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finding of a nation online  作者: はちわれ猫
第十二章 探索開始……北の森の恐怖の館
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finding of a nation 98話

 「……やはり一撃では仕留めきれなかったようだな、ゲイル」

 「ああ……、だが奴にそれなりのダメージを与えた上捕えた二人を救出することもできた。配下の悪霊共も何体か始末し馬子やナイト達もそれぞれ戦闘に備えての陣形を整えられたようだし我々の奇襲は成功したと言っていいだろう。……勿論これで我々の勝利が決まったとは言えないがな」

 「………」


 馬子やナイト達が気を引き付けている間にチャッティルとワンダラに不意の一撃を与えることに成功したゲイルドリヴルと鷹狩、だがこのエリアのボスと呼べる存在がそう易々と倒されるわけはなく、二人の真剣な面持ちと発せられた言葉もこのまま一筋縄ではいく相手はないことを物語っていた。そして今度はゲイルドリヴルの轟雷槍撃波ごうらいそうげきはを耐え切り体勢を整えた直したチャッティル、その相方であるワンダラの反撃が開始されるのであった。


 「だ、大丈夫ですか……っ!、チャッティル様っ!」

 「ええ、隙を突かれて不要なダメージを負ってしまいましたが私なら大丈夫です。この二人の相手は私とワンダラが致しますからあなた達は団結してそれ以外の……、取り逃がした者達も含めて始末してしまいなさい」

 「か、かしこました……っ!」

 「さて……、ではそろそろつい先程食らわされたあなたお得意のかみなりの攻撃のお礼をさせてもらいますよ。凄腕の魔槍術士のリーダーさん……、それに鷹の姿をしたモンスターを従えた魔物使いさん」

 「……どうやら前に交戦した二人の悪霊から我々についてのある程度の情報を得ているようだな」

 「ええ、特に魔槍術士の職に就いている紫の髪のあなたは要注意のプレイヤーだという報告を承っておりますわ。そのような者の相手を部下の悪霊達にさせるのはあまりにも酷というもの。不意打ちを受けたのは勿論不本意ですがちょうどよろしい状況となったのであなた方のお相手はこのエリアを管轄する魔族であるこのチャッティルとワンダラがして差し上げましょう」

 「そうか……、それはこちらとしても助かるな。こちらも貴様等の相手は元々私達二人でするつもりでいた。貴様等の動きさえ止めておけば配下の悪霊共等我々の仲間ならば軽く蹴散らせるだろうからな」

 「……っ!、なんだとっ!。たかが一度の奇襲に成功したぐらいで調子に乗るな。多少やられはしたようだが数の上ではまだまだこちらが有利なはずだ。そして更に我々にはまだリスポーン・ホストの能力によるモンスター共もいるのだぞ。……はあっ!」


 “ウィーン……バババババッ”


 「うっ……、折角奇襲に成功したのにこれじゃあ全然敵の数が減った気がせーへんよ。まぁ、ステータスの高い上にプレイヤー波の動きをしてくるあの悪霊共を相手にするよりはマシかもしらんけど……」


 ゲイルドリヴルの挑発的な言葉に反応してワンダラ、そしてそれに続いてチャッティルや他の悪霊達は自らのリスポーン・ホストの能力によるモンスター達を出現させた。あまりゲイルドリヴルらしくない発言であったが、なるべく敵の気を自分達に引き付ける為なのだろうか。出現したモンスターの種類はこれまでの者達と変わらずグラッジ・シャドウやマッド・ゾンビ等ステータスの低い者ばかりで、範囲内に出現させられるモンスターの数に制限があるのか広間内とその周辺に出現したモンスターの数はリスポーン・ホストの能力の保持している者達の数の割には大分少ないと感じられるものであった。結果的にゲイルドリヴル達の相手にしなければならない敵の数はそこまで変わらなかったかもしれないが、それでも馬子の言う通り高ステータスに高精度の思考が設定されているこの館の住民の悪霊の数が減っている分いくらか戦闘が楽になっているはずだろう。


 「………」

 「……チャッティル、俺が奴等に仕掛けるからお前は得意の魔法で後ろから援護をしろ。あの紫の髪のリーダーを倒せばこいつらのパーティは一気に瓦解するはずだ」

 「分かりましたわ。ですが万が一我々二人が敗北すれば配下の悪霊達の統制が崩壊するのはこちらも同じ……。まだ皆と他のプレイヤー達との勝負がどうなるかも分かりませんしあまり無理をなさらないで下さいね」

 「ふんっ……、あんな役立たず共のことなど信用できるか。それを言うなら万が一悪霊共が敗北して手の空いた他の奴等までこちらに向かって来た時のことを考えた方が最悪だ。お前はどうかは知らんが俺はあんな自分達の怨念に囚われて情緒の不安定になっている悪霊共の働きに期待する気は毛頭ない。あんな奴等は只の敵の足止めの駒にして俺達二人で順にプレイヤー共を狩っていった方が確実だ」

 「まぁ……、そうですわね。あまりシェフリー達のことを悪く言いたくはありませんが単独で戦った場合の力量ならばまだまだプレイヤーの方が上でしょうし……」

 「そういうことだ。……はあっ!」


 “ヴィーンッ……”


 馬子やナイト達、自分達の仲間の力を信じ皆が援護が来るまで耐えしのぐ心構えのゲイルドリヴルと鷹狩に対し、チャッティルとワンダラは自身の配下の悪霊達が敗北するのを恐れて他の者達が援護に来る前にゲイルドリヴル達を倒してしまうつもりらしい。まさに物語の善と悪、光と闇、主人公と敵勢力というような対照的な考えではあるが、勿論ゲイルドリヴル達も自分達のみで敵を倒すことが可能ならばそのつもりだろうから仲間への頼りがある分心境的には少し有利といったところだろうか。とはいえ互いのメンバーの中で最主力さいしゅりょくと呼べる者同士であるこの戦いはこの戦闘全ての結果に大きく左右する。最良の結果を得るつもりなら最速でこの戦いに勝利してしまうのが一番効率がいいのも確かである。自身でもそう口にしていたワンダラはまさにその最良の結果を得ようとゲイルドリヴル達に仕掛けるべく魔力を手中し何やら墨が宙に浮いているような黒いモヤモヤとした物体を出現させるとそれは自身の右手に集め黒い短剣を模ったような物を作り出した。どうやらその短剣を武器としてゲイルドリヴルに近接戦闘を仕掛けるつもりのようだ。


 「……っ!。あれは……、アイテムとして装備しているのではなく自身の魔力によって作り出したものか……っ!」

 「その通りだ。これはマテリアライズ・ウェポンという魔法で俺自身の魔力を元に作り出された武器……。魔法を使う者の力量にもよるが今の俺ならば貴様等で言うところのBランク以上の性能にはなっているだろう」

 「Bランクだと……っ!」

 「そう驚くことはあるまい。貴様の持っているそのレビンズ・スピアも同じBランクの武器ではないか。俺のこのマテリアライズウェポンには重量がないというメリットがあるとはいえ魔力を消費せずに済むのだから実物の武器を手にしているお前の方が有利なはずだろう」

 「………」

 「……ではいくぞっ!」


 “バッ!”


 「……っ!、速いっ!」


 “カッ……キィーーーンッ!”


 自身の魔力を糧にしてマテリアライズ・ウェポンを作り出したワンダラは地面を蹴って一直線に相手に飛び掛るように移動したかと思うと一瞬にしてゲイルドリヴルの元まで辿り着きその黒い短剣で斬り掛かった。その掛かった歩数は僅か一歩、つまりはゲイルドリヴルとの間にあった10メートル近くの距離を一飛ひととび、それも地面すれすれを超低空飛行するように移動して来たわけだが、ゲイルドリヴルからしてみればいきなりアクセル全開で走行する車か何かでも現れたかのように感じられただろう。それでもゲイルドリヴルは脅威的な動体視力と反射神経を見せワンダラの作り出した武器の刃に槍の矛先を合わせて振るい斬撃を防いだのだった。


 「ほぅ……今のを防ぐとはやはり相当な手練れのようだ。だがここまで間合いを詰めてしまえばその柄の長い武器では俺の斬撃のスピードについてはこれまい。……はあっ!」

 「くっ……!」


 “カァン…、キィン…、カァーーーーーーンっ!”


 一気に相手の間合いの内側に入り込んだのいいことにワンダラはゲイルドリヴル達に対して休む間もなく短剣による斬撃を放ち続けた。一つ一つの威力はそれ程でもなかったものの斬撃そのもの、そして繰り出すスピードは凄まじく一撃でも受けてしまえば体勢を崩されその何撃もの斬撃を受けてしまうことになり大ダメージを受けることは必至だった。ゲイルドリヴルもそのことを分かっていたのか槍の柄を短く持ち、自身も槍を振るうスピードを可能な限り上げてなんとかワンダラの斬撃に対応していた。リスポーン・ホストの能力によって出現したモンスター達は足手纏いになると判断されたのかゲイルドリヴル達には仕掛けてはこず、全て馬子やナイト、塵童達の相手をすべく向かって行ったらしい。最初の宣言通りあくまでチャッティルとワンダラのみでゲイルドリヴルと鷹狩の相手をするつもりらしい。


 “カァン…、キィン…、カァーーーーーーンっ!”


 「ほほっ!、いいですわよ、ワンダラ。その調子でどんどん追い詰めて差し上げなさい。その間に私は魔力を溜めてその凄腕の槍術士さんに壮大に止めを刺す為の魔法を撃つ準備を……」


 “ウィーン……”


 「……っ!、させるかっ!。ヴェニルっ!」


 “ヴェニッ!”

 “バッ!”


 「……っ!」


 “ヴェニッ!、ヴェニッ!”


 「くっ……!、こ、この鳥……っ!。たかが仲間モンスターの分際で今度はこの私の邪魔を……。ですが主人である魔物使いのあの鋭い目付きの女性には他に攻撃手段はないはずですからこの鳥させ倒してしま……っ!」


 “バァンッ!、……バンバァンッ!”


 「ぐっ、ぐおっ……!、い、今の火球はまさかファイヤーボール……。し、しかし一体どこから……」


 ワンダラがゲイルドリヴルを追い詰めている隙に高威力の魔法を放とうとするチャッティルに対し鷹狩はヴェニルを差し向けた。先程のワンダラに対してと同じように上空から一気に頭上に詰め寄り嘴と爪による攻撃でチャッティルの魔法の詠唱を妨害するヴェニルであったが、仲間モンスターとしてのステータスではダメージ自体はほとんど与えられていないようだった。しかも詠唱の隙を突いたからこそ反撃を受けなかったものの、詠唱を中断した今振り払われるどころか何かの一撃で倒されてしまってもおかしくない状況であった。チャッティルもいつまでも煩わしい妨害をされては堪らないとヴェニルを鷲掴みにして握り潰してやろうと手を伸ばしてきたのだが、その直前にヴェニルに注意の言っているチャッティルの体に3つの火球が直撃した。どうやらどこからかファイヤーボールの魔法が放たれてきたようだったのだが……。

 

 「撃たれてきた方角からしてやはりあの魔物使いの女が……。くっ、あの槍術士のサポートに来ているから恐らく他に就いている職は治癒術士のような回復に特化したものと思っておりましたがまさか魔術……っ!。あ、あれは……っ!」

 「………」


 チャッティルは鷹狩が魔物使いの他には回復専門の職に就いているものと思っていたようだ。それならば鷹狩以外敵となる者のいない方向からファイヤーボール等飛んでくるわけがなく、もしや魔術師の職に就いている、もしくは他に援護に来た者が現れたのではないかと慌てて視線を向けたのだが、そこには何やらトランプのように裏面の柄が全て同じの数枚のカードを手にしている鷹狩の姿があったのだった。


 「あれはまさしく魔術札……。どうやらあれを使って先程のファイヤーボールを放って来たようですわね。しかもまだ複数枚所持しているようですわ。恐らくどれも今と同じファイヤーボールか同程度の威力の低級魔法でそれ自体はあまり脅威にはならないでしょうが、相手側にも遠距離への攻撃手段がある上まだ回復職にも就いている可能性を考慮しなければならないとなると非常に厄介ですわね」

 

 “バッ!”


 「無事かっ!、ヴェニルっ!」


 “ヴェニッ!”


 「ふっ、どうやら知り合いの札術士の職に就いている者から貰った魔術札が役に立ったようだな。……だがやはり奴に対してのダメージはほぼ無傷と言っていいもののようだ。まだ10枚程残ってはいるが全て今と同程度の威力のファイヤーボールだしこれでは有効打ゆうこうだにはならないか。なんとか上手く駆使して奴の魔法がゲイルに向けて放たれるのだけは阻止しなければ……」


 チャッティルの受けたファイヤーボールはやはり鷹狩が放ったものだったのだが、それは魔術札によるもので決して鷹狩自身が魔術師の職に就いているわけではなかった。残りの手にしてる札も全て同威力のファイヤーボールだったようだが、放たれる火球は小さく数も3つとリアどころから魔術が苦手なナミの放つものにも遠く及ばないものだった。これでは決して有効打にならず、チャッティルに対しては魔法の牽制程度にしかならないだろうと鷹狩も判断したようだ。それでも高威力の魔法の詠唱を妨害できるのは大きく、チャッティルの意識をゲイルドリヴルからこちらに向けられただけも鷹狩からしてみれば幸いだっただろう。鷹狩とチャッティル、前衛をサポートする者同士が互いの動きを牽制し合う中ゲイルドリヴルとワンダラの斬撃戦は続けられた。

 


 


 

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