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finding of a nation online  作者: はちわれ猫
第十五章 リベンジっ!、川底の遺跡の探索
138/144

finding of a nation 135話

 “グオォォォォッ!”


 「はあぁぁぁっ……ウインド・カッターっ!」


 ナミ達の元についに待望の援軍となるナギや不仲達が到着した頃、祭殿の跡地の内部の探索へと向かっていたロザヴィとターシャは目的の仕掛けを作動させる為のレバーを守護するグレート・ホワイト・シャークノイドとの戦闘を開始していた。ロザヴィは後衛の職である黒魔術師でも前衛の代わりを務める為の秘策があると言っていたが、何やら右手に短剣のようなものを手にして戦っていた。しかし剣を手にしているからといって接近戦をしているというわけでなく、その剣の効果によって強化された風属性の魔法を用い敵の近接攻撃の届かないギリギリの距離を取って攻撃を仕掛けていた。どうやらロザヴィの手にしている短剣はサニールの館の住民の霊であるブラマの所持していたものと同じ剣身に特殊な象形文字の施されたスカルプト・ダガーのようで、それによりロザヴィは風属性の魔法を通常の半分以下の時間の詠唱で発動させることができ、素早く連続して放たれて来る魔法の対処に追われ敵も中々ロザヴィとの距離を詰めることができなかったようだ。とはいえロザヴィの放つ敵に刃のように鋭く吹き付ける風をぶつけるウインド・カッターの魔法も瞬時に打てる分威力として乏しく足止めはできても中々友好的なダメージを与えられずにいた。神官のターシャも回復手段は豊富に持ち合わせていても攻撃の為の手段はほとんど持ち合わせておらず、このままではやられはせずとも敵を突破してレバーを作動させることは困難に思えるのだが……。


 “グオォォォォッ!”


 「くっ……やっぱりこの程度の魔法じゃあ何発打ち当ててもあいつを倒すことはできない……。もっと高威力の魔法を放ちたいけど……いくらこのスカルプト・ダガーを手にしていてもあいつと戦いながらそんな長い詠唱を完了することなんてできないわ。一体どうすれば……」

 「ロザヴィさんが頑張ってくれているのに私には後ろで見守っていることしかできないなんて……。私にも多少の攻撃魔法は使えるけど微々たるダメージでとても援護にはならないし……。それにもしそんなことをしている間にロザヴィさんが攻撃を受けて回復魔法を放つのが間に合わなくなったりしたら……」


 スカルプト・ダガーを使用すれば自身でも前衛の代わりを務められると強気な態度で戦闘に臨んだロザヴィだったが、いざ戦いが始まるとやはり敵のステータスの高さに圧倒されただ距離を詰められないよう粘るだけの防戦一方の戦いを強いられてしまっていた。このままでは敵を突破してレバーを作動させるどころかいつかこちらが追い詰められ凶悪な人食いザメの魚人の餌食となってしまう……。可憐で美しい女性2人が血飛沫ちしぶきを散らして惨殺させる場面など見たくはないが果たしてこの状況を打破する手立てはあるのだろうか……。





 「ふんぬぅ……マーセナリー・クラッシャーァァァーーッ!」


 “グオォォォォッ……”


 「ちっ……この中も外と同じで大量のサメ共がうじゃうじゃいやがるじゃねぇか。こいつ等も探索に向かった奴等を追って来やがったのか」

 「恐らくそうだろうな。あのデカイ奴は私等の目当てのラディアケトゥスの封印されてる建物の周りからほとんど動こうとしてなかったしあいつの命令を受けて私等の邪魔をしに来たんだろ。これじゃあ先に探索向かった奴等も何人かやられちまってるかもしれねぇな……」

 「くっ……そんなこと考えたくもないが先に向かった奴等は戦力を分散させちまっておまけに前衛のできる奴も少ない……。これは早く合流してやらない不味いかもしれねぇぞ……」

 「しかしこの中は意外と広い、おまけに複雑な構造になっている上途中に地下に続く階段まであったようじゃぞ。あのピラミッドの建物の入り口を開く仕掛けもそうじゃが先に行った仲間を探すのも苦労しそうじゃわい」

 「こっちもこれ以上戦力を別けるわけにもいかねぇし……どうする?、爆裂女。先に行った奴等ならもう下の階の探索に行ってるかもしれねぇし俺達も引き返してさっきの階段で下に向かうか」

 「確かにその方がいいかもしれないが……この階に他の奴等がいないって保証もねぇぜ。勿論私等の目的のものについてもな」

 「くっそぉ……こうなったら思い切って俺一人で下の階に向か……」

 「おーいっ!、アクスマァーンっ!、爆裂少女ぉーっ!、ボンじぃーっ!」

 「……っ!、あれは……」

 「ハンマンにオーケスだぜっ!。あいつ等はナミ達のパーティにいたはずだ。どうやら向こう側の入り口とも繋がってたみたいだな」

 

 ロザヴィとターシャがグレート・ホワイト・シャークノイドに苦戦している頃、新たに援軍として跡地の内部の探索へと向かって来たアクスマン、爆裂少女、ボンじぃの3人は偶然にも探索を効率よく進める為ロザヴィ達とグループを別けこの階層に残ったハンマンとオーケスに合流することができた。地上から入り口はいくつかあったのだがどうやらどこから入ろうとも全てこの内部で繋がっていたようだ。ハンマン達はロザヴィからの指示でこの階を探索を続けている最中偶然アクスマン達を発見したようだが、二人はまだピラミッドの建物の入り口を開く為の仕掛けを発見できてはいなかった。


 「お前達がここにいるってことは……ナギやセイナ達のパーティもこの最深部へと辿り着いたってことかっ!」

 「ああ。あとリア達もパーティも俺達とほぼ同時に到着したようだ。他の奴等は上に残ってあのサメ共を撃退している。それよりこの中のどこかにあの馬鹿デカい鮫を倒す為のラディアケトゥスっていうネイションズ・モンスターの封印された建物の扉を開く仕掛けがあるようなんだ」

 「ネ……ネイションズ・モンスター……。聞いたことない名称だがそれは一体どういうことなんだ、アクスマン」

 

 ハンマン達に聞かれてアクスマンはナギ達に言われたことをそのまま説明した。ネイションズ・モンスターであるラディアケトゥスの力を借りればあのシャドー・シャークドラゴンを倒せると聞きハンマン達も歓喜していたのだが、肝心の建物に入る為の仕掛けを未だ発見できていない。ハンマン達が言うには恐らくこの階層もまだ半分も探索できていないだろうと聞いてアクスマン達も途方にくれてしまっていた。そんな中ハンマン達は自分達と別れて最下層の探索に向かったロザヴィとターシャのことを心配していた。


 「何っ!、それじゃあロザヴィとターシャは前衛なしの状態で一番下の階の探索に向かったってのかっ!」

 「ああ……そのラディアケトゥスとやらの封印されている建物に入る為の仕掛けを効率よく探索する為にもその方がいいとロザヴィが自分から……。俺達は追ってくるサメ共を撃退しながらこの階から探索するようにと言われたんだ」

 「くっ……外で戦ってる仲間の負担を減らす為とはいえよくもそんな無茶を……。よし……それじゃあ俺達はロザヴィ達の援護に向かうからお前達はこの階の探索を続けてくれ。あいつ等は一番下の階から探索に向かうと言っていたんだな」

 「ああ。まだ下にまでサメ共は進行していないだろうがなるべく早く向かってやってくれ」

 「任せておけ。……それじゃあ行くぞ、爆裂女、爺ぃっ!」

 「はいよ」

 「了解じゃっ!。ロザヴィちゃん達のピンチに駆け付ければ後でお礼にデートでもしてくれるかもしれんしの」


 ハンマン達からロザヴィ達のことを頼まれアクスマン達も最下層を目指して途中にあった階段まで戻り急いで駆け下りて行った。前衛のいない状態で敵と交戦状態となることの危険さはアクスマン達も重々承知している。なんとかロザヴィ達がグレート・ホワイト・シャークノイドにやられてしまう前に間に合えばいいのだが……。





 “グオォォォォッ!”

 

 「くっ……ウインド・カッターッ!」


 一方ロザヴィは防戦一方ながらもまだグレート・ホワイト・シャークノイドを相手に前衛として持ち堪えて戦っていた。もしロザヴィがやられてしまえば神官のターシャなどまるで抵抗できずにグレート・ホワイト・シャークノイドに食い殺されてしまう。ロザヴィは自分からこのような無茶を言い出した責任も感じなんとか状況を打破できる方法を懸命に考えていたのだが、そう簡単にそんな都合のいい方法など思い浮かばず相手との間合いもジリジリと詰められ始めていた。そしてとうとうロザヴィに戦いの疲れが出始めた瞬間、この隙に決着をつけようとグレート・ホワイト・シャークノイドは一気に攻勢に打って出てくるのだった。


 「はぁ……はぁ……。くっ……低級の魔法しか使ってないとはいえ流石に後衛の職でこんなに激しく動き回されたら体力が持たないわね……。ターシャさんの回復魔法でも肉体の疲労までは中々取り除けないしこのままじゃ……」


 “グルゥ……グオォォ〜〜ンッ!”


 「……っ!、なっ……!」


 “バアァァーーーーンッ!”


 「きゃあぁぁぁーーーーっ!」

 「ロ、ロザヴィさぁーーーんっ!」


 ロザヴィの息が切れて一瞬動きが鈍くなった瞬間を見計らってグレート・ホワイト・シャークノイドは大きく咆哮して“ロア・ストリーム”を撃ち放ち、凄まじい激流がロザヴィへと襲い掛かった。反応の遅れたロザヴィはその咆哮の激流に呑まれその勢いのままに壁へと叩き付けられ、大きなダメージを受けると共に地面へと倒れ込んでしまうのだった。辛うじてHPは残されているようだが攻撃の衝撃で暫く身動きが取れそうになく、まともに抵抗する為の手段を持たないターシャと

共にこのまま万事休すかと思われたのだったが……。


 “グオォォォォッ”


 「うっ……ロ、ロザヴィさん……ごめんなさい。どうやら私達の命はここまでのようです。あのレバーを引けなかったのが悔やまれますがまた他の人達がここに探索に来てくれることを祈りましょう……」


 “グオォォォォッ!”


 「ううっ……」


 自身の勝利が確定した状況となったシャドー・シャークドラゴンは身動きの取れないロザヴィより先にまだHPが満タンの状態で残っているターシャに止め刺そうと差し迫って行った。そして完全に戦意を喪失し立ち尽くしたままとなっているターシャを噛み殺そうと大口を開いて襲い掛かったのだが……。


 “グオォォォォッ!”


 「待てぇいっ!」


 “……っ!”


 「えっ……」


 グレート・ホワイト・シャークノイドの凶器とも言えるような鋭利な歯がターシャへと差し迫ったその時、突如どこからか威勢のいい男の声が響き渡って来た。その声に反応してかグレート・ホワイト・シャークノイドはターシャに噛み付く寸でのところで動きを止め慌てて後ろを振り返ったのだが、そこにはなんと凄まじい気迫と勢いで斧を振り上げこちらへと迫り来るアクスマンの姿があったのだった。


 「はあぁぁぁーーーっ!、マーセナリー・クラッシャーァァァーーッ!」


 “ズバァーーーーンッ!”

 “グ……グオッ……!”

 “バッ!”


 「……っ!、何ぃっ!」


 アクスマンの声に反応して振り返ったグレート・ホワイト・シャークノイドだったが、凄まじい勢いで放たれて来るマーセナリークラッシャーを前に咄嗟に防御体勢を取りそのダメージと衝撃を最小限に抑え耐え凌いだ後、体を真っ直ぐに伸ばしまるで本来のサメに戻ったかのように遊泳し上方へと離脱した。そのままアクスマン達と距離を取り自身の守るべきレバーの位置まで退避するのであった。アクスマン達が援軍に来たことで状況が不利になったと判断しレバーの死守を優先すべきという判断をしたのだろう。先程まで圧倒的優位な状況であったにも関わらず援軍が来た瞬間瞬時に後退する判断ができる辺り、実際のホオジロザメと同じくこのグレート・ホワイト・シャークノイドも高い知性と知能を持ち合わせているようだ。


 「くっ……この俺のマーセナリー・クラッシャーを正面から食らって怯みもせずに瞬時に離脱するとは……。こいつはこれまでの魚人共とは違って一筋縄ではいかない相手のようだな……」


 “グオォォッ……”

 

 「ア、アクスマンさん……どうしてあなた達がここに……っ!」

 「話は後だターシャっ!。ボンじぃは早くあそこに倒れてるロザヴィの奴を回復してやってくれっ!。爆裂女はその護衛だっ!」

 「了解じゃっ!」

 「相手が抵抗できないからって変なとこ触りながら回復すんじゃねぇぞ」

 「わ、分かっとるわい……」


 寸でのところでターシャの窮地を救ったアクスマンだがそんな自分の善行に酔いしれることなく瞬時に現状を把握して皆に的確な指示を出した。普段からリーダー風を吹かすアクスマンであるが少しはそれに見合った風格がついて来たようで爆裂女達もすんなりとその指示に従っていた。しかし一体何故これ程までに早くアクスマン達はこの場へと援軍に駆け付けることができたのだろうか。


 “パアァァ〜〜ン”


 「ふぅ……ありがとう、お爺さん。おかげで命拾いしたわ。それに皆がここに来てくれたってことはナギ達のパーティもこの最深部まで辿り着いたってことね」

 「わし等だけじゃなくて不仲さん達のパーティも到着したようじゃったぞ。他の者達は外でサメ共と戦っておるがわし等はロザヴィちゃん達が少数でここの探索に向かったと聞いて救援に来たんじゃ」

 「ナギさん達に不仲さん達のパーティまでっ!。それは大変頼もしい限りですがどうしてアクスマンさん達はこんなに早く私達のところまで駆け付けて下さったんですか。この遺跡の内部はかなり広大で複雑な構造になっている上ここは恐らくその一番奥に位置するところのはずなのに……」

 「それは途中で出会ったハンマン達がお前達が最下層に向かったと教えてくれたからだ。それとターシャとボンじぃ、信仰者の職を経ているお前達の特殊能力のおかげでもある」

 「信仰者の能力……っ!。それではまさか“神のお導き”の能力が発動したということですかっ!」

 「そうじゃ、ターシャちゃん。ターシャちゃん達を探してここの一番下を目指しとったら突然わしの耳にだけ優しくも威厳と気品の溢れる女性の声が聞こえて来てのぅ。その声に従っていたらターシャちゃん達のいるこの場所に案内してくれたのじゃ。きっとあれはとびっきり美人の女神様の声だったに違いない」

 「そうですか……。神のお導きは信仰者系統の職に就いている者同士の間でそのレベルに応じて神からの救いの導きを得ることができる能力……。今の我々のレベルでは万に一つも発動することないと思っていましたがまさかこの状況で窮地を救ってくれるとは……」

 「ほほっ、それだけわしとターシャちゃんの相性が良いということじゃ。これも更に神のお導きと思って今度一緒にヴァルデパの最上階にある高級なレストランで食事でも……」

 「おいっ!、爺っ!。いい歳こいて色気づいてる場合じゃねぇぞっ!。てめぇみたいなエロ爺もう誰も相手にしねぇんだから今は目の前の敵に集中しやがれっ!」

 「ぐっ……なんじゃいっ!。別に爺ぃだってたまには女子を口説いてもええじゃないかっ!。全く爆ちゃんは歳と共に女子に相手にされなくなる爺ぃの寂しい気持ちが分からんようじゃのぅ……」

 「はいはい、お爺さん。デートとは限らないけどこのお礼は後でちゃんとしてあげるから拗ねてないで今は戦いに集中するっ!」

 「おおっ!、流石ロザヴィちゃんは老人を労わる心を持っておるわい。そういうことならわしも張り切ってあんな鮫人間モンスターとっと倒しちゃおっとっ♪」

 「そんなに簡単に倒せたら苦労はしないけどね……」


 アクスマン達がこれ程までに早くこの場に辿り着くができたのはどうやら信仰者特有の能力のおかげらしい。ターシャの頭にその能力のことがまるで浮かばない程発動の確率は低いようだが、今回は奇跡的にその能力のおかげで窮地を脱することができたようだ。ロザヴィの回復が終わり、待望の前衛であるアクスマン達が到着したことで今度は万全な態勢となって再び皆でレバーを守護するグレート・ホワイト・シャークノイドへと挑もうとしていたのだが、ロザヴィの言う通りいくら戦力が十分に整ったといってもボンじぃのように気楽な心構えで立ち向かえる相手ではなかった。


 “グオォォ……”


 「ふむ……どうやら俺達が到着したことで戦略が逆転した判断したのか向こうから仕掛けてくる様子はなさそうだな」

 「だけどこっちはそんなにのんびりはしてられないわ。早くあのレバーで外にいる巨大なサメを倒す為の仕掛けを作動さえないとナミちゃん達が……。あのレバーでどうにかなるかはまだ分からないけど……」

 「レバー……あれのことか。どうやらあのレバーを作動させればラディアケトゥスの封印されている建物の入り口を開くことができそうだな」

 「ラディアケトゥス……それって一体何のこと、アクスマン」

 「俺達がここに来るまでのエリアで偶然出会ったパンナってこの遺跡に住まう霊が教えてくれたあの巨大なサメ……シャドー・シャークドラゴンを倒せるネイションズ・モンスターのことだ。詳しいことは後で説明するからお前の言う通り今は急いであの敵を倒してレバーを作動させるぞ」

 「OK。頼もしい前衛が2人も来てくれたことだし今度はさっきのようにはいかないわよ」

 「さっきの俺のマーセナリー・クラッシャーを難無く受け切っていたところをみると物理攻撃への耐性はかなり高そうだな。俺と爆裂女であいつに隙を作るからそこにお前の強烈な魔法を打ち込んでやれ、ロザヴィ」

 「了解よ」

 「よし……それじゃあ行くぞっ!、爆裂女っ!」

 「はいよっ!」


 “バッ!”


 先程までと打って変わって今度は前衛2人に後衛1人、更に回復役が2人というフルに揃ったパーティではないとはいえ十分な戦力を持ってアクスマン達はグレート・ホワイト・シャークノイドへと立ち向かって行った。当然まずはアクスマンと爆裂少女の前衛2人が先陣を切って突っ込んで行き、アクスマンからの指示通りロザヴィがさっきまでは放つ余裕のなかった高威力の魔法を唱える為の魔力を溜め始めていた。


 「まずは俺が正面から斬り掛かるからお前は相手の側面に回って揺さぶりを掛けてくれっ!」

 「おうっ!」

 「うぉりゃぁぁぁーーーっ!、さっきは耐え凌がれてしまったが今度こそてめぇを真っ二つにしてやるぜっ!。マーセナリー・クラッシャァァァーーーッ!」


 “グオォォォォッ!”

 

 爆裂少女を側面へと回らせアクスマンはそのまま再びマーセナリー・クラッシャーを放ちながら正面から敵に向かって突っ込んで行った。グレート・ホワイト・シャークノイドも爆裂少女の動きは察知していたのだが、先程の攻撃でアクスマンのマーセナリー・クラッシャーの破壊力を体感していた為そちらに気を回す余裕はなくこちらも渾身の力を込めてアクスマンの一撃を受け止めるつもりのようだ。それも手ではなく自慢の鋭利な歯と強靭な顎の力を持つ口で……。


 「うおぉぉぉーーっ!、食らえぇぇぇーーーっ!


 “グオォォォォッ!”

 “ガアァッキィィィーーーン”


 「な、何……っ!」


 渾身の力でマーセナリー・クラッシャーを放ったアクスマンだったが、グレート・ホワイト・シャークノイドは振り下ろされる斧に対して顔を横に向けたと思うとなんとそのアクスマンの斧の刃に自らの口で噛み付き、その上それで受け止め切ってしまった。辺りにはアクスマンの斧の刃とグレート・ホワイト・シャークノイドの鋭利な歯のぶつかる音が甲高く鳴り響いていたのだが、あまりの衝撃の出来事にアクスマンは動揺を隠し切れなかった。そしてそんなアクスマンを余所にグレート・ホワイト・シャークノイドはアクスマンの斧に噛み付いたまま顔を元の角度へと戻していき、反対にアクスマンの方は腕ごと捻じ曲げられ斧を水平に向けられてしまった。更にもう完全に力で圧倒されているようで、これ以上斧を振り抜くどころか引き抜くことすらできなかった。折角の武器も振るうことができないのでは意味はなくここは一度手放して距離を取るしかなかったか、動揺して冷静な判断ができなかったのもあったのかアクスマンは意地でも斧から手を放そうとはしなかった。恐らくこの力比べに負ければそれで勝敗が決してしまうとでも思い込んでしまっていたのだろう。


 「こ、この俺が力勝負で圧倒されるだと……。ぐっ……こんなことがあっていいはずが……」


 “グオォォォォッ!”


 「下らない意地張ってないでとっとそいつから離れろっ!、禿げ斧っ!。そのままじゃあ敵の反撃をもろに受けちまうぞっ!」

 「……っ!」


 “グオォォォォッ!”


 「くっ……ヤバいっ!」


 “バッ!”


 いつまでも斧を手放さず無防備な状態でいるアクスマンに対しグレート・ホワイト・シャークノイドは、今度は魚人となったことで得た今アクスマンの斧に食らい付いている鋭利な歯にも負けず劣らずの手から生えた切れ味鋭い爪で斬り裂こうと右腕を振るって来た。爆裂少女からのあって咄嗟に斧を手放して身を引いてなんとか攻撃を躱すことができたのだが、一番使い慣れている武器である斧を一時的に失うことになってしまった。一応予備の武器として持って来ていた大剣に持ち替えることはできるが戦力の低下は否めない。そんなアクスマンを援護しようと側面に回っていた爆裂少女もまだ敵の注意がこちらに向いていない内に攻撃を仕掛けて行ったのだが……。


 「まさかあの禿げ斧を力でねじ伏せちまうとはな……。だがそれなら攻撃を防がれる前に打ち当てればいいだけの話だぜ。いつまでもそんな鉄臭ぇ斧にかぶりついてんじゃねぇぞっ!、おりゃぁぁぁーーーっ!」


 “ズコォォーーーンッ!”

 

 先程のアクスマンとの戦闘のやり取りを見て正面から力押しで立ち向かったのでは勝ち目はないと思い一気に敵との距離を詰め敵の頭部目掛けてピンポイントで凄まじく力を込めたハイキックを打ち放っていった。アクスマンが後退したのを見てグレート・ホワイト・シャークノイドは咄嗟に咥えていた斧を吐き捨て爆裂少女の対処に回ろうとしたのだが、反応が間に合わずちょうど顔を振り向けたところの頬に爆裂少女のハイキックが直撃してしまった。ダメージは当然相当な衝撃が脳へと走りそのまま気を失ってしまってもおかしくなさそうだったのだが……。


 「へっ!、こりゃ流石に決まっただ……っ!」


 “グオォォッ!”


 「……っ!、何っ!」


 渾身のハイキックの直撃が決まり勝利を確信した余韻に浸る爆裂少女だったのだが、その余韻も束の間その次の瞬間グレート・ホワイト・シャークノイドは倒れるどころかまるでダメージがなかったかのようにまだ自身の頬を蹴り続けている爆裂少女の足を押し戻して曲がった首を元の角度へと戻し、自身の倒れる姿を見届けようとしていた爆裂少女へとギロリと狂気の込もった禍々しい視線を向けるのだった。自身の渾身の一撃がまるで効いていなかったことで動揺し、更にはその凶悪な視線を向けられたことで流石の爆裂少女も恐怖で身が竦んでしまっていた。そしてグレート・ホワイト・シャークノイドはそんな動きの止まった爆裂少女の足を掴むとそのまま軽く相手の体を持ち上げて振り回すようにして壁に向かって投げ付けてしまうのだった。


 「ぐわぁぁぁぁーーーっ!」

 「ば、爆裂女ぁーっ!」


 “グオォォッ”


 「……っ!、今度はこっちに向かって来る気かっ!。俺はまだ斧を手放したままだしこのままでは……」

 「ここは私に任せて下がってっ!、アクスマン君っ!。今の私の取って置きのあいつを打ちかましてあげるわっ!」

 「ロザヴィっ!、もう魔力を溜め終ったのかっ!」

 「ええっ!。これならあいつが相手でも相当なダメージを与えられるはず……。我が手の中は純然たる大気を集める台風の目……。我が撃砕の意志に呼応した大気は震撼し行き場を求めて我が手中で凄まじく荒れ狂う……。我の怒りの解放とともに黒き風に乗り宿敵へと撃ち放たれる……。全てを粉砕する暴風っ!、エアスマッシャァァァーーーッ!」

 挿絵(By みてみん)

 “バアァァーーーーンッ!”

 “グッ……グオォォォォッ!”


 爆裂少女に致命傷を与えたグレート・ホワイト・シャークノイドは今度は斧を手放し戦力の半減してしまったアクスマンに向かって襲い掛かって来た。仕方無く予備の武器の大剣を取り出して応戦しようとするアクスマンだったが、そんな時背後からロザヴィの威勢よく後退を促す呼び掛けの声が聞こえて来た。すぐにロザヴィの魔法の詠唱が完了したのだと気付いたアクスマンはすぐさまその場から身を退けてロザヴィの為の射線をあけ、そこへ今のロザヴィが使用できる中で最大の威力がでる風属性魔法、エアスマッシャーをグレート・ホワイト・シャークノイド目掛けて撃ち放つのだった。エアスマッシャーは周囲の大気を一転に圧縮して凄まじい風の噴射に乗せて相手に撃ち放つ強力な魔法で、その圧縮された大気の塊の直撃を受けたグレート・ホワイト・シャークノイドはその強烈な衝撃で今度は自身が先程のロザヴィと同じように10メートル以上も後ろのアクスマン達の目的のレバーのある壁に叩き付けられ地面に倒れてしまった。そして相手が倒れたのを見てアクスマンが止めを刺すべく地面に落ちていた自身の斧を再び手にして向かって行き……。


 「うおぉぉぉーーっ!、マーセナリー・クラッシャァァァーーーッ!」

 

 “グッ……グオォォォォッ……”


 壁に叩き付けらた衝撃からようやく立ち上がったところのグレート・ホワイト・シャークノイドにアクスマンのマーセナリー・クラッシャーが直撃した。これまで物理攻撃に対してはほぼ無敵といっていい程の耐久力を誇っていたグレート・ホワイト・シャークノイドだが強力な魔法攻撃を受け体勢を崩しているところにこれ程までに強烈な一撃をお見舞いされては

流石に耐え切ることはできなかったようだ。敵が力尽きたの確認したアクスマンはすぐさますぐ隣の壁に設置されていた目的のレバーを作動させた。


 “ガタンッ!”


 「よしっ!、これでラディアケトゥスの建物の入り口が開いたか……そうでなかったとしても外で戦ってる奴等が有利になるような変化が起こったはずだぜっ!」

 「それはまだ分からないわよ。とにかく私達は一度外の様子がどうなったか確認しに行きましょう。このレバーが目的の仕掛けを作動させるものでなかったとしても他のハンマン達や他のメンバー達がまだ他の場所の探索を続けてくれているはずだから」

 「そうだな……。もし建物の入り口が開いていたとしてそこに何人かのメンバーが向かったしたら外の戦力が手薄になっちまうしその前に突入を援護するメンバーも不足しているかもしれないしな。ここはロザヴィの言う通り急いで地上に戻るぞ、皆っ!」

 「了解っ!」


 こうして目的のレバーを作動せたアクスマン達は外の様子を確認すべく急いで地上へと戻って行った。運よくこのレバーでラディアケトゥスの封印されている建物の入り口を開くことができるといいのだが……。そして仮に開いていたとしても今度はあのシャドー・シャークドラゴンとサメ達の猛攻を凌ぎながら内部へと突入しなければならない。カイルやリア達ならそのことも見越して突入の為の算段も立てているだろうが何か良い策が思い付いたのだろうか……。



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