第三十四話 苦戦
魔王に対し、戦闘部隊が一斉に襲い掛かる。
魔王は、仕掛けてきた順に前後左右対応し、弾き飛ばす。
同時の左右からの攻撃もはじき返し、次の前後の攻撃にも対応する。
“大きさこそ力”と信じていた神々には、到底納得できない光景が広がっていた。
子供一人に、大人数の大人の戦い…。周囲から見れば、そう映る。
ただ、子供側が華麗に大人たちを次々となぎ倒していくのだ。
神々の戦闘部隊は、宇宙最強のはずだった。
宇宙最強がこれだけ集まっている。互角に戦えるはずだった。
しかし、見た目が子供の相手に、ばたばたと負傷していった。
次の瞬間、神々10柱が同時に動いた。
倒れた神々を乗り越え、同時に槍で攻撃を仕掛ける。
槍先のそろった、美しい連携攻撃だった。
魔王は手早く防御障壁を用意し、それぞれに反応し始めた。
「すごい…、この連携なら…」
どの神々もそう思ったに違いない。
しかし、この連携攻撃すら、神々の囮だった。
頭上からの視覚外の槍攻撃。
前後左右10方向からの攻撃に加え、魔王の頭上から、槍を手にした神が一直線に落ちてきている。
この空間に入った時から皆と離れ、誰にも気づかれないよう、魔王の頭上に待機していた神が、絶好の好機と攻撃を仕掛けたのだ。
完全に意識の外からの攻撃のはずだった。
神々の息を合わせた連携攻撃のはずだった。
誰もが「これならうまくいく」と、息をのんだ。
「本命の攻撃はお前だな。」
魔王はちらりと頭上に目をやり、口元に笑みを浮かべる。
腕を上に伸ばし、頭上の槍をそっと掴む。
「ふっ。神々の考えそうな事だ。
10ではなく、あるいは12なら、影を隠し、傷ぐらいつけられたのかもな。」
にやりと笑うと、そのまま槍を神の体ごと周囲に振り回した。
魔王が振り回す動作は、とてもゆっくりに見えた…。とても華麗に見えた。
周囲の時間が止まったかのように見えていた。
魔王こそ本気ではなかった。
周囲の神々がゆっくりに見えるほど、止まって見えるほど、魔王が高速で動いたのだ…。
高速なだけではない。
悠久の鍛錬を重ねた、最短・最速の攻撃だった。
そこには、強大な魔力の影は無かった。
強さを目指した、日々の繰り返しによる鍛錬の結果だった。
神々には想定外だった。
まさか全員が防がれた上に、反撃されるとは思っていなかった。
周囲から攻撃を仕掛けた神々は、突然の払い攻撃に全員なぎ倒された。
油断などしているはずはなかった。最善の攻撃のはずだった。
前後左右の攻撃を意識させ、同時に10方向から攻撃し、平面に注意を向けさせ、それらの攻撃をも囮にして、頭上から攻撃したのだ。
それでも、全く歯が立たない…。
魔王の速度に全く追いついていない…。まるで赤子と大人…。
指揮官の表情が曇る。歪んでいく。
もう、なすすべはなかった…。もう、戦略などなかった…。
やみくもに攻撃を仕掛けるしかなかった。
そして、みんな一斉に切りかかり、順に返り討ちにされた。
いたずらに、神々の被害が増えていく。
しかし、他に策略などあるはずもなかった。
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