第二十四話 神々の準備
今日は、ブラックホール解体当日。
日ごろ、こういうイベントごとが好きでよく参加するホープ様ではあるが、今日はいつも以上に気合が入っているようだった。
なんでだろうって思って、遠くの星を見てみると、思った通り地球がある。
こっそり、地球を守るように配置してほしいってお願いしていたみたい。
小説も読み続けたいし、私も頑張らなきゃ…。
ホープ様の気合が、私にも伝わってくる。
ブラックホールは、どんどん物質を集めてより強い力を持つという性質上、どこにでも自然と発生する。
今回のブラックホールは、天界から程よく遠く、そして古くから存在していたものらしい。
古くからあることは知られてはいたものの、距離が離れていたため、後回しにされていたってことかな。
ブラックホールは長く存在するほど強い力を持つようになるのだから、今回はいつもより少し強い力を持ったブラックホールなのかもしれない。
研究の神々が、宇宙とブラックホールを区切るように結界を張っていく。
ブラックホールの強すぎる引力から、ある程度距離を取る必要がある。
研究の神々総出で対応していても、大きすぎる結界のため、神々それぞれの距離は相当離れている。
それでも、研究の神々は、理路整然と、淡々と作業を進めていた。
その後ろで、他の神々はできるだけ等間隔になるように、グループを作って配置されている。
ホープ様、メモリナ、ルミエル、私は皆、同じグループとなり、同じ場所を守っている。
天界方向は、万が一を許さないように、少し手厚く神々が配置されているようだった。
研究の神々によって着々と準備が進んでいく。
その様子を見て、他の神々も安心しているようだった。
私たちの近くにいる神々にも、心にゆとりができたみたいで、会話をし始めた。
「今回も特に大きな問題はなさそうだな。研究の神々はしっかりしているね。」
「ああ、そうだな。それより、お前は、報酬は何に使うんだ?」
「自分は、いつもこのお金は記念に持っとくようにしている。記念になるからな。」
報酬の“ブラック”という通貨は、ブラックホール解体でしか流通されない、とても希少な通貨だ。
本来、使えば使うほど報酬が上がっていく仕組みの天界において、唯一、全く報酬の上がらない仕事。
1日仕事して1コイン――この報酬体系は、現状、ブラックホール解体作業のみとなっている。
そのかわり、“100ブラック”コインは、高額で通貨コレクターに買われている。
解体するブラックホールごとに、通貨の絵柄が異なるのだ。
当然、コレクターは全種集めようとするし、労働の記念として得た特別なコインを売る神々は少ない。
少しずつ作業者が増え、流通量が増えているにもかかわらず、通貨の価格は年々高騰している。
だから、本当にお金に困った神々は、“100ブラック”コインをそのまま使うのではなく、一旦売ってから使っている。
結界を張る準備が整ったようだ。
研究の神々は、隣同士でダブルチェックしながら、声出し確認を行っている。
確認は終わったようだ。神聖な呪文が唱えられ始める。
他の神々も緊張した面持ちで、その様子を見守っている。
突然、サッカーボールのように幾何学的な薄い紫色の結界が、ブラックホールを覆う。
結界の作業は、問題なく完了したようだった。
とても神秘的な光景に、歓喜の声が上がる。
何度もこの作業に参加する神々の中には、この光景を見たくて仕事をする者もいるようだ。
「すごーい。」
私たちも思わずつぶやいていた。
皆で同じ仕事に向かう一体感、そして高揚感に、私たちは包まれていた。
研究の神々は、次の宇宙の法則の書き換え作業に移行していく。
現在の宇宙法則を念入りに、想定通りであるかの確認作業を始めていた。
ふと見ると、研究の神々の中に、コンテストで見た顔がある。
前夜祭でインタビューを受けていた、研究の神・エクスペリオさんだ。
高齢で作業自体には参加していないようだったが、作業の様子を静かに見守っていた。
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