第二十八話 エクスペリオと魔王
ブラックホールが解体されてもなお、強い引力を持つ魔王。
その強い引力にも負けずあふれ出す魔力。
星の大きさをはるかに超える肉体。
その体を支える太く鍛えられた足。
すべてを破壊せんとする腕。
頭には強い威厳を放つ角――。
その姿は、ただ巨大なだけでなく、鍛え抜かれた力の象徴だった。
その様子に、周囲の神々は戦々恐々とし始めた。
「その神の力、懐かしい。
エクスペリオよ。ずいぶん老いぼれたではないか…。」
「ほっほっほっ。やはり生きておったか。
まさかそんなところに隠れておるとは…。
長生きしてみるもんじゃ…。」
突然現れた魔王の会話に、周囲の神々はざわついていた。
圧倒的な魔力を持つ魔王と、普段の言動は戯言と思われていたよぼよぼの神様が、対等に、そしてどこか懐かしそうに会話しているのだ。
神々が驚くのも無理はなかった。
「エクスペリオさんって……冗談だと笑っていたけれど……もしかして、本当の事だったのか?」
「あの爺さん、本当に元祖研究を司る神だったのか…?」
「俺たち、とんでもない人と、会話していたのか…?」
周囲のざわつきとは無関係に、魔王とエクスペリオさんの会話は続いていた。
「貴様に敗れた記憶、忘れはせんぞ。」
「わしも覚えておる。
他の悪魔をすべて倒し、お主のみとなり、それでもなお戦おうとする姿……。
力のある限り戦おうとする姿……。そう簡単に忘れられるものではない。
あの時は我々が、かろうじて勝たせてもらったが……強くなったかの?
そんなにも大きくなりおって……。思う通りの強さを手に入れられたかの?」
「もう何物にも負けはしない。我は最強の強さを手に入れた。
もはや老いぼれた貴様をやってもつまらん。先に他の神々を殲滅してくれる……。」
「ほっほっほっ。想像以上の強さを手に入れておるの。困ったものじゃわい。
ただ、我々とて、ただ安定の生活を送っていたわけではないぞ…。あなどるなかれ…。」
エクスペリオさんはどこか楽しそうに会話している様子だ。
突然、静かな会話は終わりを告げた。
魔王は腕を広げ、足を広げ、咆哮を轟かす。
「我こそが、魔王、ヴァルグレアなり!!」
ただの咆哮にすぎなかった。
ただ、それだけで強い衝撃波となって神々を襲う。
多くの神々は、防衛姿勢を取るだけで精いっぱいだった。
ヴァルグレアは、準備運動とばかりに腕を振る。
軽く、腕を振ったに過ぎない。誰にもあたることは無かったが、たったそれだけでも周囲に衝撃波が発生し、多くの神々をおびえさせていた。
私は、ミカエルやメモリナ、ルミエルと一緒に、この様子を見守ることしかできなかった。
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