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finding of a nation online  作者: はちわれ猫
第二章 ヴァルハラ国建国っ!、そして初めての内政っ!
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finding of a nation 10話

 ナギ達が牧場でレイコに自己紹介をしている頃、牧場のすぐ側にある栽培場ではボンじぃとフェアリーキャットのリディがすでに園芸の仕事を開始していた。ボンじぃは早速ハーブの栽培をするために育苗いくびょう用のトレイに土と肥料を詰めていた。リディや他のプレイヤーも同じ作業をしていて、どうやらこの栽培場にはまだ一つも植物が栽培されていないようだった。今日の仕事は植物を育てるための花壇とトレイを用意して、皆それぞれの担当する植物の種を植えて作業を終了するようだった。ただナギ達の牧場と同じように栽培場もボンじぃ達が仕事を選択した瞬間大きく拡張されたようで、建物の面積は50平方キロメートルを超え、更に2階部分も拡張によって追加されていた。ボンじぃ達の作業をしていた一階部分は中央に大きな花壇が3列、奥の方に小さめの花壇が10列ほど配置されていて、更にそれ以外のスペースには育苗トレイを置くための棚が一面に敷き詰められていた。その全部に土や肥料を入れ、植物を育てる環境を整えようと思ったら膨大な作業量になりそうだった。恐らく今日は半分ぐらいのスペースを埋め終わった所で植物の種や球根を植え始めるのはないだろうか。


 「ふむぅ、やはりこうやって土を詰めてるだけでも園芸の仕事は楽しいのぅ。自然と触れ合うのは植物だけでなく我々人間の心にとっても大きな栄養になるわい」

 「流石伊達に年食ってるわけじゃないにゃ。自然の大切さをちゃんと理解していないと出てこない言葉なのにゃ。きっとボンじぃならこの栽培場を元気のいい植物達で一杯にできるにゃ」

 「うむ、そうじゃろうそうじゃろう。やはり年寄りは敬うものじゃ。ところで、先程ナギ達のいる外の牧場の方が騒がしかったが、何かあったのかの。何やら悲鳴のようなものと何か物が壊れるような音がしとったが…」


 どうやら先程のレイコに少年とおっさんのプレイヤーが吹っ飛ばされた騒ぎは栽培場の中にまで聞こえていたようだ。プレイヤー達は皆気にはなっていたようだが、どことなく怖い雰囲気がしていたので何があったか聞くことが出来ていないようだった。


 「ああ…、どうやらモラルの悪いプレイヤーが労働者のNPCに失礼な態度を取ったみたいなのにゃ。それでお仕置きされちゃったんじゃないのかにゃ」

 「ほえっ、お前さん外で何があったか様子が分かるのかい」

 「そうにゃ。このゲームのNPC達の記憶は全てネットワークで繋がれていて、必要度に応じてそのNPCに起きた出来事が他のNPCの記憶にも反映されるようになってるのにゃ。その記憶を辿る限りどうやら2名の男性プレイヤーと、騒ぎにはなってないけどその後一人の女の子のプレイヤーがレイコっていうこの牧場の責任者のNPCに失礼な態度を取ってしまったようなのにゃ。つまりその3人はこの国の労働者達の間で瞬時に評判が悪くなって、暫く間内政の仕事の効率が悪くなってしまうのにゃ。ボンじぃも他の美人な女性NPCに卑猥なことしてると私にまで嫌われることになるから気を付けるにゃよ」

 「ほほっ、リディちゃんにまで嫌われてしまっては流石のわしも精神的に辛いわい。こりゃ気を付けんといかんのぅ…」


 ボンじぃ達が気になっていた外の騒ぎの様子はどうやらリディを含む栽培場のNPC達は皆何があったが知っているようだった。これも先程言った評判システムの影響だが、ボンじぃもリディからそのシステムのことを聞き内容を理解したようだった。レイチェルにしてしまったようにゲーム内の女性NPCに卑猥な行動を取らないよう自分の心を戒めながらボンじぃは園芸の作業を続けていた。



 一方その頃タイガーキャットのトララに鉱山へと案内してもらったナミとレイチェルはすでに鉱員の作業服に着替えてつるはしを持って発掘作業に精を出していた。鉱員とは以前までは鉱夫と言われていたようだが、ゲームの中ではあるがナミやレイチェルのように女性の作業員も出てきたため鉱員と言いかえられたようだ。ナミとレイチェルのは昔の鉱員のようにへその出た白いタンクトップにジーンズのような作業ズボンを履いていて、男勝りの性格の影響からか何やらかなり服装が似合っていた。

 挿絵(By みてみん)

 “カンッ…、カンッ…”

 「……たくっ、何だよこの鉱山…。さっきから何も採掘できねぇじゃねぇか。出てきても鉄ばっかりだしよ。私はもっと珍しい鉱物が手に入ると思ってこの仕事を選択したのによっ!」

 “カンッ…、カンッ…”

 「本当よね…。私は初期のスキルが鉄に割り振られてたからまだ割と採れてる方だけど、他のプレイヤーやNPCの労働者達はからっきし駄目みたいね。プレイヤーの皆なんて疲れてへたり込んじゃってるわ。まだ最初の鉱山だから何も出てこないのかしら」

 “カンッ…、カンッ…”

 「ふぅ〜…、それもあるけどやっぱりこの鉱山はどうやら外れのようなのにゃ…。普通鉄は建物を建てたりプレイヤーやNPCの兵士に支給する武器や防具などを作るため広い用途で必要になるから序盤からわんさか出るはずなんだけどにゃ…。でもこういう鉱山に限って稀に貴重な鉱石が出てきたりするもんなんだけどにゃ」


 どうやらこの鉱山自体の採掘量が少なく設定されているため、ナミ達がいくら掘っても鉄や他の鉱物も出てこないようだ。最初のスキルの割り当てで鉄の採掘スキルの上がっているナミで少量の鉄が採掘できる程度だった。通常の鉱山ならば鉄や建造物によく使うビルド鉱物というこの世界で一般的な鉱物などは序盤から大量に採掘できるはずなのだが…。トララが言うには一般的によく採れるはずの鉱物があまり出てこないというのは鉱山の中に貴重な鉱物が眠っている証拠でもあるようだが…。


 「そうなんだ…。でも私達皆まだスキルレベル低いしあんまり期待しない方がいいわね。ところで私の副業の宝玉師に使う玉石って言うのと普通の鉱物って何が違うの。私よく分からないんだけど玉石っていうのは多分宝石のことで、宝石も好物の中に含まれてるものなんじゃないの」

 「その通りにゃ。現実世界では鉱物の中の特に貴重で珍しい物を宝石や玉石って言ってるみたいだけど、この世界では宝玉に加工できるものを玉石、それ以外の装備や建造物に使用したりするものを鉱物って呼んでるにゃ。鉱物もその使用用途によって鉱物(武器)とか、鉱物(建造物)とかに分けられているのにゃ」


 この世界の鉱物の分類はその好物の主な使用用途によって分けられているようだ。大きく分けて武器、防具、装飾品、建造物、そしてその他となっているようで、レイチェルはその中の武器に使われる鉱物の採掘量を上げるスキルに割り振られているようだった。


 「へぇ〜、それじゃあ私のスキルの割り当てだと序盤から強力な武器を作るための鉱石が取れるかもしれねぇってことだな。じゃっ、気合入れてもう一頑張り採掘してみるか…」

 「私もっ!。確率は低いと思うけど玉石が出ることを願って黙々と掘ってみますか」


 採掘物が少なくて気が沈んでしまったナミとレイチェルだが、トララの言葉を聞いてもしかしたら貴重な鉱物が出てくるのではないかという期待を胸に抱いて再び採掘作業を再開した。


 「え〜、あの人達まだこんな汗臭い作業続けられるの〜。本当に女性なのかしら…」

 「本当…、ゲームの中にもいるのね。あんな体力馬鹿。普通のか弱い女の子私達はこんな男っぽい仕事もうできないわよね〜」

 “カチンッ…”

 「うへぇ〜、まだ採掘してやがるぜあの女共…。男の俺達でさえもうクタクタなのに、まるでゴリラ女だな」

 「ほんとほんと。このゲームのアバターも他のVRMMOと同じで現実世界のものと同一に設定されてるみたいだけど、何かチートでも使って男が女の格好してプレイしてんじゃないの。雰囲気も何だか男っぽいし…」

 “カッ…チィィィィィィィンっ!”

 「レ、レイチェル…っ!」

 「おらぁぁぁぁぁぁっ、てめぇらっ!。誰が中身が男だってぇぇぇぇぇっ!。てめぇらの方こそ女が男に化けてプレイしてんじゃねぇのか、このネナベ野郎っ!」

 「ひっ…、ひぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」


 他のプレイヤー達が皆へたり込んでしまっている中、黙々と作業を再開して採掘の仕事を続けてるナミ達を見て女生と男性のプレイヤーの組がそれぞれナミ達に向かって嫌みを言ってきた。全く採掘できなくてイライラしていたのかもしれないが、どうやらレイチェルの怒りに触れてしまったようだ。レイチェルはまず男のプレイヤー達に凄み掛かり、目を三白眼にして大声で怒鳴り散らすと、男性プレイヤー達は涙を流し悲鳴をあげながら互いに抱き合って怯えてしまっていた。そしてすぐさま女性プレイヤー達に対してもその場から睨みつけて凄みを入れていった。


 「てめぇらもゲームの中だったら男も女も関係なく平等に設定されてるだろうがぁぁぁぁぁぁっ!。都合のいい時だけ男女平等言ってないでとっとと働きやがれぇぇぇぇぇっ!」

 「ひっ…、ひぃぃぃぃぃぃぃっ!。ごめんなさいっ、今すぐ働きますので許してくださいぃぃぃぃぃっ!」


 レイチェルに怒鳴られると女性プレイヤー達も悲鳴を上げてしまい、そのまま立ち上がりレイチェルの言われたり採掘の作業を再開した。抱き合ったまま放心していた男性プレイヤー達もレイチェルが再び睨みつけると急いで立ち上がって地面に倒れていたつるはしを手に取り採掘作業を再開した。


 「さ、流石ね…、レイチェル…。あんたって本当に現実世界ではヤンキーなの。見た目からそうじゃないかと思ってたんだけど今の凄み方は並の不良でもできないわよ…」

 「馬〜鹿、お前私が今いくつだと思ってんだよ。もう20をとうに越えて26だぞ。バリバリに仕事してて不良なんてやってる暇ねぇての。まぁ高校の時は結構喧嘩とかやってたけどな。結構強かったんだぜ。男にも勝ったことあるしな」


 その風貌や行動からも見て取れる通りレイチェルはどうやら不良だったようだ。今はもう引退して働いているようだがやはり喧嘩も強かったようだ。そうでなければ威圧しただけであれ程相手を震え上がらせることはできないだろう。しかし男にも勝ったことがあると言っていたが男のヤンキーが女性のヤンキーに手を出すことはあるのだろうか。不良というのは曲がったことや弱いもの苛めが嫌いなイメージがあるがもしかしたら相手の男は別に不良ではなくて普通の男性だったのかもしれない。


 「へぇ〜、やっぱり喧嘩も強かったんだ。っで、今は何の仕事してんの」

 「普通のOLだよOL。毎日上司のパワハラに耐えながら真面目に働いてんよ。まぁ会社じゃ明るくて元気のいい子って評判なんだけどな。大人しそうな社員には怖がられてるけど…。ところでお前は何してんだよ」


 どうやらレイチェルは現実世界ではOLの仕事をしているようだ。そこまで似合っていないとは思わないが、レイチェルの性格を考えると上司との関係が大変そうである。


 「私ぃっ。……一応まだ学生よ。今年で大学卒業なんだけどまだ内定決まってないのよね…」

 「ふ〜ん、一応忠告しておくけどOLはやめといた方がいいぜ。ずーっと机に座って働くのはマジで腰悪くするからな。それに接待なんて連れて行かれた日には相手に気を遣いすぎて気が滅入っちまうしな。大学に行ってんならやっぱり何か資格をとんないとな。まっ、私は一度相手の会社の重役にセクハラされたから相手の顔に料理の入った皿ぶちまけて怒鳴り帰ってから連れて行かれることはなくなったけどな」

 「よくそれで首になんないわね…、あんた。そんな事言われても今は仕事を選べる状況じゃないわよ。できればゲーム制作の会社に就職したいと思ってるんだけどね…」

 「げぇっ!。ゲーム会社なんて気持ち悪い陰湿な男しかいねぇんじゃねぇのか。お前あんな根暗な男共がタイプなのかよ。ゲームをプレイするならまだしも作るなんて私は真っ平御免だぜ」

 「こんだけゲームで遊んどいてよくそんなこと言えるわね…。心配しなくても大手のゲーム会社ならほとんどが普通の人よ。まぁ、あんたみたいなはしゃげた人はいないでしょうけどね。もういいから仕事に集中するわよ。あんたも少しはトララを見習いなさい。さっきから一言も喋らずに作業に集中してるじゃない」

 「ニャンッ…、ニャンッ…」


 ナミ達が自分達の素性に関して世間話をしている間、タイガーキャットのトララは黙々と採掘作業を続けていた。トララの集中力の成果なのか、つるはしを振るう度に鉱脈の岩面から少しずつ鉄が出現し、トララの足元には沢山の鉄の塊が散りばっていた。どうやらこのゲームの鉱脈はつるはしを振るう度に自動で岩面から鉱物が出現するようだ。当然岩面も自動的に削れて行き、鉱山の中は採掘を進めるほどどんどん深く掘り進められていく。掘り進められた鉱山はゲーム内で半年、現実世界で6日間が経過すると坑道の中がリセットされ、まだ入り口の付近までしか掘り進められていない初期の状態に戻る。鉱山を掘り進め坑道が深くなればなるほどより貴重な鉱物が手に入り、採掘量も増えていく。期間内にどれだけ掘り進められるかはプレイヤーのスキルや労働者の能力、採掘に費やした時間によって決まる。


 “カンッ…、カンッ…”

 「ふぅ〜…にゃっ…。大分鉄が取れたにゃ。スキルも少し上がったみたいだし今度はこの鉄を集めて輸送の仕事をしている労働者に渡してくるにゃ」

 “ザッ……、ザッ……”


 トララはある程度の量の鉄が採掘されると地面に散りばった鉄を拾い集め、運搬用の手押し車のカゴに鉄を詰めると坑道の外へと運んで行った。どうやらこの後城への輸送のための荷造りをしておかなければならないようだ。そうして外に設置されている倉庫の中に保管しておけば、輸送関係の仕事をしている労働者やプレイヤーが城へと運んでくれるというわけだ。


 「本当に働き者なのね、猫魔族って。私達も頑張らないと…」

 「だなっ、あの小っちゃい体のトララでさえあんなに鉄を採掘したんだ。トララの倍以上の図体してて、その上プレイヤーである私達はあの倍の量は採掘しないといけないよな。さてと…、じゃあ気合入れて採掘しますか」


 この採掘量の極端に少ない鉱山で、何一つ文句を言わず黙々と作業を続けるトララを見て、ナミとレイチェルはプレイヤーとしての自覚を持ち直し自分達も無駄話をせずに内政の仕事に集中し始めた。するとスキルレベルの低いレイチェルの周りにもじわじわと鉄が出始め、鉄にスキルが割り振られているナミに至ってはもう足元が鉄だらけになっていた。気が付くと二人の体に土の汚れがこべりつき、額や頬、鼻の頭などに土を付けて一端いっぱしの鉱員のようになっていた。するとナミ達の働きぶりを見て労働者NPCの一人が採掘に集中しているナミ達の背後から近づいて来た。元々なのか鉱山での仕事の汚れなのか分からないが、色黒の肌をしていて体格が大きく、筋肉質でいかにも鉱山労働者っぽい雰囲気のおっさんNPCだった。


 “パシィィィィィッ!”

 「…っ!、痛ってぇぇぇぇぇぇぇっ!」

 「おっ、嬢ちゃん達。可愛らしい顔して偉い働き者じゃねぇか。普通の女ならこんな仕事一日も持たずに投げ出しちまうのによ」


 その労働者NPCはナミ達の背後まで来ると挨拶するように勢いよくレイチェルの尻を引っ叩いた。ボンじぃのようにやましい気持ちはなかったようだが、挨拶の割に力が入っていたようでレイチェルは悲鳴を上げて痛がっていた。どうやらレイチェルのお尻は男性にとって魅力的なようでつい触ったり叩いたりしたくなってしまうようだ。


 「てぇんめぇ〜…、NPCだからってあんま調子乗ってんじゃねぇぞコラァァァっ!。私にセクハラする奴はどんな奴だろうがたたっ斬ってやるっ!」


 そのNPCは挨拶のつもりだったようだが当然レイチェルにとってはセクハラでしかなく、おまけにお尻がヒリヒリするほど強く叩いてしまったようでレイチェルは怒って突如自らの職業である戦士の武器である大剣を装備し、NPCに喉元に向かって切先を突き立てた。


 「ま、待て…。俺が悪かったようだ。少し強く叩きすぎたよ」

 「そういうことじゃねぇよっ!。男が女の尻に触るっていうのはセクハラだろうがっ!。いくらNPCだからって私からしてみれば同じ人間だからな。法律で裁けなくても私がこの剣で裁いてやるから覚悟しとけよゴラァァァッ!」


 レイチェルの迫力は凄まじく労働者のおっさんNPCはたじろいでしまっていた。どうやらこのゲームのNPCは恐怖も感じるようだ。恐らくほぼ現実世界の人間と同じと言いほどどの人格プログラムがこのゲームのNPCには組み込まれているのだろう。


 「わ、分かった…。あんたの尻がちょっといい形してたからつい調子に乗って引っ叩いちまったんだ。もう二度としないから許してくれ」

 「なにぃ〜…」

 「もう許してあげなさいよレイチェル。この人、さっき私達に内政の仕事の仕方を説明してくれたこの鉱山の責任者でしょ。あんまり楯突かない方がいいと思うけど…」

 「………」


 どうやらこのおっさんNPCはこの鉱山の管理者のようだ。先程のナギ達に仕事を教えていたレイコと同じ立場のようだが、プレイヤー達を叱っていたレイコとは逆に、このNPCはプレイヤーであるレイチェルに許しを請う形になってしまっていた。


 「ちっ…、まぁ仕方なねぇな。けど次やったらいくらNPCでも容赦しないからな」

 「あ、ああ…、分かってるよ。今みたいな場合だとNPCに施されてるセキュリティープログラムも起動しねぇから一方的にボコられちまうしな」


 レイコの言っていた場合と違いNPCに非のある行動があった場合プレイヤーに攻撃されてもセキュリティープログラムは起動せずステータスも上昇しないようだ。そのためほとんどのNPCは何の抵抗もできずにプレイヤーに倒されてしまうが、大抵のNPCはゲーム内時間で一日が経過すると自動的にリスポーンしているようだ。NPCに非がある場合は当然評判システムによる悪評も発生しない。


 「良かったわね。レイチェル許してくれるって。ところで…、おっさんって何て名前だっけ?」

 「たくっ…、さっき皆の前で自己紹介しただろうが。アイアン・マンドルトって名前で、皆からは鉄男てつおって呼ばれてるってよ。だからお前らも俺のことは鉄男さんって呼ぶんだぞ」

 「ああ…、そうだったわね。それじゃあ鉄男っさんって呼ぶことにするわ」

 「なっ!、なんで男とさんの間で音をつまらせるんだよ。それじゃあ鉄掘りのおっさんって意味みたいじゃねぇか!」

 「…っ?、何言ってんだ。その意味の通りのNPCじゃねぇか。よろしくな鉄男っさん」

 「ぐぅ…、まぁそうだけどよ…」


 ナミ達に話し掛けてきたNPCはどうやらアイアン・マンドルトというそうで、アイアンとマンという名前をもじって鉄男と呼ぶよう促してきた。だが先程の行為でナミ達の気を損ねていたのか鉄男っさんと呼ばれることになってしまった。


 「ところで鉄男っさん。さっきから何も採掘できなし出てきても鉄ばっかりなんだけど、この鉱山は一体どうなっちまってんだ。もう閉鎖しちまった方がいいんじゃねぇのか」

 「本当よ。私だって鉄なんかより早く貴重な玉石を採掘したいんだけど」

 「最初はどの鉱山も鉄しか出てこねぇよ。確かに今は採掘量はかなり少ないようだが、掘り進んだ距離によっては爆発的に採掘量が増えたりするからな。まず半年経って一度リセットされてみるまで閉鎖するかどうかは決められねぇよ。まぁ城郭の中にある鉱山は大抵閉鎖されて住宅区や商業区の建物に置き換えられちまうだろうがな。だからお前達はとっとあの北に見えるでっけぇ山脈を制圧してくれよ。あそこのなら金や銀、それに珍しい鉱物も沢山採れるだろうからな。後は少し進軍に時間はかかるだろうが高台の下の崖何かでも貴重な鉱物がとれるだろう」


 鉄などの鉱物の採掘量は鉱山の掘進くっしんした距離によって増加していくが、その増加量には波があるらしく、最初の地点では採掘量の低かった鉱山がより採掘量の多かった鉱山の採掘量を上回ることもあるらしい。また場合によっては掘り進められた地点において一時的に採掘量が大きく減少する場合もある。また城郭の中に設置されている鉱山は比較的採掘量が少ないらしく、鉄男っさんはナミ達に早く北の鉱山か高台の崖下に拠点を建築するよう催促してきた。


 「なるほどねぇ…。じゃあやっぱり今の段階じゃ武器の素材なんかになる貴重な鉱物は出てこねぇってわけか…。折角武器用の鉱物にスキルが割り振られて喜んでたのにこれじゃあ気持ちが萎えちまうぜ…」

 「ほぅ…、お前さん初期のスキルが武器の素材用の鉱物に割り振られてたのか。実は俺も武器用の鉱物の採掘が得意で、プレイヤーにスキルを伝授したり指導したりしてスキルレベルを大幅に上昇させることも出来るんだが…、さっき失礼なことしちまったお詫びもあるし、折角だからお前さんにスキルの指導をしてやろうか。多分俺の指導と合わせれば武器用の鉱物の採掘スキルが10以上にはなるはずだぜ。この鉱山は何だか鉄の採掘量が極端に少ないし、もしかしたら貴重な鉱物が眠ってるかもしれねぇからな」

 「本当かっ!。それ是非お願いするぜ、鉄男っさん。それで、一体どうすればいいんだ…」

 「あ〜、ずるい〜。私だって早く玉石の採掘スキル覚えたいのに〜っ!」

 「悪いが玉石の採掘スキルは持ってねぇんだよ。俺はああいう光物ってのがどうも苦手でな。何だか俺に似合わねぇって言うか、とにかくNPCにも得意不得意があるんだよ。それじゃあぇちゃん。俺が一回ここで採掘するから、それをよく見てその後俺のつるはしを持って姉ぇちゃんも採掘するんだ。それだけでレベルが上がるからよ」

 「へっ…、それだけでいいのか…。このゲームのことだからもっとリアルな修行でもあるのかと思ったのによぉ」

 「それはスキルが上がった後自分でやるんだよ。言っとくけどスキルレベルが上がっただけじゃ貴重な鉱物を掘り出すことは出来ねぇぜ。戦闘と同じようにリアルキネステジーシステムが働いてるから、しっかり集中して正しいつるはしの振り方の感覚をその身で覚えていかねぇといつまで経っても鉄しか出てこねぇぜ。それじゃあ俺から始めるからよく見とくんだぞ。この凝視も指導によるスキルの上昇率に影響してくるからな。因みにそっちのポニーテールの姉ぇちゃんはいくら凝視してもスキルレベルは上がれねぇから気を抜いてていいぞ」

 「わ、分かってるわよ…。(うぅ…、もしかしたらって思ったけどやっぱり駄目みたいね…。私も早く玉石の採掘スキルを持ったNPC見つけて伝授してもらおうっと…)」


 どうやらこのスキルの指導はレイチェルにのみ影響するようで、ナミはいくら鉄男っさんの採掘の仕方を見ても無駄だったようだ。因みに鉄男っさんの言う通り内政の仕事にもリアルキネステジーシステムが反映されているようで、自身のスキルレベルをどこまで生かせるかは自身のプレイ技術と集中力に大きく依存する。通常のプレイヤーならばいくらスキルレベルが上昇していても10レベル程度の力しか引き出せないだろう。勿論スキルレベルが上昇がればプレイ技術が低くても多少は仕事の効率は上がるだろうが…。先程ナミ達が気を引き締めなおしてから鉄の採掘量が増えたのもこのためだろう。鉄男っさんはそのことを踏まえていたように精神を集中して非常に綺麗なフォームで力を込めて岩盤に向かってつるはしを振るった。そのつるはしの起動は綺麗に弧を描いており岩盤に対して切先がほぼ垂直になるように振り下ろされた。すると貴重な鉱物こそ出てこなかったが先程までとは比べ物にならない量の鉄がたった一振りで地面に散りばっていた。


 「すっご〜い…、素人の私でも美しいって思える程のつるはしの振り方だったわ。地面に散りばってる鉄の量もさっきの私達とは比べ物にならないわ」

 「ああ…、思わず私も見とれちまってたぜ…。こんなおっさんをマジマジと見るなんて気持ち悪かったけどな…」

 「ふぅ〜…。鉄しか出てこなかったが、まぁざっとこんなもんか。それじゃあ今度は姉ぇちゃんがやってみな。今見た俺のフォームとこれから採掘する姉ぇちゃんのフォームが近いほどスキルレベルの上昇率が上がるぜ。随分見とれてたようだけどちゃんと凝視出来てたのか」

 「あんまり調子に乗るなよ、おっさん。俺はあんたのフォームに見とれてただけで別にあんた自身に見とれてたわけじゃねぇぜ。それにどっちか言うとほとんど綺麗な円のような弧を描いていたつるはしの方ばっかり見てたしな」

 「私もっ!。あんたのフォームよりむしろつるはしの方に見とれてたわ。もしかしてあんたの力って言うよりそのつるはしのおかげなんじゃないの」

 「はぁ…、全く口の減らねぇ姉ぇちゃん達だな。まぁいいか…、ほらよ」


 鉄男っさんの綺麗な採掘フォームに見とれていたナミ達だったが、鉄男っさんに問いただせると全力でそのことを否定した。どうやらこんなむさ苦しいおっさんに見とれていたなど女として恥ずかしかったようだ。鉄男っさんはため息をついて呆れていたが、レイチェルにつるはしを渡すと後ろに下がり真剣な表情でレイチェルがつるはしを振るうのを待っていた。


 「よ〜し、じゃあ行くぜ〜。さっきはただ見とれてただけじゃねぇってことを見せてやるぜ」

 「頑張って、レイチェルっ!」

 「………、ふぅ……」

 「……っ!、あれは…」


 鉄男っさんからつるはしを受け取るとレイチェルは深く深呼吸し、目を閉じて集中力を高め始めた。その表情は真剣そのものでナミを含む周りのプレイヤーまでもが腕を止めてレイチェルの様子を見守っていた。更には鉄を運び終わり戻って来たトララまでもレイチェルの研ぎ澄まされた感覚が作り出す緊張した雰囲気を感じ取り、ナミ達に気付かれないようにそっと鉄男っさんの後ろの辺りまで移動してきた。レイチェルは右足を少し前に出し、まるで剣道のようにつるはしを竹刀のように、正面から見た時に自身の中心線に寸分の狂いもないよう構えていた。腕も真っ直ぐに伸び切り、横から見た時のつるはしの角度もちょうど45度の位置に固定されピクリとも動かなかった。それでいて全身にはまるで力が入っていないようで、かなりリラックスした様子だった。


 “………ゴクリッ…”

 「……よしっ!」

 「……っ!」


 周りのプレイヤー達が緊張のあまり息を飲み音がした瞬間、レイチェルは掛け声とつるはしを真上にこれまた中心から1ミリもずれないよう振り上げ、腕が少し頭に後ろに来る辺りで一度止めた。この時レイチェルの手首はまるで動いていなかった。


 「はぁっっっ!」

 「おお…っ!」


 そして今度はさっきより力の篭った声を上げると、リラックスしていた体にも一瞬にして力を込め、鉱山の岩面に目掛けてつるはしを振り下ろした。振り下ろされたつるはしは振り上げた時と全く同じ軌道を通り、鉄男っさんの時と同じように綺麗な弧を描いて岩面へと突き刺さった。


 “カァーーーーーーンっ!”

 「……っ!。うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」


 つるはしが突き刺さると岩盤からは綺麗に透き通った金属音が響き渡り、レイチェルの一振りで一塊の岩盤が消え去ったと思うと何やら緑色をした鉱石が飛び出していた。その鉱石はまるで宝石のように輝いていたが透明度はかなり低いようだった。だが表面の石質は非常に滑らかでワックスを掛けたばかりの床のようにつるつるしていた。どうやら装備に使う鉱物のようだったが…。レイチェルのつるはしの振るい方とその鉱物を見てプレイヤー達は一斉に声を上げていた。


 「ふぅ〜…。どうだ、鉄男っさんっ!。私的には会心の出来だったと思うんだけどスキルレベルはいくつ上がった?」

 「あ、ああ…。そんなことよりお前…」

 「すっご〜いっ!、何よレイチェル今のフォーム。まるで伝説の侍が刀を振るったみたいだったわ。それになんだか凄そうな鉱物も出て来てるしっ!」

 「鉱物…?」

 「そうにゃっ!。ほら、足元を見てみるにゃ、レイチェルっ!」

 「なんだトララ、お前戻って来てたのかよ……って、ああぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 レイチェルはつるはしを振るうことに夢中になっていて出てきた鉱物に全く気付いてないようだったが、トララに促され足元を見ると、地面に転がっている緑色の鉱物をみて驚きの声を上げた。


 「うおぉぉぉぉぉぉっ、なぁ鉄男っさんっ!。これってまさか…」

 「ああ…、武器に使う素材になる鉱物だよ…。素晴らしいフォームだと思ったがまさか本当に武器用の鉱物を出しちまうとはな…」

 「うぉっしゃーーーっ!。っで、これはなんて鉱物なんだよっ!。いったいどんな武器に使えるんだ?」

 「まぁ落ち着け。どれ、じゃあちょっと見せてみろ」


 鉄男っさんはレイチェルから緑色の鉱物を受け取ると、少し上にあげて下から見上げるようにして鉱物を隅々まで観察していた。鉱山の天井に吊るされたランタンの光をかざして光の反射の仕方を確かめていたようだ。


 「……なるほど。これはサザンストーム鉱石だな。主に武器の製造に使用する鉱物で、序盤だったら剣士が装備する通常の大きさの剣であるストームブレイド、盗賊用の疾風のダガー、大剣だったらヴァイオレットウインド何かが作れるな。勿論他の素材も必要になるしそれなりのスキルを持った鍛冶屋に頼まないと行けないけどな。街に住むNPCの鍛冶屋じゃ多分まだ作れないだろうから大剣にスキルが割り振られたプレイヤーの鍛冶屋に頼むしかないな」

 「そうか…。じゃあナギの奴に聞いてスキルが割り振られてなかったら無理やり大剣の鍛冶スキルを上げさせて作らせよう…。でもちょっと待て。そういやこのゲーム手に入れたアイテムは国納品しなきゃいけなんじゃなかったか。これも私が勝手に使っていいわけじゃないんじゃねぇか」

 「ああ、その通りだな」

 「なんでぇ…、喜んで損しちまったぜ…」


 折角採掘できたサザンストーム鉱石だがやはりこのゲームの設定上まず国に納品しなければならないようだ。功績ポイントを引き換えに国に納品する前にアイテムを入手したプレイヤーはそのアイテムを自分の物にすることもできるが、かなりのポイントを消費してしまうため余程貴重なアイテムの場合以外使用しない方がいいだろう。


 「……っと言いたいところだがここの管理者であるこの俺の権限を使ってそのサザンストーム鉱石はお前にプレゼントすることにする」

 「…っ!。いいのかよっ!。そんなことして…」

 「実は各内政施設の管理者にはプレイヤーの働きぶりに応じて自由に報奨金や報奨品を支払う権利が与えられているんだよ。それに今お前達はこの国の住民達の間で評判がかなり良くてな。通常以上に貴重な報奨品や多額の報奨金を受け取れるようになってるんだよ」

 「えっ…、それってどういうことっ!」


 なんと鉄男っさんはレイチェルにサザンストーム鉱石をくれると言ってきた。各内政施設の管理者NPCには自己の裁量でプレイヤー達に報奨を出す権利を有しているらしく、鉄男っさんはその権利を行使してレイチェルにサザンストーム鉱石を報奨として渡すようだ。だが実際報奨が出る場合はほとんど金銭で、今回のように素材アイテム…、それもサザンストーム鉱石のような貴重な鉱物が報奨として渡されることはほとんどない。


 「お前達、伊邪那美命とレイナルド・チェルシーだろ。確か討伐の時猫魔族をこの国に引き入れるイベントを起こした伊邪那岐命と同じパーティだったよな。そのおかげでお前達8人は俺達NPCの間で評判がかなり良くなってるんだよ。さっきのスキルの指導イベントも、今の報奨もその影響の賜物ってわけだ」


 どうやらレイコの言っていた猫魔族を引き入れたことによる自国のNPCの間の評判の上昇は、同じパーティだったナミ達にも反映されているようで、その影響で鉄男っさんはレイチェルにスキルの指導をしたり、貴重な鉱物を報奨として贈呈してくれたようだ。


 「…っ!。伊邪那美命とレイナルド・チェルシーって確か団体賞で2位に入賞していたパーティの一員じゃないか。確かあの美城聖南も同じパーティにいたはず…。そんな凄い人達がこんな近くにいたなんて…」

 「でもレイナルドって奴は俺より討伐数低かったよな。ったく…、ほとんど美城聖南と伊邪那美命のおかげで入賞できただけのくせに威張りやがって。さっきはビビって損しちまったぜ」

 「あっ…。てめぇ…、今なんか言ったか…」

 「い、いえ…。ごめんなさい、ただの独り言です。あなたに失礼なことは何一つ言ってませんっ!」


 鉄男っさんがナミとレイチェルの名前を口に出した途端周りのプレイヤー達が騒ぎだした。どうやら団体賞の3位に入賞したせいでプレイヤー達の間で少しは名が知れ渡ってしまったようだ。セイナは元々有名人だったが、ナギ達にとってこのことはどういう影響を与えるのだろうか。


 「なるほどねぇ…。これはナギに感謝しないといけないわね。でもそれだったらレイチェルばっかりずるいわ。私にも何かスキル教えたり報奨出したりしてよ」

 「心配しなくてもお前さんも内政の効率がかなり上がってるから貰える功績ポイントはかなり上がっているはずだぜ。ただ今このレイチェルに起きたイベントみたいなのはプレイヤーの願望と状況に合わせてランダムに起きるよう設定されてるから、NPCである俺はそれらがマッチしないと何もお前さんに教える気が起きねぇなんだよ。まぁ頼まれれば報奨金ぐらいは出す気になるだろうがこういうのはNPCの方から話を持ち掛けてくるのを待った方がいいぜ」


 どうやら今レイチェルに起きたようなイベントは、自国のNPCの評判が上がっている時に発生しやすいらしい。ただイベントが起きるかどうかはランダムで、基本的にNPCの方から話を持ち掛けてくるらしい。自分から頼み込んで発生させることもできるようだが、その場合は評判ポイントに応じてNPCに断れてしまう場合もあり、仮に成功したとしても評判ポイントがかなり落ちてしまう。鉄男っさんの言う通りランダムに発生するのを待っている方が良さそうだが、自分にどんなイベントの発生が必要か分かっている時は積極的にNPCに頼みに言ってもいいかもしれない。


 「ふ〜ん…、そっか〜…。じゃあ気ままに街を散歩でもしてNPCから話を持ち掛けられるのを待つしかないか〜…」

 「そう気を落とすなよ、ナミ。きっとお前にもその内いいイベントが発生するはずだぜ。それに終盤なればどこでどんな行動を取っていればどのイベントが発生するか分かるようになってくるんじゃねぇのか。ところでおっさん、さっきの指導で私のスキルレベルはいくつ上がったんだ」

 「ああ…、それは俺の方じゃ分からねぇから自分で端末パネルを開いてみた。そしたら上昇ポイントとさっきの一振りの適正率が見られるからよ」


 鉄男っさんにスキルレベルの上昇は端末パネルで確認できると聞いてレイチェルは早速端末パネルを開いてみた。そこには先程の指導の適正率と武器用鉱物の採掘スキルの上昇度が表示されていた。


 「えーっと何々…、適正率97%っ!。スキルレベルは5から17に上がっただってよ。12も上がってるぜ。こりゃ大成功だったんじゃねぇのかっ!」

 「凄いじゃないレイチェルっ!。97%ってほとんど100%みたいなもんよ。もう鉄男っさんのスキルレベル超えてるんじゃないっ!」

 「こらっ、ちょっと俺のこと馬鹿にしすぎなんじゃねぇのか。しかし確かに綺麗なフォームだとは思ってたがまさか90%を超えてるとはな。通りでサザンストーム鉱石なんてものが出るはずだ」

 「本当にゃ…。僕もビックリしたにゃ。もしそれで武器が作れてたらレイチェルはいきなりトッププレイヤーに躍り出るにゃ」

 「へへっ…。よ〜し、それじゃあもっと貴重な鉱物目指して採掘を再開しますか。待ってな、今ナミやトララ達の分も出してやるからよ」

 「おいおい…、流石にこれ以上サービスできるようには設定されてねぇよ。やろうと思えばできないこともないがその場合はすぐさま管理者の職から降ろされちまうからな。それにもうこれ以上は貴重な鉱物はでねぇよ。後はしっかり鉄を採掘しておいてくれ」


 レイチェルはこの後も気合を入れて鉱山を掘り続けていたが結局貴重な鉱物は出てこなかった。だがその分大量の鉄を採掘でき鉱業の内政値も大きく上昇しただろう。功績ポイントも大量に入手することができレイチェルは内政において初日から大きな成果を得ることが出来たのだった。




 ナミとレイチェルが順調に内政の仕事をこなしている中、漁業をしに行ったヴィンスや、魔法や軍事の研究をするために城へと向かったデビにゃんやセイナ達はどうしているのだろうか。ヴィンスの内政職は海面漁業だったが高台の上に建国されたヴァルハラ国の付近に海はない。ヴィンスは仕方なくアクアキャットのアットと共にヴァルハラ城のまだ城下町が発展していない地域、ナギ達が内政の仕事をしてる地域から更に外側の内郭を超えた所にある川で漁業の仕事をしていた。当然辺りは何も建造物が建っておらず内郭となる城壁こそ建っていたが討伐時の草原そのものだった。少数ではあるがモンスターも出現しているようで、ヴァルハラ国のNPC兵士達が徒党を組んで討伐していた。建国前に比べると出現数は十分の一にも満たないようで、モンスターの強さも更に弱くなっていたようでNPCに任せて大丈夫のようだった。


 「ぷはぁ〜…、やっぱりゲームの中での水の中は気持ちいいな。しかも現実の世界よりも比べ物にならないくらい澄み渡っていてまるで地上と同じように周囲が見渡せるぜ。魚も一杯いるしな」

 「ぷふぅ〜…、この辺りの川はこの世界の中でも一段と綺麗なのにゃん。しかも霊気の通っている水にしか済まないウーグイスっていう霊水魚もいるのにゃん。これはこの川の源流があるあの山脈の一部が霊山になっているのかもしれないにゃん」


 マップ上には表示されていなかったが、ヴァルハラ城の西にある北の山脈から流れている川からいくつもの支流が流れているようだった。普段現実世界で見慣れている程度の川などは表示されておらず、黄河やナイル川のような大きな川の本流のみがマップに表示されているのだろう。アットが言うには北の山脈の中に霊山があって、この川の本流や支流にも霊気が流れているらしい。そのおかげで珍しい魚も生息しているようだ。これはナギはユグドラシルとミーミルの泉を高台の下に設置して正解だったかもしれない。これらの自然遺産は周囲の水源に魔力をもたらしてしまうため霊気を塗りつぶしてしまう。


 「それにしてもヴィンスの見事な槍捌きには驚かされたにゃ。川タイプに属していて適正率も80%ある僕に迫るぐらいの漁獲量にゃん」

 「まぁ、MMOではずっと槍術士でプレイしてたからな。そりゃ銛の使い方も多少は上達してるよ。それにこう見えて現実世界じゃ水泳が得意で、50メートルぐらいなら軽く潜水した状態で泳ぎ切れるぜ。趣味でダイビングも結構行ってるしな」


 ヴィンスはVRMMOでの槍術士と、現実世界での水泳とダイビングの経験を活かして大量に魚を漁獲しているようだった。この程度の幅の川で漁業をする場合は銛を使って漁業をするのが基本のようで、プレイヤー達は皆装備を水着に変化させて現実世界からしてみれば新鮮な漁業を楽しんでいた。ただ金槌で泳げないプレイヤーもいたらしく、川辺で釣りをしているプレイヤーもいた。だが漁獲量はヴィンス達に比べると微々たるものだった。この様子だとヴィンスも内政の仕事は順調なようだった。



 

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