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finding of a nation online  作者: はちわれ猫
第二章 ヴァルハラ国建国っ!、そして初めての内政っ!
18/144

finding of a nation 15話

 「えーっと、どのへんで見たっけな…。確かこの列の本棚だったと思うんだけど…」

 「うっわ〜、一階の奥は丸々書庫になってたのか。学校とかにある図書館よりは遥かに大きいね。小さな私立図書館と同じぐらいだよ。一体何冊ぐらいあるのかなぁ…」


 ナギとリア、そしてナミはレイコの家の一階の奥にある書庫に魔物の卵についての本を探しに来ていた。ナギはレイコの家の書庫の広さに驚かされていた。その広さは普通の私立図書館と大きさは変わらず、壁一面、そして本棚もかなり詰めて並べられており貯蔵されている本の冊数は相当な数だった。半分は文学や歴史の資料に関わるもので、恐らくハールンの仕事の参考にしているものだろう。このヴァルハラ国のモチーフになってる北欧神話や、ナギやナミが名前に使っている伊邪那岐命などが登場する日本神話、ギリシャ神話やローマ神話の本なども置かれていた。これらはナギ達の世界のものと内容も全く同じで、プレイヤーにとっては特に効果はないようだった。


 「確かにこれは凄いわね…。これだと一万冊近くあるんじゃないかしら。あっ、あそこに魔術の本が置いてあるわよ。あれ読んだら魔法が覚えられたりするんじゃないかしら」

 「えっ、本当っ!。僕にも見せて」

 「あっ、ちょっと…。もうっ!、あんたの為に来てるんだから探すの手伝いなさいよね」


 ナミは魔術書が並べれている本棚を見つけたようで、それを読めばプレイヤーに特殊な恩恵があるのではないかと一目散に向かって行った。ナギもナミの言葉を聞くとリアのことを放り出して魔術書の置いてある本棚へと向かって行った。よくゲームなどでは読むだけで魔法を覚えられる魔法書や、スキルのレベルを上げるスキル本などがあったのでナギ達程ゲームをやり込んでいる者なら目の色が変わって当然だろう。


 「う〜ん…、どれにしようかな〜。よしっ、これに決めた。基本魔法強化書だって。えーっと…何々……ってあれ、これ全ページ白紙になってるじゃないっ!」

 「ほ、本当だ…。こっちも全部真っ白だよ。どういうことなんだろう…」

 「それはあんた達のINTの値が低いからよ」

 「えっ…、それってどういうこと。リアちゃん」


 本棚に置かれている魔術書をいくつか開いてみたナギとナミだったが、その本は全てページが白紙だったようだ。いくらこのゲームが現実世界をかなり細密に再現しているとはいえ、ゲーム内の書物の効果をプレイヤーが得るのに実際に読む必要はないだろうが、VRMMOが採用されるようになって何かしらの内容は書かれていたためナギとナミは白紙のページを見て戸惑っていた。リアが言うにはプレイヤーのINT、つまり知性の値が足りないからだと言うらしいが…。


 「このゲームのプレイヤーに効果をもたらす書物はゲーム内のINT、つまり知性の値が必要値を超えていないと本の内容は表示されないし効果も得られないわ。しかも効果は読むだけじゃなくて、NPCから譲ってもらったり、お金を払って買って自分の所有物にしないと反映されないわ。一度手に入れて効果が反映されればもう手放してもいい消耗アイテム型の本と、所有している間のみ効果を発揮する装備型の本があるわ。装備できる本の数もINTの値等によって決まる書物スロットに依存するわ」


 どうやらナギ達の開いた本が白紙だったのはINTの数値が足りてなかったかららしい。更に本の効果を得るには実際に自分の所有物にしなければならないようだ。リアは読むと言っていたが、他のゲームと同じように閲覧する必要はないようだ。消耗型の本は自分の所有物にして本を開くか、端末パネルから操作すれば効果が反映されるようだ。一度効果が反映されてもその本は手元に戻るが、他のプレイヤーに譲渡しても効果は発生しない。主にスキルレベルを上昇させたり特殊な魔法や特技を覚えられるものが多い。装備型のアイテムは端末パネルによる操作で書物スロットにセットすることによって効果を得られる。セットしていなければ効果を得ることはできない。主に魔法や特技の威力を上昇させるものが多い。


 「ふ〜ん…、それじゃあ私達はまだINTの値が低くて、本の内容を理解するための知性が足りないからページが表示されないってわけか…。しかも自分の物にしないといけないのね。まっ、そうでないとNPCの人の家に踏み込んで勝手に本を読んじゃえばスキルレベルなんかが上げ放題になっちゃうもんね」

 「そういうこと。因みに今あんたが手に持ってる基本魔法強化書っていうのは、その名の通りファイヤーボールやライトニングなんかの基礎魔法の威力を上昇させる効果があるわ。さっき言った書物スロットにセットする装備型の本ね。あなたは無理だけどあのカイルって人ならもう読めるんじゃないかしら。基礎魔法も覚えてるだろうから恩恵も受けられると思うわ。父さんに言えばそれぐらいなら譲ってもらえるんじゃない。店でも10万円ほどで買えるし」

 「10万っ!。十分高いよっ!。僕達の世界じゃあ本なんていくら高くても3000円ぐらいだよ」

 「あんた達の世界の本に持ってるだけで効果を及ぼす本なんてないでしょう。高いのなら数千万…、場合によっては1億円以上する物もあるわ。お金じゃ手に入らない遺跡なんかで発掘されるものもあるし…。さっ、もういいでしょ。そんな読めもしない本さっさとしまってあんたの卵が載ってる本を探すのよ」

 「は〜い」


 リアに魔物の卵の本を探すように言われ、ナギとナミは魔術書を本棚にしまい豊富な資料の数々が置かれている本棚へと向かって行った。このゲームの属性の設定関するものや、現状把握できている魔物の種類のデータ、地形から発掘できる資源の種類など様々なものが並べられていた。主にゲームの内の設定に関するもののようだが、時間が空いたときに呼んでおくと為になるかもしれない。


 「えー…魔物魔物…、魔物の卵と。う〜ん…、見当たらないな〜。こんなに本があると逆に探すのが大変だね。あんまり整理されてないみたいだし…」

 「父さんったらいつも自分が読んだ後適当にしまっちゃうからアイウエオ順にしても意味ないのよ。一応ジャンルぐらいは棚によって分けられてるところに戻してくれてると思うんだけど、この前なんてダイエットの本が料理の棚に置かれてたからね。しかも肉料理のレシピ本に挟まれてたわ。あれじゃあダイエットするか美味しいお肉を食べるか迷っちゃうわよね」


 ナギとリアは互いに反対の棚を探していたが目当ての本は全く見つからないようだった。レイコの家の書庫は一応大まかなジャンル別には分けられていたのが、基本的に並べ方はバラバラで、細かいジャンル別やアイウエオ順には当然なっておらずナギ達は探すのに苦労していたようだ。そんな時ナミは資料とは全く関係のない本棚の列を探していたのだが…。


 「あれ…、そういえばナミはどこ行ったんだろう…。また関係ない本でも漁ってるのかな…」

 「ほっときなさいよ。普段から知識を身に付けていない人ほどこういうところに来ると舞い上がっちゃって本を漁るのに夢中になるのよ。どうせ読まないくせにずっと書庫を見て回ってるんだからほんと迷惑よね」

 「はははっ…。確かにナミは普段は本なんて読まなそうだね」

 「あっ、あったわよっ!、魔物の卵大百科。わぁっ、凄い。色んな形や色卵が一杯載ってる。あら…、この卵茹で卵にすると絶品って書いてあるわ。魔物さんには悪いけど食べてみたいな」

 「えっ!、一体どの列にいるのよ。魔物の資料に関する本は全部この本棚にあるはずなのに…。もうっ、父さんのアホっ!」

 「でも見つかって良かったじゃない。早くナミの所へ行こう」


 どうやらナミが探している本を探しだしたようだ。ナギ達の探していた棚より2列ほど奥の棚で見つかったようだが、何故資料のジャンルとはかけ離れた場所にあったのだろうか。ナギ達は急いでナミの居る場所へと向かった。


 “ダダダダダダッ…”

 「あっ、いた。この列だよ、リアさん」

 「ここって写真や絵画を集めた画集を置いてあるところじゃない…。父さんったらどうしてこんな場所にしまってるのよ」

 「あっ、来た来た。これでしょ、魔物の卵大百科って」

 「……本当だわ。それで合ってるわよ。でもどうしてこんな全く関係のない場所から探し出せたの。まぁ、多分偶然なんでしょうけど…」

 「私って昔っから感がいいのよ。だからちょっとこの時代の風景でもみたいな〜って思ったから、その直感に従ってこの辺りの本を物色してたわけ。探し物ってのは考えて探しても見つからないものでしょ」


 ナミが魔物の卵の本を見つけたのは画集を置いてある本棚の列だった。恐らくハールンが自身の書く物語の参考になる本を読んだ後適当しまったため全く関係のない棚にしまわれていたのだろう。ナミはこの世界の風景画が見たくなりこの辺りを物色していたようだが、その時偶然この本を発見したようだ。女性は直感が鋭いと言う話をよく聞くが、それはナミのように自分の感覚に正直に行動する人が多いからだろう。ナミは自分のしたいと思った通り行動するが、ナギやリアや自分が効率がいいと判断した効率をとるのだろう。


 「はぁ…、見つかったみたいだからなんでもいいわ。それじゃあ探してみるからその本とさっきの卵もう一回出してちょうだい」

 「うん、わかったよ」

 「えーっと…、確か鳥類かドラゴンって言ってたわよね…。鳥類のページはっと…」


 ナミから本を受け取ったリアは、ナギに再び先程の卵を出してもらい本を開いてその卵の載っているページを探し始めた。その本はかなり分厚く、何千ページとありこれまた探すのが大変そうだった。


 「あっ、実はこれデビにゃんに貰った卵なんだけど、デビにゃんが言うにはドラゴンみたいなモンスターが産むって言うよりエネルギーを集めて創り出してたみたいなんだ。だから多分ドラゴンの分類のところにあると思うんだけど…」

 「ドラゴンね、分かったわ。それと言っとくけどこの世界の魔物は一々出産なんてしないわよ。卵を作るのは成長段階が設定されている極一部のモンスターだけで、皆今あなたが言ったようなやり方で卵を作り出してるわ。モンスターなんてあなた達プレイヤーに次から次へと倒されていくんだから出産や子育てなんてしてる暇ないでしょう。このゲームでも雑魚モンスターは一定間隔置きに自動的に出現するから遠慮せず倒しちゃっていいわよ」

 「そ、そうなの…。そういえばさっきレイコさんがNPCに対しても同じようなこと言ってたような…」

 「もういいわよ、その話は。でもちょっと待って。それじゃあ卵を作り出すような強力なモンスターがこの世界にはこんなに沢山いるってことっ!。一体どれだけ広いのよ、このゲームの世界って…」

 「別にここに載ってるのは全部は出ないわよ。このゲームはあなた達の世界で言うランダム生成ダンジョンとかフィールドのようにゲームをやり直す度に割り振られる文明やフィールドの形、出現するモンスターから資源や遺跡まで何から何まで違うもになるわ。魔ぁこの本の中からだと一度に出るモンスターの種類は3分の1ぐらいじゃない」


 このゲームの世界はランダム生成システムによって毎回違う種類の文明やマップが作られるようだ。文明に関しては現実世界の神話や歴史などの資料を元にかなりランダム要素が強く含んだ状態で生成されるようだ。例えばナギ達の所属している文明はヴァルハラで女王はブリュンヒルデだが、場合によってはオーディンが国王になったり、固有の特性ががらりと変わることもあるだろう。完全にオリジナルの文明も作られることもあるようだ。モンスターや資源、遺跡についてもゲームをやり直すごとに出現するものが違うようだ。っと言っても今はこのナギ達のプレイしてる世界しか生成されていないが…。


 「3分の1か…。それでも凄い数ね。こんなに強い魔物がいるんなら私も魔物使いになってれば良かったわ」

 「何言ってるの。ここに載ってるほとんどの魔物は普通にプレイしてても9割以上は仲間になんてできないわよ。それこそチート級のフレンドミートでもないと絶対食べさせても効果ないから」

 「えっ…、でもそれじゃあナギがこの卵をゲットしたってことはもうその強力モンスターを仲間にしたようなもんってことぉっ!」

 「そうよ、だから私も興味が湧いてわざわざこのだだっ広い書庫まで来たんじゃない。じゃないとあなた達の為にわざわざこんなこと……ってもしかしてこれじゃないかしら。ちょっとその卵と比べてみて」


 どうやらナギ達が話している内にリアがナギの卵が載っているページを見つけたようだ。確認の為に本に載っている写真とナギの卵を良く見比べてみた。すると写真に記載されている卵の大きさや重量、真ん中にある水色のギザギザ模様などが一致しもうこのページで卵で決まりのようだった。


 「……どうやらこの卵で間違いないみたいね」

 「ねぇねぇ、一体どんな卵なの。早く私にも見せてよ」

 「あっ、ずるいよナミ。これは僕の卵なんだから僕が先に見るの」

 「うるさいわねっ。今本の内容を読み上げるからあんた達は黙って聞いてなさい。えーっと…、まずこの卵から産まれるモンスターの名前は…」


 本を見せてとせがんで来るナギとナミを黙らせてリアが本の内容を朗読し始めた。リアの声ははっきりと透き通っていてとても聞きやすかったためナギ達も大人しくなってリアの読み上げる本の内容を聞いていた。

 挿絵(By みてみん)



※卵から産まれるモンスターの名前…リトル・ホワイトドラゴン


 この卵から産まれるモンスターはリトル・ホワイトドラゴンと呼ばれる小さな白い体のドラゴン型のモンスターである。体が小さいためプレイヤーなどの人間を騎乗させることはできないが、戦闘能力は非常に高く、鋭い爪による攻撃や、強力な火属性のブレス攻撃を得意とする。レベルが上がるとホーリー・ブレスと言う強力な聖属性のブレス攻撃も使えるようになる。極まれにランダムな地形の場所が卵が発見されるが親となるモンスターの姿を見たものはいない。またこの卵を孵化させたものもそこまでリトル・ホワイトドラゴンを成長させた記録がないためこのドラゴンの成長しきった姿を知る者はいない。

 

 「だって…。中々可愛らしいドラゴンみたいよ。戦闘力も高そうだし良かったわね」

 「う〜ん…、じゃあやっぱりデビにゃんが見たって言ってたあのドラゴンが親モンスターだったのか…。暗くてよく見えなかったみたいだけど残念だな、デビにゃん。後少しでこの世界でそのドラゴンの姿をみた唯一の存在になれたかもしれないのに」

 「でも影だけでも見れたなんて大したもんじゃない。それよりちょっと説明短すぎない。他には何か書いてないの」

 「後は生まれた時のモンスターの平均ステータスと使えるスキル何かが書いてあるわ。これはデータに変換できるから端末パネルに送っといてあげるから後で確認しておきなさい。他のも送ってあげてもいいんだけどあんまりそれするとゲームの監視プログラム怒られちゃうんだからこれだけでもありがたいと思いなさいよね」


 その本によるとその卵から産まれるモンスターはリトル・ホワイトドラゴンと言い子供時の姿は分かるが成長しきった姿のデータは全くないらしい。本の内容はデータにして端末パネルに送ることができるようだ。今回はタダで送られたようだが、実際にデータを端末に登録しようとすれば実際にそのモンスターに分析の効果のある魔法を掛けるか、書店などで本を購入する必要があるようだ。また自国の国民の平均INTの値が上昇すれば自動で端末で閲覧できるデータが増えるようだ。


 「うん、ありがとうリアさん。おかげで助かったわ」

 「私も。この世界の色んな本が見れて楽しかったわ。ありがとうね、リアちゃん」

 「はぁ…、もう一々さんとかちゃんなんて付けなくてもリアでいいわよ。それじゃあ食卓に戻りましょう。もうお腹一杯だけど、デザートは別腹だしね。きっと母さんが何か用意してくれてるわ」


 目的を果たしたナギ達はレイコ達いる食卓へと戻って行った。レイチェルの言っていたような恋愛感情は芽生えなかったようだが、一緒に本を探しただけで大分打ち解けることができたようだ。ナギとナミの元にデビにゃんが現れたようにやはり他のNPCからもどことなく注目されているようだ。だがこのゲームに人類の滅亡が懸っていることはやはりデビにゃん以外のNPCは知らないようだ。リアは元々はプレイヤーのことが嫌いだったようだがデビにゃんとは反対に人類が滅亡した方がいいと思っているNPCもいるのだろうか…。




 “ガチャ…”

 「あっ、戻って来たぜ」


 大体30分程して食卓にナギ達が帰って来た。皆もうお腹が膨れ上がってしまったようでただ一人を除いて誰も食事をしていなかった。ナギ達が戻って来たのを見てデビにゃんがナギに卵について分かったことを問いただした。


 「ただいま〜、皆」

 「おかえりにゃ〜、ナギ。どうだったにゃ、少しは僕の見つけた卵について何か分かったかにゃ」

 「うん、一応生まれてくるモンスターの名前と姿は分かったよ。リアにデータを送ってもらったから後でデビにゃんにも見せてあげるね」

 「あら、あなたがそこまでしてあげるなんて珍しいわね。少しはプレイヤーの人と打ち解けることを覚えたのかしら。名前の呼び方も随分慣れ親しんだものに変わってるじゃない」


 レイコは部屋と戻ってきたナギ達の様子を見てすぐに打ち解けたのだと察した。実はナギ達を呼んだのにはプレイヤーのことを毛嫌いしてるリアの意識を少しでも変えようという作戦もあったようだ。


 「別に…、変にさんやちゃんなんて呼ばれてたら逆に気持ち悪くなっただけよ。皆にも普通に呼ぶように言っといて。それより母さん、今日はデザートはないの」

 「はいはい、ちゃんとあんたの好きなソフトクリームを用意してあるわよ。ちゃんとカップに入れて底にはコーンフレークも沢山入れておいたわ。じゃあ冷蔵庫から持ってくるわね。ナミちゃん、ちょっと手伝って」

 「あっ、分かりました」

 「セイナちゃんもあんまり無理して食べてないで残してもいいのよ。もう箸を置いてソフトクリームでも食べましょ」

 「“ムシャムシャ…、ゴックンッ…”お〜、デザートまであるのか〜。では一度箸をおいて、ゆっくりとデザートを味わってからまた食事を再開するとしよう」

 「あら…、セイナちゃんの胃袋って本当に底なしね。まぁいいわ、それじゃあ行きましょ、ナミちゃん」

 「は〜い」


 ただ一人まだ食べ続けていたというのはセイナで、皆が食べ過ぎで背中を椅子にもたれさせてお腹を押さえてる中黙々と料理を食べ続けていた。レイコがデザートを持ってくると言ったので一旦食事を中断したようだが、デザートを食べた後もまだ料理を食べるつもりだったようだ。


 「はい、ナミちゃんはこの半分を持っていって。私は残りを後から持っていくから」

 「うわ〜、美味しそうなソフトクリーム。バニラにチョコレートにストロベリー、クッキーバニラにメロンに抹茶まで色々あるわ。私はストロベリーにしようっと」


 レイコの用意したデザートはソフトクリームで、よく店で売っているもののようにカップコーンではなく、透明なプラスチックのカップに入れらており、下にはコーンフレークが敷かれていた。冷蔵庫ではソフトクリームは普通溶けてしまいそうだが、この世界では大丈夫のようだった。味の種類はかなり豊富に用意されているようだが、数は人数分しかなく好きな味を選ぶことができない者もでてきそうだ。


 「はい、お待たせ皆。色々種類があるけどどれにする。私はストロベリーいいんだけど…」

 “バッ…”

 「えっ…、ちょっとリア。何勝手に取ってるのよ。種類ごとに数が限られてるんだからちゃんと皆に了承してもらってから取りなさいよ」


 レイコの用意したソフトクリームを持ってきたナミが自分はストロベリーが食べたいと皆に了承を得ようとすると、横からリアが無言でクッキーバニラのソフトクリームをサッと取ってしまった。当然ナミは怒ったのだが…。


 「ごめんなさい、ナミちゃん。その子クッキーバニラじゃないと食べないのよ。一応クッキーバニラだけ一つ多く用意しておいたから残りを皆で分けてちょうだい。7種類が2個ずつあるはずだから。あっ、私とハールンはどれでも構わないわ」

 「わしは抹茶がいいのぅ」

 「僕はバニラでいいや」

 「私はナミと同じストロベリーがいいにゃっ!」


 皆の希望は上手い具合に別れ特に取り合いになることなく皆自分の好きなソフトクリームを選ぶことができた。皆お腹は一杯だったはずだがソフトクリームの甘さと程よい柔らかさが先程までの重い味の濃い料理のいい口直しになったとか幸せそうな顔をして食べていた。


 「う〜ん、甘くて美味しい♪。やっぱりデザートは別腹よね」

 「ほほっ、そうじゃのぅ。この抹茶のほろ苦さがたまらんわい。まるで恋愛でもしているかのようじゃのぅ…。ところでレイコさん。先程リアちゃんと結婚できるとか言っとたが、それは他のNPCが相手でもできるんかいのぅ。当然ナギができるということはわしもできるんじゃろう」

 “ピキッ…”


 なんとボンじぃがいきなり抹茶の味を恋愛に洗わせてリアとの結婚についてレイコに聞きだした。それに対してリアは不満を露わにし再び食卓に不穏な空気が漂い始めた。だがまだ結婚イベントの有無について確認しているだけのようなので何とか怒りを堪えていたようだ。


 「“ブフッ…”。いきなり何聞き出すんだ…たくっ、このじじぃはよ…」

 「え、ええ…、一応一部だけど16歳以上の異性の独身NPCが相手ならば、プレイヤーは誰でも結婚イベントを起こすことができるけど、皆も知っての通りこのゲームのNPCとの恋愛は現実世界の人を相手にするよりも遥かに難しいと思うわよ。でもまぁゲームの中だとプレイヤーの年齢は関係ないし、結婚できるNPCは皆寿命が設定されてないからボンじぃさんにもチャンスはあるかもね」

 「おおっ…、それはわしにとっては好都合じゃわいっ!。実は現実世界でもわしゃ女子おなごにはモテるんじゃが如何いかんせん歳のせいもあって恋愛対象として見てもらえなくてのぅ。結局結婚もできんかったし出来ればこの世界で第2の人生を歩んでみたいものじゃな…。どうじゃリアちゃん、わしで良かったら結婚してくれんか…」

 「……なんですってぇ…」


 いきなり求婚を迫って来たボンじぃに対してリアは断るどころか今にも怒りが爆発しそうなもの凄い目付きでボンじぃのことを睨みつけていた。これには流石のボンじぃもたじろいでしまいすぐに発言を撤回して謝りだした。


 「い、いや…、今のは冗談じゃ冗談っ!。軽はずみなこと言ってすまんかった。許してくれいぃっ!」

 「ふんっ…」


 ボンじぃがすぐに謝ったため何とかリアの怒りは爆発せずに済んだようだ。リアは何とか機嫌を直してクッキーバニラのソフトクリームを食べ直していた。


 「本当にこりねぇ奴だな、このじぃさん。その歳になってしかもゲームの中でまで色気づいてんじゃねぇぞ」

 「本当本当ホントホント。少しは身の程を考えなさいよ」

 「うぅ…、ナミちゃんまでそんなことを言うなんて…、わしはもう完全に自身を失ってしもうた…」


 レイチェルとナミの追い討ちの言葉にボンじぃは完全に自信喪失してしまっていた。まさかあそこまで露骨にリアに嫌がれるとは思わなかったのだろう。実際ボンじぃはその明るい性格で現実世界では家の近くの女子高生から人気だったのだが、流石に相手が悪かったのかもしれない。


 「あらあら、そんな落ち込まなくてもボンじぃさんにもまだチャンスはあるわよ。頑張って他のNPCにでも声掛けてみたら。あんまりしつこいと当然嫌われるけど…。ところでリア、ボンじぃさんはともかくナギなんてどう?」

 「……っ!」

 「ちょ、ちょっとレイコさんっ!、いきなり何言いだすんですかっ!」

 「あら、ナミちゃんはナギとは別に何でもないんでしょう。だったら別に気にしなくていいんじゃなぁい」

 「う、うぅ…、まぁそうですけど…」


 ボンじぃに続いて今度はレイコがリアに対して結婚の話題を振って来た。レイコはリアの結婚相手にナギを推しているようだが、李はどう思っているのだろうが。ボンじぃの時と違い驚いてはいるが怒ってはいないようだが…。


 「ほら、あんた達もう打ち解けちゃったみたいだし、あんたと結婚できるプレイヤーなんてナギぐらいしかいないわよ。あんたはNPCとは結婚できないように設定されてるんだから。ナギもどう?、もしリアと結婚してくれたらこの家に自由に出入りできるようになるわよ」

 「そ、そんな…。急にそんなこと言われても…」

 「あら、NPCと結婚したら他にも様々恩恵があるのよ。ステータスだって上昇するし、この家の資産の半分だってあなたのものになるんだから」

 「こ、この豪邸の資産の半分〜っ!。すげぇじゃねぇかっ、ナギ、こうなったら結婚しちまえよ」

 「それにさっきは牧場でこのゲームの中で淫らな行為は禁止って言ってたけど…、愛情度の上昇によってはいいこともしてもらえるようになるかもよ〜。もうこのゲームで男としてやることやっちゃえば〜」

 「な、なに言ってるんだよっ、レイコさんっ!。そんなのリアが了承するわけ…」

 “バアァァァァァァァァァンッ!”

 「へっ…っ!」


 レイコがナギにリアとの結婚を迫っていると突如として何かが叩きつけられる音が食卓に鳴り響いた。とてつもなく大きな音で、テーブルの上の料理が一瞬宙に浮かび上がっていた。


 「いい加減にしてっ!。私、プレイヤーの人となんて結婚する気ないからっ!。……もう我慢の限界、私、先に上に戻ってるわ」


 どうやら大きな音の正体はリアが自身の手でテーブルを叩きつけた音だったようだ。あれ程の大きな音を鳴らすほどだから余程怒っていたのだろう。リアはそのまま席を立って部屋を出ていこうとした。


 「あっ、リアっ!。ちょっと待って、母さんが言い過ぎたわ。でもプレイヤーとしか結婚できないあなたの将来のことを考えると母さんとても心配で…。それでナギだったら信頼できると思ってあんなこと言っちゃったの…」

 「そんなの余計なお節介よっ!。私は結婚なんてしなくても一生独りでも平気よっ!。それと母さんは反対してたみたいだけど、明日城に行って固有NPC兵士に志願してくるから。私はプレイヤーなんかに頼らなくても立派に生きていけることを証明して見せるわっ!」

 “バタンッ!”


 リアは部屋の扉を勢いよく閉めると2階にある自分の部屋へと帰って行ってしまった。だが食べかっただったソフトクリームはちゃっかり持っていったようだ。この分だと部屋でゆっくり食べた方が美味しいと思ったのだろう。


 「あ〜あ、怒って出てっちゃったよ。全部じじぃのせいだぞ」

 「な、なんでそうなるんじゃっ!。わしはちょっとリアちゃんと仲良くなれたらいいなと…」

 「ボンじぃさんは悪くないわ…。全部私のせいよ。あの子がナギに興味を示してくれたのが嬉しくてつい調子に乗っちゃった…」


 リアが出ていってしまったのはやはりレイコの責任が大きいだろう。ボンじぃにも落ち度があったがそこまでリアを怒らせてしまうものではなかったはずだ。


 「レイコさんはリアに幸せになってほしかっただけだにゃ。ナギみたいな良質なプレイヤーを見つけたら娘と結婚してほしいと思うのは親として当然にゃ」

 「(ナギってNPCから見たらそんなにいいプレイヤーなのかしら…。まぁデビにゃんのこともあるし、私も優しい奴だとは思うけどさ…)。ところでレイコさん、さっきリアが言ってた固有NPC兵士って何なんですか」

 「ああ…、ええっとね、固有NPC兵士っていうのは、NPCの中から選ばれた選りすぐりの兵士のことをいうの。普通私達のようなNPCが兵士に志願しても一兵卒として城の見張りをしたり、輸送の護衛とか下っ端の仕事しかさせてもらえないの。でも固有NPC兵士になるとNPCの兵士にもプレイヤーと同じ権限が与えられて、戦闘職、内政職、副業職の3つにも就けるようになるの。レベルも本来は自国の内政レベルやプレイヤー達のレベルによってほぼ固定されるんだけど、固有NPC兵士になれば自由に上げられるようになるわ」


 固有NPC兵士というのはプレイヤーとほぼ同じ行動が取れるように設定されたNPCのことである。元から設定されているNPCもいるが、一般のNPCが志願して選定に合格すれば固有NPC兵士と昇格することが出来る。固有NPC兵士となるとプレイヤーと同じように戦闘、内政、副業の3つの職に就くことができ、自由に城の外を出歩くことができるようになる。内政の仕事もプレイヤーと同じ条件で行うことができ、副業についても自分の意志で好きなものを選択できるようになる。NPCの中でも選りすぐり者しか固有NPC兵士となることはできない。


 「へぇ〜、じゃあリアって結構腕が立つってことか。俺の昔やってたMMOでもパーティの代わりにNPCキャラを連れていくことができたな。その時のゲームでもNPCの割に結構な腕でプレイヤーを連れて行くより効率がいいってことでゲームの下手なプレイヤーを泣かせてたんだが、このゲームだと上級プレイヤー並に強いんじゃないか」

 「ええ…、まぁ母として城の中でゆっくり内政の仕事でもしていてほしいんだけどね…」

 「なるほどねぇ〜。そう言えばリアは自分でレベルは300とか言ってたけど職業は何に就いてるんだ、レイコさん」

 「魔法剣士よ。普通はNPCは職業の変更は出来ないんだけど、固有NPCになれば転職できるようになるわ。最終的には剣聖になりたいって言ってたから、次は聖術師にでもなるつもりじゃないかしら」

 「すっご〜い、もう二つの職の特性を合わせた上級職についてるなんて…。もしリアが固有NPC兵士になったら是非パーティを組んでみたいわ」


 なんとリアの職業は最初から魔法剣士に設定されているらしい。魔法剣士とはその名の通り剣士と魔術師の職を合わせた職業のことで、両方の職業レベルを一定以上まで上げておかなければ転職できない。このゲームの総合レベルは今まで経験した職業のレベルの合計で決まり、リアならば現在の職業のレベルが剣士が152、魔術師102、治癒術師が32、魔法剣士が38で、その合計の324が現在の合計レベルということとなる。他の職業に転職した際に反映される以前の職業の特性やスキル、能力の補正はその職業のレベルどこまで上昇させたかで決まる。当然総合レベルが上昇するごとに必要な経験値は増えていくため、後半に転職した職業ほどレベルを上昇させるのが難しくなる。一つの職業の最大レベルは全て256に設定されている。


 「そうね、もし機会があったらリアもパーティに誘ってあげてちょうだい。多分あの子のことだから無茶して一人で外に出ようとすると思うのよ。あっ、パーティっていえばナギ、今日牧場で言った依頼はここいる皆の行くつもりなんじゃないの。もう皆に話してくれた」

 「あっ!、すっかり忘れてたや。実は皆にお願いしたいことがあるんだ」

 「お願い…」


 レイコに言われてナギは頼まれていたクエストのことを思いだし、詳細を皆に話した。依頼した本人であるレイコもその場にいたため説明はスムーズに進み、皆すぐに内容を把握したようだった。


 「へぇ〜、もうそんなクエストが発生してたんだ。私はいいわよ。レイコさんの頼みだし喜んで手伝っちゃうわ」

 「私もいいぜ。早く敵と戦ってみたかったしその集落強い魔物にでも襲われてねぇかな」

 「ちょっとレイチェルっ!、レイコさんの前で不謹慎よっ!」

 「いいのよ。実際そういったイベントもあるし、それくらいはNPCの仕事として当然だと思ってるからそんなことで怒ったりしないわ。そんなことより本当に強い魔物が出てくる可能性だってあるから気をつけてね」

 「おおっ、強い魔物だとっ!。それは経験値が沢山貰えそうじゃないか、ナギ、私も行くぞっ!」

 「わ、私も行きます…っ!。頑張って回復魔法で皆さんをサポートしますっ!」

 「わしも行こうかのぅ…。か弱いじぃさんをなるべき危険な目に合わせないように頼むぞい」

 「こんな時だけじじぃづらしてんじゃねぇよっ!」


 皆ナギの受けた依頼に乗り気だったようで次々と了承の返事をしていった。やはりMMOにおいてクエストは優先的にこなしておきたいのだろう。だがヴィンスとカイルはまだ返事をしていないようだった。


 「悪い…、ナギ。実は俺も漁業の管理をしているおっさんから似たような頼まれごとをしてたんだよ。こっちは1マス北の小さな森林の中で大きなクモ型のモンスターを狩ってこいって依頼だけどな。俺はそっちに行こうと思ってるんで今回はパスさせてくれ」

 「えっ…、でもそれだったらヴィンスだって仲間が必要なんじゃないの。僕ばっかり付いてきてもらうのも悪いし何人かはヴィンスに付いていってあげてよ」

 「それなら僕が付いて行くよナギ。僕はまだ返事をしてなかったからいいだろ」

 「うん、たまには別々に行動するのもいいかもね。でも…、カイルだけでいいの」

 「ああ、後は内政の仕事の時に知り合った奴で何人か目星は付いてるし、討伐の時は組まなかったけど知り合いも何人かいるしな。後は自分で何とかするからそっちは安心して行ってくれ」


 どうやらヴィンスもナギと同じくクエストを依頼されていたようで、カイルはヴィンスに付いて行くことになったが残りのメンバーは皆ナギに付いて行くこととなった。仕方のないことではあるがカイルとヴィンスが駄目だったことはナギにとって痛手だっただろう。ボンじぃならば別に構わなかったのだが。


 「よしっ、それじゃあ明日の朝チュートリアルが終わったことを知らせに行ったら朝の内に街を回って支度を整えようよ。僕も魔物使いとして活躍できるように加工した肉をいくつか用意しておきたいし…」

 「支度ねぇ……ってああぁぁぁぁぁっ!、私も思い出したっ!。おい、ナギ、お前確か鍛冶屋の副業を選択してたよな。スキルは何に割り振られてたんだっ!」

 「えっ…、確か大剣だったけな…」

 「よぉぉぉしっ!、でかしたぞナギ。これなら少し指導してもらえば行けるかもしれねぇ。なぁレイコさん、この辺りで大剣の鍛冶スキルの高い鍛冶屋はいねぇかな」

 「いるわよ。アルケミーブラックスミス店ていう夫婦でそれぞれ鍛冶屋と錬金術師をしてて、二つの職業を合わせて作る錬金装備を作成できる数少ないお店が。でも鍛冶屋に武器の作成を依頼するにはとんでもない大金が必要になるわよ。あなた達まだお給料も支給されてないんでしょう。それにとても序盤で払えるような金額じゃないわよ」

 「いいんだよ。指導だけしてもらって武器はこいつに作らせるから。っで、その店は一体どこにあるんだ」


 ナギに続き今度はレイチェルが何かを思い出したようで急にナギの鍛冶スキルとレイコに大剣の鍛冶の得意な鍛冶屋を教えてくれるように頼みだした。恐らく今日手に入れたサザンストーム鉱石を武器に加工するつもりなのだろうがいくら大剣に割り振られているとはいえナギのスキルレベルで作成できるのだろうか。


 「はい…、店の場所は端末パネルに送っておいたわよ。でももうすぐ夜の9時だし流石に閉まってると思うんだけど…」

 「いいよ、無理やり押し入って指導してもらうから。それじゃあいくぞナギっ!」

 「え、ええ…そんないきなり言われても……ってうわぁっ!」


 レイチェルはレイコに鍛冶屋の場所を教えてもらうとナギの首根っこを引っ張って物凄いスピードで部屋、そして玄関を飛び出していってしまった。


 「にゃぁぁぁぁっ、待ってくれにゃぁぁぁぁっ!。僕も着いて行くにゃぁぁぁっ!」

 レイチェルとナギが出ていったと思うとデビにゃんも急いで後を追って行った。

 「い、行っちゃたわね…」

 「もうっ、レイチェルったら舞い上がっちゃって。いくらレアな鉱物が見つかったからといってこんな序盤に武器加工できるようにはならないと思うんだけどな…」

 「へぇ〜、レイチェルの奴もうそんな貴重なアイテムを手に入れたのか。一体どんな鉱石なんだ」

 「えーっと…、確かサザンストーム鉱石って言ってたかな」

 「おや、それなら私も書庫の本で見たことがあるよ。確か風の魔力の篭った珍しい鉱物だったはずだが序盤に設置されている鉱山から採掘できるとはねぇ。レイチェル君は戦士だったから大剣に加工してもらうつもりだろうけど、それだとヴァイオレット・ウィンドっていうサザンストーム鉱石から作れる武器の中でも一番難しいものじゃなかったかな…。安定して作れるようになろうと思ったら大剣の鍛冶スキルが50くらいは必要だと思うけど…」

 「50っ!。それじゃあどう頑張っても今のナギには無理ね。レイチェルの奴焦って折角の貴重な鉱物を無駄にしないほうがいいと思うんだけど…」


 どうやらレイチェルのサザンストーム鉱石を大剣へと加工しようと思ったらスキルレベルが50程度ないと中々上手くいかないらしい。スキルレベルが20を超えた辺りから10%程の確率補正になるようだが、20以下の段階では補正が0%に設定されているので絶対に成功しないようだ。一応鍛冶にもリアルキネステジーシステムが採用されているので、プレイ技術次第ではスキルレベルの低い段階でも成功することもあるが、相当な集中力が要求されるためむしろ確率による完全に運任せのゲームの方が上手くいく可能性が高いだろう。果たしてナギはレイチェルのサザンストーム鉱石を無駄にすることなく無事武器に加工できるのだろうか。


 「さっ、じゃあ取りあえず残った人達のお部屋でも案内しようかな。リディちゃんたちも折角だから今夜は泊まって行きなさい。でも流石にそんなに部屋はないからプレイヤーの誰かと相部屋で寝てあげてね」

 「それじゃあ私はアイナの部屋がいいにゃ。アイナとはまだあんまりお喋りできてないからこの機会にもっと打ち解けておきたいのにゃ」

 「本当っ!、リディちゃん。私猫魔族皆可愛くて大好きだから嬉しいわ」

 「それじゃあ僕はヴィンスがいいにゃん」

 「え〜…、私も猫ちゃんと一緒に寝たかったな〜…。じゃあトララ、あんた私の部屋に来なさいよ」

 「にゃぁぁぁぁっ、僕だって男の子だにゃぁぁっ!。女子の部屋なんかでゆっくり眠れないのにゃ。だからカイルの部屋で寝ることにするにゃ」

 「あっそ…。猫のくせに変なこと気にするのね」

 「あっ、その前にお風呂沸かしてくるから先に入っちゃいなさい。この部屋の扉の向かい側の壁の手前が女湯で、奥が男湯になってるから男子は覗いちゃ駄目よ」


 ナミ達はレイコの勧めでお風呂に入ることになった。ゲーム内でも汗や汚れによる体の気色悪さは感じられていたのでナミ達女性陣にとっては嬉しいことだろう。レイコがお風呂の準備をしにいっている間にナミ達は食事の後片付けをしていた。セイナはただ一人黙々と料理を食べ続けていたのだが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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