第九話 宇宙の誕生
「生命が誕生した」このニュースは直ちに天界に知れ渡ったらしい。
研究の神によるさりげない展示が、天界に激震を走らせた。
すぐに宇宙に適用されるよう、熱望された。
しかし、当時の宇宙はすでに無限大に大きく膨張しており、個別の物質に修正を加えるには、あまりにも広大すぎた。
天界は、今ある宇宙を一度放棄し、新しく宇宙を構築せざるを得なかった。
この宇宙の再構築には、膨大な労力が必要だったようだ。
天界の住人総出で新宇宙構築に取り組んだ。
宇宙を新規構築し、光速度不変の原理とテレポートの機能を追加。
大量の物質を用意し、構築した宇宙に注ぎ込む。
新しい生命への期待に胸を膨らませた神々は、可能な限り多くの物質を詰め込んだ。
そして、新しい宇宙の“時”を動かした。
密集した物質の空間では、それぞれの性質に応じて、すぐに爆発が起こった。
同じ性質どうしくっつく性質を持つ物質は、くっつき星になるのと同時に、異なる性質を持つ星々を遠方へと弾き飛ばした。
違う性質どうしくっつく性質を持つ物質は、すぐに違う性質を持つ物質を見つけ結合し、安定して宇宙を漂いはじめた。
それらの物質に全く反応しない物質は、爆発には無関係というように自然に宇宙に広がっていった。
これが、今からおよそ150億年前に起こったとされる宇宙の誕生。
地球でもこの現象は予想されている。そう、“ビッグバン”だ。
地球の人々は、この現象を予想し、“ビッグバン”と名付けている。
もちろん、宇宙が誕生してすぐに生命が生まれたわけではない。
この宇宙を研究していた神は、数えきれないほど多くの小さい宇宙を長期間、時間を倍速にして観察していて、偶然、生命の兆しを発見したと語っていた。
神々は当初、少し落胆していたが、やがて生命の誕生を静かに待つことにしたようだ。
宇宙誕生から50億年から100億年かけて、最初の生命と思われる存在がこの宇宙で発見された。
この情報はすぐに天界へ届けられ、最初の生命には盛大な祝福が贈られた。
私たちは、皆、黙ってパンフレットを読んでいた。
宇宙の誕生、そして生命の誕生――スケールがあまりに大きすぎて、私にはまだうまく想像ができない。
ただ、それがとてつもなく偉大な出来事であることだけは、はっきりとわかる。
生命の発見を聞いた天界の歓喜を思い浮かべるだけで、胸が熱くなる。
「初めて生まれた生命。偶然作られた宇宙の法則によって、自然に生まれた生命。
もし、私がそれを観察していたら…。」
こうして振り返ってみると、宇宙の法則コンテストの最優秀賞は、どれも今の宇宙に適用されている。
最優秀賞は、機能性、芸術性だけでなく、実用性も加味されて選ばれるようだ。
最優秀賞が選ばれない展示も少なくないという。
そもそも展示が許された時点で、多くの宇宙の中でも選ばれし成功例なのだ。
素晴らしい宇宙であることは、間違いない。
コンテストへの期待が、大きく膨らんでいく。
私たちは、圧倒的なスケールに言葉少なく、コンテスト会場へと戻った。
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