第三十話 神々の善戦
魔王の強力な攻撃が繰り出される中、神々の反撃が始まる。
戦闘部隊の司令官が、攻撃命令を発した。
「近くの物質を手あたり次第に、投げつけろ。
なければ神の力で物質を生み出し、手あたり次第に投げつけろ!
もう一度ブラックホールに戻してしまえ!」
“物質を投げろ”――それは、きわめて単純な命令だった。
ブラックホールに戻せ。目的も明確だった。
だからこそ、混沌とした戦闘の中では、効果的に働いた。
指示が聞こえた者は、手あたり次第に物質を投げ始めた。
指示が聞こえなかった者も、皆をまねして物質を投げ始めた。
戦闘部隊でもない普通の神々にも、攻撃の意図は簡単に伝わっていった。
神々は一斉に攻撃を繰り出した。
神の投げた物質は、大して威力はなさそうに見えた。
しかし、魔王の強い引力によって加速し、魔王に向かって行く。
ブラックホールの解体によって出てきた物体が、まだ辺りを漂っている。
漂う物質を制止し、初速を与え、魔王に投げつけるだけだ。難しくはなかった。
どの神にも実践できる、簡単な行動だった。
そして投げつけられた物質が、自身の引力によって威力を増し、魔王にぶつかるのだ。
魔王の攻撃範囲外にいる神々が、一斉に攻撃を繰り出す。
攻撃範囲内にいる神々は、防衛、または回避行動をとる。
多くは語られない司令官の指示ではあったが、一体感が生まれていた。
単純でわかりやすい命令が、間違いなくこの一体感を生み出していた。
神々も少し、落ち着きを取り戻していた。
「ほっほっほっ。創造の神に、破壊の魔王…。
魔王に対抗するには、神の力が一番。
宇宙の物質は神の力で作られておる。魔王には特別な効果があるようじゃの。
知ってか知らずか、なかなか面白い攻撃を仕掛けるではないか。」
神々の攻撃開始によって、一瞬、神々が善戦しているかのように見えた。
しかし、エクスペリオさんは、それでもまだ、苦戦を感じ取っているようだった。
「じゃが、星をも超える大きさ、強さ…。まだまだ、大変そうじゃのう…。
どうしたものか。ほっほっほっ。」
圧倒的なスケールの前では、神々は、野生の動物にたかる昆虫だった。
そう戦わざるを得なかった。
宇宙では、全知全能を誇っていた神は、虫けらのように扱われていた。
攻撃力、攻撃範囲が桁違いだった。
徐々に神々は、魔王の攻撃に撃ち落とされていった。
戦闘部隊に所属していない神々は、一旦離れて防衛行動をとるぐらいしかできなかった。
私たちも戦闘部隊ではない。
一旦距離を取って防衛行動をとることにした。
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