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虎と馬がTVのトーク番組に出演しました

掲載日:2026/05/26

 生放送のテレビ番組が始まった。


「どうもー! 司会の遠句(とおく)冴琉(さえる)でーっす!」


 三十代の脂ののった司会者・遠句が番組を進行する。


「本日も始まりました、『遠句のトークショー』! 本日のゲストは……このお二人! いや、このお二頭(にとう)です!」


 ゲスト席には虎と馬が座っている。

 比喩などではなく、れっきとした虎と馬である。

 客席から拍手が沸く。


 まず、黄色と黒の縞模様が美しい虎が挨拶する。


「どうも、虎です。密林の王者やらせてもらってます」


 続いて茶色い毛並みが特徴的な馬が挨拶をする。


「馬と申します。普段は草原を駆け回っております」


 二頭の挨拶が終わり、遠句が話題を振る。


「お二頭とも、野生で生きる動物なのですが、まずは野生での失敗談などを聞かせていただければ、と……」


 虎がうなずく。


「私の失敗といえば、やはり初めての狩りですね。鹿を狙ったのですが、あと一歩のところで逃げられてしまって」


 遠句が身を乗り出す。


「なるほど、その時のことが今でも悔いになっていると」


「いえ、そんなことはありませんよ。いい勉強になったなと思っています」


「……そうですか」


 続いて馬が失敗談を語り出す。


「三歳ぐらいの頃ですかね。草原を走っていて、派手に転んでしまったんですね」


 遠句の目が輝く。


「その時、大怪我をして、未だにその痛みを思い出してしまうんですね?」


「幸い怪我はせずに済んで、すぐ起き上がることができました」


「……それはよかったです」


 遠句は話題を切り替える。


「それでは、お二頭が野生で生きる中で怖かったことを教えていただけますでしょうか」


 まずは虎が話し始める。


「森の中を散歩中、川があったんです。で、喉が渇いていたんで、水を飲もうとしたんですよ。そうしたら、中からワニが現れましてね」


「それは怖い!」


「向こうはこっちの顔面に噛みつこうとしてきたんですが、間一髪でかわせましてね」


「それで、その時の恐怖が今もよみがえると」


「いえいえ、そのワニとは今では親友になりましてね。この放送もきっと見てくれていると思いますよ」


「……はぁ」


 続いて馬が怖かったことを話す。


「私は草食動物ですから、草をしょっちゅう食べるんですが」


「ほぉ」


「ある日、食べた草が毒草だったのか、猛烈な腹痛に襲われてしまいましてね。いやー、あれは痛かった」


「その激痛が今でもフラッシュバックしてしまうと」


「実はその草、適量であれば便通をよくする草らしくてですね。今でも便秘の時にはその草にお世話になってますよ。アッハッハ」


 歯を見せて笑う馬に対し、遠句は小さくため息をついた。

 遠句はさらに話題を変える。


「お二頭の中で、今でもこびりついている思い出ってありますか?」


 虎がにこやかに答える。


「こびりついている……というと、一週間ぐらい水浴びできなかった時があって、あの時は匂いがこびりついて大変でしたよ!」


 馬が朗らかに答える。


「大好物の人参を食べていたら、歯と歯の間に人参のカスがこびりついて、なかなか取れないことがありましたね。爪楊枝がある人間さんが羨ましいです」


「馬さんってやっぱり人参好きなんですねえ」


「虎さんこそ、ワイルドなイメージがあるけど綺麗好きなんですね」


「そうなんですよ。食事の時はちゃんと手……じゃなかった前脚を洗いますし」


「私も食事の時にはきちんと『いただきます』しますよ」


「おっ、いいですねぇ~」


 和気あいあいとする二頭。

 だが、そんな二頭に遠句は目を吊り上げ、大声を発する。


「二頭とも!!!」


 突然の怒号に、虎も馬も目を見開いて驚く。


「なんであんたら、こんなに丁寧に前振りしてるのに、“トラウマ”について話してくれないんだよ!!!」


 虎と馬は自分たちの失敗を理解し、しゅんとなった。


「す、すみませんでした」






おわり

お読み下さいましてありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
いくら前振りをトーク中にしたとしても察して貰えなかったなら仕方ないですよね。 生放送で撮り直しが出来ないとはいえ、狙い通りのコメントが欲しいなら事前の打ち合わせが必須と言えそうです。 そして虎だけ続投…
色々あって自分のトラウマを抉られていたところで この作品を読み、笑い飛ばすことができましたw エタメタノール様、ありがとうございます!
ああ! 全然気にしてなかった( ̄∇ ̄) 遠句さんが色々ハズしまくってるなあ、くらいしか思わなかったわ(゜ω゜) そうかそうか、虎馬話を聞き出したかったのか。
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