表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
finding of a nation online  作者: はちわれ猫
第十三章 恐怖の館の支配者を倒せっ! VS拷問紳士っ!
106/144

finding of a nation 103話

 「あ、あれは……またあいつらの仲間らしき奴等が落ちて来ましたよ、拷問様ぁっ!」

 「おぉーーっ!、こちらに獲物を寄越してくれるのは嬉しいですが少し過剰すぎでーす。もう私はナギ君を拷問にかけるだけで十分満足だというのに……。(それにどうやら先程の変に上品な言葉遣いの女性の方と違って自らの意志でここに降りて来たようでーす。さては部下の誰かが自分達の相手を減らす為にわざとここに降りるのを見過ごしましたね。まぁ、それだけこのヴァルハラ国のプレイヤー達に皆苦戦させられているということでしょうか……)」


 “……っ!、グオッ!”

 “パキンッ!”


 「……っ!、し、しまったっ!」


 ナギやナミ、そして拷問紳士達の意識がこちらに降下して来ているゲイルドリヴルの隙を見てリトル・ホワイト・ドラゴンが自身の鋭い爪でナギを拘束している手錠を叩き割った。その手錠が割れる音を聞いてすぐさまナギに視線を向ける拷問紳士だったが、そこには散々自身を苦しめてきた悍ましい電気椅子の拘束からやっとの思いで解放されゆっくりと立ち上がろうとするナギの姿があったのだった。


 「ふぅ……君のおかげでようやくこの恐ろしい電気椅子から解放されたよ。えーっと……」


 “グオッ?”


 「……そうだっ!。凄っごい眩しい光の中から現れて来たから君の名前はシャインだっ!。体のとこからも中から光が溢れ出るみたいに綺麗に輝いてるしピッタリだね。さっきは助けてくれてありがとう。これからよろしくね、シャインっ!」


 “グオグオッ♪”


 「くっ……!。上から降りてくる方々に気を取られている隙にナギ君を解放されてしまいましたか……。この状況ではもう一度捕え直すのは難しいですね。……仕方がない。こうなればまるでやりたくもなかったまともな戦闘というやつをやらざるを得ないようですね」


 突如上空から現れたゲイルドリヴルと鷹狩に気を取られ見す見すとナギを解放されてしまった拷問紳士だったが、これだけ自身の拘束に掛かっていない者達がいてはもう拷問の再開は不可能と考え対等にナギ達と戦う覚悟を決めたようだ。恐らく最後に拘束されているリアもここに降りてくるゲイルドリヴル達によってすぐに解放されることだろう。そうなればナギ達の戦力は一気に6人、更にはシャインとヴェニルの2体にまで増え完全に拷問紳士達を上回ることになるが果たして……。


 「……っ!、どうやらナギはもう無事のようだぞ、ゲイルっ!。あの白いドラゴンはナギの新たな仲間モンスターのようだな」

 「ああ。だがまだリアが捕らわれたままのようだ」

 「それならば私に任せておけ。リアの救出にはヴェニルに向かってもらおう。リアの周囲には敵はいないようだし先程あの白いドラゴンがナギを助けた様子を見る限りヴェニルでも容易にリアを捕えている手錠を破壊できるだろう。……頼んだぞ、ヴェニルっ!」


 “ヴェニッ!”


 「よし……っ!。ならば我々はナミ達と合流としてあの2体の敵を迎え撃つぞ、鷹狩っ!」

 「了解だ、ゲイル。(あの山羊の姿をした魔物と共にいる男の霊……。すでにナミ達と対峙しているようだが恐らくあれがベンの言っていた敵のボスにリスポーン・ホストのモンスターとされたというサニールだろう。先程グラッジ・ファントムから貰ったロストビーフでどうにか敵の手から解放することができればいいのだが……)」


 ナギ達の様子を確認したゲイルドリヴルと鷹狩はヴェニルをリアの救出へと向かわせ、自分達はそのままちょうど真下にいるナミと不仲の元へと降下していった。その最中サニールの姿を確認した鷹狩はベンから託されたことについて考えていたようだが、果たして無事彼の魂を救い出すことができるのだろうか。そしてナミ達の元へと着地したゲイルドリヴルと鷹狩はそのサニール、そしてデーモン・ゴートと対峙することになったのだが……。


 “バッ!”


 「無事かっ!、ナミ、不仲っ!」

 「わ、私達なら大丈夫よ、ゲイルドリヴルさん。だけどまだリアが捕まったまま……」

 「それなら心配するな、ナミ。すでにヴェニルを救出に向かわせた」

 「えっ……」


 “パキンッ!”


 「……っ!、よしっ!。これで私もようやく自由に動けるようになったわ。ずっと腕を上げたまま状態で物凄く肩が凝っちゃった。助けてくれてありがとうね、ヴェニル」


 “ヴェニッ!”


 「リア……良かった。でもさっきの不仲さんといいどうしてあなた達までここに……」

 「それが色々と複雑な事情があってな。どうやらそれはお前達も同じようだが……。それより今我々が置かれている状況についてだが……」

 「そ、それは……」

 「おおーーっ!、これはこれはよくぞいらっしゃいましたぁーーっ!、新たなヴァルハラ国のプレイヤーの方々っ!。本日は予定より沢山の方々が来客に訪れて頂きこの館のダンジョンのボスである私としても嬉しい限りでーすっ!。まさかこれ程多くの方がここまで辿り着けるとは思っても見ませんでした」

 「……っ!。やはりあの男がこのダンジョンのボス……」

 「その通りよっ!、ゲイルドリヴルさんっ!。気を付けて、さっきまで私達あの変態拷問野郎に散々な目に合わされてたんだからっ!」

 「変態拷問野郎……、散々な目……」

 「詳しい説明は私がするわ、ナミっ!」

 「……リアっ!」


 ナミ、そして不仲と合流したゲイルドリヴル達の元にヴェニルによって救出されたリアもすぐに駆け付けて来た。そしてナミの言葉足らずの説明に上手く状況を飲み込めずにいるゲイルドリヴルと鷹狩に対し改めて丁寧かつ要点のみを纏めた迅速な説明を行ったのだった。


 「なるほど……では先程のナギの悲鳴はあの電気椅子による拷問によるものだったというわけか……。しかし拷問で得た情報を他国に売り渡すとは随分と悪質だな」

 「いや、それ以上に我々にとって厄介な存在でもあるぞ、ゲイル。情報を貰う側になれば相当なメリットを得ることができるだろうがここで奴を逃せば我々はその情報を渡される側になり一気に不利な状況に立たされる可能性もある」

 「ああ……」

 「おおーーっ!、それならば心配いりませーん。すでにナミさん方には説明致しましたが私から情報を得るにはそれなりの対価が必要ですし、一方的にどこかの国が壊滅的危機に陥るような取引をすることはありませーん。私もNPCとしての立場をわきまえてあなた方プレイヤーの国同士の戦いのバランスが崩壊せぬよう努めていく所存でーす」

 「くっ……勝手なことを抜け抜けと……。あんな奴の言うこと信用しちゃ駄目よっ!、ゲイルドリヴルさんっ!。少しでも情報を渡したら最後、あっという間に私達の国の情報を他の国全部に売っぱらって大儲けするつもりに違いないわっ!。鷹狩さんは情報を買う側になればメリットになるなんて甘いこと言ってたけど……、そんなズルみたいなことして勝っても何にも嬉しくないしこんな胡散臭くて最低なクズ野郎は今ここで私達でぶっ倒してとっとこのゲームから退場させちゃいましょうっ!。そうした方が他の国の人達も喜ぶはずよっ!」

 「ズルは少し言い過ぎなんじゃないのか、ナミ。確かに先程の拷問の話は許し難いことだとは思うが……、それでも奴がこのゲームの正式なキャラクターである以上その存在を利用する者がいても咎めることはできないはずだ」


 リアから説明を受けたゲイルドリヴルと鷹狩、流石状況把握能力の高い二人だけあって拷問紳士によって情報が漏れる恐ろしさ、そして逆にそれを利用する側になった際に得られるメリットの大きさを瞬時に理解したようだ。だが道徳心や自身の感情を第一に考えるナミにとってはそのようなメリット等理解できず、少しでも拷問紳士に対して肯定的な意見を述べた鷹狩に対して強い批判的な感情の篭った口調で噛み付いていた。これまでナギの拷問を見せつけられたことへの怒りもあるのだろうが、相手を冷静に分析しただけの鷹狩からしてみれば納得のいかない言われようだったのかナミのように強い口調ではなかったにせよ反論の言葉を口にしていた。折角援護に駆け付けてくれたというのに今はそのようなことで言い争ってる場合ではないはずなのだが……。


 「おおーーっ!、これは中々物分かりの良いプレイヤーの方が現れました。鷹狩さんと仰いましたか……。あなたの仰る通りこのゲーム内において私を利用し情報を得ることは何ら悪いことではございませーん。あなたは少し周りに対して自分の意見を押し付け過ぎですよ、ナミさん」

 「うるさいわねっ!。私はそういうルールで許されてるから何をしてもOKって考えが昔から大っ嫌いなのっ!。あんたみたいな奴から情報を貰ってゲームに勝っても誰も勝者として認めてくれないし逆に私達のプレイヤーとしての誇りに傷がつくわっ!。ねぇっ!、ゲイルドリヴルさんもそう思うでしょっ!」

 「………」

 「(ふふっ……、プレイヤーとしての誇りに傷がつくですか。確かにあなたの言う通りルールの範囲内なら何をしてもOKというのは間違っていまーす。本当のルールとは単に法による規定や物理的な制限などではなく、他者との関係、そして自らが己自身に対して課す制約によって作り出されるものなのでーす。それらを順守することが真に己を律し自らの持つ力を最大限に引き出すことに繋がる……彼女はすでにそれを本能で理解してしまっているようですね。自力で私の拘束を破ったことといい流石ナギ君のパートナーを務める女性というだけのことありまーす)」

 「それで……、今の彼女の言葉に対してあなたはどう思われるのですか、ゲイルドリヴルさーん。他の方々のあなたへの対応を見る限り恐らくこの中で一番の……、そしてヴァルハラ国の中でもかなりの地位に位置するプレイヤーのようですが。私としてはもしあなたがこの私をあなた方の国王へと紹介、謁見する機会与えてくれるというのであればこの場での敵対を止めあなた方の国の専属的な取引相手となることも考えなくはありませーん」

 「なっ……!」

 

 意見の食い違うナミ達の様子を見た拷問紳士はなんとこの場での敵対を止め、その後自らヴァルハラ国専属の情報屋となるという提案を持ち出して来た。その提案は明らかにナギ達、そしてヴァルハラ国にとってメリットの大きいものであったが、果たして本気で言っているのかそれともナミ達を仲違いさせる為なのか……。プレイヤー国へ情報を売ることを商売をしていると言っている以上どこかの国のトップとの繋がりができるというのは拷問紳士にとってもメリットがあるということなのかもしれない。


 「……っと言ってもこのゲームが開始されてそれ程時間が経ってないまだ取引の材量となる情報は持ち合わせておりませんが。万が一他の国のプレイヤー方への拷問による情報の入手にすれば真っ先にあなた方の国へ……、それも通常より格安の価格で提供することをお約束致しまーすっ!」

 「………」

 「……っ!、こんな奴の口車に乗っちゃ駄目よっ!、ゲイルドリヴルさんっ!。さっきのこの館の人達が拷問されたあげく殺されちゃった話を聞いたでしょうっ!。きっとその人達にしたことと同じように私達の国に取り入ってる隙に隠れて皆を拷問していくつもりに違いないわっ!」

 「おおーーっ!、これは先程から酷い言われようでーすっ!。どうやらこれまでの拷問の経緯もあってかナミさんの私に対する印象は余程悪いものになってしまっているようでーす。ですが心配なさらずとも決してそのようなことは致しません。なんならあなた方の国の領内にいる間中常に監視を付けてもらっても構いません。どうですか?、今の私の提案について少しは考えてみて頂けませんか、ゲイルドリヴルさん」

 「………」

 「もうぉっ!、何黙り込んじゃってるのよっ!、ゲイルドリヴルさんっ!。こんな奴の戯言に耳を貸す必要なんてないってさっきから言ってるでしょっ!。それともまさかあいつの提案を受けるつもりなんじゃないでしょうねっ!」

 「いや……そういうわけではないのだが……おい」

 「……?、なんでしょう?」

 「結論を出す前にお前に聞きたいことがある。今我々の国に向けてこの館のある森から大量のモンスターの軍団が押し寄せて来ているが……それもお前の仕業なのか」

 「……っ!。(そ、そうだったわ……。そういえば私達の当初の目的はそのモンスターの発生を止めることだった。私やリアもいきなりこんな場所に拘束されてあいつの拷問ばかりに気を取られていたから仕方ないかもしれないけど……。やっぱりゲイルドリヴルさんは冷静ね)」


 拷問紳士の提案に当然ナミは猛烈に反発した態度を見せていたが、ゲイルドリヴルは冷静に必要な情報を引き出そうとしていた。もしモンスターの発生の原因も拷問紳士であるならばこの提案を受けることで一気に全ての目的が達成できるのだが果たしてゲイルドリヴルはどのような決断をするのだろうか。


 「おおーーっ!、そのモンスター達の軍団ならば間違いなく私の仕業でーす。あなた方の国プレイヤー方を少数でこの森へと誘き出す為の策だったのですが……。勿論先程の提案を受けて頂けるのあればすぐさまモンスターの発生も引きやめまーす。あなた方には多大なご迷惑をお掛けして大変申し訳なく思っておりまーす」

 「……っ!、それじゃあ一応私達の当初の目的は達成できるってことか……。けどそれはあんたをぶっ倒しても同じことだしあんたの提案なんて飲む必要ないわよっ!」

 「どうする……ゲイル。さっきはああ言ったが私もベンの頼みのこともあるしできればこの場で奴を倒すことに賛成だが……。万が一我々が敗北してしまえば再びこの館の攻略に臨むまでまた時間が掛かる。そうなればモンスターの進行に脅かされ続けるヴァルハラ国の発展が更に遅れることになるぞ」

 「そのようなことを考慮する必要はない、鷹狩。私の結論ならば最初からこの場で奴を倒すことに決まっている」

 「……っ!、ゲイルドリヴルさんっ!」

 「ふっ……お前なら必ずそう言うだろうと思っていた、ゲイル」


 拷問紳士からの提案への返答を決めあぐねているのかと思われたゲイルドリヴルだったが、先程の質問への返事を聴くや否ややはりこの場で対峙することを決めた。っというか返事の内容に関わらず初めから結論は決まっていたようだ。先に返答を出してこの場で対峙することが分かれば相手は質問に答えないと考えたのだろう。

 

 「おおーーっ!、何故なのですかぁーーっ!、ゲイルドリヴルさーんっ!。あなたならばこの状況で私と戦闘を行うことは不利であることを理解できているはず……。多少数の上で上回っているとはいえ私はこのダンジョンのボスなのですよ。最低でも1パーティ分のプレイヤーがいなければ勝ち目などあろうはずがございません。ですが今の私の提案を受ければ無理なくあなた方の目的を達成できる上私からの情報の提供まで受け取ることが可能になるのですよ。まさかあなたもナミさんと同じように下らないプライドの為にそれだけのメリットをドブに捨てるというのですかっ!」

 「別に私はそれ程お前を利用とする者を咎めようとは思わん。だが我々の国の王はそこのナミと同じく決して拷問で得た情報を受け取るような卑劣な行いを許さないお方だ。貴様のような輩を引き合わせようものならば私はこれまでの王からの信頼を全て失うことになるだろう。そして我々の国の王が貴様との取引をお許しにならない以上貴様の存在は我々にとって脅威にしかなりえない。ナミのような考えを持つ者の多い我々のような国はともかく、他の国の連中はいつ貴様を利用して情報を得るか分からないからな」

 「流っ石ゲイルドリヴルさんっ!。何だかんだで私達のことをよ〜く理解してくれてるわ。さーて、それじゃあやっと我らが司令官の許可も下りたことだしとっとあの変態拷問野郎をぶっ飛ばしちゃいましょう。今度こそあいつの捻じ曲がった顔を思いっ切りぶん殴ってやるんだからっ!」


 ゲイルドリヴルが出した結論によりやはりナギ達はこの場で拷問紳士と対峙することが決まった。最もこの場にいる誰もが拷問紳士の言葉に多少惑わされながらもこうなることを確信していたようだが。そしてナミの気合の入った言葉と共に皆改めて拷問紳士へと敵意を向け臨戦態勢を取るのだった。


 「よし……っ!、なんか話がややこしくなってたみたいだけどようやくあいつとの戦闘が始まるみたいだね。ゲイルドリヴルさん達も援軍に来てくれたことだし僕達も頑張ろう、シャインっ!」


 “グオッ!”


 「……ってそうだっ!。拘束も解けたし今ならデビにゃんをこっちに呼び寄せることもできるかもしれないぞ。僕達と別れてレミィさん達も戦力的に厳しいかもしれないけど……。一応デビにゃん側から呼び出しを拒否することもできるし取り敢えずやってみよう。……コールッ!」


 ゲイルドリヴル達と共に臨戦態勢を取る中、ナギはこちらの戦力の更なる増強をはかってデビにゃんを呼び出すべくもう一度コールの魔法を試みた。手錠による拘束が解けたことで魔法の発動が可能になったのではないかと考えたようだが果たして上手くいくのだろうか。そしてナギが再びコールの魔法を発動させようとしている頃当のデビにゃんはというと……。


 


 

 

 「にゃあぁぁぁーーーっ!、デビル・アックス・クラッシャーにゃぁぁぁーーーっ!」


 “ズバァーーーーンッ!”

 “グオォォォォ……”


 ナギが拷問紳士の拘束から解放された頃デビにゃんはレミィ、カイル達と共にルートヴィアナ達との戦闘を続けていた。この場の敵の大将である三姉妹の長女ルートヴィアナを討ち果たそうと必死に猫魔族の長老から貰った斧を振るっていたが、ルートヴィアナのリスポーン・ホストのモンスターであるスケルトン達に阻まれ中々攻撃の手が届かずにいたようだ。


 “グオォォォォッ!”


 「くっ……、こう次々と出てこられてはきりがないぜ。それにしてもあの野郎……。さっきからこのスケルトン共の後ろに隠れて一向にこっちに出てくる気配がねぇ。これまでのリスポーン・ホストのモンスターを従えてる奴等は皆正面切って俺達に向かって来てたっていうのによぉ……。やっぱこんな気味悪い館に住んでるだけあって性格も陰鬱にできてるんだな」

 「っていうかその方が普通なんだよ、アクスマン君。これまで私達が戦ってきた敵が偶々知性が低かったりリスポーン・ホストの能力を持つ本人のステータスが高くて性格が好戦的だったりしただけで、大抵のボス級の相手はまず自ら危険なところに出てきたりしないからね。まぁ、確かに威勢の良かった割にあの魔族達は消極的過ぎる気もするけど……、それは本人達のHPや防御力が低くて耐久力に自身がない証拠。きっとアクスマン君の全力のアックス・クラッシャーなら一撃でHPを0まで持っていけるぐらいだよ。むしろこの前戦ったミステリー・サークルゴーレムなんかよりずっと戦いやすい相手かもしれないよ」

 「そうだな……。だが肝心の奴に攻撃を加えることができなければ意味がないことに変わりはない。奴等を倒さない限りこのスケルトン共は無限に沸き続けるだろうしチャンスはそうないぞ。……ならばそのチャンスを無駄にしない為にも奴に止めを刺す役目はお前の言う通り恐らくこの中で一番攻撃力の高いであろうアクスマンに任せるのが懸命か」

 「……っ!。斬れない……、そう言ってくれるのは嬉しいが恐らくお前も相当な熟練を積んだ武闘派のプレイヤーのはず……。だというのにそんな重大な役目を俺なんかにあっさりと譲っていいのか……?」

 「熟練を積んでるからこそ他のプレイヤーの実力もしっかりと見極められるということさ。それに今の俺は魔剣士を目指して魔術師の職に就いている最中だ。とてもではないがあいつを一撃で葬れる程の技は放てない。だがすでに傭兵の職に就いているお前なら……。なんとか俺達がこのスケルトン共を片付けて突破口を開くからお前はそのチャンスに備えてジッと力を蓄えていろ」

 「斬れない……」

 「斬れないさんの言う通りここはアクスマン君に任せるしかないみたいだね。頑張って私達がこのスケルトン達の数を減らすからその隙にアクスマン君は一気にあいつのところに向かってやっつけちゃって。仮に失敗してもアクスマン君と直接対峙すればあいつもスケルトン達を後ろに下げるしかないだろうから私達も押し込めるだろうし」

 「レミィ……分かった。リーダーからの指示とあっては従わざるを得まい。……そして俺は必ずその指令を為し遂げて見せる。頼んだぞ、皆っ!」


 自身のリスポーン・ホストのモンスターであるスケルトン達を盾に自身は安全な場所から動こうとしないルートヴィアナに苦戦させられているデビにゃん達であったが、先程カイル達と共に合流した斬れない……錆での提案で、アクスマン以外のメンバーで一時的にでもスケルトン達の数を減らし一番前衛としての能力の高いアクスマンにルートヴィアナの元へと向かってもらい一気に前線を押し上げる作戦を取ることになった。魔族ということもあり恐らく魔術に特化したステータスを持つルートヴィアナだが、一度接近戦に持ち込んでしまえばそのまま押し切ることができるという考えだろう。あわよくばそのままアクスマンがあっさりとルートヴィアナを葬ってくれるかもしれない。そしてアクスマンと同じく斧を使う前衛職である身として自身が突破役に抜擢されなかったことに若干の不満を感じつつもレミィの指示に従ってスケルトン達の討伐に全力を注ごうとするデビにゃんであったのだが……。


 「にゃ……。まぁ、ここはエックスワイに任せるしかないかにゃ……。仲間モンスターの僕じゃステータスは遠く及ばないしおまけにあいつはもう傭兵っていう上級職にまで就いてることだしにゃ。けど僕のレベルもナギの魔物使いとしての熟練も上がればきっと僕もプレイヤーに負けないくらい強くなれるはずにゃっ!。よーしっ!、そうと決まれば少しでも経験値を稼ぐためにこのスケルトン共を倒して倒して倒しまくってやるのにゃっ!。どうせ無限に沸いてでるこ……ってにゃぁっ!」

 

 “ジリリリリンッ!”


 「こ、この信号は……っ!」

 「……?、どうしたの、デビにゃん」

 「ま、間違いないにゃっ!。これはナギからのコールの魔法の呼び出し音だにゃぁっ!」

 「ええっ!」


 皆が改めてスケルトン達の掃討を開始しようとした時、デビにゃんの脳内に昔によく使われていた黒電話の呼出し音のようなものが鳴り響いて来た。どうやらナギからのコールの魔法による呼び出しのようだ。皆デビにゃんの言葉を聞いて驚きを隠せずにいたようだが果たしてデビにゃんがこの状況でナギ達の元に向かうことができるのだろうか。


 「今の話は本当なのっ!、デビにゃんっ!。本当にナギ君からの呼出しの魔法ってのいうのが掛かってきたのっ!」

 「本当だにゃ……。それに信号から伝わってくるナギの心情の感じからしてナギ達も相当追い詰められた状況みたいなのにゃ……。僕としては行きたいのは山々なんだけどにゃ……」

 「何言ってるのっ!、だったら早くナギ君達のところに行ってあげなよ、デビにゃんっ!」

 「にゃっ!、で、でも……」

 「ふっ、俺達のことなら心配するな、デビ猫。この程度の敵貴様の力なぞなくても容易く倒してみせるわ」

 「エックスワイ……」

 「それに事前にもしナギ君達から呼出しがあったら私達に遠慮しないでそっちに行くって約束してたでしょう。向こうはナギ君とナミちゃん、それにリアちゃんとバジニールさんの4人しかいないんだからきっとデビにゃんの助けを待ちわびているはずだよ。こっちはカイル君達が援軍に来てくれて戦力もバッチリだし今デビにゃんが心配すべきは私達じゃなくてあなたのご主人様であるナギ君達の方っ!」

 「レ、レミィ……わ、分かったにゃっ!。皆のことを信じてここは早くナギのところに駆け付けることにするにゃっ!。必ずナギ達を連れて帰ってくるから皆の無事でいてくれよにゃっ!。……じゃあ」


 “ヴィィーーンッ……”


 皆にそう言い残すとデビにゃんはコールの魔法の効果でその場から姿を消した。ナギと再開できる喜びと結果的にレミィ達を置き去りにするなることへの罪悪感、そしてナギ達の元に待ち受ける脅威への不安が入り混じったデビにゃんの別れ際の表情はなんともいたたまれないものであった。デビにゃんとレミィ達、どちらも互いを信じるしかなかった果たしてナギ達の元に駆け付けたデビにゃんは拷問紳士を、この場にいるレミィ達はルートヴィアナ達を無事討ち果たすことができるのだろうか……。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ