第二十九話 魔王の攻撃
先に攻撃を仕掛けたのは、神々だった。
といっても、恐怖に駆られ、命令を待てずに放たれた、焦りの魔法だった。
魔王は、そんな弱弱しい攻撃を鼻で笑い、手で振り払う。
そして、そんな些細な動きからも、恐ろしい衝撃波が発生し神々を襲い、攻撃を仕掛けた神々は次々と撃ち落とされていった。
魔王の静かな語りが、あたりに響き渡る。
「そろそろ、こちらも攻撃させてもらうぞ。
力はみなぎっているのでな…。」
手をゆっくり頭上にかかげると、手に魔力が白い光となって集まっていく。
それがこぶし程の大きさになると、それを無造作に放り投げた。
「終末に伴う破滅――アポカリプス・ドゥーム!」
魔王の詠唱が、神々の頭に響き渡る。
白い光の球が宇宙空間を削り取っていく。
創造された秩序ある宇宙空間が、白い光の球によって破壊されていく。
こぶし程の大きさと言えど、魔王の体は星を超えている。
その体のこぶし程の大きさである白い光の球は、小さい星程度の大きさはある。
いかにゆっくりと言えど、神々はぎりぎりかわすことで精いっぱいだった。
「いかん。危険じゃ。もっと遠くに離れろ!」
エクスペリオさんが叫んだ。
しかし、聞こえた時には、すでに遅かった。
「無秩序による崩壊――エントロピー・ルイン!」
魔王が再び魔法を唱えた。
白い光の球によって破壊されたエネルギーが無秩序に爆散していく。
まるで、星ほどもある巨大な爆弾だ。
強大なエネルギー弾となってとびちり、周囲の神々を襲う。
かろうじて避けたと思っていた神々が、爆発に巻き込まれ吹き飛ばされている。
時が止まったかのように見えたが、それは一瞬の出来事だった。
もし、少し離れた安全な場所から、この光景を見ることができたのなら…、
おそらく、とてもきれいな花火に見えたに違いない…。こぼれる涙と引き換えに…。
「いかん…。遅かったか…。
昔から宇宙を破壊しエネルギーに変える恐ろしい技じゃったが…。強さの次元が違うわい…。」
周囲を崩壊させるほどの破壊力だった。
多くの神々はその爆発を見て、恐怖を感じていた。
私は、ただ少しでも被害を抑えられれば…、と必死に防御魔法を構築している。
そして、その私の様子を見て、ミカエルも魔法でサポートをしてくれている。
ルミエルも精霊の力で、私の魔法力を強化してくれている。
メモリナも、防御魔法をすり抜けた小さい隕石を必死に撃ち落としてくれている。
ありがとう…。
私は仲間たちに感謝した。
そんな中、神々による反撃が静かに始まろうとしていた。
ブラックホールの解体は、もともと、とても危険な作業。
天界の中でも実践的な戦闘部隊は皆、ここに集結している。
その戦闘部隊の指揮官は、冷静にこの戦況を分析し、適切な攻撃を組み立て始めた。
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