第四十話 ヴァルグレアとエクスペリオ
ルミエルの樹のすぐそばで、わけもわからず敗北したヴァルグレアは、いまだに動けずにいた。
そんなヴァルグレアに、エクスペリオは話しかけた。
「ほっほっほっ。これは住みやすい星ができたじゃないか。
ヴァルグレアよ。我々もここに住ませてもらおうではないか。
わしは、おぬしのこと、嫌いじゃないぞ。ずっと、心配しておったのじゃ。」
ヴァルグレアは、まだ放心状態のようだった。
再びエクスペリオさんは話しかける。
「追求する者は、えてして世に理解されぬものじゃ…。
わしは、おぬしに再び会えて、ほっとしとるよ。」
「我は何に負けたのか?
相手の知略や策略、協力などをも圧倒する強さを持っていたはずだった…。」
「そうじゃな。おそらく、“負けられない”という気迫に負けたのじゃ。
当人もわかっておらんだろう。
ただ、がむしゃらにひたすらとそれっぽい言葉を口走っていたにすぎん。
ただ、その気迫がお主の心を動かした。だいぶ動揺させられたじゃろう。
対等に戦っていても、我々には勝ち目はなかった。他のどんな策略でも、勝てなかったであろう。
そんななか、我々の唯一の勝ち筋を彼女は、何とかたぐり寄せたのだ。」
「我は認めん、負けたわけではない!」
「ほっほっほっ。しかし、負けは負けじゃ。
150億年の蓄積をひっくり返したのじゃ。
戦いは終わるまで何が起こるかわからん。
あえていえば、ルールを追加して見せたのが悪かったのかもしれんな。
どんなルールを作るか、我々は日々研究しておる。それは、我々の土俵じゃて。
まさか、なぞなぞで勝ち負けが決まるとは、誰も思っとらんかった。
だからこそ、様々な活動が求められるのかもしれんの。
強さとは、力だけではないのかもしれん…。頭脳も経験も、力なのかもしれんな。
多用な活動とやらもきっと面白いぞ。
少しここで、“強さとは何か”、一緒に考えようではないか…。ほっほっほっ。」
ヴァルグレアはまだ、150億年も蓄え続けてなぜ負けたのか――考えているようだ。
この様子に、他の神々は、魔王たちを見守ることにした。
もう圧倒的な力を得ることは考えられない。
天界と魔界はこれからも友好的に過ごせそうだった。
神々は、この場をエクスペリオさんに任せて天界に戻っていった。
「さて、あの娘。たしかホープという名だったかの。
この戦いで、必死に後方を守っていたように思える…。さては…。
やはり星があったか。なるほどのう。
ふふ。面白い星ではないか。これだから長生きはやめられん。
ヴァルグレアよ。一緒に眺めてみようではないか。
もしかしたら、なぜ負けたか、それがわかるかもしれんぞ。」
魔王と神と精霊と機械の暮らす星。
その星の魔王は、時々、天界から来た神に戦いの指導をしている。
機械は覚えているライトノベルを精霊に聞かせている。
そして、みんなで地球の様子を見ては、騒いでいる。
その様子を神は、いつもにこやかに見守っている。
そんな風変わりな星が、この宇宙にはあるらしい。
その星はいつも、穏やかで、さわやかな時間が流れている。
第七章 虚無空間 完
よかったら、コメント、感想、ブックマーク、評価をぜひお願いします。




