新たな生活の幕開け
処女作です。
生暖かい目で見ていただければ嬉しいです。
僕には足がない。
なにも移動手段がないというわけではなく、恐らくあらゆる人々が足と呼ぶ器官がないのである。
僕は魔法が得意だ。
周りは僕のことを天才だとか、足を代償になにかと契約したのではないかとか、そういう風に言う。しかし僕はただ努力しただけなのだ。人より先に魔法を使い、皆が外で駆けずり回る間に魔法を学んだ。それだけなのだ。だから僕は自分はただ人より努力しただけと思っている。
僕は友達が少ない。
周りは僕のことを天才だと思っているせいか、近寄り難く思っているのかもしれない。
僕はさみしがりやだ。
人と触れ合っていないと不安になる。
でも僕はいい友達を持っている。
みんな車椅子を自然と押してくれる、魔法で動く車椅子をみんなで設計したり、義足を作ってくれた。残念ながら、元から足がないので感覚が掴めず無駄になってしまったが、車椅子は本当に重宝してる。魔法で動くようになっても友達は押してくれる。ゴットハルト、ソーニャ、アルノーリト、エッツィオ、シン、ラダ。人種は違えど、みんな優しく、いいやつだ。
僕は人を頼ることを知っている。
できなければ、できるやつに頼めばいい、恥ではないのだ。
僕は諦めることを知っている。
できなければ諦めてほかの方法を探るのだ。
2年次最初の課題を書きながら、僕は涙を流した。
僕は恵まれている。他の障害者よりはるかに恵まれている。
なのに僕はその恵みを受け取るだけだ。
不甲斐ない。
国を変えることもできない。
力が足りない。
そんなことを感じ、事実を噛み締めながらまだ課題が終わってないことに気付く。
僕は無力であると同時に野心家である。
やりたいことがあっても、それをする力もなく、他の道を探すこともできない。諦めることを知っていても、諦めることをすることを体が拒否してしまう。全身が、ないはずの僕の五体が拒否している。それほどまでに固執する野心を持っている。
僕には妹がいる。
妹は頭は悪いが身体能力は化け物レベルだ。おそらく技術なしでも教官と張り合えるだけの戦闘能力はある。妹は紛れもない天才だ。妹は身体能力だけで僕と同じクラスに編入してくる。ただでさえ文武両道でなければ入学試験をパスできない軍事学校に身体能力だけで、しかも飛び級で入るのだ。先生方はその頭の悪さと身体能力に手を焼くことだろう。
アキレウス・ヴート
課題を書き終わり、名前を書いたことを確かめ紙を丸め青い荷鳥に運ばせ、僕は一息ついた。
ドタドタ廊下を走る音が聞こえる。恐らく妹だろう。
バキャと大きな音を扉が吹っ飛んできた。
それを僕は粉砕魔法で粉々にしたところで扉を吹き飛ばした人大きく頷いた。
僕の勘は当たっていた。
「流石兄様!腕は鈍っておらぬご様子!この日をどれだけ待ったことか!早く学校案内をしてくれ兄様!それと兄様の御学友にも挨拶をせねばな!」
「まずは扉を治さなきゃならないよ。それよりいつもの口調でいておくれテティス」
テティスは、妹は心配そうな顔をして
「おにぃが嘗められない?」
「嘗められるほど落ちぶれてはいないよ。」
そういうとテティスは安心したようで笑みをこぼしながら
「じゃあこのままでいく」
といい、僕が扉を治すのを待ちながら腕立て伏せを始めた。
それを見て僕は妹の活躍に胸踊らせ思わず笑みが溢れるのであった。