出しているのだろう。雷属性の攻撃によって生じた麻痺状態を取り除く効果があるようだ」

 「助かったにゃ、アイナっ!でもその分回復量は少なめみたいにゃ。今の内にヴァイブル・エキスを飲んでおくにゃっ!」


 アイナの放ったピュア・シャワーとはその名の通り純水の雨を広範囲に渡って降らせる魔法だ。癒しの水としてHPを回復させるだけでなく、純水は電気を通さないと言われていることから雷属性の耐性率を上げ電撃による麻痺状態も解除する効果があるようだ。この魔法のおかげでナミ達はHPを回復しただけでなく麻痺状態による窮地も脱したのだった。


 「OK。私も今の内に飲んでおくわ。私は火属性だけど水属性の耐性率がが高いから割と回復で来たけど、セイナは相当耐性率がひくんだからあんたも飲んどきなさいよ」

 「うむっ、そうしよう」

 「私は自分で回復するけぇ。元々皆のよりHPも減ってたから急いで回復せんと。……自己啓発祈祷・治癒の祈りっ!」

 “ガオォォォ…”


 麻痺異常を取り除く効果がある分アイナのピュア・シャワーによるHPの回復量は先程のフェアリー・ウィンドに比べると少なかった。ナミ達は回復量を補うためにヴァイブル・エキスを飲んでいたが、祈祷師である馬子は自身の特技で回復しているようだった。自己啓発祈祷とは自身にのみ有効な祈祷術で、治癒の祈りとは自身のHPを回復させる特技である。対象が自身のみであるため効果は割と高いようだ。そして皆のHPが回復し終わったころ再びライノレックスが動き出そうとしていた。アイナの回復魔法がなければい今頃誰か一人は踏み潰されてしまっていただろう。技の反動が解除されたライノレックスは再びナミ達に向かって襲い掛かろうとしていた。


 “ガオォォォォォォォンっ!”

 「くっ…、このまま包囲しておきたかったけどあんな範囲攻撃があるんじゃ危険よね。どうする、もうちょっと距離を取って囲むことにする?」

 「うむっ、それ以外に方法はなかろう。なんとかリアにさせ近づけさせないようにできれば」

 「その必要はないわっ!」

 「…っ!、リアっ!」


 ライノレックスの放電攻撃を警戒してナミ達が距離を置いて戦おうとしていた時後ろからリアの叫び声が聞こえてきた。後ろを振り向くとそこには真っ赤に燃え上がるような火の魔力を纏ったリアの姿があった。リアは自身の武器であるスラッシュレイピアの剣身が顔の前にくるように構え、その剣身からも凄まじい魔力がほとばしっていた。


 「リアっ、もしかしてもう魔力が溜まったのっ!」

 「ええ…、でもできれば確実に当てたいからそいつの動きをなんとして封じてちょうだい。さっきの放電攻撃は24時間以上のリチャージ時間がないと撃てないはずよ。落雷を避雷針でる角に浴びせて体内に溜めた雷の魔力を一気に放出して放つって設定の技のはずだから」

 「そうなのっ!。だったら任せといて。あの攻撃ができないじゃ動きを止めるくらい余裕よ、余裕」

 「待ってくださいっ!。動きを封じるのなら私のバインド魔法が有効な筈ですっ!」

 「うむっ、アイナの言う通りだ。私も先程そのバインド魔法を見たがかなりの拘束力を持つ魔法だった」

 「ええ、それが最善だと思うわ。あいつには火属性か氷属性のバインドが効果的のはずよ、アイナ」

 「分かりました。では皆さんバインドに捉えやすいようにあいつの気を引いててください」

 「了解にゃっ!」

 「私もいつでもいけるよ」

 「OK。それじゃあ最後の仕上げに入るわよ、皆っ!」


 リアの魔力が溜まったのを確認したナミ達はライノレックスの動きを封じる為にアイナのバインドに捉える作戦に入った。アイナがバインドに捉えやすいようにナミ達は再びライノレックスの気を引くために自ら向かって行った。


 「はぁぁぁぁぁっ…、祈祷弾っ!」

 “バンッ、バンッ、バァンッ!”

 “ガオォ…”

 「今度はこっちよっ!。飛翔拳っ!」

 “ガオォ〜〜ン……”

 「今ですっ!。フレイム・バインドっ!」

 “ガオッ!”


 まず馬子が祈祷弾で気を引いている間にナミが飛翔拳でライノレックスの顎の裏を攻撃し怯ませた。先程見せた連携と同じような形だ。そしてアイナはその隙にはまずは火属性の束縛魔法フレイム・バインドをライノレックスの右足に向けて放ったのだった。まずはライノレックスの右足をバインドに捉えることに成功した。どうやらライノレックス程の巨体を完全に捉える程の大きさのバインドを作り出すのはアイナにはまだ不可能で、二つのバインド魔法で両足を封じる作戦に入ったようだ。右足を封じられたライノレックスはまだ動けるようだが明らかに右足を引きずっており動きが鈍くなってしまっていた。


 「よしっ、まずは片足の捕縛に成功にゃっ!。にゃぁぁぁっ、必殺猫フレイムにゃっ!」

 「私もいくぞっ!。ブレイズゥゥゥッ……スラッシュっ!」

 “ガオォ〜〜〜〜ンっ!”

 「よしっ、次は左足です。アイシクル・バインドっ!」

 “ガオンっ!”


 続いてセイナとデビにゃんが両側からブレイズスラッシュと猫フレイムを顔面に向けて放った。思うように動けないために両方とも

直撃してしまったライノレックスは再び怯んでしまい今度は左足を氷属性のバインド魔法アイシクル・バインドによって封じられてしまった。両足を封じられてしまったことでとうとうライノレックスはその場から動けなくなってしまった。そしていよいよリアの火属性最大魔法が解き放たれるのだった。

 

 「今よっ、リアっ!」

 「OK…。我が心に生まれし強靭なる鋼の意志よ…。火をも通さぬその体に業火を纏いて我が敵を滅却させよっ!。地より這い出し灼熱の柱・ヴォルケニック・ラヴァ・コラムっ!」

 「うおぉぉぉぉぉっ!」


 ライノレックスの両足が火と氷のバインドに囚われた瞬間リアは火の魔力を纏った自身の剣をライノレックスに突き立て、その剣身から今まで蓄えた魔力を全て放出した。ヴォルケニック・ラヴァ・コラムと叫ばれたその魔法はリアのスラッシュレイピアの剣身から凄まじい炎が放出され、まるで火竜のようにライノレックスへと向かっていった。だがその火竜はライノレックスに向かって行く直前に突如として地面へと急降下してしまうのだった。


 「な、なんにゃっ!。途中で炎が地面に落ちちゃったにゃっ!」

 「本当じゃ…。もしかして失敗…」

 「…っ!。いや、炎が着弾した辺りの地面を見てみろ。そこからまるで導火線のようなエフェクトが描かれているぞ」

 「本当だわっ!。……あの模様…、まるで何かの陣見みたい…」

 「ど、どうなるんでしょう…」


 地面へと着弾したリアの炎はそこから何かの陣のようなエフェクトをライノレックスの地面に描いていた。その陣は綺麗な円形でライノレックスの周囲を囲っていて、その中には鳥の形をした紋章のようなものが描かれていた。そして炎が着弾した場所を発火点とするようにまるで導火線を辿るようにして陣の中に炎が燃え上がって行った。その炎は加速的に大きくなっていき、気が付くとまるで溶岩のように黒く焼け焦げた色になっていた。そして炎がライノレックスの体の半分近くを覆い尽くした瞬間突如として本物の溶岩へと変わりにまるで火山の噴火のように地面から溶岩が吹き出してきた。ただ噴火とは違い溶岩は全く周囲に飛び散る様子はなく、まるで綺麗な円柱を作り出すように天へと向かって行った。溶岩の柱に飲み込まれたライノレックスは熱さに苦しみの雄叫びを上げていた。


 “ガオォォォォォォォンっ、ガオォォォォォォォン…”

 「ひえぇぇぇっ!、これまた豪快な魔法じゃね。あんな溶岩の中に飲み込まれたら人間だったらもう跡形もなくなっとるよ」

 「それは現実の世界だったらでしょ。これはゲームなんだからまだ倒せるか分かんないわよ。でもヴォルケニック・ラヴァ・コラム…、まさか火を溶岩に変えて放ってくるなんてやっぱリアにってとんでもなく凄い魔法使えるのね」

 「うむっ…、ヴォルケニックとは火山、ラヴァとは溶岩のことだろうが、ゲームの中とはいえこの魔法を食らっては如何にライノレックスといえどもHPがつきてしまうのではないだろうか」

 「コラムっていうのは円柱のことですよね。まさにその通り地面の魔法陣の範囲から一ミリたりとも溶岩がはみ出てきてないです」

 「にゃぁ…、もし本当に火山の噴火みたいにこっちにも飛んできたら怖かったにゃ。まぁPKがオンになってない限りリアの味方である僕体は当たってもなんともないだろうけどにゃ」


 リアの放った魔法、ヴォルケニック・ラヴァ・コラムとは地面から溶岩を吹きだせる技のようだ。コラムとは円柱という意味で、その名の通り地面から吹きだした溶岩はまるで巨大な柱のように天高く昇って行った。あくまでグラフィックエフェクトだけだろうが、果たしてどれぐらいの高さまで攻撃範囲があるのだろうか。溶岩の柱に飲まれていったライノレックスはすでに雄叫びすら聞こえなくなっていたが果たして無事倒すことが出来たのだろうか。これだけの攻撃を受けてまだHPが残っているとすれば今までのゲームで考えらないほどの耐久力である。通常のフィールドでそのようなモンスターが出現するとは一体このゲームのバランスはどうなっているのだろうか。ナミ達は見守るような表情でライノレックスの包まれている溶岩の柱を見上げていた…。



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