finding of a nation 137話
リア達の助けもあって無事ラディアケトゥスの封印されている建物へと突入できたナギ達は入ってすぐ階段を見つけ地下に向かって駆け下りていた。その階段は螺旋状に続いておりこのままいけばグルグルと回りながら建物の真下へと辿り着くことになるだろう。パンナが言うにはこの建物に他に行く道はなくこの階段を下りていけばラディアケトゥスの封印されている最深部まで一直線だということらしい。既にナギ達は結構な距離を下りて来ていたのだが最深部まではまだまだ階段を下りて行かねばならぬようだ。
“ダダダダダダッ”
「もうぉーっ!、一体どこまで続いてるのよ、この階段はぁぁーーっ!。早くラディアケトゥスを復活させないと外で戦ってるリアやデビにゃん達が危ないっていうのにっ!」
「焦る気持ちは分かりますがこの階段もう暫く続きます、ナミさん。ラディアケトゥスの封印されている場所まではこの階段を下りて行けば一直線なのですが……途中に一カ所だけ大きく開けた空間を通過することになります。そこにはこの神殿の守護者であるラディアケトゥスを讃える為の祭壇があるのですが、もしかしたら私達の行く手を阻む為敵のモンスターが配置されているかもしれませんので気を付けてください」
「ふんっ!、もしそんな奴等がいてもあっという間に私達が片付けちゃうから安心して、パンナさん。その代わりパンナさんとナギ達はなんとしてもラディアケトゥスの封印されている場所まで辿り着いて復活させてあげてよね」
「はいっ!、私も長い年月を越えてラディと再会できるのを心待ちにしていますっ!」
「だけど外で戦ってる皆は大丈夫かな……。特にデビにゃんとシャインはあんな危険な囮役まで引き受けて……。僕達がラディアケトゥスの封印を解くまで皆無事でいてくれればいいんだけど……」
「そうね……。決死の覚悟であいつ等と戦ってくれてる皆の思いに報いる為にも急いでラディアケトゥスの元に向かわないと……。もし私達がモタモタしてる間にリアやデビにゃん達誰か一人でもやられたりしたら私達を信じて送り出してくれた皆に申し訳が立たないわっ!。待っててっ!、リアっ!、デビにゃんっ!。今すぐ私達がラディアケトゥスを復活させてあの調子になったサメ共をギャフンと言わせてあげるからっ!。……うおぉぉぉーーっ!」
「あっ……ナ、ナミ……っ!」
“ダダダダダダッ”
「もうぉ〜、一人でそんなに張り切って進んでも誰もあなたのスピードに付いていけないわよ〜、ナミちゃ〜ん。ラディアケトゥスを仲間にするにはあなたじゃなくて私やナギ君達がいないと駄目なんだからね〜」
ラディアケトゥスの封印されている場所を目指して階段を駆け下りていく最中ナギ達の誰もが今も外シャドー・シャークドラゴンと配下のサメ達と死闘を繰り広げているであろう者達のことを心配していた。特にブラッド・ミートを手にし囮となったデビにゃんは大量のサメ達に今も追い回されているはずだ。更にナギ達がこの建物へと侵入してしまったことでシャドー・シャークドラゴンももう建物の周囲の警戒を止めカイルやリア達を殲滅すべく全力で攻撃を仕掛けているだろう。皆を救う為には逸早くラディアケトゥスの封印を解きその力を借りるしかないが果たしてカイルやリア達はそれまで持ち堪えることができるのだろうか……。
「にゃぁぁぁぁーーーっ!、もうブラッド・ミートは手放したのになんで僕達の方ばっかり追ってくるのにゃぁぁぁーーーっ!。しかもいつの間にか追って来てるのがあの一番でっかい奴に変わってるしにゃぁぁーーーっ!」
“グオグオッ!”
無事中央の建物へと突入したナギ達がラディアケトゥスの封印されている場所を目指して急いでいる頃地上ではデビにゃんとシャインが怒りが心頭に達したシャドー・シャークドラゴンに追われ、他の者達はその配下のサメ達と死闘を繰り広げていた。デビにゃんの手には既にブラッド・ミートは握られておらずナギ達が突入するのを確認するや否やすぐさま投げ捨てたようだが、他のサメ達は追うのを止めてもナギ達を建物へと侵入させた一番の原因となったデビにゃんとシャインをシャドー・シャークドラゴンは決して許すつもりはないようだった。デビにゃん達は何度もそのシャドー・シャークドラゴンの巨大な口に一呑みにされそうになりながらもシャインが巧みに体を旋回させギリギリのところで躱しながら懸命に逃げ回っていたのだが、このままではいずれ逃げ回る体力も尽き敵の餌食になってしまうだろう。リアやカイル達も窮地に陥っているデビにゃん達の救出に向かいたかったのだが他のサメ達の相手で手一杯で中々その余裕はなかったようだ。
「はあぁぁぁぁっ……パイロ・ブレイド・スラッシュっ!」
“グオォォォォッ……”
「くっ……このままじゃあいずれデビにゃん達はあいつの餌食に……。あなた達も必死でラディアケトゥスのところに無向かってるだろうけど……急いで……ナギっ!、ナミっ!」
“グオォォォォッ!”
「ひえぇぇーーっ!、やっぱりこんな損な役引き受けるんじゃなかったにゃぁぁーーーっ!。このままじゃあ僕達はいずれあいつに食べられてしまうにゃぁぁーーーっ!。かくなる上は……」
“グオッ?”
「どこでもいいからここに来るのに皆が通って来た通路に逃げ込むのにゃぁぁぁーーーっ!、シャインーーっ!。あいつの巨体なら絶対通路の中には入って来れないはずにゃぁぁーーっ!」
“グオグオッ!”
「よーしっ!、行くにゃぁぁーーっ!」
“グオォォ〜〜ンッ!”
「……っ!、待ちなさいっ!、そっち行っては駄目よっ!、デビにゃんっ!、シャインっ!」
「えっ……」
“バアァァーーーーンッ!”
「にゅわぁぁーーーんっ!」
“グオォォ〜〜ンッ!”
シャインが上手く旋回して敵を振り切った隙にどうにかこのピンチを脱しようとここに来るまで自分達が通って来た通路へと逃げ込むよう促したデビにゃんであったが、シャインが通路へと突入しようとすると突然何かにぶつかったような衝撃が走り通路へと入れずに弾き飛ばされてしまった。一見通路への入り口にはデビにゃん達の侵入を阻むものは何もなかったがどうやら見えない壁のようなものが張られているようだ。しかもその壁は向こうからこちらへと来るときは何事もなく通り抜けることができるようだが、一度この空間に入ってしまえば今のデビにゃん達のように決して逃げ出すことを許さないよう全ての通路の入り口に張り巡らされているらしい。リアはそのことに気付いており慌ててデビにゃん達に注意を呼び掛けたが間に合わなかったようだ。そして壁に弾かれた動きの止まってしまったデビにゃん達の後ろからはこの好機を逃さんとばかりにシャドー・シャークドラゴンが大口を開けて迫って来ており……。
「にゃ……にゃぁ……。まさかこっちから向こうに戻るの防ぐ為に見えない壁が設置されているなんてにゃ……。そう簡単にボスのいる場所から逃がさせて貰えないってことかにゃ……」
“グオォッ……”
「……っ!。何ボサッとしてるのっ!。早く逃げないとあいつがすぐそこまで迫って来てるわよっ!、デビにゃんっ!、シャインっ!」
「……っ!、そ、そうにゃ……。こうなったら急いでまた地上に身を隠すに行くのにゃ、シャインっ!」
“……っ!、グオグオッ!”
「えっ……」
“グオォォォォッ!”
「にゃあぁぁぁーーーっ!、そんなこと言ってももう間に合わないにゃぁぁぁーーーっ!」
シャインに促され咄嗟に後ろを振り向いたデビにゃんだったが時すでに遅しシャドー・シャークドラゴンの鋭利な歯が並ぶ悍ましい大口が目の前まで迫って来てきた。今からはではもう逃げるのも間に合わずデビにゃんとシャインは成す術なくただ泣き叫んでしまっていた。デビにゃん達はこのままシャドー・シャークドラゴンの餌食となってしまうのだろうか……。
「えーいっ!、ウィンド・リムーブッ!」
「……っ!、にゃぁっ!」
“ビュオォォーーーンッ!”
「うおぉぉぉーーっ!、こ、この風はぁぁーーーっ!」
デビにゃん達がシャドー・シャークドラゴンの大口に飲み込まれようとする直前、突如どこからか強い突風がデビにゃん達に向けて吹き抜けて来た。その風は勢いがよくとも柔らかでまるで風のレールでも敷いたかのようにデビにゃん達を乗せてシャドー・シャークドラゴンの元から離れるよう運んでいった。どうやらシルフィーがウィンド・リムーブの魔法をデビにゃん達に向けて放ったようだが、その後もシルフィーはデビにゃん達の元に合流しそのまま援護を続けるつもりのようだ。恐らく塵童が自身よりもデビにゃん達の援護に向かうよう差し向けたのだろう。
「大丈夫っ!、デビにゃんっ!、シャインっ!」
「にゃぁぁーーーっ!、助かったにゃぁぁぁーーーっ!、シルフィーーーっ!。あと少しのところで僕もシャインもあいつに食べらちゃうとこだったにゃぁぁーーっ!」
“グオグオッ!”
「お礼なんていいから早く逃げないとまたすぐにあいつが追って来るわよ。私の魔法で移動速度を上げてあげるからナギ達がラディアケトゥスを復活させるまでなんとかあいつから逃げ切るのよっ!」
「えっ……それは有難いけどこのままあいつから逃げ回るより地上に身を隠した方が安全じゃないかにゃ。魔法でスピードが上がったからといってあいつに追い付かれないとは限らないし……」
「駄目よっ!。今のあいつは見るからに怒り心頭だし私達が身を隠したら今度は地上で配下のサメ達と戦ってるアイナやリア達皆に手当たり次第襲い掛かるに違いないわっ!。サメ達の大群の相手だけでも皆手一杯なのにそこへあいつが襲い掛かって来たりなんかしたら下手したら全滅よっ!ここは皆の為で私達であいつを引き付けておくのっ!」
「な、なるほど……分かったにゃ、シルフィーっ!」
“グオグオッ!”
「んっ!、デビにゃんもシャインも物分かりがいいようでよろしいっ!。それじゃあ私の“サイクロン・ターボ”の魔法を掛けてあげるからなんとしてもあいつから……」
“グオォォォォッ!”
「来たわね……行くわよっ!、サイクロン・ターボッ!」
“パアァァ〜〜ンッ!”
「……っ!、い、今ので僕達の移動速度が上昇したのかにゃ……」
「シャインの背中に乗ってるだけのデビにゃんには効果の意味があんまりないけどね。それじゃあシャイン、この後も私がサポートしてあげるから魔法で上がったあなたのスピードで逆にあいつを翻弄してナギ達がラディアケトゥスを復活させるまで時間を稼ぐのよっ!。さっきも言ったけどサメ達と戦ってる皆に危害を振り撒かないようなるべく地上に近づかないように逃げ回ってね」
“グオグオッ!”
こうしてサイクロン・ターボの効果で移動速度の上昇したデビにゃんとシャインはシルフィーの更なる援護の元ナギ達のラディアケトゥスを復活させるまでの時間を稼ぐべく、また地上の皆にシャドー・シャークドラゴンの脅威が及ばないよう続けて囮役を引き受け空間中を縦横無尽に逃げ回ることになるのだった。相変わらずシャドー・シャークドラゴンに対して成す術のない状況が続いているわけだが果たして本当に現在の皆の希望であるラディアケトゥスを復活させたとて相手を打ち破ることができるのだろうか。実際心の奥底でそのような不安を感じている者もいるだろうが今はパンナの言葉を信じて耐え凌ぐしかなかった。
“ダダダダダダッ”
「くぅ〜、まだラディアケトゥスのとこには着かないの、パンナさんっ!」
「まだです、ナミさん。もうすぐ先程言ったラディの祭壇のある間には着くと思うのですが……」
「さっき僕達の進軍を阻む為のモンスターが配置されてるかもしれないって言ってた場所だね。一体どんな敵が待ち受けているか分からないけどこっちのパーティの戦力も十分とは言えないしその時は全員で敵を迎え撃った方がいいのかな……」
「いや、我々の目的はあくまでラディアケトゥスのなのだから私とナミ達が敵の相手をしている内にお前達は先に進め、ナギ。そこを突破すればもう先に敵は待ち受けていないのであろう、パンナ」
「恐らく……。封印されているとはラディの神聖なる力の影響は凄まじく邪悪な者達はそれ以上先の空間には近づくことができないはずです」
「それなら僕達だけになって先に進んでも平気だね。皆が敵の足止めをしてくれてる間に逸早くラディアケトゥスの元に辿り着きて復活させないと……ってああっ!。少し先に出口の明かりが見えてきたよ、皆っ!。多分その先がパンナの言うラディアケトゥスの祭壇のある間だよね」
「よーしっ!、どんな敵がいようとすぐさま私がブッ飛ばしてナギ達をラディアケトゥスの元に送り届けてあげるわ。足止めより敵を倒しちゃった方が安全に進めるに決まってるんだから」
“ダダダダダダッ……バッ!”
階段を下り始めて2分程経過したところでナギ達はパンナが敵が配置されているかもしれないというラディアケトゥスの祭壇のある間へと辿り着いた。相変わらずの調子で息巻くナミの先導のもとナギ達は勢いよく出口の明かりへと突入して行ったのだがそこに待ち受けていたものとは……。
「……っ!、あ、あいつ等は……」
“グオォォォォッ……”
ラディアケトゥスの祭壇の間へと突入したナギ達の前には3体のサメの魚人のモンスター達が出現していた。内2体はロザヴィ達の前にも現れたホオジロザメの魚人モンスターであるグレート・ホワイト・シャークノイド、残りの1体もグレート・ホワイト・シャークノイドに似ていたのだが体が一回り大きく背中にはシャドー・シャークドラゴンと同じように巨大で厚みのある漆黒の翼が生えていた。どうやらまた別の……それもグレート・ホワイト・シャークノイドより強力なモンスターのようだが……。
「あ、あれはグレート・ホワイト・シャークノイド……それにグレート・ホワイト・ドラゴシャークノイドまで……っ!」
「……っ!、あいつ等のこと知ってるのねっ!。一体何者なの、パンナさんっ!」
「ええ……ナミさん。あの両脇にいる2体がグレート・ホワイト・シャークノイドといいホオジロザメの魚人のモンスターです。そして中央にいる更に体格の大きい1体がグレート・ホワイト・ドラゴシャークノイド、その名の通りグレート・ホワイト・シャークノイドに更にドラゴンの力も加わったシャドー・シャークドラゴンの配下の中で最も強力なモンスターです」
「グレート・ホワイト・シャークノイドにグレート・ホワイト・ドラゴシャークノイドか……。確かに我々の世界でもホオジロザメは最も獰猛で凶悪な人食いザメだ。これまでに戦った他の種類のサメの魚人達より手強い相手であることは間違いないだろう。しかも相手が3体とあっては直接正面から戦って打ち破るのは難しい」
「だけど先へ進め為の通路はあの中央の翼の生えた奴のすぐ後ろよっ!。あいつ等を倒さないでどうやってラディアケトゥスのとこに行くって言うのよっ!」
「話を最後まで聞け、ナミ。確かに敵を撃破して先に進むのは難しいがここに来る途中に話したようにナギ達だけをこの先に向かわせるなら通路の入り口からあいつ等を引き離すだけでいい。私とブラマ、ナミと聖君少女、エドワナとセイレインのペアに別れてそれぞれの敵に当たりナギ達の突破する隙を作り出すのだ」
「なるほど……分かったわ。それであの一番体の大きい奴の相手は誰がするの?」
「私とブラマがする。お前達は左右のグレート・ホワイト・シャークノイドにそれぞれ当たってくれ」
「OK。それじゃあ私達は右側の奴の相手をしに行くわよ、聖ちゃん」
「はい、ナミさんっ!」
「なら私とセイレイン様は左側の奴ですね。セイナさんの言う通り無理に敵を倒す必要はありません。私が敵の注意の引いて通路から引き離すのでセイレイン様は敵の標的にならないようなるべく離れた場所からサポートをお願いします」
「分かりました、エドワナさん」
「(ここは突破すればいよいよあなたに会えるわ……ラディ。ナギさん達はとても清らかな心の持ち主できっとあなたも気に入るはずよ。どうか皆が無事あなたの元に辿り着けるよう見守っていて……)」
ナギ達をラディアケトゥスの元へと送り出す為敵に立ち向かうナミ達の身をパンナは心から案じ、皆は気付いていなかったがこの空間の入って右側の奥にある祭壇の上に描かれているラディアケトゥスのものと思われる壁画の方を見て祈りを捧げていた。壁画に描かれたラディアケトゥスは崇高で優しさを感じさせる視線でナギ達のことを見つめていたが果たしてパンナの祈りに応えてくれるのだろうか。もしパンナの言う通りラディアケトゥスもナギ達のことを心の清らかな者達であると感じているならきっと自身の元へと辿り着けるよう皆を誘ってくれるはずだ。ナミやセイナ達もラディアケトゥスがナギ達の気持ちに応えヴァルハラ国のネイションズ・モンスターとなってくれることを信じてグレート・ホワイト・ドラゴシャークノイド達に立ち向かって行った。




