第二十二話 今の宇宙の大きな問題点
朝、いつも通り、ミカエルのコーヒーを飲み、星の観察に取り掛かる。
「いつもありがと!なんか、だんだんおいしくなっている気がする。」
「おいしそうに飲んでくれるだけで、作ってよかったと思います!」
しばらく、星を観察していると、天界新聞が届く。
私は、いつも通り、一旦星の観察を中止し、新聞を読み始めた。
今の宇宙の問題点――そういえば、もう一つあった。
今日の新聞は、それがテーマになっていた。
私は、記事を読み始める。
「ブラックホール」
この宇宙には、同じ性質どうし集まる物質がある。
この物質は、少しずつではほとんど力を持たない。
しかし、その性質によって多くが集まると、強い力を持つようになる。
強い力を持てば、さらに強く同じ性質を持つ物質を引き寄せ、さらに強くなる。
繰り返し、集まり、力を増し、さらに集まるうちに、際限なく強い力を得るようになる。
異次元の引力を持ったそれは、この宇宙で最速の光でさえ、逃がさなくなる。
光を逃がさないそれは、周囲から視認されることがない。
他の物質と違い、暗く、そして黒く見えるため、「ブラックホール」と呼ばれるようになった。
そうだった…。重力は、自然と物質を集め、ブラックホールを生み出してしまうんだった…。
違う性質どうし集まる性質の物質は、一つ一つの力はそれなりに強いが、どんなに集まっても性質を打ち消し合い、大きな力にはなりにくい。
少なくとも、その物質で大きな力を生むには、さらに極端に強いエネルギーが必要になる。
しかし、同じ性質どうしが集まる力は、自身の力だけで際限なく強くなってしまう。
ブラックホールができるのを恐れて、同じ性質どうし集まる力は、意図的に弱く設定されているのではないか――
そう考えてしまうほど、ブラックホールは“宇宙のバグ”とも言える存在だった。
宇宙最速の光ですら脱出できない。
一度ブラックホールに捕まってしまえば、逃げ出すことはできない。
そして、その中心部では、通常の物理法則――宇宙の法則すら成り立っていないのではないかと、天界でも恐れられている。
星々が離れ離れになってしまうほど、同じ性質どうし集まる力は弱く設定されている。
それでも、ブラックホールは自然に発生する。
それほど、この力は強力なのだ。
「そろそろ、ブラックホールの解体が近いのかしら…。」
そんな宇宙の法則に支えられて、ブラックホールは自然に発生し、放っておけばさらに強くなる。
そのため、神々は時折、ブラックホールの解体を行うことにしている。
それは、宇宙の物質がブラックホールに偏るのを防ぎ、捕まってしまう危険性を減らすためでもある。
そして、ブラックホールの解体には、多くの労力が必要になる。
記事の下には、案の定、ブラックホール解体の仕事の広告が、さりげなく掲載されていた。
「みんなー。ブラックホールの解体の仕事だってー。やってみようと思うけど、どう思う?」
「私は、お手伝いしますよ。」
「ホープとミカエルがやるのなら、私もやる。」
「甘いものくれるのなら、私だってやる。」
「ありがとう!みんななら、そう言うと思ってた!」
みんな、なんだかんだいって、私のことを手伝ってくれる。
否定されたことなんて、一度もない。
明日の新聞で、ブラックホール解体の仕事が記事として特集される、と広告に記載されていた。
私は、念のため、明日の記事を読んでから、参加を決めようと思った。
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