finding of a nation 13話
現在のゲーム内の時刻は午後6時20分。ナギやナミ達、そしてこのゲームに参加しているプレイヤーの多くが内政のチュートリアルを終えそれぞれ自由に行動していた。チュートリアル終了の報告は明日の午前7時を回らなければできないようで、それまでは城郭の外へは出れられないようだった。ナギはボンじぃとリディと合流した後カイルに指定された魔法陣の前にある喫茶店のようなところでコーヒーを注文していた。
「ふぅ〜、中世や神話を舞台にしてるって言っても建物の中はほとんど現実世界と同じだね。電気や水道、ガスについては魔法の力を使用してるって設定である程度補っているみたいだよ。この喫茶店の明かりも照明魔法を使ってるみたいだし、調理用の火なんかも火属性の魔法を使用してて、ここに書かれているメニューもほとんど現実世界と同じものだね。なんか魔物の肉なんかを使った特別な料理も載せられてるけど、こういうのは何か特別な効果があったりするのかな」
「うむ…、まぁ確かにこのゲームはブリュンヒルデさんの言う通り動けば疲れるし、腹も減りよる。それにわしはさっき用を足したくなってトイレに行ったんじゃが綺麗な水洗便器じゃったぞい。どうやら生活感がよりリアルに感じられる分設備も現実世界と同じ感覚や要領で生活できるよう作られているようじゃ」
「そうなのにゃ。この世界は外観は中世や神話のように設定されているけど、実際に暮らす分にはナギ達が不自由しないようナギ達の世界の文明に合わせて設計されているにゃ。テレビはないけど電子レンジや冷蔵庫、コンロや換気扇なんかも魔法の力を使っていることにしてナギ達の文明とほぼ同じ物が使えるようになってるにゃ」
どうやらこのゲームの世界は外観や雰囲気は中世の時代に見えるように作られているようだったが、プレイヤーが直接生活するのに関わる一部の様式は現実世界と同じよう生活できるように変更されているようだった。代表的なものがトイレで、ボンじぃが言っていた通り最新の水洗便器が設置されており、温暖便座やウォシュレットなども備え付けられている。ナギ達が今コーヒーを注文しているレストランのメニューもとても中世の設備で作れるものではなく、現実世界のガスや電気、水道がなければ調理できないであろうものばかりだった。ただ戦闘においては剣と魔法をベースにした中世ファンタジーのものしか扱えず、当然戦車や戦闘機などは使えるはずもなかった。
「お待たせしました。こちらホットコーヒー2つとミルクココアでございます」
「あっ、ありがとうございます。えーっと…、リディがミルクココアだっけ」
「にゃぁーっ、違うにゃー。牛乳は大好きだけどチョコレートは食べると病気になっちゃうのにゃ。私はナギと同じホットコーヒーを頼んだのにゃ」
店員がナギ達の注文したメニューを持ってきたのだが、ナギはミルクココアをリディが注文した物と勘違いして怒られてしまった。店内での注文は端末パネルにメニューが表示され、その画面からパネルを推して注文するためリディが何を注文したかは分からなかったようだ。猫魔族の可愛らしいイメージから勝手にミルクココアを注文したと勘違いしてしまったのだろう。だがナギが頼んだのはホットコーヒーなのでミルクココアを頼んだのはボンじぃということになってしまうが…。
「そ、そうか…。その辺りは現実世界の猫の生態が反映されてるんだね。(だったらコーヒーも飲めない気もするんだけどな…)。あれっ…、ってことはボンジィがミルクココア頼んだのっ!」
「なんじゃ…、じじいはココアを頼んだらいかんのか」
「そ、そういうわけじゃないけど…」
「この年のなると苦いものより甘いものの方が美味しく感じるじゃ。昔は毎日職場でコーヒーをブラックで飲んどったんじゃがの。今思えば眠気を覚まして無理やり体を働かせるために飲まされてたような気がするわい。まぁ一番は和菓子と一緒に飲むあったか〜いお茶じゃがの。ココアは甘すぎてお菓子とはマッチせんのでな」
「な、なるほど…。僕もあんまりコーヒーは飲み過ぎないように気を付けるよ。あっ、それより皆が来たみたいだよ。お〜い、デビにゃ〜ん、ナミ〜、皆〜」
ナギ達のコーヒーが運ばれてきて暫くすると喫茶店の入り口の辺りから一組の団体客が入って来た。まさしくナギが今日パーティを組んでいたナミやセイナ達、そしてデビにゃんとその猫魔族の仲間達だった。ナミ達はナギ達の姿を見つけるとぞろぞろとナギ達の元へと向かって行き、ナギの仲間モンスターであるデビにゃんは一目散にナギの元へと駆けつけていった。
「あっ、ナギにゃっ!。ナギ〜、寂しかったにゃ〜」
「お帰り、デビにゃん。何だか凄く辛そうな顔してるけど…、デビにゃんは内政の仕事どうだったの」
「うぅ〜…、そこに気が付くとは流石僕のご主人様なのにゃ。実はとんでもないプレイヤーに出会ってしまって予定より倍近くも内政の仕事に時間を費やしてしまったのにゃ。本当はもっと早く終わらせて城内を見学したかったんだけにゃ」
リリスに錬金釜を破壊されてしまいもう一度設置しなおすことになったデビにゃんだったが、何とか日が暮れるまでには仕事を完了することができたようだ。一度設置したことで大体の要領を覚えていたらしい。リリスも手伝おうとしたようだったがその天然な性格が災いしてまた何度も錬金釜を壊しそうになってしまったため、何とか説得して帰ってもらったようだ。
「全く嫌になるよな。ゲームの中でこんなにしんどい仕事やらされるなんて…。私も途中までは楽しかったんだけど後半は疲れと汗で気持ち悪くなって死にそうだったぜ。ところでお前達、コーヒー何て頼んでるけど金持ってるのか。確かまだ一銭も私達プレイヤーには与えられてないはずだよな」
「それがプレイヤー達は今日一日だけ飲食についての料金が5000yen分まで無料になるみたいなんだ。僕は仕事で報奨金貰えたからいくらかお金は持ってるんだけど、折角だから無料で頼んじゃった」
「えっ!、それ本当かよ。実は私信じられない話だけど本当にゲームの中だけどめちゃくちゃ腹減っててさ。早く何か食いたいと思ってたところなんだよ」
「おおっ!、それは私も同感だ。まさかとは思ったのだが本当にお腹が空いてきてな。今にもお腹と背中がくっついてしまいそうなのだ」
「じ、実は私も何です…。現実世界よりも厳しい授業で頭を働かせすぎて早く甘い物を摂取したいです」
「何だ、皆同じだったのかよ。俺は漁業の仕事の後に何匹か焼き魚を食べさせて貰ったからまだマシだけど、それでもまだ食い足りねぇぜ。現実世界より仕事もしんどい分余計腹も減ってるんじゃないのか」
レイチェルが空腹を訴えると皆同じく我慢していたのか一斉に同意し始めた。ナギ達もお腹が減っていたのは一緒だったが皆が来る前に食べるのはまずいと思い飲み物しか頼まなかったようだ。
「でもそれならもう少し大きいお店に行った方がいいんじゃないの。ここじゃあこんなに大勢座れる場所もないし、メニューを見る限りあんまりお腹が膨れそうな物もないわよ」
「そうだな〜…。かといってそんな大きな店まだほとんど発展してないだろうし、何かいい場所ないのかよ、デビにゃん」
「ぼ、僕に聞かれても困るにゃ…」
“ピポンッ…”
「うんっ…、何の音だ」
ナミに今いる喫茶店では店の規模が小さすぎるのではと言われ、レイチェルはデビにゃんに他に規模の大きい飲食のできる店はないか問いただした。たが仲間モンスターであるデビにゃんはリディ達のように城下街に関する詳しい情報は知っておらず、リディ達も特にも何も言わないところを見ると心当たりの店はないようだった。その時ナギ達の中で誰かからよくアプリなどでよくメッセージのお知らせに使われる着信音のようなものが聞こえてきた。
「にゃっ!、多分ナギから聞こえてきたにゃ。私隣に居たから間違いないないと思うのにゃ。今のはきっと端末に誰からメッセージが送られてきた音にゃ。ちょっと開いてみてみるにゃ」
「えっ…、そうなのっ。でも誰からのメッセージなんて心当たりないなぁ〜。もしかしたら馬子さんかメリノかな。まぁ、いいや。取りあえず見てみよう」
どうやら着信音のようなものはナギから聞こえてきたらしく、ナギの隣に居たリディがはっきりと断言した。リディに自分にメッセージが来ていると言われ、ナギは端末パネルを開いてみることにした。プレイヤーならば先程の内政の仕事が終わった時にフレンド交換をした馬子かメリノの可能性が高いが…。
「えーっと…、一体誰からだろう。何々…、差出人の名前は…、レイン・コールマンっ!。レイコさんからだっ!」
「うん?、誰なの、レイコって。内政の時に知り合ったプレイヤー?」
「いや、この人は違うよ。プレイヤーじゃなくてNPC。さっき内政の仕事をしに行った時に出会った牧場の管理者をやってる人だよ。僕達畜産を選択したプレイヤーはレイコさんの指示で仕事をこなしてたんだよ」
「ふ〜ん…、私達のところで言う鉄男っさんと同じってことね。でも、どうしてNPCがナギにメッセージなんて送ってくるの。もしかして何か珍しいイベントなんじゃないのっ!。ほら、私達何だか猫魔族を仲間に引き入れたパーティメンバーだってことで自国の住民からの評価上がってるらしいし」
なんとナギへとメッセージを送ってきたのは先程のナギの内政の仕事を管轄していた管理者NPCのレイコだった。このゲームはプレイヤーだけでなくNPCからもメッセージが送られてくるようだ。通常のゲームではこういう場合何かイベントに関わるメッセージがほとんどだが一体どんなメッセージが送られてきたのだろうか。
「にゃぁっ!、このゲームでは意味もなくNPCからメッセージが送られてくることもあるにゃよ。例えば朝起きた時におはようってメッセージが来る時もあるし、今日の夕飯何食べたのっとかも聞かれる時もあるにゃ。そういう時は一言でもいいからちゃんとした返事を返すとそのNPCの好感度が上がって街の住民達の評判も上昇するにゃ。でも無視してると逆に好感度も評判も下がってしまうことになるから気を付けるにゃよ。そんなに頻繁に送られてくるわけじゃないけど、私も送る時もあるからその時は返事を返してほしいにゃ」
「へぇ〜…、流石シミュレーションってだけNPCもリアルな行動取ってくるみたいだな。でもそれだと恋愛シミュレーションと勘違いしてNPNの女を口説こうとする奴が出てくるんじゃねぇのか。そこのじじぃみたいによ」
「だ、誰もそんなことせんわい。このゲームのNPCは普通の恋愛シミュレーションに出てくるキャラクターのようにプレイヤーに都合よく設計されておらんからのぅ。迂闊に手は出せんわい。わしとしてはやはり現実世界でもお近づきになれる実際のプレイヤーの女性がいいのぅ」
リディが言うにはこのゲームのNPCは特に用事やイベントはなくても日常会話のようなメッセージを送ってくることもあるらしい。恐らく国の発展のためには住民であるNPCとの関係も重要ということで取り入れられたのだろうが、レイチェルの言う通り恋愛シミュレーションゲームと勘違いしてしまうプレイヤーが発生してしまいそうだ。その場合はNPCに不当な要求を迫ったとして住民達の評判が下がってしまい、場合によっては功績ポイントを引かれ、酷い場合には先程の内政の時に牧場でレイコに吹っ飛ばされた2名のプレイヤー達のようにNPCから攻撃を受けてそのまま死亡してしまう場合もある。
「そ、そんなことはどうでもいいからメッセージを開いてみるよ。えーっと…、“ナギへ。さっきは牧場での仕事お疲れ様。あなたの動物に対する接し方は目を見張るものがあるわ。きっとこのゲームの世界でもいい牧場主になれるでしょうね。っでここからが本題なんだけど、もう今日の夕飯どうするか決まった?。もし良かったら何だけど家に食べに来ない。結構広いから少しぐらいならお友達のプレイヤーがいても大丈夫よ。ついでにそのまま泊まって行ったら。じゃあ返事待ってるわね”だって…」
「にゃっ!、レイコさんだったら管理者に就いているNPCだからきっと家もすっごく大きいはずにゃ。ご馳走も用意してもらえるらしいだろうし、そんな人と仲良くなってるなんてナギったら現金な奴にゃ」
レイコから送られてきたメッセージは今夜の夕食へのお誘いだった。ついでにそのまま家に泊まって行くよう促しているが、ナギ達にとってはまたとない申し出だろう。更にリディが言うにはレイコの家は牧場の管理者というだけあってかなり大きいらしく、ナギ達全員を十分迎え入れることができるらしい。
「えっ…、そうだったの…。それだったら私もあいつに鉄男っさんなんて言うんじゃなかったわ。まぁいくら金持ちでもあんなむさ苦しいおっさんの誘いなんて受けたくないけど…」
「でもこれってめちゃくちゃラッキーじゃん。でかしたぞ、ナギっ!。それじゃあ早速プレイヤー8人ですがお邪魔していいですかって返事送れよ」
「にゃぁぁぁっ、僕達だって行きたいにゃぁぁっ!。一緒に鉱山を掘った仲なのに、僕のことを忘れるなんて酷いのにゃ、レイチェルっ!」
「わ、分かった…。分かったよ、トララ。私が悪かった。ちゃんとデビにゃんもリディもアットのことも忘れてないからそんなに怒らないでくれ。それじゃあプレイヤー8人と猫魔族が4人でOKだな。頼んだぜ、ナギ」
「分かった。じゃあ送ってみるよ」
レイチェルに促されナギはレイコへ返事のメッセージを返した。内容はナギ達とデビにゃん達猫魔族を合わせて12名で行ってもいいかというものだったが、レイコからはすぐに了承の返事が返ってきた。
「よ〜し、それじゃあさっさとそのレイコさん家へ急ごうぜっ!」
こうしてナギ達はレイコの家へと向かうこととなった。皆大分お腹が減っていたのか早くレイコの家へと行きたそうだった。コーヒーが残っていたナギ達はナミやレイチェルにせかされ口の中を火傷しそうになりながら急いでコーヒーを飲みほしていた。
「えーっと…、あっ、ここだここだっ!」
「おおっ、本当にでけぇ家じゃなぇか。私の地元も結構高級住宅街だったけどなかなかこんな豪華な家なかったぞ」
喫茶店を出たナギ達はナギの端末に送られてきたマップの案内を頼りにレイコの家の前まで来ていた。喫茶店からそれ程距離が離れていたわけではなかったが、レイコの家が転送用の魔法陣のすぐ側であったため更に時間を短縮でき、10分も掛からずにレイコの家へと到着していた。時刻は午後7時を回ったところだった。
「うっわ〜、庭も合わせると300坪ぐらいあるんじゃないかしら。立派な門も付いてるし…。って言うかレイチェルの地元が高級住宅街ってことにも驚きなんだけど…」
「一応親父が都内で会社を経営してるからな。たしかその辺りの豪邸でさえ大体100坪ぐらいだったかな…。東京は土地の値段が高いから敷地自体はそんなに広くない物件が多いからかもしれないけどな」
「田舎とかだと敷地だけなら300坪を超えてる家も多いけどね。敷地のほとんどが手入れの行き渡ってなくて雑草が生い茂っていて、家は一戸建てのオンボロなものばっかりだけど…」
レイコの家はかなりの豪邸で、家は三階建ての上敷地面積も広く、手入れの行き渡った綺麗な庭に、ナギ達の身長より高い2メートル以上の高さのある門が備え付けられていた。西洋風の豪邸で、東と西の塔のような区画と、それを繋ぐ中央の区画に分かれていた。塔のような区画は少し前面に突き出ており、玄関のある中央の区画は前方から見ると少しへこんでいるように見えた。全体的に白色の建物で、屋根の部分やベランダ部分は濃い目の茶色で塗装されていた。ナギ達が今いる門の周りは塀ではなく樹木で覆われており、敷地全体が小さい森林の中にあるようだった。場所はナギが畜産の仕事をしていた牧場から1キロ程歩いたところで、周囲にはまだほとんど建物が建っていなかった。
「まぁいいや、取りあえず入ってみようぜ」
「あっ、あそこに呼び鈴がありますよ。これも魔法のおかげなのか普通に電子式でボタンを押せばチャイムが鳴るようですね。しかもインターホンまで付いてますよ」
「本当だ。よし、じゃあナギが押してみてよ。レイコさんって人に直接招待されたのはナギなんだし」
「う、うん…。なんだかこんなに大きな家だと呼び鈴を押すだけでも緊張するな…」
ナギはカイルに促されてレイコの家の門の横の柱に備え付けられているインタホーンの呼び鈴を鳴らした。中世の時代だと普通は鐘のような物が備え付けられていてそれを鳴らすことで訪問を知らせるのだろうが、こんなに敷地の大きい家だと聞こえないだろうということで電子式の呼び鈴に置き換えられたのだろう。ゲームの中ならば中世のように鐘の外観のまま家の中まで聞こえるようにできただろうが、その方が不自然に感じてしまうプレイヤーが多いと判断したのだろう。ナギが呼び鈴を鳴らして暫くするとインターホンからレイコの声が聞こえてきた。
“ピン・ポ〜ン…”
“ガチャ…”
「あっ、もしもしナギ〜。案外早かったのね。お友達も沢山連れて来てくれたみたいだし、今門を開けるから入って来て、玄関の前で待ってるから」
“ガシャー…”
レイコがインターホンを切ると門が敷地の内側へと自動で開かれていった。日本の門や玄関は基本的に外開きだが海外では内開きのものが多かったようだ。どうやら構造上外開きの方が内開きのものよりもこじ開け易いからのようだ。日本で外開きが主流なのは強盗などの犯罪が少なく治安が良かったためだろう。このゲームでは門は内開き、玄関や家の中のドアは日本に合わせて外開きになっているようだ。この他の様式や文化なども日本のものに近く設計されているだろう。当然城や城郭の門も内開きで、これは敵に周囲を包囲された際外開きでは敵に門を塞がれてしまう恐れがあるからだ。内開きにしておけば敵に包囲されていたとしてもこちらから打って出ることもこともできる。
「うわ〜、凄い広い庭にゃ〜。私もこんなに広い庭のある家に住んでみたいにゃ。そしたら庭一面に綺麗なお花畑にしちゃうんだけどにゃ〜」
「わしは池のある庭がええのぅ。現実世界の家の庭は狭くて盆栽を飾っておくスペースを確保するだけで精一杯じゃ。わしは立派な錦鯉を飼うのが夢なんじゃがのぅ…」
「おら〜、二人共。庭なんかに見とれてないで早く来いよ。置いてくぞ〜」
“ガチャ”
「あっ、レイコさんが出てきたっ!。こんばんわ〜、レイコさん」
「こんばんわ〜」
「こんばんわにゃ〜」
ナギ達が門を潜って玄関へと向かっているとすぐにレイコが玄関の扉を開け顔を出した。レイコの姿を見たナギが挨拶すると、ナミやデビにゃん達も続けて挨拶をした。
「こんばんわ、ナギ、そしてヴァルハラ国のプレイヤー達に猫魔族の皆。さっ、遠慮しないで早く入って。もう夕飯の準備は出来てるから」
「あれ…、レイコさん、さっきと服装が変わってるけど…」
「そりゃもう仕事は終わったんだから当然でしょ。なに、労働者のNPCはずっと仕事着のままでいろってこと」
「そ、そういうわけじゃないけど…。なんだか印象が随分変わってたから驚いちゃって…」
「ふふふっ、冗談よ、冗談。普通のゲームだとNPCの私生活に触れることなんてほとんどないもんね。性格も牧場にいる時のように厳しくないから安心して寛いでいっていいわよ」
玄関から出てきたレイコの雰囲気は牧場にいた時と随分変わっていた。服装が私服に変わっていたためだろうが、どうやら心情も労働者として牧場と働いている時よりも大分変化しているようで、少し穏やかになっていたようだ。
「あれ、ナギ、何ボ〜っとしてんだよ。はは〜ん…、さてはお前レイコさんの私服姿に見とれてたな〜」
「むっ…」
「な、何言ってるんだよ、レイチェル…っ。僕はただレイコさんが僕の母さんに似てるから母さんもこれくらい優しかったらなぁって思ってただけだよ」
「へぇ〜、レイコさんお前の母親に似てるのかよ。まっ、これだけNPCがいりゃ知り合いに一人や二人似てる奴がいて当たり前か。もうゲーム世界の人間も現実世界もどっちがどっちか分かんないくらいそっくりだし」
上手いことレイチェルを誤魔化したナギだが実際レイコに見とれてしまっていたようだ。牧場の時とは違い、西洋の女性貴族のような淡い紺色のドレスを着たレイコの姿は非常に優雅なもので男性ならば見とれても仕方のない美しさだった。事実ボンじぃをはじめカイルにヴィンスも少し見とれていたようだ。ナミは少し不服そうな表情を浮かべていた。
「それじゃあ僕達も入ろうか、ナギ。いつまでも玄関の前に立ってるのもあれだし」
「う、うん…。そうだね」
カイルに急かされ一応先頭に立っていたナギはレイコに続いて家の中へと入って行った。玄関のある中央の区画の空間はかなりひらけていて、玄関から入った所は3階建ての天井部分まで見えていた。正面には上と上がる階段とその階段の上に2階と3階部分も見えていた。手前はテラスのようになっており、奥に来客用の部屋がいくつかあるようだった。一階部分の階段の奥には書庫や保管室があるようだった。
「うわ〜…、外もそうだったけど中はもっと凄いね〜。一体何部屋ぐらいあるんだろう…」
「ほ、本当ですね…。私、一度家族でこれぐらいの貸別荘に貸切で泊まったことありますけど、その時は一泊だけで30万くらい掛かったってお父さんが言ってました」
「さ、30万…、私の一か月の給料より多いじゃん…」
「さっ、食事はこっちの部屋でするから早く入って。今主人を紹介するわ」
レイコは主人を紹介すると言うと正面から見て西の区画の部屋へと入って行った。どうやらゲームの設定上結婚してるようだが、あのサラリーマン風のおっさんプレイヤーには悲しいことだろう。部屋へと入るのレイコの配偶者と思われる男性NPCがいた。ナギはもしや旦那の方まで自分の父親と似ているのではないかとドキドキしていたが、一目見る限りあまり似ていなかった。大人しいそうな雰囲気は似ていたが、ナギの父親の晴夫に比べると落ち着いていて、顔もおっさん臭さがなく、優しい青年といった感じだった。だがよく見れば昔見せられたナギの父親の若いころの写真にどことなく似ていた。ナギはその写真を見せられたときとても自分の父親と同一人物だとは信じられなかったようだが。家族に優しい性格なのは同じのようで、広い部屋の中央におかれている詰めれば20人ぐらいは座れそうなテーブルの上に食器を並べて食事の用意をしていた。
「あっ、あなた。皆が来たから紹介するわ。……はい、この人が私の旦那のハールン・コールマン。この人は街で作家の仕事をしていているの。あなた達で言う副業の著述家のことね。実はこの人この国ではかなり売れっ子の作家で、私がこんな豪邸に住めてるのもほとんどはこの人のおかげなの。いくら牧場の管理者だからってそれだけじゃこんな豪邸に住めないからね〜」
「なんだ…、流石に旦那さんの名前まで同じじゃないか」
「わ〜、素敵っ!。作家とかデザイナーとかの職に就いてる男の人って何だか憧れちゃうわよね。それにお金持ちでこんな大きなお屋敷に住まわせてもらえるなんて羨ましいな〜。私もこんな人と結婚したいわ」
「どうも、レイコの旦那のハールンです。私のことはそのまま名前でハールンと呼んでください。今レイコからも紹介されましたがこの街で作家の仕事をさせてもらっています。皆さんの中に著述家の副業に就いている方がいらっしゃたら少しは力になれると思いますので、気軽に声を掛けてくださいね」
「あっ、私著述家の副業を選択してますっ!。本を読むのが好きでこの職を選んだんですけど、実際に本を出したことなんて勿論なくて、文章もほとんど書いたことがないのでこの世界で書物がどんな役割を果たしているのか後で教えてください」
レイコの配偶者の男性の名前はハールン・コールマンと言うようで、ハールンはこの街で作家の仕事をしているようだった。作家の仕事をしているNPCはハールンのように有名になり豪邸に住んでいるような者、この者達は街で流行となるような文学や哲学、物語の本を書いて街の人々の教養や幸福度に貢献している。その他には魔術師も兼ねていて魔術書を書いている者もいる。その所持しているだけで魔法の威力を上げたり、詠唱時間を短縮したりできる。更にはその魔術書を読むことで習得できる魔法もある。他には各スキルを上昇させる本を書いている者、このゲームをプレイする上で貴重な情報を記している本を書いている者もいる。自国のNPCだけでなく、むしろプレイヤーに対して有効な書物を書く作家もいるということだ。
「ああ、食事が終わったらゆっくり話をしてあげるよ。えーっと…」
「あっ、私はアイナ・マーストリヒトと言います。自己紹介も済んでないのに気安く話掛けてすみません…」
「あ〜確か猫魔族を仲間にしてくれたプレイヤーの一人だね。それじゃあそちらの方達も…」
「はい。それじゃあ皆、今度はこっちが自己紹介しようか」
ハールンに自己紹介をされたナギ達はカイルに促されこちらそれぞれ自己紹介をした。どうやらハールンも評判システムの影響のおかげでナギ達のことを事前にある程度知っているようだった。デビにゃんと猫魔族の仲間達も自己紹介が終わり、ナギ達は食卓へとつくことになった。
「そう言えば皆団体賞にも入賞していたパーティメンバーだよね。どうりで記憶に鮮明に残されているはずだ。君達のことを全く知らないNPCはもうこの国にいないんじゃないかな」
「じゃあ最後は私ね。改めて自己紹介するわ。私はレイン・コールマン、レイコって呼んでね。そこのナギが今日内政のチュートリアルを受けに来たこの近くの牧場の管理者をしているわ。もし良かったら皆も働きに来てね。序盤の内は人口を増やすために畜産の内政値は重要だからね。さっ、それじゃあお互いに自己紹介も終わったし、皆椅子に掛けて掛けて」
レイコに促されるままにナギ達は食器の並べられたテーブルへと順番に着いて行った。台所に近い上座の部分、部屋の奥側に面する席にはレイコとハールンが座った。そのテーブルの側の中央にハールンが座り、レイコは正面から見てハールンの右側に座っていた。ハールンの左側の席は空いているようだが、まだ誰か来るのだろうか。ナギ達はまずドア側の席ににナギとデビにゃんを含めた5人が座り、次に南側、玄関方向の窓側の席にリディ達猫魔族の3人が座り、ナミやセイナを含む残りの4人が西の窓側の席に座った。
「はい、皆席に着いたわね。あっ、いけない。もう一人ゲストを忘れてたわ。私は2階から娘を連れてくるからあなたは皆に食事を並べてて頂戴」
レイコは娘を呼びに行くと言うと慌てて部屋を出ていった。ハールンは言われた通り奥にある台所へと向かって行きレイコが用意した食事をテーブルへと運び始めた。
「娘さんもいるんだ。レイコさんの若そうな容姿を見る限りまだそんなに大きくないだろうからまだ幼稚園か小学生に上がったくらいかしら。きっと可愛いだろうな〜。見るのが楽しみだわ。あっ、ハールンさん、ごめんなさい。私も手伝います」
「あっ、私も手伝います」
「私もにゃ」
「しゃあねぇ、私も女だし手伝うとしますか…。うん?、セイナは手伝わないのかよ」
「うむ、4人もいれば大丈夫だろう。私は今日を覚えたスキルの確認をしているからお前達に任せた」
「へいへい…」
「(レイコさんの娘さんってどんな子だろう…。まさかまた家の妹に似てるってことはないよね…)」
ハールンが食事の用意をしに行くとナミにアイナ、そしてレイチェルにリディが手伝いを申し出ていった。女性ならば当然の行動かもしれないが、セイナはそんなのこと一切気にせずに自身の端末パネルを開いて自分の能力や覚えたスキルを確認していた。一般の男女の感覚に囚われない辺りやはり芸能人として人とは並外れた感性を持っているようだ。あまり大人数で手伝いに行っても迷惑になってNPCの評価を下げてしまうだけだということも理解していたのだろう。
「はい、じゃあこれを持っていって」
「うっわ〜、すっごい美味しそうなチキン。一羽丸ごと焼いたやつなんて私始めてみたわ」
「こっちは大盛りのパスタですよ。ナポリタンにミートソース、カルボナーラにぺペロンチーノまで色々ありますよ」
「じゃあ私がカルボナーラとぺペロンチーノ持っていってやるよ」
「にゃっ、私はサラダを持っていくにゃ。生ハムサラダに甘エビサラダ。ドレッシングも色々あるのにゃ」
ハールンとナミ達が運んできた料理はあっという間にテーブルを埋め尽くしてしまった。丸焼きのローストチキンに大量のパスタ、生ハムや甘エビ、茹で卵のスライスやローストビーフの載せられたサラダもあった。ご飯ものはピラフで、スープもあるようだった。他にも色々あったが、一体レイコはいつの間にこれ程の量の料理を作ったのだろうか。
「うっわ〜、それにしても凄い量だな〜。レイコさんと別れてからまだ1時間ちょっとしか経ってないのにどうやってこんなに作ったんだろう…」
「はははっ、まぁ僕達はゲームのキャラクターだからね。必要に応じて調理の過程を素っ飛ばすこともできるのさ。でも君達プレイヤーはこの世界で料理を作る時はちゃんと調理の過程を踏まなきゃいけないよ。調理スキルと調理技術によってできる料理の質が決まるからね」
「はいはい、またお決まりのリアルキネステジーシステムでしょ。あれのおかげで戦闘は物凄く楽しくなったんだけど、まさか内政の仕事や料理にまで適用してくるとは思わなかったわ」
「それは仕方ないのにゃ。ナギやナミ達の世界は過程を如何に工夫したり努力したりすることで結果が大きく変化するにゃ。それによって場合によっては本来の実力の何倍もの力を発揮できるのがナギ達の世界の生命体、特に人類の大きな特徴なのにゃ」
デビにゃんが言うにはリアルキネステジーシステムがゲームに採用されているのはナギ達の世界の生命体の力をより引き出しやすくするためらしい。デビにゃんの言っていた電子生命体になるための試練とは、現実世界の要素を電子世界に投影することなのかもしれない。そのためにこのfinding of a nation 、そしてナギ達の世界のゲーム等は出来る限り現実世界の要素を反映させて製作されていたのかもしれない。
「にゃぁーっ!、そんな事より早く食べたいにゃぁーっ!。もうお腹ペコペコにゃ」
「僕もにゃん。お昼食べたお魚さんだけじゃ全然足りないのにゃんっ!」
「もうちょっと我慢するにゃ、トララにアット。もうすぐレイコさんも下りてくるはずにゃ」
トララとアットは目の前に出されたご馳走を前に空腹を我慢しきれずにいた。リディにレイコが戻ってくるまで待つよう言われたのだが、娘を呼びに行ったレイコはどうなったのだろうか。
“コンコンッ…”
「…っ、誰…、母さん」
「あっ、リア。悪いんだけどちょっと出て来てくれる」
「………」
ハールンやナミ達が料理を運んでいる頃、レイコは部屋のドアをノックして娘を呼び出しているところだった。レイコの娘は部屋から出てくるように言われると、呼んでいた本を机に置いてドアの方へと向かって行った。
“ガチャ…”
「何…」
「あのね、実はこの国のプレイヤーの人達が夕飯を召し上がりに来てくれてるんだけど、あなたも一緒に食べに来なさい。夕飯まだ食べてないでしょう」
「いいわよ…、別にお腹減ってないし」
「何言ってるのっ!。これからこの国の為に尽くしてくるプレイヤーの皆さんが来てくれてるのよ。母さん先に下りてるから準備が出来たらあなたも来るのよ。くれぐれも失礼のないようにね」
「あっ、ちょっと母さん…」
レイコの娘は何やらナギ達の食事に乗り気ではなかったようだが、下に下りてくるように言うと断る暇もなくレイコが階段を下りて行ってしまったため、渋々下りていくこととなった。ナミは小学生ぐらいだと言っていたが、それにしては口調がかなり大人びているようだったが…。
「はぁ…、プレイヤーの皆さん…か。どうせ碌な人達じゃないんでしょうね…」
レイコの娘は深くため息をつくと部屋へと戻り食事に行くための準備をし始めた…。
“ダダダダダダッ…、ガチャ…”
「は〜い、皆お待たせ〜。もうすぐ娘も下りてくると思うから私達は先に食べてましょう」
勢い良く階段を下りてくる音が止んだとともにナギ達のいる部屋の扉が開き、レイコが戻って来た。レイコの娘はもう少したら下りてくるようで、レイコは皆に先に食事を始めるよう言った。
「わ〜い、やったにゃぁぁぁっ!。僕その鶏の丸焼きが食べたいにゃ〜」
「僕は和風パスタがいいにゃん。あとローストビーフのサラダも欲しいにゃん」
「もうっ、ちょっとはしたないにゃ、トララにアット。同じ猫魔族して恥ずかしいからちゃんとお皿に自分の分を取ってから食べるようにするにゃ」
「あっ、ちょっと待っててね。今チキンを取り易いようカットするから」
「じゃあパスタとサラダは私が取ってあげるにゃ」
トララとアットは出された料理をそのまま食べようとしてしまいリディに怒られてしまった。それをを見たレイコが気を利かしてチキンを全員に行き渡るような大きさにカットし始めた。アットはリディに自分の皿にパスタとサラダを取ってもらい、ナギ達他のプレイヤー達も自分の好みのものを皿に取って総勢14人の会食が始まった。
「いっただきま〜す…“モグモグッ…っ!”。美っ味しぃ〜このチキンっ!。表面の皮はパリッと焼けてるし火も中までしっかり通ってるわ〜。味付けも最高ね。濃厚な割にあっさりしてて凄く食べやすい照り焼きソースだわっ!」
「“モシャモシャ…、ゴックンッ…”はぁ〜、このパスタも最高に美味しいぜ。こんな美味いものがこんなに沢山食べられるなんてこのゲームの抽選受かって本当に良かったぜ。鉱山で岩堀させられたときはどうなるかと思ったけどよ」
「ふふふっ、喜んでくれて嬉しいわ。でもまだまだこんなもんで終わりじゃないわよ」
「えっ…、それってまだ料理が出てくるってことですか…」
「実はそれがあなた達に来てもらった理由でもあるのよね。もう来るころだと思うんだけど…」
「…?、どういうことだろう」
テーブルの上はすでに料理で一杯になっているにも関わらずレイコはまだ料理が出てくるようなことを示唆していた。しかもそれにはナギ達を呼び寄せた理由が関係しているとは一体どういうことであろうか。
“ピン・ポ〜ン…”
「すみませ〜ん、コールマンさんのお宅でよろしいでしょうか。注文されたものを運んできたんですけど…」
「あっ、来た来たっ!。ちょっとプレイヤーで何人か一緒に出て来てくれる」
「えっ…、別にいいですけど…」
ナギ達が食事を楽しんでいると再びレイコの家の呼び鈴のベルがなった。どうやら何か宅配が来たようだが、何故かプレイヤーの内何人かも一緒に出るように言われてしまった。ドアに近かったナギとレイチェルが出ることになったのだが…。
「は〜い、今門を開けますから玄関まで入って来てくださ〜い」
レイコはインターホンに出ると宅配業者の人に玄関まで入って来てくれるよう言った。レイコが玄関を開けて待っていると何やら5枚ほどの広い薄めの紙の箱と、その上にいくつもの小さな紙の箱を積み重ねて、それを両手で抱えて宅配業者の人が近づいて来た。
「な、なんだっ…」
“ドスっ…”
「はいっ、ご注文頂いたピザ7枚、それにハンバーガにポテト、グラタンもお持ちしました」
「ピ、ピザ〜っ!」
なんとその宅配業者が持ってきたの大量のピザとハンバーガやポテトだった。ピザの入ってる箱はまるで現実世界のものと同じだった。更に宅配に来た人の服装もピザ屋の店員そのもので、現実世界のピザのデリバリーサービスそのものだった。
「え〜…、お会計が合計で11800円になります」
「お願いっ!、あなた達今日一日5000円まで飲食料金無料なんでしょ、それでお支払してくれない」
「べ、別にいいですけど…、これだと一人足りないよな。私もう一人プレイヤーの奴呼んでくるよ」
「あっ、ちょっと待って。他のも来たみたいだわ」
「ええっ!、まだ頼んでたんですかっ!」
2人分の無料料金では足りなかったので、レイチェルがもう一人プレイヤーを呼びに行こうとすると玄関の方から突如として更に2人の宅配員と思われるNPCが近づいて来た。どうやら宅配NPCは転移の魔法で自国の領内ならば自動でワープできるらしい。二人ともピザに比べるとかなり高級そうな箱を持っていたが一体に何を頼んだのだろうか。
「うぃ〜す、ご注文を承りましたヴァル寿司で〜す。特上寿司セット5人前、超特上寿司セット2人前お持ちしました」
「ニーハオっ、私ヴァルチャイナ店のものね。ご注文中華フルコースセット5人前お持ちしましたね」
「これは3人じゃとても足りないわ。悪いけどレイチェル、もうプレイヤー達全員連れて来てくれない。足りない分は仕方ないけど私の方で出しとくか…」
「わ、分かりました…。てかこんなに食べきれんのかよ…」
なんとレイコは他にもデイバリーサービスを頼んでいたようで、更にお寿司と中華の出前が宅配されてきた。とても3人分で払いきることは不可能だったのでレイコはもうプレイヤーを全員連れてくるようにレイチェルに言った。ピザ、寿司、中華の出前の合計は58300円と無料分の予算をかなりオーバーしてしまっていた。8人の無料分で足りない分はレイコが出したようだが、果たしてこれだけの量を食べきれるのだろうか…。ナギ達は少し複雑な気持ちで料理を食卓へと運んで行った…。




