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お探しの妻はもういません。  作者: ごろごろみかん。
3.ミレイユにしかできないこと

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責任転嫁もいいところですわ

「同時期、エムケル伯爵は魔獣からの脅威を守るための討伐ギルドとの契約を破棄しています。ですがそれで困っている様子は見られない」


エムケル伯爵領は森が深い環境なのも相まって、定期的に魔獣が湧く。その魔獣を討伐するための組合──いわゆる討伐ギルドなるものが存在するのだけど、エムケル伯爵は彼らを解雇してしまったという。

だけど、討伐ギルドの力を得られずとも困っている様子は見られない……。


「あ、怪しい……」


私が王太子殿下がうんうんと頷いた。


「怪しいよねぇ!?」


「だけど決定的な証拠に欠けるの。何かしら証拠が見つかって、尋問にかけられればいいのだけどねぇ……」


学院長が困ったように頬に手を当てた。


「これだけでも頭の痛い問題だと言うのに、おまけに三大神器の紛失だ。責任を取るために父上は退位も考えているらしいけれど、それだけで済む問題ではないのは自明の理。どうにかして、これが表沙汰になる前に蹴りをつけなければならない」


三大神器──エリセリュン建国から存在するというそれが、人為的理由で紛失など、確かに責任問題になってもおかしくない。ことは迅速な解決を求められている。


(証拠……何かしら、証拠が出てくればいいのよね……)


エムケル伯爵と、三大神器の関与を認められるような証拠が。


「三大神器の紛失と、国庫の数字が合わなくなったのは同時期なんだ。だから僕らは、エムケル伯爵が何かしらの形で関わっていると踏んでいる」


「確かに、その可能性が高いと思います」


「そうだよねぇ。何か手がかりを得られたら、とルヴェルトをエムケル伯爵領に送り込んでみたんだけど、進展はなし。成果といえるものといえば、エムケル伯爵の羽振りが良くなったことを裏付ける証言を得られたくらいかなぁ」


「神器との関与を裏付ける証拠は見つかっていない……」


「ものを探す魔道具なんかがあればいいんだけどね。……無理だよね?」


王太子殿下の視線を受けて、すぐに回答したのは学院長だ。王太子殿下と同じ金色の髪を揺らめかせて、彼女は首を横に振った。


「無理です。そもそも、追跡魔法はユニークスキルに当たりますから、魔道具の器に付与することはできません。そして、現在追跡魔法の保有者は確認されておりませんので、ミレイユの力を持ってしても、難しい、という回答になります」


落ち着いた声で諭された王太子殿下は背もたれに頭を預けると「無理かぁ……」と諦め混じりに呟いた。手詰まりなのは間違いない。


(三大神器……【真実を写す鏡】。もし、ほんとうにエムケル伯爵がその紛失に関わっているのだとしたら……その目的は何?)


エウラインは、クラレンスと恋仲だった。

用途を考えても、彼女が欲しているとは思えない。それなら、求めていたのはエムケル伯爵……?


(だけど、エウラインのあのときの反応……)


四審で三大神器を用いての裁判をしても構わないと言った時、彼女の反応は明らかにおかしかった。何かしら、知っているに違いない。


「──……」


その時、私はふと思いついた。

既に、この件を解決に導くための鍵──それは、私の手の中にあるということを。


ピタリと固まった私に、レナルディア卿が尋ねてきた。


「レディ・ミレイユ?」


「ミューテンバルトの家を離れたので、レディ、は不要ですわ」


私はそう答えてから、顔を上げた。


「王太子殿下、学院長。そしてレナルディア卿。私にひとつ、提案がございます」








執務室を出ると、声をかけられた。


「レ──……ミレイユ。送っていきます」


レナルディア卿だ。

振り返って、足を止めた。


「ありがとうございます。ですが、すぐ近くですから。お構いなく」


「いえ。実は一番街で買いたいものがあるんです。せっかくですので、途中までご一緒できないかと」


「そういうことなら、ぜひ」


「一番街に有名な砂糖漬けの店があるらしいんですよ。妹に買ってきて欲しいと言われてしまいまして」


「あら……レナルディア卿は妹さんがいらっしゃるのですね」


社交界で見かけたことがないので、まだ成人前なのだろう。レナルディア卿が頷いて答えた。


「ええ。今年十二になりました」


「三年後の社交界デビューに忙しい時期ですわね」


私にも覚えがある。分刻みのレッスンは、正直ボイコットしたいくらいキツかった。

苦笑しながら言うと、レナルディア卿も困ったように微笑んだ。


「ええ、まあ。ですから妹も母も大忙しです。妹は人前では緊張する質なので、まずそれを克服するところからなのですが──」


そんな会話を続けながら城を出て、王都に入る。一番街と私の自宅の三番街は、途中まで道が一緒だ。

世間話を続けていると、三番街に続くための曲がり角に到着した。


「ここまでで結構ですわ。ご一緒して下さり、ありがとう──」


ございました、という言葉は、第三者の声によって遮られた。


「ミレイユ、どこに行っていた!?」


聞き覚えのありすぎる、もう二度と聞きたくないと思ったひとの声だ。否応なく、嫌な記憶を刺激される。

一気に気分が沈んだ私は、疲労感を覚えながら振り返った。


「……どうしてあなたがここにいるのでしょう?クラレンス」


振り返ると、そこには離縁したはずの夫、クラレンスがいた。

彼も王都に戻ってきていたのか。


彼は私を強く睨みつけていた。


おかしい。

本来、そういう態度に出るべきは私であり、彼ではないはずなのだけど。


「あなたとの話はありません。さようなら」


隣を通り過ぎようとすれば、手首を掴まれた。


「ひとを呼びます。離して」


「うるさい!!お前のせいで……俺は!俺は、何もかもを失った!!」


しかも、責任転嫁ときた。

このひとは、こうなった(離縁の)原因が誰にあるのか、わかっていないのだろうか。



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― 新着の感想 ―
「わが国の宝」に護衛が付いてないなんて有り得ないのに
レナルディア卿と別れの挨拶をしているときにクラレンスが現れ、言いがかりをつけているのにレナルディア卿は何をしているの?
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