finding of a nation 136話
“ゴゴゴゴゴゴォッ……”
「……っ!。やったぁーーっ!、今中央のピラミッドの入り口が開いたわよ、皆ぁーーっ!。どうやら探索に向かったメンバー達が上手くやってくれたみたいっ!」
アクスマンやロザヴィ達がグレート・ホワイト・シャークノイドを打ち破りレバーの仕掛けを作動させた頃外では以前としてナギやナミ達はシャドー・シャークドラゴンのリスポーン・ホストのモンスターであるサメ達の撃退に追われていた。しかしそんな時敵と戦いながらもしっかりと遠視でラディアケトゥスの封印されている中央のピラミッドの建物の様子を見ていたナミがその入り口が開いたのを確認し大声で皆に知らせていた。その入り口はピラミッドのナミ達の側を向いている一面の中腹辺りに出現し、入り口の前にはそこへと上る為の階段も出現していた。入り口は人が一度に十人近く入れそうな程広かったが、シャドー・シャークドラゴンもその入り口が開いたことを察知しナギ達の突入を阻止すべく配下のサメ達を建物の周辺へと集合させてきていた。それだけシャドー・シャークドラゴンもネイションズ・モンスターとなり得るラディアケトゥスのことを恐れているということなのだろうか……。
「だけど入り口が開いたはいいけどあいつもそのことに気付いて配下のサメ達を建物周辺に呼び戻してるみたいだよ、ナミちゃん。やっぱりあいつも私達にラディアケトゥスの封印を解かれたくないみたいだね」
「そうね、レミィ。だからこそ何としてもあいつ等の妨害を突破してあの建物まで辿り着かないと……。それで何か言い作戦は思い付いたの、リア」
「ええ……デビにゃんとシャインが自ら危険な役を買って出てくれたおかげでなんとかね、ナミ。かなりの無茶を言ってきたんで最初は私も反対したんだけど結果的にそれに頼るしかなくなってしまったわ。だけど本当にこんな危険な役をあなた達に頼んでいいの……デビにゃん、シャイン」
「い、いや……正直言って僕は全然やりたくないにゃっ!。だけどシャインの奴が……」
“グオグオッ!”
「この通り皆の役に立とうと滅茶苦茶張り切って僕にこの作戦を提案してきたのに仲間モンスターの先輩である僕がこの程度のことで怖気づくわけにはいかないのにゃっ!。それにナギや皆の勝利の為にもやるしかないし心配しないで僕達に任せてくれにゃっ!」
“グオグオッ!”
「それは頼もしいけどその作戦っていうのは一体どんなものなの……」
入り口が開いたのを見てナミは端末パネルでリア達に連絡を取りどのようにして突入を試みるかを問い質した。それによるとどうやらリア達が立てた策にはデビにゃんとシャインが重要な役割を担っているようだが果たしてどのようなものなのだろうか。
「ええぇぇーーーっ!。デビにゃんとシャインが囮になってサメ達を引きつけている隙を突いて私達が突入するですってぇぇーーっ!」
「そうよ。突入するメンバーはまずラディアケトゥスを仲間にする為に必須となるナギ、アメリー、ハイレインさん、パンナさんの4人、それを護衛するメンバーとしてセイナ、エドワナさん、聖ちゃん、セイレイン、ブラマ、、そしてナミ、あなたの全10人よ」
「そ、それは構わないけどデビにゃんとシャインを囮にするだなんて……。一体どんな方法で引きつけるつもりか知らないけどそんな危険な真似してもしあいつ等の餌食になっちゃったら……」
「大丈夫にゃっ!、ナミっ!。シャインのスピードならそう易々と捕まることなんてないし、僕もその背中に乗せて貰ってこの“ブラッド・ミート”の匂いを振り撒いてあいつ等を引き寄せるつもりだしにゃ」
「ブ、ブラッド・ミートって一体何なの……デビにゃん」
「こんなこともあろうかとナギが事前に用意して僕に持たせておいてくれたモンスターを引き寄せる為の血潮とその匂いがたっぷりと付いた肉のことにゃ。生臭くて僕やシャインはあんまり美味しそうには感じないけど血に飢えたあいつ等ならきっとこの誘惑に負けて僕達を追ってくるはずにゃっ!」
「そ、そんなものを持って来ていたのね……。でもあんな凶暴な奴等を相手に囮役なんて私はやっぱり無茶だと思うんだけど……。ナギはデビにゃん達にこんな危険な真似させていいと思ってるの?」
「うん。僕も最初は反対したんだけどデビにゃん達の意気込みに押し切られて……。それにパンナさんの言う通りあのシャドー・シャークドラゴンはとても今の僕達に太刀打ちできそうな相手じゃないしラディアケトゥスの封印を解く為にもここはデビにゃん達に頑張って貰うしかないよ」
「そう……まぁ、ナギがいいって言うなら私もこれ以上反対はしないけど……」
「そんなに心配しなくても囮になった僕達がやられないよう皆も援護してくれるから大丈夫にゃ、ナミ。折角あいつ等を引きつけてもすぐにやられちゃったら意味ないしにゃ。だからナミ達は僕達ができるだけ踏ん張ってる間になんとしてもナギ達をラディアケトゥスの元に送り届けてくれよにゃ」
「だけど恐らくそのデビにゃん達のブラッド・ミートで釣ることができるのは配下のサメ達だけで一番厄介なあいつは何が建物の周りから離れようとしないわ。私やカイル達でどうにかしてあいつに隙を作るから合図を送ったらあなた達は一斉にあの建物に向かってちょうだい、ナミ」
「了解……。なんかよく分かんないけどとにかくリア達の合図があったら私達はあの建物に向かって全力で突入していけばいいってことね。その辺は皆のことを信頼してるしリア達も私達のことを信頼して行けると思ったら遠慮なく合図を送ってっ!。私達の身を案じて合図を出すタイミングを逃したりしたら承知しないからねっ!」
「ふっ……分かってるわ、ナミ」
どうやらリア達はデビにゃんとシャインが敵を引きつけている間にナギ達をラディアケトゥスの封印されている建物へと送り込む作戦を立てたようだ。デビにゃんとシャインが自ら囮役を買って出たようでもあったが果たしてうまく敵の隙を作り出すことができるのだろうか。その後リアから作戦の詳細な指示を受けたメンバーはそれぞれ配置に就き作戦開始の合図を待っていた。
「よし……それじゃあ行くにゃよ、シャイン」
“グオッ!”
ナギ達それぞれのメンバーが配置に就きデビにゃんとシャインはサメ達を引きつけるべく自分達だけで敵の前へと出て行った。だがデビにゃんのその手にはまだブラッド・ミートは手にしておらず、ラディアケトゥスの封印されている建物の守護を優先しているサメ達も何らかの策があると警戒してすぐには襲い掛からずにデビにゃん達を威嚇し牽制していた。そんな殺気立ったサメ達を目の前にデビにゃんは強い緊張と不安を感じながらもゴクリと喉を鳴らして覚悟を決めると自身のアイテム袋へと手を伸ばし強張った表情でゆっくりとブラッド・ミートを取り出していくのだった。
“グオォォォォッ!”
「うっ……やっぱりいざここまで来ると怖くなってきちゃったにゃ……。今からこんな凶暴そうな奴等に追いかけ回されると思うとブラッド・ミートを取り出す手が震えてアイテム袋から出すのを躊躇しちゃうにゃ……」
“グオグオッ!”
「分かってるにゃ……シャイン。ナギ達の為にも僕等がやるしかないってことは……。それじゃあ3、2、1で取り出すから全速で逃げ出す準備をしておくにゃよ」
“グオッ!”
「よし……それじゃあ3……2……1……にゃぁっ!」
“バッ!”
“……っ!、グオォォォォッ!”
サメ達の威嚇に怖気づくデビにゃんであったがシャインに後押しされて意を決し、ついにアイテム袋の中でブラッド・ミートを掴んだ手を高く上げて取り出し殺気だったサメ達の前に掲げた。するとそれまでは威嚇のみに留まっていたサメ達が皆突如として取り乱したように雄叫びを上げそれと同時に一斉にデビにゃん達に向かって襲い掛かって来た。どうやら無事ブラッド・ミートの効果が無事効いているようだが……。
「にゃぁぁぁぁーーーっ!、全速力で逃げるのにゃぁぁぁーーーっ!」
“グオォォ〜〜ンッ!”
「やったっ!、建物の周りにいたサメ達は皆デビにゃん達を追って行っちゃったわよっ!。これなら建物の入り口まで余裕で辿り着けるんじゃないっ!」
「待ちなさいっ!、ナミっ!。配下のサメ達はいなくなったけどやっぱりあのボスのサメだけはあの場に留まって建物を守ってるわっ!。これから私達が総攻撃を掛けて隙を作るから突入はそれからよっ!」
「わ、分かってるって……」
「よし……それじゃあ不仲さんっ!」
「はい、リアさんっ!。……はあっ!」
“ヒュイィィィィィィンッ……パアァァ〜〜ン!”
“……っ!、グオッ!”
「これは……煙幕っ!」
サメ達がデビにゃん達を追っていたのを確認したリアは続いて依然として建物から離れようとしないシャドー・シャークドラゴンへの総攻撃の指示を出した。まずは不仲が矢じりに煙玉の付いた矢をシャドー・シャークドラゴンに向けて放ち、敵の周囲を煙幕で包み込んだ。どうやら視界を奪っている隙に総攻撃を掛けるつもりのようだ。最も敵は水の振動だけでもこちらの動きをある程度察知できる為、建物への突入を決行しようとしていることを悟られない為にも突入部隊であるナギ達は迂闊な動きを取るわけにはいかず、今はリアからの合図をジッと待つしかなかった。
“グオォォォォッ……”
「……っ!、これはどういうことでしょう。煙幕を放たれたというのに敵は煙の中から出てこようとはしませんわ。視界を奪われることなどどうとでもないということなのでしょうか……」
「あいつは水の振動を感じることでこっちの動きを察知できるみたいだからね。だけど煙幕から出てこないのはそれだけが理由じゃないわ。例え視界を奪われようとも自身の天敵となるラディアケトゥスの封印されているあの建物から離れたくないのよ。だけどそれはこっちの計算通り。煙幕が消えたタイミングで私やカイル達皆で高威力の魔法を一気に叩き込んでやるわ。皆今の内に魔力を溜めて魔法を撃つ準備をしておいてっ!」
「了解っ!」
どうやら不仲の放った煙幕はリア達が魔力を溜め終るまでの時間を稼ぐ為のものだったようだ。いくらシャドー・シャークドラゴンでも視界を失った状態で水の振動だけではリア達が魔法を放つ準備をしていることは察知できない。建物へ近づこうとする者達ばかりを警戒し敵の動きが止まっている間にリア達はどんどんと魔力を溜めていき、そして煙幕が晴れ敵の姿が現れた瞬間この場にいる魔術師達全員でそれぞれ現段階で使用できる最高の威力を誇る魔法をシャドー・シャークドラゴンに向けて撃ち放った。
「我が心に生まれし強靭なる鋼の意志よ…。火をも通さぬその体に業火を纏いて我が敵を滅却させよっ!。地より這い出し灼熱の柱……ヴォルケニック・ラヴァ・コラムっ!」
「我が怒り……雷鳴となりて天に轟き地上を震わす……。憤怒の雷……サンダー・レイジっ!」
「我が心の温もりは周囲に暖気をもたらす核となる……。汝の凍てついた心は冷気を呼び込む核となる……。冷酷なる我が敵が心身ともに凍り付くまで延々と吹き込めっ!。ブリザード・コアっ!」
「全ての命を維ぐ神秘なる水の力……。この世界の命をも維ぎ止める為我が前に立ちはだかる穢れた敵を浄化せよっ!。清き水の激流……クリアブル・スプラッシュっ!」
“バアァァーーーーンッ!”
“グオォォォォッ!”
不仲の煙幕が晴れ姿を現したシャドー・シャークドラゴンに過去にライノレックスに向けて放ったことのあるリアのヴォルケニック・ラヴァ・コラム、オルトーの憤怒の力で敵に凄まじい雷を落とすサンダー・レイジ、マジルの敵に向かって全方位から吹き込む暴風雪を巻き起こすブリザード・コア、カイルの聖なる力を宿すまで清められた水を激流に変えて撃ち放つクリアブル・スプラッシュの魔法が一斉に襲い掛かった。どれも高威力の魔法で流石のシャドー・シャークドラゴンも攻撃に耐え兼ねて身を竦ませていたのだが、やはりダメージ自体はそれ程与えられていないようだった。だがこれでナギ達が突入する為の隙は十分に作り出すことができただろう。続いてリアが出した合図でナギ達は一気にラディアケトゥスの封印されている建物への突入を試みるのだった。
「今よっ!、ナミっ!、皆っ!」
「OKっ!、リアっ!。それじゃあ行くわよ皆っ!」
「了解」
“バッ……ダダダダダダッ!”
リアの合図を受けナミの先導の元ナギ達は一気に建物に向けて進軍を開始した。予め建物の入り口まで一直線の位置に配置しており、その距離はおよそ80メートル。全力で突き進めば10秒も掛からずに全員が辿り着けるだろうが果たして……。
“グオォォッ……”
「よしっ!。流石のあいつもリア達の総攻撃に怯んで動きが止まっちゃってるわっ!。今の内に一気に入り口まで駆け抜けるわよっ!」
“ダダダダダダッ”
「急いで……ナミ。モタモタしてるとまたあいつが動き出してしまうわ……」
なんとかナギ達がラディアケトゥスの封印されている建物へと向かうタイミングを作り出すことのできたリアであったが、いつまたシャドー・シャークドラゴンが動き出しナギ達に襲い掛かりはしないかと心配に駆られていた。ナギ達もいつ襲われやしないかと内心ヒヤヒヤしながら進んでいたが決してシャドー・シャークドラゴンの方を振り返ることなく一直線に建物へと向かっていた。恐らく一時でも早く建物へと辿り着きこの焦りと恐怖から解放されたかったのだろう。ただ最後尾を走るセイナだけはそのような焦りを見せず常にシャドー・シャークドラゴンの方を警戒しながら前へと進んでいた。
“ググゥ……グオォォォォッ!”
“ゴゴゴゴゴゴォッ!”
「……っ!、た、大変……あいつがまた動き出してこっちに向かって来てるわよ〜、ナミちゃ〜んっ!」
「今はあんな奴なんかに目もくれないで突き進むのよ、ハイレインさんっ!。建物の入り口まであと少し……心配しなくても私達の後ろにはセイナが警護に付いてくれているわっ!」
“グオォォォォッ!”
「……っ!、まずいわっ!。あのままじゃあナミ達があいつに追い付かれてしまうっ!」
リアの心配していた通りやはりシャドー・シャークドラゴンは再び動き出しすぐさまラディアケトゥスの封印されている建物へと向かっているナギ達の後を追い襲い掛かって行った。そのナギ達へと襲い掛かっていく勢いは凄まじく巨大で水を震わせ水中に重苦しい音を響かせていた。背後から迫ってくるその水の振動と音にナギ達は大層恐怖していたことだろう。
“グオォォォォッ!”
「危ないっ!、ナミっ!、皆っ!」
「くっ……あと少しで建物に着くっていうのに……」
「ここは私に任せてお前達は先に行けっ!」
「……っ!、セイナさんっ!」
“グオォォォォッ!”
「はあぁぁぁぁっ……シバルリーっ!・キャリバァァァーーーッ!」
“ガッ……ギィィィィーーーーンッ!”
ナギ達の後を追うシャドー・シャークドラゴンの形相は凄まじくなんとしてもナギ達をラディアケトゥスの封印されている建物へと辿り着かせたくないようだった。シャドー・シャークドラゴンは瞬く間にナギ達へと追いつくとその後方から尾をギロチンのように勢いよく振り上げるようにして攻撃を仕掛けて来た。どうやらこの一撃でナギ達のパーティ粉砕してしまうつもりのようだ。隊列の縦中央を分断されてはナギ達のパーティは一気に瓦解してしまい最早建物に辿り着くどころではなくなってしまうが、そんな時後方の警戒に当たっていたセイナが勢いよくシャドー・シャークドラゴンの前へと飛びだして行き渾身の力で放ったシバルリー・キャリバーを迫り来る尾に向かって撃ち放った。シャドー・シャークドラゴンの尾と自身の剣を直接ぶつけ合ったセイナはその衝撃に耐え兼ね大きく後方へと弾き飛ばされてしまったのだが、それでもなんとか相手の攻撃を防ぎ切り無事ナギ達を守ることができたようだ。更に敵も攻撃の反動とセイナからの攻撃の衝撃でまた暫く動きが止まってしまい、ついにナギ達はその隙に建物の入り口へと辿り着くことができたのだった。
“バアァァーーーーンッ!”
「……っ!、大丈夫っ!、セイナっ!」
「ぐっ……だ、大丈夫だ……ナミ。私のことなど気にせず今は早く建物の中へ……」
「分かってるっ!。さっ、あんたも私の肩につかまって……」
「す、済まん……」
シャドー・シャークドラゴンの攻撃に弾き飛ばされたセイナはちょうど建物の入り口の上側の壁へと叩き付けれそのまま落下してしまった。しかしこれにより幸いにも逸早く建物の入り口の前へと辿り着くことのできたセイナはその後にやってきたナミ達に体を抱えられ無事皆と共に建物の内部へと入ることができた。これで後はナギ達がラディアケトゥスを復活させるだけだが、まんまと建物へと侵入されてしまったシャドー・シャークドラゴンは凄まじい形相でリアやデビにゃん達を睨み付けると共に怒りの咆哮をあげていた。どうやらもうその怒りのままにこのままに残った者達を全員血祭りにしてしまうつもりのようだ。特にサメ達の囮となったデビにゃんとシャインは真っ先にその怒りの矛先となるだろうが果たしてナギ達がラディアケトゥスを復活させるまで無事でいられるのだろうか……。
“グオォォ〜〜ンッ!”




