finding of a nation 8話
表彰式が終わりいよいよ内政に関する説明が始まった。やはりこのゲームを進めていく上でかなり重要なの要素となるのか、先程までの少し戯れ合った雰囲気も変わり、ブリュンヒルデも真面目で丁寧な口調に戻っていた。まずはこのゲームの内政要素についてざっくりとした分類の表がプレイヤー達の端末パネルに送られてきた。
「では皆様、まずはお手元の端末パネルの内政についての分類表をご覧になってください」
内政分類表
1.農業…耕種、畜産、園芸、その他
2.林業…育林、伐採、林産物、その他
3.漁業…海面漁業・養殖業、内水面漁業・養殖業
4.鉱業…金属、採石、鉱物、その他
5.建設業…土木、建築、石工、その他
6.製造業…畜産食料品、水産食料品、調味料、その他食料品、油脂、飲料、繊維、木材、紙、薬
7.情報…偵察、スパイ、新聞、出版、機密
8.運搬…陸輸、水運、空輸
9.商業…市場、交易、流通、銀行、観光
10.娯楽業…芸術、賭博、遊戯
11.教育…学問、運動、モラル、魔物学、宗教
12.魔法学…魔法技術、錬金技術、魔導器
13.軍事…軍需品、徴兵、訓練、軍事技術、戦闘技術
「うっわ〜…一杯あるね。僕は畜産だから農業に属してるってことか。畜産って言っても牛とか羊とか、多分軍馬も含まれてるよね。つまり畜産の中から更に得意な仕事とかが分かれているわけか…」
「私は鉱業の金属かぁ…。確か持ってるのは鉄のスキルだったわよね。デビにゃんの言ってた玉石のスキルっていうのは多分採石の中に含まれているのよね。もう鉄のスキルなんてほっといていきなり他のスキルに手を出しちゃおうかな…」
「それはやめた方がいいにゃ。鉄は序盤から終盤まで幅広い用途を持った重要な資源にゃ。それに玉石が取れる鉱山はなかなか見つからないし内政における功績ポイントをあまり稼げないにゃ。でも鉄だったら初期立地にあるほとんどの鉱山から採取できるからどんどん功績ポイントが貯まっていくにゃ」
ブリュンヒルデから送られてきた内政分類表は大まかに分けただけでかなりの種類があった。ここから更にそれぞれにランダムにスキルが割り振らている。ナミのように序盤から活用できる鉄のスキルを持っていれば他のプレイヤーに先駆けて内政による功績ポイントを取得できるだろう。だが貴重かつ取得の難しいスキルを割り振られてしまったプレイヤーは、レア度の高いスキルを取得できた分序盤は活躍の場が少なく、暫くは領土の開拓の為にモンスターとの戦闘に勤しむことなるだろう。
「今皆様にご覧になっていただいているのがこのゲームの内政における全ての分類表でございます。ここから更に各自選ばれた内政職の中からランダムにスキルが割り振られているでしょうが、それはあくまでその内政に仕事をした時に効果が上昇するというわけで、プレイヤーの皆様は全員どの内政を行うこともできます。当然自分のスキルの高い仕事をした方が効率は上がりますが、他のスキルはその仕事を経験していくことでしか新たに取得できません。内政に関しては今ご覧になっていただいてる分類表の全ての仕事が重要となってきますので、できるだけ色々な種類のスキルを取得していただきたいと思います。ただあまり幅広く手を出しすぎても器用貧乏になってしまうので、2〜3分類、5〜10種類ぐらいのスキルを目安として頂ければと思います」
「う〜ん…そっか〜、農業ばっかり伸ばしても人口が増えるばかりでそれじゃあ質のいい武器やアイテムも作れず洗練された兵隊も作れないってわけか…。全ての分野がある程度均等に伸びるよう皆で協力していくのが重要だね」
「なるほどね〜…。でもこういうのってつい自分の好きな分野ばっかり伸ばそうとしてしまうわよね。私の目指してる玉石ってどうやったら取れるようになるのかしら」
「まずは玉石の取れる鉱山を発見しないといけないにゃ。そこから更に質のいい玉石を採掘しようと思ったらナミのスキルを上げるだけでなく、ブリュンヒルデさんに内政の成長ポイントを使ってヴァルハラ国の鉱業の特性を新たに取得してもらわないといけないのにゃ。採掘できる玉石の種類はその特性を取得することで増えていくんだけど、その玉石に該当する特性を取得してもらわないといくら鉱山を掘っても出てくることはないにゃ。でも成長ポイントはそう簡単に取得できるものでもなく、他の内政の特性の取得にも使わないといけないから個人の意見で取得する特性を決めるわけにはいかないにゃ」
プレイヤー達が自国で内政の仕事などをこなしていくと成長ポイントという自国の特性を更に強化したり追加したりするこの出来るポイントが貯まって行く。このポイントによって取得できる特性は他国も含めて全て共通であり、どの分野の特性を多く取得していくかでその国の特徴が決まって行く。例えば今ナミが言っていた玉石の特性ならば玉石レベル2の特性を取得すればルビー・サファイヤ・エメラルドの玉石が採掘可能になり、更に玉石の採掘量が上昇する。採掘できる玉石の質が上がれば自国の収益が上昇したり、宝玉師の職に付いている者なら更に強力な魔力が篭った宝玉を作り出すことが出来る。宝玉は使用することで自身の発動させる魔法の威力を爆発的に上昇させたり、武器や防具、装飾品に埋め込むことで更なる効果を装備に付与することが出来る。
このように成長ポイントを駆使してどんどん自国の力を強化していくのであるが、当然全ての特性が取得できるほど成長をポイントを貯めることは容易ではなく、しかも取得する特性のランクが上がるほど必要なポイントは増えていく。そのため全ての内政の特性をバランスよく取得しつつ、いくつかの分野の特性を重点的に取得していくことが定石となるだろう。ヴァルハラ国ならばまず畜産、その次に槍の戦闘技術、そして建築の特性辺りが優先されるだろうか。特に軍馬はナギの提案によりヴァルハラ国は高台に広がる第高原の中に作られているため、序盤からかなりの数を生産していけるだろう。騎馬隊を編成すればその移動力で周囲の地形をより早く把握していけるはずだ。
「それでは内政の行い方について説明していきたいと思いますが、ここからは実際に体験していただくことで内政の仕方を覚えていただきたいと思います。内政を行うにはまずこヴァルハラ城の城郭の中から内政の仕事を管轄しているNPCの文官を探し出し、その文官NPCキャラに話し掛けることで内政に仕事に参加することができます。それで皆さんにはこの城郭の中から自らの内政職に適した仕事が行われている場所を見つけ、その文官に話し掛けていただき内政のチュートリアルを受けていただきと思います。混雑を避けるためにプレイヤーの皆様は一度パーティごとに城下町のランダムな場所に転送させていただきます。城内で行われる内政の職に就いている方は転送された後再びここに戻って来てください。チュートリアルが終わるまでは城郭の外に出ることができませんのでちゃんと受けて来てくださいね。制限時間は二日後の正午までとさせていただきます。現実世界では2時間ほどでしょう。チュートリアルが終了した方からこちらに戻って来て次のチュートリアルに移行してくださいね。夜になったら城下町で適当に宿屋を探すか民家に泊めて貰ってください。チュートリアルが終わるまでは宿屋はお代が要りませんし、住民の方々も心地よく泊めてくれると思います。では30秒後に転送されますのでしっかり内政の仕事を覚えて来てくださいね。では…」
「えっ…、ええぇぇぇぇっ!。そ、そんな…、急に城下町にほっぽりだされても困るよ。文官NPCなんてどうすれば見つけられるんだよっ!」
「そんなの見れば分かるように設定されてるわよ。ふぅー…やっと退屈な説明から解放されるみたいね。やっぱりゲームのやり方は実際にやって覚えないと」
「大丈夫にゃ、ナギ。皆も一緒に転送されるみたいだし僕もいるにゃ。僕は別にチュートリアル受けなくてもいいからナギに付いて行ってあげるにゃ」
こうしてプレイヤー達は突如ヴァルハラ城の城下町に放り出されることになった。ヴァルハラ城の城下町はまだ完全に建設できているわけではいなかったが、住宅区や商業区など、一通りの区画は整備されており、マップの1マス分、150平方キロメートルほどはすでにヴァルハラ国に住む住民達で城下町が賑わっていた。ナギ達はそんな城下町の中の、どちらかといえば質素と思える住宅区の辺りに転送させられていた。一応ヴァルハラ城は視認できたが、かなり距離が離れているようで豆粒ほどの大きさにしか見ることが出来なかった。やはり城の近くの城下町の方が発展しているようだ。
「……はっ!、もう転移させれれてしまったのか…。うっわ〜…城があんなに小さく見えるよ。もうそんな遠くまで城下町が広がっていたのか」
「そうみたいね…、でもこの辺りは人通りも少ないし、まだあんまり発展しきってないみたいね…。ってあれ見て、城壁の中に小さいけど山があるわよっ!。ちょっと丘になってるところに木が生えてるだけみたいだけど、やっぱりこの城の敷地は相当広いみたいみたいね…。あの城壁が一番外の外郭ってことになるのかしら…」
「それは違うにゃ、ナミ。あれは城の周りを囲っている内郭の次に内側に造られた内郭にゃ。端末パネルを見てこのヴァルハラ城の全体マップを見てみるにゃ」
ナギ達はデビにゃんに言われ端末パネルを開いて城郭内のマップを確認してみた。
「おいおい本当だぜ。デビにゃんの言う通りこの城には一番外の城郭の中に三つの内郭があるみたいだな。今私達がいるのはさっき城の周りを囲っていた内郭と、ちょうど崖に面した1マスを囲った内郭の間みたいだぜ。そしてあの城壁の向こうにあと一つの内郭と、その向こうにこの城郭の一番外の外郭があるみたいだぜ。どうやらこの内郭より外の地域はまだ全く城下町が発展していないだな。マップに空地って表示されてるぜ」
レイチェルの言う通りこのヴァルハラ城の城郭は三つの内郭と外郭により、四つの区画に分けられているようだった。一つ目は先程ナギ達が表彰式が行われていた城の周りの区画、城から30キロメートル離れた所に一つ目の内郭があり、ナギ達が先程いた城と広場もその区画にあった。城と城下町を隔てる為にナギ達がいた広場のすぐ側にも城壁が設置されていたが、それは内郭と呼べるほど大きいものではなかった。二つ目がナギ達が今いる区画であり、一つ目の内郭から100キロメートル離れた所に二つ目の内郭が建造されていた。ちょうど崖に面した1マス分を隔てた辺りに造られているようだ。その城壁から更に150キロメートル離れた所に三つ目の内郭、そこから更に150キロメートル離れた所に一番外側の外郭が造られていた。より外の区画ほど面積が広いようだが、三つ目と四つ目の区画についてはまだ一切建造物は建っておらず、ヴァルハラ国が出来る前の高原の地形がそのまま広がっていた。そしてどうやらより城に近い区画ほど賑やかな城下町が発展するようだった。
「討伐をした時マップの広さには驚かされていたが、まさかこれ程広大な城と城下町が出来上がるとは予想してなかったぜ。三つ目との四つ目の区画がまだ発展していないようだが、それも俺達の内政次第でどんな区画になるか決まるってわけか…。たくっ…、マジで奥が深そうだぜ、このゲーム」
「流石ヴィンス、察しがいいにゃ。この街が活気あふれる住民達で溢れかえる華やかな街並みになるのも、働く気力のない怠慢な住民達で溢れかえって質素どころかスラムのような極貧街になるのもナギ達の内政しだいにゃ。だからセイナみたいに自分のレベルことばかり考えてないでちゃんと住民達と触れ合ってやる気を出させてあげるにゃ」
「むっ、それは失礼だぞデビにゃん。私は経験値となの付くものなら何でも欲しい。このゲームには内政のスキルにも成長要素があるみたいだから勿論そちらの方の経験値もしっかり取得していくつもりだ。そして戦闘技術の研究を進めて更なる剣技を使えるようにするのだ」
「へぇ、セイナは軍事系の職にしたんだ。内政もするって言ってもやっぱり戦うことしか頭にないみたいね。ちゃんと自分の職業の技術研究だけじゃなくて、私の武闘家の職の研究も進めておいてよ。武闘家は複数の敵を同時に攻撃する手段が少ないから範囲攻撃系のスキルを早く解放しておいて欲しいわ。……ところで副業職は何にしたの」
「おおっ、それなのだがナギと同じく鍛冶屋を希望していたのだが、抽選に落ちてしまい鑑定士という職に就いてしまったようだ。未確認のアイテムを鑑定して実際に使用できるようにするらしいが一体未確認のアイテムとはどういうものを指しているのだろうか…」
セイナの内政職は軍事の分類に属する戦闘技術ようだ。戦闘技術は自国の兵士と共に更なる職業の開拓や使用できるスキルを追加の研究を行っていく内政分野のことである。この分野を上昇させておかないと就くことの出来ない職業や使用できないスキルもあるのだが、特に上昇させなくても初期の状態で豊富な種類の職業が用意されているので他の分野に比べると優先度は低いだろう。セイナの副業職である鑑定士というのはゲーム内でその形や効果が判明していないアイテムを識別する能力を持つ職業である。
「にゃっ!、それなら僕が今ちょうど未確認のアイテム持ってるから鑑定してみるにゃ。実はナギ達と出会う前数日前に偶然高原の中で入手してたのにゃ。セイナ、ちょっと端末パネルを開いて僕とアイテム欄の未確認のアイテムを鑑定してみるにゃ。未確認のアイテムは基本的に国献上する必要はないけど国家の特性を強化するアイテムとかだった場合は自動的に自国のトップを務めるプレイヤーの元に送られていくにゃ」
「ほうっ…ではやってみるか…。だが端末パネルの画面を通してというのは何だか味気がないな。このゲームの演出にしては偉く質素なものに思えるのだが…」
「未確認アイテムはその名称や効果どころか大きさすら把握できてないにゃ。実際にアイテム欄から取り出してそのアイテムが周囲に入りきらないほど大きなアイテムだと困るにゃ。それに端末パネルを通してやった方が他のプレイヤーに強奪されたりする心配がないから安全にゃ」
「そうか…、アイテム袋から取り出した状態だと他のプレイヤーもアイテムに触れることも出来るもんね。その辺りは割と現実に近いように他のMMOでもそういう風に設定されてたっけ。確か敵がアイテムを使用する前に奪ってしまえば逆にこっちが使用することも出来たよね」
「まぁ、このゲームは自国の味方プレイヤーからはどうあっても奪い取ることは出来ないように設定されているだけどにゃ。でも敵国のプレイヤー達は容赦なく奪い取りに来るから敵の前でアイテムを使用する時は十分気を付けるにゃ」
大抵のVRMMOにおいてアイテムを使用するためには一度アイテム袋から出して具現化しなければならない。しかもアイテムによって特定の動作を取ることが必要で、代表的な回復薬であるポーションやエーテルならば液体状の飲み薬の形をしているので実際に口から飲まなければ効果を得ることが出来ない。しかもそのアイテムの飲んだ量に応じて回復量が変わるように設定されている。
「よしっ…、まずは端末パネルから鑑定の画面を開いて……おっ、あったぞデビにゃんっ!。この光の塊のように表示されているのが未確認アイテムだな。それにしても本当に何のアイテムか検討も付かないな…。じゃあ選択してみるぞ……っておおっ!」
「うっわ〜、何だか急に端末パネルの画面が立体映像みたいになった。でも本当に目の前に光があるだけで何のアイテムかまるで分からないね」
セイナが端末パネルの鑑定の画面からデビにゃんの未確認アイテムを選択すると、急にセイナの端末パネルが地面に対して水平になり、その画面の上にデビにゃんの未確認アイテムが立体映像となって表示された。その未確認アイテムは本当にただ中心に光があるだけで、どんな形のアイテムなのかまるで分からなかった。立体映像となったのは恐らく鑑定士の演出をよりリアルに表現するためだろう。
「でも本当にこんなただの光の塊に触れることなんて出来るのかしら。こんなのどうやって手に入れたの、デビにゃん」
「普通にボールを持つ感じで触れれば掴むことができるにゃ、ナミ。どっちかって言うと掴んでるというよりアイテムが手にくっついてくる感じだけどにゃ。このアイテムは僕がナギ達のような魔物使いのプレイヤーを探してこの高原を彷徨っている頃、偶然ある日の夜に草原のどこかで何かドラゴンか鳥か…、とにかく大きな羽を持ったモンスターが空中で羽を羽ばたかせながら、まるで魔力を集めるように自身の目の前にこの光の塊を作り出していたのにゃ。そしてそのモンスターは草原の暗闇の中にその光を置いたままどこかに飛んで行ってしまったのにゃ。それで僕はその後その光をそっと掴んでアイテム袋の中に入れたのにゃ」
「じゃ、じゃあこのアイテムはドラゴンさんが自らの魔力で作り出したアイテムと言うことですか…。何だか凄そうですね」
「そうじゃのう…。もし本当にドラゴンならどのMMOにおいても強力な種族に設定されておるモンスターじゃ。仮にドラゴンでなくともそのようなことのできるモンスターの作り出したものならきっと貴重なアイテムに決まっとる。しかしこの光の塊のままでも十分綺麗じゃのう…、わしはもし未確認アイテムを入手しても鑑定せずに取っておくか…」
「なに爺くさいこと言ってんだよ、じじぃ。セイナ、いいから早く鑑定してみろよ」
「う、うむ…。それで…、一体どうすれば鑑定出来るのだ、デビにゃん」
「簡単にゃ、目を瞑ってそのアイテムに意識を集中すれば自然に頭の中にアイテムの正体が浮かんでくるにゃ。良く占い師とかが水晶玉を持ってるみたいにアイテムの左右に両手を広げて掲げればやり易いかもしれないにゃ。副業のチュートリアルはまだ終わってないけど多分できるはずにゃ。どんな鑑定結果が出るかはセイナの実力次第で、鑑定士のレベルによっても鑑定結果は変わってくるけどプレイヤーの集中力も鑑定結果の良し悪しに関わってくるにゃ。まぁまだ序盤に手に入るアイテムだし、あまり気負わずにリラックスしてやってみるにゃ」
「よしっ…」
セイナはデビにゃん言われた通り占い師が水晶玉を持つように両手を光の塊の状態の未確認アイテムの左右に掲げ、目を瞑ってそのアイテムに対して意識を集中し始めた。するとその未確認アイテムの光が分裂し、複数の小さな光の玉となって端末パネルの上でグルグルと回り始めた。
「うわぁ…、凄い綺麗な光…。何だかんだでやっぱりこの演出もこってるみたいね」
「ああ…、それにだんだん光の動き回るスピードが上がって来たぞ。しかも更に光が強くなりやがった。どうやらすぐに鑑定結果がでるみたいだぜ…」
複数の光の玉となって端末パネルの上をグルグルと回っていた未確認アイテムだが、徐々にその回るスピードが上がっていき、画面の中央から更に光の塊が出現すると、そこからどんどんと周囲に光が広がっていき、セイナの腕の中でもの凄い輝きの光の塊が出来上がっていた。そしてその輝きが頂点に達したとき、セイナの口からこのアイテムの名称が言い放たれるのだった。
「う、ううぅ…、分かったぞ…、このアイテムは……、魔物の卵だっ!」
「ええぇぇぇぇぇぇぇっ!」
セイナがアイテムの鑑定を負えると未確認アイテムを包み込んでいた光は次第に輝きを失っていき、セイナの言葉と共に光の中から卵のような物が出てきた。なんとデビにゃんの持っていた未確認アイテムは魔物の卵だったようだ。全体的に真っ白の卵で中央の辺りの周りに薄い水色のギザギザのような模様が入っていた。
「ほ、本当に魔物の卵なの…。普通に只の食用なんじゃないの…。本当に魔物なんか生まれてくるのかなぁ…」
「間違いない。頭の中に卵とその中に何か魔物のシルエットようなものが浮かんできたのだ。多分ドラゴンのような形をしていたと思うが…」
「セイナの言う通りにゃ。アイテムの説明欄が“何かの魔物の卵のようだ。どんなモンスターが生まれてくるからまだ分からないが、もしかしたらドラゴンかもしれない…っ!”ってなってるにゃ。ちょっと待ってにゃ、今アイテム袋から実際に取り出してみるからにゃ」
そう言うとデビにゃんは自らのアイテム袋の中からその魔物の卵と言われるアイテムを取り出した。光の塊であった未確認アイテムはもう完全に卵の形に変わってしまっていた。
「お…、おおっ!。実際に具現化してみるとかなり大きいわね。これならモンスターが生まれて来てもおかしくないわ」
「にゃ…にゃぁ…。ナギ、僕にはちょっと僕が持つには大きすぎるし重すぎるにゃ。出来れば代わってほしいんだけどにゃ…」
「あっ、ごめんごめん。はい……って僕がでも結構重く感じるな…。本当に魔物が入ってるみたい」
ナギはデビにゃんから卵を受け取るとその重量感から本当に魔物の卵であることを実感していた。その大きさは普段現実世界で食べている鶏の卵の数十倍の大きさがあり、デビにゃんと同じぐらいの大きさはあった。これならば例えドラゴンの子供が入っていても不思議ではないだろう。
「うわぁ…、それにこの卵凄く暖かい…。しかも殻を通してモンスターの脈打つ鼓動が少しだけど手に伝わってくる。今にも生まれそうな感じだなぁ…」
「えっ!、どれどれ…私にも触らせて」
「っ!、なら私もだっ!」
「ぼ、僕も触らせて、ナギっ!」
「それならわしも触ってみようっと」
「あっ、じじぃっ!、てめぇよりは私が先だっ!」
「わ、私も触ってみたいですっ!」
「やれやれ…、じゃあ俺もちょっと触ってみるかな」
ナミ達はナギが魔物の卵を持っているのを見て自分達も触ってみようと一斉にナギの元へ群がって来た。ナギは皆に押されながら必死に卵を落とさないように踏みとどまっていた。
「にゃあぁぁぁぁっ!、皆ちょっと落ち着くにゃっ!。もしナギが卵を落としでもしてしまったらどうするにゃっ!」
「おっと…悪い悪い。折角の魔物の卵なんだから大事にしないとな…。ゲームの中とはいえ一つの命がこの中に入ってるんだから」
「うむ…、それにしても本当に現実味のある質感と温もりだった…。まるで本当の生き物のようだ。先程の討伐で狩っていたモンスターとはまた違う感触だったな…」
「一応敵として戦わなければいけないモンスターや他国のプレイヤーに対してはあまり現実感を出さないようにしてグロテスクな表現を避けるように設定されているみたいにゃ。逆に僕やこの卵みたいに仲間モンスターになる存在についてはより質感やAIなどをよりリアルに表現するようにして人間以外の生き物との関わり方や絆の作り方を学べるように設定してあるみたいにゃ」
ナギ達は先程まで討伐していたモンスターと今目の前にある卵から感じられる質感や雰囲気に微妙な違いを感じていた。先程まで討伐していたモンスター達も表現自体はかなりリアルだったのだが、教育的な観点からか血の噴き出る演出などは一切なく、表現こそリアルではあったが別に倒してしまうことに躊躇することはなかった。だがこの卵やデビにゃんを傷つけたりしてしまった場合、例えゲームと分かっていても常人の人間の感覚ならば多少は罪悪感は感じてしまうだろう。特にこのゲームは電子現実世界という電子の中に実際に存在する現実世界だと聞かされていたのだから当然だろう。とはいえ実際にゲーム内で死んでしまったとはいえ実際に死んだことにならないのは当然他のゲームと同じである。例えばデビにゃんならば一度プレイヤーの仲間モンスターになってしまえばペナルティはあるだろうが何度死んでも復活することができる。一度死亡すれば復活することのないように設定されている存在もいるがゲームの中から消えただけで実際に死んだわけではない。デビにゃんも言っていたが電子現実世界とは言え現実世界と同じような死の概念がないことを考えるとゲームをプレイするだけでは今までナギ達がプレイしてきたVRMMOとほとんど変わりがないのかもしれない。
「じゃあこの卵はナギにあげるからアイテム袋にしまっておくにゃ」
「えっ…、でもこれはデビにゃんが見つけたものなのに…。いくら主人だからって僕が貰ってもいいの」
「魔物の卵は魔物使いの職に就いている者に所有して貰うことで孵化することができるにゃ。僕が持っていてもこの卵の孵化に掛かる時間は決して減ることはないにゃ。それに魔物使いなら孵化して出てきたモンスターを即座に仲間にすることが出来るにゃ」
「な、なるほど…」
セイナに鑑定してもらうことで判別した魔物の卵はナギが持つことになった。卵は魔物使いの職業に就いている者に所有されていなければ孵化されないようで、卵から孵るとそのままその魔物使いの仲間モンスターとなるようだ。
「良かったわね、ナギ。これでもう2匹目の仲間モンスターができたようなもんじゃん。……そういえばモンスターって何匹まで仲間にすることができるの」
「うーん…、城の設備次第で何匹でも仲間にできるようになるみたいだけど、最初の内は旅の共として連れていける二匹までが限界みたい。今の状態で仲間モンスターをもう一匹増やすと卵は孵らなくなっちゃうみたい」
「そっか…。もし仲間モンスターが二匹いる状態で卵が孵ったら三匹になっちゃうもんね。つまりこれ以上モンスターを仲間にしようと思ったらこの城にモンスターを預ける牧場見たいなのが必要になるってことか」
どうやら魔物使いが連れて歩けるモンスターは2匹までのようで、それ以上仲間にしようと思ったら自国にモンスターを預けるための設備が必要になるらしい。モンスターを仲間にすれば魔物使い自身だけでなく自国にとっても有益な効果をもたらすのでブリュンヒルデも優先して設置してくれるかもしれない。
「ところでデビにゃん、私の鑑定は上手くいっていたのか。もし私のせいで卵の中のモンスターが弱くなったり病気になったりしていたら嫌なのだが…」
「大丈夫にゃ、セイナの鑑定の精度は92%って表示されてるからむしろかなり上手くいったようにゃ。きっと卵の中のモンスターも本来の力以上の能力をもって生まれてきてくれるにゃ。でももし鑑定の精度が50%以下の場合はアイテムにマイナス効果が付与されてしまったり最悪の場合アイテム自体が消滅してしまうこともあるから気を付けるにゃ。後鑑定士としてのレベルが上がれば上がるほどレア度の高いアイテムに変化したり、強力な効果が付与されたりするようになるからこれは凄いアイテムになる可能性があるって未確認アイテムは熟練度が上がるまで取っておくのもいいかもしれないにゃ。かといって全く鑑定しなければ熟練度も上がらないので最初の内は未確認アイテムを発見したら気にせずどんどん鑑定していったらいいにゃ。ナギ達も未確認アイテムを見つけたらじゃんじゃんセイナに持っていってあげるにゃ」
どうやらセイナのゲームの実力は戦闘面だけはなくその集中力の高さから鑑定士としても高い能力を発揮できそうだった。未確認アイテムは鑑定士の熟練度とアイテムの鑑定する時のプレイヤーの集中力によってその質の高さが変わる。セイナのように90%を超えるような精度で鑑定が成功していればよりレア度の高いアイテムを手にすることが出来るだろう。最初のパーティの振り分けでセイナと知り合えたことはナギ達にとって色々な面で幸いなことだっただろう。
「おい、盛り上がってるとこ悪いがそろそろ内政のチュートリアルってのを受けに行った方がいいんじゃねぇのか。私そういうのはからっきし苦手だから折角だからもっと説明してくれよ、デビにゃん」
「分かったにゃ。それじゃあ皆の内政職を教えてくれにゃ。あっ、折角だから副業職も皆で教え合っておくにゃ。知っておけば自分じゃ作り出せないアイテムの製造を頼んだりできるにゃ。ナギだったら武器や防具、僕だったら錬金術で作り出せる特殊なアイテム、セイナだったら今みたいに未確認アイテムの識別を頼んだりできるにゃ」
デビにゃんに言われてナギのパーティメンバー達はレイチェルから順に自分の職業を紹介していった。レイチェルは内政職が鉱物、副業職は探検家のようだ。ヴィンスは海面漁業と陶芸家、アイナは学問と著述家、ボンじぃは園芸と庭師に就いていたようだ。希望の通りの職に就けているものもあったが抽選に落ちてランダムに決まってしまったものもあるようだ。
「にゃぁ…、皆それぞれの場所に案内してあげたいけどやっぱりバラバラみたいにゃ…。セイナとカイル、それにアイナは僕と同じで多分城に戻って内政の仕事をすることになると思うんだけど…、僕はナギに付いて行かないいけないしにゃぁ…」
「別にいいよ、デビにゃん。この城の中なら別に仲間モンスターといくら離れれても平気みたいだからデビにゃんも自分にあった仕事の所に行ってきなよ。僕だったら一人で何とかするからさ」
「えっ!、いいのにゃ、ナギっ!。実は僕もやっぱり自分の選んだ職の仕事をしたかったのにゃ」
「ちょっと待ってデビにゃんっ!。今城で仕事するって言っていたけどここから城まで戻ろうと思ったら100キロ以上歩かないといけないよ。それだと城に戻るだけでも一日近く掛かっちゃうよっ!」
デビにゃんに城まで戻ると聞かされて慌ててカイルが問いただした。ナギ達は城から100キロ以上離れた地点まで転移させられており、今から城に戻るとなると一日以上かかる距離にいた。チュートリアルの期限は二日間であるからそれだけで半分以上の時間を消費してしまうことになる。
「それは心配ないにゃ。自国の領内ならば転移の魔法陣が5キロ置きぐらいには設置されているはずにゃ。それを使えば城までは一っ飛びにゃ。でも城郭の外には基本的に設置されていないはずだから城の外に出る時は気を付けるにゃ。ちゃんと準備しておかないと本当に100キロどころか一万キロ以上あるいて移動することもあるかもしれないにゃ。……それより他のメンバーの案内はどうしようかなにゃ。こうなったら一人ずつ場所だけ案内するしかないかにゃ…」
デビにゃんは一人でナギ達全員をどうやって案内するか考えていた。だがあまりいい案は浮かばず一人ずつ内政を行う場所にだけ連れていこうとしていたのだが、その時ナギ達に思わぬ者達が声を掛けてきた。
「あっ、あれはデビにゃんちゃん達じゃないにゃっ!」
「本当にゃんっ!、ナギやナミも一緒にいるにゃんっ!」
「にゃっ!、じゃあ声を掛けてみるにゃ。お〜い、デビにゃ〜ん、ナギ〜」
「うん…、あれは…森であった猫魔族の仲間達にゃっ!」
なんとナギ達に話し掛けてきたのは討伐中に森で出会った猫魔族達だった。どうやら森での約束通りヴァルハラ国に居住することになったようで、この辺りに猫魔族の居住区が設置されたようだ。
「本当だ。えーっと…あれは確かフェアリーキャットにアクアキャット、それにタイガーキャットねっ!」
「その通りにゃ、ナミはもう皆のこと覚えてくれたみたいだにゃ。お〜い、もうブリュンヒルデちゃんにヴァルハラ城に居住区を作ってもらったにゃ。一体どんな所に作ってもらったにゃ」
「この辺りの草原の近くにゃ〜。ブリュンヒルデさんが私の居住区の近くに出来るだけ草原や森林を残しておいてくれたのにゃ〜」
デビにゃんが返事を返すと猫魔族達はナギ達の元に駆け寄って来た。フェアリーキャット、アクアキャット、タイガーキャットの三人でどこかへ行く途中に偶然ナギ達に遭遇したようだ。
「……こんにちは、ナギ、ナミ、デビにゃん。それからヴァルハラ国のプレイヤーの方々。この度はヴァルハラ国への居住を許可して頂いて誠にありがとうございますなのにゃ」
「お、おお…、って言っても私達は何もしてないけどな。私の名前はレイチェル。よろしくな」
「私はセイナだ。君達の仲間のデビにゃんには先程から色々と助けてもらっている。礼を言いたいのはこちらの方だ」
「僕はカイル、よろしく」
「ヴィンスだ。これからよろしくな」
「あ、アイナです…。みんなデビにゃんちゃんに負けないぐらい可愛いですね。私も魔物使いになれば良かった…」
「わしはボンじぃじゃ。自然も好きじゃが動物も大好きなんで仲良くしておくれ」
猫魔族に挨拶されナギとナミ以外のメンバーも猫魔族達に自己紹介をした。すると猫魔族達も自らの名前と特徴について紹介してきた。どうやら猫魔族と言ってもその中にかなりの種類がいるようだ。
「私はフェアリーキャットの“リディ”にゃ。フェアリーキャットは癒しの魔法が使えるにゃ。でも戦闘は苦手だから普段は城から出ることはほとんどないと思うのにゃ。でも内政の仕事は得意なのにゃ。特に動物と仲良くするのが好きなので酪農の仕事が大得意にゃ。後は植物を育てる園芸の仕事でも色んな種類の花を咲かせることが出来るにゃ」
「僕はアクアキャットの“アット”にゃん。水中を泳ぐのが得意で主に漁業の仕事をこなしてこの国に貢献させてもらうのにゃん。戦闘も出来ないわけじゃないけどそんなに強いわけじゃないにゃん」
「俺はタイガーキャットにゃ。名前は“トララ”って言うにゃ。他の二人に比べると戦闘は得意な方だけど、それでも猫魔族はあまり戦闘力の高い種族じゃないのでどっちかって言うと内政の方が得意にゃ。割とSTR、力のステータスが高いから内政では肉体労働を積極的にやっていくつもりにゃ。取りあえずは鉱業でもやってみようかなと思ってるにゃ」
猫魔族達は自分達がこの国でどのように働いていくつもりなのかナギ達に紹介した。猫魔族達はあまり戦闘が得意でないようで主に城に残って内政の仕事を重点的にこなしていってくれるようだ。初期の人口についてもかなり追加されていたようだったので、ヴァルハラ国にとっては幸先のいいスタートになっただろう。
「へぇ〜、皆凄っごい優秀な能力を持ってそうじゃない。……でもこんなに献身的な民族をこんな飾り気のない質素な地域に住まわせるなんて横暴よね。私、ブリュンヒルデさんに抗議してあげようか」
「そ、そんな…、とんでもないですにゃ。普通猫魔族なんてもっと外郭に近い地域に居住区を造られてもおかしくないにゃ。こんな城に近い地域に住まわせてくれるなんて猫魔族の皆はブリュンヒルデさんにとても感謝してるにゃ。それに、いくら猫魔族が特殊な効果や特性を持っているからといってあまり城の中心部に住まわせると他の国民の不満につながるにゃ。そういう意味ではブリュンヒルデさんは猫魔族が喜んで、尚且つ他の国民の不満が出ない最適な場所に設置してくれたといえるにゃ。全くできたお方にゃ」
「そ、そうなの…」
「そうにゃ。ブリュンヒルデちゃんはナミなんかの考えが及ぶくらい思慮の浅い人じゃないにゃ。あんまり調子に乗ってブリュンヒルデちゃんの国政に口を出してると後で恥ずかしい思いをすることになるにゃよ」
「あんた…、だんだん性格悪くなってきたわね…」
ナミは居住区について猫魔族の住民達が不満はないか心配していたが、むしろ感謝しているようで、ブリュンヒルデの国民の漢書のバランスを考えた処遇の上手さに感心させられていたようだ。人間以外の民族を受け入れた場合居住区の設置場所やその民族の待遇によっては他の住民達とトラブルが発生してしまう。特殊な民族を自国に受け入れる場合貴重な特性や有効な恩恵が受けられる分慎重に処遇について考えなければならないようだ。
「それはそうと皆が通り掛かってちょうど良かったにゃ。皆今から内政の仕事をしに行くところみたいにゃ。出来ればナギ達を一緒に連れていって内政に仕事について色々教えてあげてほしいのにゃ」
「いいけど…、皆の職業な何なのにゃ。職業によって行くところが違うから皆案内出来るかどうか分からないにゃ」
「えーっと…それは…」
ナギ達はちょうど良く通り掛かった猫魔族達に自分達の内政を行う場所まで案内してもらうことになった。牧場と栽培場は同じ場所にあるということでナギとボンじぃはフェアリーキャットのリディに。海面漁業を選択したヴィンスは今は周囲に海がないのでアクアキャットのアットと共に城郭の中にある湖で取りあえず内水面漁業の仕事をすることになった。ナミとレイチェルは近くに見える森林の生い茂った丘に鉱山があるということでタイガーキャットのトララと共にそこに向かうことになった。そして残りのセイナ、カイル、アイナの三人はデビにゃんと共に再び城に戻るとになったのだった。
「じゃあリディ、ナギのことよろしく頼むにゃ。ナギもまだ序盤だし城の中に入れば危険なことなんてないだろうけどいざという時は仲間にしたモンスターをいつでも呼び出せる魔法がるからちゃんと僕のこと呼び出すにゃよ」
「分かってるよ、デビにゃん。コールの魔法を使えばいいんでしょ。心配しなくても城の中に入れば戦闘に巻き込まれることなんてないよ。デビにゃんこそ危なくなったら自分から僕の所に戻ってくるんだよ。確かお供として引き連れてるモンスターは自分から僕の所に転移してこれるんだよね。僕がそっちに行くのは無理みたいだけど…」
「OKにゃ。僕の方こそ仲間モンスターとしてナギに心配掛けないよう気を付けるにゃ。それじゃあ僕達は転送用に魔法陣を探しに行くにゃ。他の人達はこの近くに内政の仕事場があるみたいだしにゃ。それじゃあにゃ〜」
「それじゃあね、ナギ、皆。一応チュートリアルが終わるか夜の8時になったら一度連絡するよ。出来れば今晩の宿をどうするか一緒に決めたいからね」
「うん、分かったよ。じゃあね、カイル、セイナさん、アイナ、デビにゃん」
こうしてデビにゃんとカイル達は城へ戻るための魔法陣を探しに行った。他のメンバー達も歩いて行ける距離に内政の仕事場があるらしく、皆それぞれの職場の所に猫魔族に案内してもらいながら向かって行った。そしてナギはボンじぃと共にフェアリーキャットのリディに案内されながら牧場と栽培場のある場所へと向かっていた。
「また一緒に行動することになったね、ボンじぃ。そう言えばさっきの討伐の時僕と逸れてからどうなったの。結局レイチェルにプレイヤーキルされちゃったみたいだけど、ずっと逃げ回ってたの」
「うむぅ…レイチェルの奴しつこくてのぅ。討伐が終了する寸でのところで追いつかれてしまい頭から真っ二つにされてしまったわい。じゃが幸いなことにまだチュートリアル中ということでペナルティとかは全くなくての。気が付いたら討伐終了後のあのロビーまで転送されとったわい」
「ふ〜ん…そう言えばこのゲームって死んだときのペナルティって何なんだろうね。まだチュートリアル中だからやっぱり今死んでも何のペナルティもないのかな」
「さあのぅ、まぁ内政のチュートリアル中に死ぬことなどなかろう。そんなのことは本格的にゲームが始まってから考えればええんじゃ」
「う〜ん…、このゲームの趣旨的に多分死亡したらステータスにペナルティが掛かるんじゃなくてログイン自体に制限が掛かると思うんだよね。だって敵国の城を攻め落とそうとしても次から次にプレイヤーが復活してたら一向に城を落とすことなんて出来ないもんね。だから死亡したらこのゲームの中で2,3週間…現実世界で半日ぐらいログインできないとかじゃないのかなぁと思うんだよね。それか敵のプレイヤーが自国の領内の一定のエリアまで侵入しているとリスポーン出来ないとか…」
ナギはボンじぃがレイチェルにプレイヤーキルされてしまった話を聞いて、このゲームの死亡時のペナルティについて気になってしまい、自分なりにこのゲームの趣旨からペナルティの内容を考察していた。通常のMMOならばゲーム内で死亡した場合大抵スタート地点に戻されてしまうというだけで済む。厳しいものならお金やアイテムを落としたり、リスポーンして暫くの間ステータスに減少補正が掛かってしまうものもある。だがこのゲームは建国シミュレーションバトル型MMORPGということであり、言うなれば通常のMMORPGで常にギルド戦のようなものが行われているわけである。普通のMMOならば普段はPvP、プレイヤー同士が争っている状態ではないので、特にペナルティを掛ける必要はないが、このゲームは自国以外のプレイヤー達と常にPvPの状態なので、リスポーンに大きなペナルティを掛けなければPvPとしてのバランスが崩壊してしまう。ナギはリスポーンまでの時間に制限が掛かると予測しているようだが、恐らく敵国のプレイヤーに倒された場合所持しているお金のアイテムの一部を奪われたり、ランダムに自国の情報を奪われたり、相手に大量の経験値を取得されてしまうなど、相手を倒したほうに大量のメリットなども設定されているだろう。
「だからそんなことは敵国のプレイヤーと出会うようになってから考えればいいんじゃて。このゲームのマップはかなり広そうじゃから最初の1年や2年は全く出くわさんのではないか。それよりリディちゃんや、わしの栽培のスキルじゃがハーブというのに割り振られておるようじゃが、盆栽のスキルといったものもあるのかのぅ」
「あるにゃよ〜。盆栽のスキルは少し特殊で、ブリュンヒルデさんに自国の園芸レベルを上げて新たな特性を取得してもらわないと習得出来ないんだけど、もし盆栽を製造できるようになったら自国の60歳以上の国民の幸福度が上昇して、更に盆栽が流通することで市場が活性化して自国の収入も大きく上がることになるのにゃ」
「ほぅ…、それは是非ブリュンヒルデさんには盆栽のスキルを習得できるようにしてもらいたいのぅ。そしたらわしの現実世界で培った盆栽の技術で、何百万とする価値のある素晴らしい盆栽を作って差し上げるんじゃがのぅ」
「(話を聞く限り優先度はかなり低そうに思えるけどね…)。でもボンじぃ、今何百万って言ってたけど現実でもそんなに高価な盆栽を作れてるの。それってかなり凄いことだと思うんだけど…」
「そうじゃ、これでも大会なんかではわしの作品が何度も優勝しとってのぅ。一度個人の作った盆栽を競売に出すイベントがあって、そこに3品ほど出品して全部で1000万以上の価格で競り落とされてしまったんじゃ。まぁ大会で優勝して得た知名度で無理やり値段を吊り上げさせてしまったみたいで少し後ろめたい気持ちにはなったんだがのぅ」
なんとボンじぃは単なる趣味と思われていた盆栽で、1000万以上稼いだことのある凄腕の盆栽職人だったようだ。実際盆栽は単なる趣味としてではなく芸術としての評価も高く、プロが作り出す者では数千万、数億円といった値段が付けられる時もある。だが盆栽は一つの作品を仕上げるのに何年という時間が掛かり、毎日の手入れも大変であるため実際に仕事とするのはかなり難しいだろう。
「へぇ〜…でもボンじぃにそんな特技があったなんて意外だなぁ〜。伊達に年はとっていないてことだね」
「そういうことじゃな。ナギもわしのように立派な老人になれるよう日々精進しておくんじゃぞ。若いころの行いというのは年寄りになった時ぐっと襲いかかってくるものじゃかのぅ…」
「う、うん…。(なんか急に意味深な表情になったな…。もしかしてボンじぃ若いころに何かあったのかな…)」
「にゃ〜、私は現実世界のことはあまり分からないけど何だか凄そうだし同じ園芸職人として期待させてもらうにゃ。因みに私は花だったら観賞用から錬金術の素材用、他には人間やモンスターも飲み込んじゃう食虫植物まで何でも栽培できるにゃ」
「えっ…、人間やモンスターってそれもう食虫植物じゃなくて植物モンスターじゃないかっ!。そんなの栽培しちゃって大丈夫なのっ!」
「大丈夫にゃ。決して自分を育てた自国のプレイヤーや住民を襲うことはないから安心して栽培できるにゃ。根を張ったところから移動できないところが難点何だけど、自国の領内に栽培しておけば侵入してきた敵国のプレイヤーやモンスターを勝手に食べちゃってくれるにゃ。まぁそこまで強いわけじゃないからプレイヤーが相手なら簡単に倒されてしまうと思うけどにゃ」
「へ、へぇ〜…、そんな植物栽培できるなんてリディって結構度胸あるんだね…」
「か、可愛い顔しておっかないわい…。わしは絶対そんな植物栽培するスキルなんて取らないでおこうっと…」
ナギとボンじぃはリディが恐ろしい植物モンスターを栽培できると聞いてリディのことを怖がってしまっていた。食虫植物とは現実世界ではハエトリグサなどが有名で、小さい虫を食べる植物だが、リディが栽培できる食虫植物は通常のものより遥かに大きく、人間や魔物まで食してしまう対モンスター・プレイヤー用の設置型のモンスターのようだった。城の外の拠点などに栽培して、周囲にモンスターが近づかないようにしたり、敵国のプレイヤーの侵入を防ぐのにも使える。能力はそれ程高いわけではないが、探知能力が高く、栽培しておけば早期に敵の侵入に気付くことができるだろう。最も自国の園芸のレベルが上がれば地面から離れて根を張る場所を自由に変えることができ、おまけに飛行能力持つ植物まで栽培できるようになるようだが、もしそこまで栽培できるようになれば植物といえども貴重な戦力となるだろう。
「あっ、牧場と栽培場が見えてきたにゃ。まだ牧場も小さくて動物たちもあんまりいないし、栽培場の設備も乏しくて栽培できる植物は限られているだろうけど頑張って内政の仕事をしてレベルを上げていくにゃ」
「本当だっ!。でもやっぱり牧場って言うにはかなり小さいね…。牛と羊が数十頭ずつしかいないみたいだし…。何より城壁の中にあるっていうのが牧場らしさを損ねてるよね…」
「城郭の外はまだ魔物がうようよいるし危なくて労働者達が働けないのにゃ。城の外に施設を作ろうと思ったらまずモンスターを討伐して拠点を作り、そこに護衛のための兵士を配置しないといけないのにゃ。だから暫くは皆城の中でのみ内政の仕事をしてもらうことになるにゃ。でも城郭の外に施設が建設できるようになったら牧場だったら1マス丸々使った大牧場を建設することも出来るにゃ」
ナギ達が牧場目指してしばらく歩いて行くと段々と建物の数が減っていき気が付くと視界が完全に開けた場所まで出て来ていた。そこは城郭の中だというのに城が建つ前の草原がそのまま残っていて、面積で言うと10ヘクタールほどの大きさだった。ちょうど東京ドームの2個分と同じぐらいの広さで、現実世界でもそれ程大きいと言える牧場ではなかった。ナギの家の牧場の方が少し大きいくらいだろうか。しかも広さの割に飼育している動物の数も種類も少なく、労働者も5人ほどしかいなかった。最初の内はどの内政施設も規模は小さいようだ。しかも城郭の中にあるということで遠くに見える城壁が牧場としての景観をかなり損ね、余計縮んまりしているように見えてしまっていた。
「えっ!、そんなに大きな牧場なんて作れるの…。いいなぁ〜、そんな牧場があるんだったら是非経営主になりたいんだけどなぁ〜。現実世界が考えられないくらいの大きさだし…」
「にゃあっ!、大分先になると思うけど功績ポイントで土地や施設の権利をブリュンヒルデさんから貰うこともできるようになるにゃよっ!。大量に功績ポイントを使うことになるから、転職とか役職を貰ったりする分のポイントがなくなちゃうかもしれないけどにゃっ…。でも、ナギだったらきっといい牧場主になれるにゃっ!」
「そ、そうかなぁ〜…。よ〜しっ、こうなったら一杯功績ポイント貯めてこの高台の草原一面に広がる超巨大牧場を作ってみせるぞ〜っ!。それで牛や馬、ヤギや羊、そしてモンスターだって世話できる超高性能牧場にしてやるんだっ!」
「その活きにゃっ!」
リディが言うにはプレイヤー達は功績ポイントを使い自国の国王から土地や施設の経営権を譲り受けることができるようだ。だが功績ポイントは職業の転職や役職や官位の取得、レア度の高い質のいい支給品を受け取るためにも使用するためあまり無駄遣いは出来ないようだった。
「うむぅ…わしはやっぱり自分の家がほしいのぅ…。職業は治癒術師のままでええから功績ポイントは家が交換できるようになるまで取っとくかのぅ」
「にゃぁ…、でも初期の職業のままじゃ後半厳しいだろうから出来れば1ランク上の職業ぐらいには転職しておくにゃ。出ないと終盤以降戦闘でまるで使い物にならなくなって、ボンじぃのように治癒術師だったらまるで回復が追いつかなくなってしまうにゃ。お爺さんだからって城に籠って内政ばっかりしてちゃ駄目にゃよ」
「はぁ〜…、全くリディちゃんまで年寄りをこき使おうとするんじゃからぁ〜…」
「当たり前にゃっ!。例え見た目はお爺さんでもステータスはちゃんと他のプレイヤーと平等に振り分けられているはずにゃ。だからちゃんと皆と同じように元気に動けるはずだからサボったりしないできっちり働くのにゃっ!」
リディの言う通り例え年寄りの姿をしていてもゲームの中で肉体的な差はない。更には肉体的な衰退から解放されたことにより脳まで活性化し、VRMMOの中では頭脳や精神まで若返るといういうことが証明されている。つまりVRMMOの中では全てのプレイヤーの能力は平等に設定されていて、プレイに差が出ることはないということである。にも関わらずセイナやナミのようにとてつもないプレイ技術を持ったプレイヤーが生まれ、プレイヤー達の能力に差がついていくのか。今この世界の研究者達の間ではその議論で持ちきりになっている。一説にはゲーム中で優秀な成績を残すプレイヤーこそ真に優れた人物ではないのかと言われている。アメリカでは大統領になる人物をゲームの成績の高さで決めようなどと言い出されたことがあるようだった。
「はいはい…、まぁ戦闘の方も適当に頑張るとするかのぅ…。ところでわしの園芸の内政をする栽培場はどこかの」
「あそこに見える小屋がそうにゃ。今は土も肥料も基本の物しかないからあまり多くの種類の植物は栽培出来ないけど、ボンじぃのスキルであるハーブは序盤から作れて錬金術で回復アイテムの材料になる優れた植物にゃ。頑張って働けばいくつか自分の分もハーブが貰えるはずだから錬金術師の友達に薬に調合してもらうにゃ」
「ほぅ…、ならデビにゃんにでも頼もうかのぅ。では行くとするか…」
「私も行くにゃ。ナギはあそこの牧場の真ん中辺りにいる文官っぽい姿の人に話し掛けるにゃ。そしたら内政のチュートリアルを受けられるはずにゃ。あっ、他のプレイヤー達も来たみたいだから一緒に受けに行くにゃ。じゃあ頑張って動物達の世話をするにゃよ。ナギは優しいから動物達もきっと喜ぶはずにゃ。それじゃにゃ」
「それじゃあのぅ、ナギ」
「うん、ボンじぃも頑張って」
こうしてナギはボンじぃとリディと別れ、自分の内政職である畜産を担当する文官NPCへと話掛けにいった。文官の周りにはすでにナギと同じく内政のチュートリアルを受けに来たプレイヤー達が数十人ほど群がっており、その中にはあの鷹狩宗滴の姿もあった。知り合いに会えて助かったと思ったナギは早速鷹狩に話し掛けに行った。
「鷹狩さ〜ん」
「うん…、おお、ナギじゃないか。君も畜産の職を選択していたのかい」
「うん、そうだよ。鷹狩さんも畜産を選んでたみたいだね。やっぱり現実でもブリーダーの仕事をしてるから?」
「まぁ…な…。上手くいけばこの世界でも鷹の繁殖は出来そうだし、鷹狩の能力を持った兵士を増やせば索敵能力が広がりより城の防衛がしやすくなる。貴重な資源や遺跡を他国に先駆けて手に入れることも出来そうだしな。そういうナギはどうして畜産の職業を選んだんだ」
「実は僕も鷹狩さんと似たようなもので実家が牧場を経営してるんだよ。今も家の仕事を手伝ってるんだけど、それでこのゲームでも畜産の仕事が向いてるかなって」
「ほぅ…、君の家も牧場をね…。それは詳しく聞いてみたいな」
ナギと鷹狩はどちらも現実世界で動物を飼育する仕事に従事しているということで、互いに親近感が沸いたようで自分達の仕事について楽しそうに話し出した。日本では少し前まで国内における鷹や隼などの猛禽類の捕獲が禁止されていて、今は解除されているのだが鷹のブリーダーという職に就いている人物はかなり少なくナギは興味津々になって鷹狩の話を聞いていた。(※実際には今も規制されたままです)規制が解除されたはいいが鷹の飼育は繁殖は容易ではなく、鷹のブリーダーを目指した者の多くが挫折していき今も日本で鷹のブリーダーの仕事をしているのを鷹狩も含めて10人にも満たないようだ。単純に鷹を飼い馴らして鷹狩になるだけならまだ何とかなるのだが、繁殖までとなると成功しているのは鷹狩ぐらいだろう。このことからも鷹狩の鷹に対する愛情の凄さが感じられる。ナギは鷹狩の話を聞いて自分とのプロとしての意識の違いに感心させられていた。一方鷹狩はナギも牧場の名前を聞いて“ほぅ…”と口を開いて少し驚いていた。どうやらナギの父親の経営している天川牧場というのは日本の中でも有名な方で、一応全国に名が知れ渡っているらしい。ナギが高校生だった頃にはテレビに紹介されたこともあるようだ。実際地元のスーパーなどにおかれている天川牛乳は毎日お昼を回るまでには完売してしまっているようだ。ナミも美味しいと言っていたし県外からも仕入れをしたいという要望も数多く寄せられているようだった。
「そうか、君があの天川牧場の息子さんだったのか。私も一度牧場の仕事を体験させてもらいに行ったことがあるよ。確かほら、夏に牧場の仕事体験ツアーのようなものをやっていただろ」
「あ〜…あれか〜。今も一応やってるんだけどほとんど人が来ないんだよね。だから毎回麓にある小学校の生徒達が来てくれてるんだけど、それがまた大変なんだよね〜。子供って動物見るとすぐにはしゃぎだしちゃうから動物達が怖がって逃げ出しちゃうんだよ。それで毎回僕が探しに行かされるんだ」
「はははっ、天川牧場の敷地は動物の頭数の割にはかなり広かったからな。それは大変だったろう。……おっ、それよりあの文官からチュートリアルの説明が始まるみたいだぞ。お喋りはこのくらいにして今は内政のチュートリアルに集中しよう」
「そうだね。頑張っていい動物を育てようね、鷹狩さん」
「ああ、畜産の仕事は国の人口を増やすためにも大切な仕事だからね。大国家を作るためにも共に頑張って行こう」
ナギが鷹狩と会話しているといよいよ文官NPCによる内政のチュートリアルが始まるようだった。どうやらある程度のプレイヤーの数が集まるのを待っていたらしい。この牧場に内政のチュートリアルを受けに来たプレイヤーは30人ほど。単純に割り算で計算するよ大体一つの内政職の分野ごとに500〜600人ほど割り振られていることになるが、どうやら職の人気度によって200人前後の誤差は出ているようだった。ナギ達の選択した畜産の職業は動物好きのプレイヤーなら恐らく選択しているために500人近くはいたのではないだろうか。セイナやカイルが選択した魔法学や軍事については各分野に1000人近くのプレイヤーが集まっていたようだが。
こうしていよいよナギ達の内政のチュートリアルが始まったわけだが、果たしてどのような仕事の仕方をすることになるのだろうか。普通のシミュレーションゲームならプレイヤー自身は文官や労働者に指示を出しているだけでいいが、それにしてはプレイヤーの数が多すぎる。そういった指示を出せる立場に就けるのは功績ポイントを多大に取得した極一部のプレイヤーだけで、他のプレイヤー達は恐らく…。鷹狩はそのことに気付いているようで気を引き締めて内政のチュートリアルに臨もうとしていたが、ナギはそんな事には気付かずにただ動物達と触れ合えるのを楽しみにしていた。
 




