第六話 宇宙の始まり
今日は宇宙の法則コンテストの前夜祭。
私たちは、さっそくセレスティア・プラザに集まっていた。
ルミエルは私の服の袖をつかみ、きょろきょろと辺りを見回している。
私はそっと手をつなぐ。
ルミエルは、興味なさそうな感じだったからちょっと心配だったけど、杞憂だったみたい。
隠しきれない好奇心が、行動の隅々から伝わってくる。
私も、心置きなく楽しむことにした。
中央の巨大な球形モニターには、司会者の立体映像が投影されている。
司会者は、コンテストの展示者に順番にインタビューしているようだった。
インタビューのやり取りに、観客の笑いや拍手が時々起こる。
天界では有名な神なのだろうと思うけれど、私は天界の情勢に疎く、その神の事は知らなかった。
今日は、以前のお知らせの通り、過去のコンテストを振り返る宇宙が展示されている。
私たちはパンフレットを受け取り、さっそく一つ目の宇宙へ入った。
一つ目の宇宙では、物質が定義され、配置された。
①同じ性質どうし集まり、違う性質をはじく物質。
②違う性質どうし集まり、同じ性質どうしはじく物質。
③①②の物質に全く反応しない物質。
④物質とは全く関係のない流れ。
研究の神々は、この宇宙を“原始の宇宙”と呼んでいるらしい。
宇宙の原型とも言える宇宙のようだ。
パンフレットには、この宇宙が出来上がるまでの試みが記されていた。
神々はまず、何もない宇宙に、物質を配置した。
しかし、物質を配置するだけでは、動きが生まれなかった。
そこで、時間の流れを設けた。物質とは無関係に、時間が流れ始めた。
それによって、物質は神の手から力を受け、なめらかに宇宙を動くようになった。
次に、神は物質に定義を授けた。
“同じ性質どうし集まり、違う性質をはじく”という性質だ。
これは非常に画期的な発想だった。
神の手の力を受けることなく、物体が幾何学模様を描いて動き続けた。
まだ物足りなさを感じた神は、さらに別の定義の物質を加えた。
“違う性質どうし集まり、同じ性質どうしはじく”物質だ。
その結果、物質どうしの衝突が増え、宇宙はさらに複雑な図形を描きながら動き続けた。
最後に、これらの物質に全く反応しない物質が追加された。
それまでの物質とは全く関係のない別の世界が、同一宇宙に構成され始めた。
この宇宙は、退屈していた神々の眼の色を変えた。
幾何学模様を描くだけだった宇宙が、予測不能な挙動を見せる宇宙へと変貌したのだ。
この宇宙はコンテストの最優秀賞となり、多少物質の力のバランスを調整したうえで、早速、宇宙として採用された。
メモリナとルミエルも興味津々に宇宙を見守っている。
「今では当たり前の、何気ない宇宙の法則でも、当時からしたらとても素晴らしい発明だったのね…。」
「この宇宙って、ほとんど今の宇宙と変わらないですよね…。」
私のつぶやきにミカエルが静かに答えた。
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