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finding of a nation online  作者: はちわれ猫
第十二章 探索開始……北の森の恐怖の館
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finding of a nation 97話

 「はあぁぁぁぁっ!、……祈祷撃っ!」


 “バアァーーンッ!”


 「きゃあぁぁぁぁぁっ!」

 「シバルリー・キャリバァァァァーーッ!」


 “ズバァーーーーンッ!”


 「ぐはぁぁぁぁぁっ!」


 不仲とマイの撃ち放った2本の矢を合図に続いてまずは馬子とナイトは隠れていたバルコニーから身を乗り出し勢いよく1階の広間へと飛び降りた。それと同時に広間にいる悪霊達の中からそれぞれ標的を捉え、落下する途中で馬子は錫杖しゃくじょうの先にエネルギーを溜めて振り上げながら、ナイトも同じく自身の心に湧き上がる気高き騎士道の精神をエネルギーに変えて更にそれを剣を込めて振り上げ、着地と同時にそのエネルギーを一気に解放して敵に向けて技を放ち更にメイドと執事の男女二人の悪霊を打ち破った。馬子の放った祈祷撃は祈りのエネルギーを込めた錫杖で敵に打撃を与える技だ。馬子の祈祷を使った攻撃は元々霊体に対しても有効だったが、先程通った食堂でグラッジ・ファントムから貰ったオルタウラースのローストビーフを食べた影響でナイトの放ったシバルリー・キャリバーも物理攻撃でありながら見事に敵の悪霊を斬り裂いていた。続いてリリスとイヤシンスも二人の後ろの辺りに飛び降り、左右それぞれの側で前衛・後衛の陣形を取って敵を挟み込むように戦闘態勢に入った。いきなり2階現れた馬子達に塵童達も驚いていたようだが、それ以上に魔族であるチャッティルとワンダラはともかく敵の悪霊達は慌てふためき完全に混乱に陥ってしまっていた。ゲイルドリヴル達の奇襲作戦が見事に成功した結果と言っていいだろう。


 「な、なんだ……。あれは馬子にデビにゃん……じゃなくて会議の時にいたもう一匹の方の黒猫か。それに2階にはマイ達まで……。だがどうしてあいつらがこの場所に……」

 「もうぉーっ!、今はそんなことどうだっていいじゃないですかっ!。あれはどう見ても私達の援軍ですよ、援軍っ!。一時はどうなることかと思ったけどこれなら逃げるどころか逆にあいつらをやっつけられちゃうかも。よーしっ!、こうなったら私達も少しでも多く功績を得る為に悪霊共をぶっ飛ばすわよ、ドラリスちゃんっ!」


 “ドケェッ!”

 “ラッコォッ!”


 「ああぁーーっ!、密かに私が恋心を抱いていたレイが……、それに親友のステラまで……。一体何が起きてるのっ!」

 「落ち着きなさいっ!、あなた達っ!。どうやら新たな敵が我々に奇襲を仕掛けて来たようです。慌てず冷静に両側から現れた敵にも対処しなさい。……それにしてもこの者達は一体どこから……」

 「どうやら俺達に気付かれないようにバルコニーに潜みずっと攻撃の機会を窺っていたようだ。もしかしたら先にこの広間に現れた連中と元から示し合わせていたのかもしれん」

 「ちっ……、だとしたらとんだ食わせ者の連中ですわね。あの男と女とニワトリはどう見ても只の命知らずの馬鹿としか思えませんでしたことよ。最近のプレイヤーは演技力の練習も徹底してらっしゃるのかしら……」


 馬子達の奇襲を受けて取り乱す悪霊達をチャッティルとワンダラはなんとか収拾しようと懸命に指示を出しながら同時に奇襲を仕掛けて来た相手の考察を始めていた。完全に不意を突かれたのは自分達も同じだというのにほとんど動じた様子を見せず冷静さを保つ辺りやはりこのエリアを管轄するボスと言えるだけの器量は持ち合わせているようだ。そんな中バルコニーに残った不仲とマイは敵の更なる混乱と戦力の低下を目論見次の標的に向かって狙いを定めていたのだが……。


 「よしっ……、次は予定通り二人飛ばしてあの三つ編みのメガネの子を……はあっ!」


 “ヒュイィィィィィィン……”


 「……っ!。危ないっ!、ブレイネっ!」

 「えっ……」


 “バッ……パァンッ!”


 「……っ!、私の矢があのブラマって奴に弾き消されたっ!」

 「私の次の狙いはあのこの騒動なか一人ずっと椅子に座ったまま陰鬱な表情を浮かべているあの少女ですわ。何故かずっと顔を俯けたまま動く気配がありませんし余裕で仕留められるでしょう。……はあっ!」


 “シュイィィィィィィン……”


 「………」


 “バッ……パァンッ!”


 「……っ!。そ、そんな……っ!。狩人となったこの私の放った矢が素手ではたき落とされたっ!」


 メイドのリーノと執事のマイルドを見事の射貫いた不仲とマイであったが、すかさず次の標的である三つ編みの黒髪と黒縁のメガネが特徴のメイドであるブレイネ、暗い雰囲気を纏ったまま未だに席に座ったまま微動だにしない黒いローブに身を包んだ黒髪のショートヘアーのネクラマという少女、恐らくブラマと同じく傭兵としてこの館に雇われていた者であろうがそれぞれに向けて矢を撃ち放った。だがマイの放った閃光の矢は危惧していた通り以前にマイやゲイルドリヴル達と交戦したことのあるブラマによって短剣での一振りで掻き消され、不仲の放った矢に至っては標的となったブレイネ本人の手刀しゅとうによって叩き落とされてしまった。更にこの時ネクラマは俯けていた顔を上げるどころか手刀を放った手と腕の部分は寸分たりとも動かしていなかった。


 「あ、ありがとう……ブラマ。おかげで助かったわ」

 「お礼なんていいからさっさとあなたも戦闘態勢を取りなさいっ!。こいつらはさっき私とパラを退けた奴等よ。かなり手強い奴等だから気を引き締めて掛からないと痛い目を見ることになるからね」

 「う、うん……」

 「………」

 「ネクラマは……どうやら大丈夫そうね。相変わらずずっと俯いているけどあいつなら放っといても大抵ことなら自分でなんとかするでしょう」


 上階からの攻撃を防いだことによりパニック状態に陥っていた悪霊達も徐々に落ち着きを取り戻し、チャッティルの指示に従って両側に現れた馬子とナイト、そして正面にいる塵童達を迎え撃つべく体勢を整え始めていた。出来れば混乱が収拾する前にテーブルの中央に吊るされて捕えられている二人の仲間を救出したかった馬子とナイト達だったが……。


 「ちっ……思ったより敵の対応が速い。こいつらが取り乱している内に捕えらている二人を救い出したかったんだが……この状況でイヤシンスを残して敵の真ん中に突っ込むのは危険か」

 「くっ……、どうやらナイトの方も二人の救出には向かえんみたいじゃね。まぁ、こんな大量の敵の中回復職のイヤシンスを放っていくなんて前衛としての役目を放棄してしまうようなもんじゃし……。こっちは私が前衛と回復の役目を兼ねてるけぇ余計厳しいんじゃけど……」

 「まぁあっ!、それならば私達二人揃って救出に向かえばよろしいのではございまして、馬子さん。私と馬子さんが力を合わせればきっとあの御二方を救い出すことができますわ」

 「馬鹿ねっ!。ちゃんとした前衛職でもないのにあんな敵陣の中に突っ込んだら二人共あっという間に袋叩きにあって倒されてしまうよ。今はゲイルドリヴルさんの次の指示があるまで敵の迎撃に専念するからあんたは得意の霊術師の技で私を援護してっ!」

 「お任せあれ〜♪」


 どうやらナイトと馬子は前衛である自分達が守らなければならないリリスとイヤシンスのことを気遣って己武士田こぶしだ達の救出に積極的に向かうことができなかったようだ。リリスはどうかは分からないがそんなナイトの様子を見て自分はもう少し間を置いてから飛び降りれば良かったイヤシンスは後悔していたようだ。


 「4、5……新たに現れた奴等は全部で六人か……。俺が捕えて来た奴等以外にこのエリアに侵入して来た者達のようだが何か報告は受けていないのか」

 「格好や就いているであろう職業を見る限り恐らくパラとブラマの報告にあった者達ですことよ。ですが報告では残り二人……、それも内一人はパーティのリーダーで紫色の長い髪が特徴の凄腕の槍術士と思われる者の姿が見当たっておりませんわ」

 「なんだと……っ!」


 部下の悪霊達の混乱が収まり態勢を整え始めたのを見てチャッティルとワンダラは改めて敵の戦力を分析していたが、どうやらまだゲイルドリヴルと鷹狩が姿を見せていないことに気が付いたようだ。二人については報告に受けていた情報のみしか知り得ていなかったようだが、そのゲイルドリヴルの実力についての報告を受けておらずともこの状況で姿を見せていない者がいる時点で異様であると感じ慌てて危機感を募らせ始めていた。


 “バリッ……バリバリッ!”

 

 「ふっ、どうやら馬子達に注意にいって背後にいる我々の存在にはまだ気付いていないようだな」

 「ああ……、おかげで技を放つ為の十分な力を溜めることができた」

 「……っ!」


 そんなチャッティルとワンダラがなんとか危機感を払拭ふっしょくしようとゲイルドリヴル達の行方を捜し始めようとした頃、既に二人の後ろのバルコニーではゲイルドリヴルが右手に持つ槍に凄まじい雷電らいでんを発生させて今にも技を放とうとしているところだった。勿論隣には鷹狩の姿もあり、ゲイルドリヴルの放つ雷電の音に反応したワンダラが後ろを振りたのだが……。


 「あ、あれは……まずいっ!、チャッティルっ!」

 「えっ……」

 「させるかっ!。ヴェニルっ!、イーグル・スパイラルっ!」


 “ヴェニッ!”

 “ビュイィィィーーン……ズバァンッ!”


 「ぐふっ!。い、今のは……っ!」


 “ヴェニッ!、ヴェニッ!”


 「ぐっ!。な、なんだぁ、この鳥はっ!」


 逸早くゲイルドリヴル達の存在に気付き、その右手に持つ槍から放たれている雷電の脅威をチャッティルに知らせようとしたワンダラだったが、そうはさせまいと鷹狩がイーグル・スパイラルを放ち凄まじい勢いで回転しながら直進するヴェニルがワンダラに向かって襲い掛かった。その勢いのままヴェニルはワンダラの体を貫いたのだが、流石はエリアを統括する魔族だけあって直撃を受けたというのに大したダメージを負っていない様子だった。だがそれでもヴェニルはイーグル・スパイラルを放ち終えた後もすぐさま攻撃体勢を取り、バタバタと翼を羽ばたかせてワンダラの顔の周りを飛び回り自身の嘴と足の爪で襲い掛かりゲイルドリヴルの存在をチャッティルに知らされるのを必死に妨害した。その甲斐あってかチャッティルの注意は先に襲い掛かるヴェニルを振り払おうと必死にもがいているワンダラへと向かい、その槍で自身を狙うゲイルドリヴルの存在に気付くのが一手遅れてしまった。そして……。


 「な、何をしていますの……ワンダラ……。先程私に何か言おうとしていたようですがその鳥は一体どこから……」

 

 “バリッ……バリバリッ!”


 「……っ!。あ、あれは……」

 「はあぁぁぁぁぁ……っ!、轟雷槍撃波ごうらいそうげきはっ!」


 “バッ!、……ギュイィィィィィィンッ!”


 「なっ……!」


 隣でヴェニルに襲われているワンダラからゲイルドリヴルへと注意が移ったチャッティルだったが、その存在に気付くと同時にゲイルドリヴルから凄まじい雷電を放っていた槍をその本体まで雷電そのものに変えて勢いよくバルコニーから飛び立つと共にチャッティルに向けて投げ放たれてきた。轟雷槍撃波と叫ばれたそれは自身の持つ槍を雷の魔力を込め、槍の形を模った雷電に変えて敵に向けて投げ放つ魔槍術士の術技のようだ。射程はそれ程ではなく、恐らく長くともこの広間の半分程度であろうが近接戦闘が主となる槍術士で遠距離にも強力な一撃が放てるのはかなり大きい。その分EPの消費量も多くできれば一撃必殺を狙うつもりで放ちたい技だが果たして……。


 “ギュイィィィィィィンッ!”


 「……っ!。あ、あいつはパラ達の報告にあった凄腕の槍術……」


 “ズバァーーーーンッ……バリバリバリバリバリィィッ!”


 「ぐっ……ぐわぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 「チャ……チャッティル様ぁぁぁぁーーーーっ!」

 「チャ……チャッティルっ!、ぐっ……」

 

 “ヴェニッ!、ヴェニッ!”


 「こ、この鳥がぁぁぁぁっ!」


 “バッ!”

 “ヴェ……ヴェニッ!”


 「チャッティルっ!」


 “バリバリバリバリバリィィッ!”


 「くっ……これでは近づくこともできんか……。おのれぇぇぇ……っ!」


 ゲイルドリヴルの投げ放った轟雷槍撃波は見事にチャッティルの体を貫き、それと同時に凄まじい雷撃が襲い掛かった。流石に鷹狩とヴェニルの放ったイーグル・スパイラルとは威力が比べ物にならなかったのか、体を貫かれたチャッティルは全く身動きを取ることができず、雷撃の痛みに耐えかねてエリアのボスらしからぬ大音量の悲鳴を上げてしまっていた。その様子を見たワンダラ慌てて手を思いっ切り振ってヴェニルを振り払い、苦しむチャッティルの元に駆け寄ろうとしたのだが今だにチャッティルの体を襲っている凄まじい雷撃のせいで近づくことができなかった。振り払われたヴェニルはと言うと急いで鷹狩の元へと帰還していたようだが。更には雷撃を受け苦しむチャッティルの姿を見た悪霊達にも再び動揺が広がり、その注意は完全にチャッティルのみに集中し周囲で臨戦態勢を保っている馬子達からかけ離れてしまっていた。


 「……っ!、これはチャンスだっ!。イヤシンス、俺はこの隙に己武士田とレナの救出に向かうからお前は塵童達に合流しろ」

 「分かりました。確かにこれは千載一遇の好機のようですね。ですが気を付けて下さい、ナイトさんっ!」

 「ああ、塵童達と合流したらグラッジ・ファントムから貰ったローストビーフを食べさせるのを忘れるなよ」

 「はいっ!」


 “ダダダダダダッ……”


 動揺する悪霊達を見て捕えられた仲間を救い出すチャンスと判断したのかナイトはイヤシンスに塵童達の元に向かう指示を出し自分は単身悪霊達の元へと突っ込んでいった。イヤシンスも足手纏いにならない為にも急いで塵童達と合流しようと駆けて行ったのだが……。


 「はあぁぁぁぁっ……シバルリー・キャリバーァァッ!。どけぇぇぇぇっ!」

 「えっ……」


 “ズバァーーーーンッ!”


 「きゃあぁぁぁぁぁーーーっ!」

 「……っ!、イレーナっ!」

 「あ、あの黒猫イレーナを倒して囚われた仲間を……っ!。早く誰かあいつを止めなさいよっ!」

 「で、でもチャッティル様が……」

 

 ナイトはチャッティルの姿を見て動揺する悪霊を得意のシバルリー・キャリバーで叩き斬ると一気にテーブルの上に飛び乗り己武士田達の元へと駆けて行った。他の悪霊達も何人かはナイトの行動に気が付いたようだが、皆苦しみの悲鳴を上げるチャッティルのことが気になり誰一人として止めに入ることができなかった。そしてナイトは何事もなく己武士田達の元へ辿り着くと自身の剣で二人を縛っている縄を斬り解き二人を救出、そして解放することに成功した。


 “スパッ!”


 「……っ!。おおっ!、縄が解けて自由に動けるようになった。しかしまさかNPCの兵士に助けられることになろうとは思ってもみなかったぜ。ありがとうな、黒猫」

 「私も……。作戦の前の会議ではあなた達に対してあんなに酷いこと言ったのに……」

 「今はそんなことどうでもいいっ!。礼も謝罪もいいから早く戦闘態勢を取れ。その前にこのゴースト系にも物理攻撃が効くようになるローストビーフを食べるのを忘れるなよ」


 己武士田とレナを無事救出したナイトはグラッジ・ファントムから貰ったローストビーフを食べさせると二人と共にテーブルの中央で再び臨戦態勢を取った。かなり頑丈なテーブルのようで3人が乗っても上の台が揺れることはなく、恐らくこの上で戦闘を行ってもまるで大丈夫と思える程であった。ナイトが踏み付けた食器のいくつかは割れてしまっていたようだが……。


 “ダダダダダダッ”


 「塵童さんっ!、アメリーさんっ!」

 「……っ!。お前はさっきあの黒猫と飛び降りて来た……」

 「はいっ!。私はゲイルドリヴルさんのパーティに所属してるイヤシンスと言う者です。ゲイルドリヴルさんの指示で悪霊達に奇襲を仕掛けるべくお二人がここに現れる前からバルコニーに潜んでいたのですが……ちょうどタイミング良く皆さんと合流できて幸運でした」

 「ええーーっ!。やっぱりさっきあそこからすっごい雷と一緒に飛び降りて来たのはゲイルドリヴルさんだったのぉーーーっ!。この作戦の司令官が一緒に戦ってくれるなんてもうこの戦闘は勝ったも同然だわ。おまけに私の実力をアピールする絶好のチャンスだしこれは気を引き締め直して掛からないと……」

 「はぁ……ってああっ!、そうだっ!。実はお二人にお渡ししたいものがあるんです。是非ともこのローストビーフを戦いの前に食になってください」

 「きゃあぁーーーっ♪、なにこれぇーーーっ♪。なんか知んないけど超美味しそうじゃないですかぁーーーっ!」

 「確かにそうだな……。だが一体何の為に今こんな物を……」

 「このローストビーフは“オルタウラースのゴーストミート”という特殊なお肉を元に作られた物で食後一定の間自身の物理攻撃が霊体の相手にも通用するようになるんです。私達のパーティメンバーはここに来る前にすでに皆で頂いて来ました」

 「ほぅ……それはかなり便利なアイテムだな。それじゃあ遠慮なく頂くとするか。“モグモグ……ゴックンッ!”。そら、ニワトリ、お前等もこれを食っとけ。これでお前等も悪霊共とまともに戦えるようになるぞ」


 “ドケェッ!”

 “ラッコォッ!”


 どうやらイヤシンスも無事塵童達と合流し、オルタウラースのゴーストミートのローストビーフを渡すことができたようだ。魔闘家である塵童は元々ゴースト系の相手への攻撃手段を持ち合わせていたが、MPや行動ポイントの消費量のことを考えるとグッと戦いが楽になったと言っていいだろう。ゴースト系の相手への攻撃手段をほとんど持ち合わせていなかったドラリスが一端の戦力として加わることができるようになったのも大きい。


 「くっ……悪霊共が動揺した隙に捕えた奴等を解放させられてしまったか。こんなことならこいつらへの土産などと考えずさっさと始末してしまっておけ……」


 “バッ!”


 「……っ!。お、お前は……チャッティルにこの雷撃の槍を放って来た……」

 「………」

 「そっちはさっき俺を襲った鳥を従えてる奴か。どうやら魔物使いのようだな」


 己武士田とレナが救出されたのを見て悔しげな表情を浮かべているワンダラだったが、その背後に先程バルコニーから飛び立ったゲイルドリヴルが軽やかな着地の足音と共に降りて来た。続いてヴェニルを従えた鷹狩も隣に飛び降り再びこちら側を向いたワンダラと睨み合う形になったのだが……。


 “バリッ……バリバリッ……”


 「……っ!。チャッティルの受けていた雷撃もようやく収まってきたか……」


 “バリッ……シュイィィィィィィン……”


 「……っ!。雷撃が収まると共に奴の元に先程投げ放ったはずの槍が……」


 チャッティルを襲っていた雷撃が収まると同時にゲイルドリヴルの右手に何やら紫色の光が集まっていくエフェクトが発生し、気が付くと先程轟雷槍撃波で投げ放ったはずのレビンズ・スピアが手元に戻って来ていた。どうやら技が効果が切れると同時に手元に戻ってくる仕様になっているようだ。


 「ぐぅっ……はぁ……はぁ……」

 「大丈夫か……チャッティル」

 「ぐっ……え、ええ……。結構なダメージを受けましたがまだまだHPは残っておりますわ。いくら不意打ちを受けたとはいえこのエリアを管轄するボスである私が簡単にやられてしまうわけにはいかないでしょう」

 「ふっ……そうだな」

 「………」


 ゲイルドリヴルの轟雷槍撃波の直撃を受けたチャッティルだったが、かなりのダメージを受けはしたもののHPが0になるのには程遠かったようだ。ダメージにより乱れた呼吸も徐々に整っていき、ワンダラと共に自分にこれ程のダメージを負わせたゲイルドリヴル達を敵意の込められた視線で睨み付けるようにして見ていた。そんな二人にゲイルドリヴル達も何も言わずに視線を送っていたいたのだが、心の中では先程の攻撃に耐え切ったチャッティルを脅威に感じこれから先の戦闘のプランを改めて考えていた。先程の一撃で倒せなかった以上恐らく馬子やナイト、塵童達が悪霊達を始末して援護に来るまで耐え凌ぐ策を取るだろうが、果たしてゲイルドリヴル達は無事チャッティル達を討ち果たしナギ達の囚われている拷問室へと辿り着くことができるのだろうか。

 


 


 

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