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演説

 貪る、という動詞にふさわしく食べまくる妹。

 曰く「食は体作りの一歩目であり最大の基礎、だから食べる」という理論らしいがそこまで食べる必要は……と思うけどシン曰く「彼女の運動量を考えれば理解できるネ、私を飛び越えた時も尋常じゃない早さだったネ、いくら身体強化されてるし、アキレウスとラダの実力差があるとはいえ人族で強化された半竜のゴットハルトより早いのは絶対おかしいヨ」とのこと。

 ずっと一緒にいたので人は鍛えればあんなもんなんだと思っていたけどどうやら違ったようだ。








 食堂に人があつまえる時間とはずらしているのでここで話すか、それとも空間魔法で隔離した場所で話すか……ここで話して同士を得たほうがいいのかもしれない。そうこう考えているうちにラダが「言いたいことは言え」みたいな目線でこっちを睨んでくるのでここで話すことにする。


「みんな聞いてほしい」

 少し大きめの声で、他に食事をしている人に聞こえるように。

「僕はこの国を変えたい」

 力強く。

「いや、変えねばならない、僕のような、力なきものが力を得た僕がこの国を変えねばならない」

「この国は多種族国家だ。そして侵略国家ではない、隣国とは長きの間睨み合った状態であるとはいえ最後の侵略戦争から百幾年。なのにもかかわらず未だ奴隷制は根付き、ただ単に奴隷であることが多いというだけで獣人やハーフエルフは蔑まれる。表向きは多種族で人種差別のない国だと謳っているのにもかかわらず、蓋を開けてみれば中央の貴族と軍部の思うがままに動き、民を苦しめる。自国の民では飽きたらず平和な国を謳い、難民を受け入れる。そして僕のような物は一緒に教育を受けることすら難しく、職を持つことは難しい。」

 問題点を指摘し、僕は

「多種族で才ありなおかつ差別意識を持たぬものを僕は集めた。変えるのだこの国を、僕達の手で。僕達若いエリート候補の力でこの国を変えていかねばならない。はっきり言おう、保守派は僕からすれば老害にしか見えない。老人に気に入られ、自分を安泰にするものもいるかと思う」

 演説をこの場の全員に向けて

「しかしこのままであればいつの日か君たちは討たれるだろう。ほかならぬ保守にはいらず革新へと動き出すことを選択した若き日の君たちにだ。しかし君たちが討たれる頃にはこの国は手遅れになるだろう。遠い国ではもうすでに戦乱の時代へと入ろうとしている。君たちの、僕らの世代が保守に回ってはこの国は滅び奴隷になるだけなのだ。平和を目指すことはいいが平和などというものを信じてはいけない、僕らこそが変えなければいけないと思う」

 そして高らかに宣言する。


「今食事をしているものは遅くまで訓練をしている向上心のあるもの、そしてこき使われた若い教官殿であると僕は思う。このまま滅びを待って奴隷になるのが君たちの望みならば何も言うことはあるまい、しかし滅びを食い止めようとするならば僕と一緒にこの国を変えようとしてほしい、直接この国を変える"足"はない。でも目標に向かって這うことはできる。僕達と一緒に己を磨き、この国を動かす原動力となってほしい」


僕の演説は終わる。


はじめにラダが、そしてエッツィオが、そして食堂は拍手に包まれた。






「この国を変えるか、大きく出たな小僧」

拍手の中響き渡る冷徹な声。

「しかし時代は待ってくれない、お前は遅い。お前が思っているよりも時代は早く進む。」

コツ、コツ、と食堂に響く靴音、その主は僕の目の前に立ち

「だがその心意気よしだ。お前ら八人、その覚悟があるのなら今すぐ私の部下になれ」


これがタカ派筆頭、齢二十六にして中将まで上り詰めた女帝、ギン・ゲバラと僕らの出会いだった。



そして歴史は動き始めるのであった。

やっとプロローグ終わり。思ったより長かった…

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