第二十話 睡眠導入剤
自室に戻って、コーヒーを飲む。
私は、家に帰ってからも、宇宙の法則コンテストのことを考えていた。
たった一つ宇宙の法則を追加するだけで、全く違う世界が生まれる。
きっと、今の宇宙は絶妙な均衡のもとに成り立っていて、少し法則を変えただけでも崩れてしまう気がする。
今の宇宙を創った神様に、私は感謝した。
「私も少し、考えてみようかしら…。」
椅子に座って、何か面白くて新しい法則はないか考えてみる。
もし、重力がもう少し強かったら…。
もし、物質がもっと少なかったら…。
…。
うーん…。どうにも、面白いアイデアは浮かばない…。
研究する神々は、どうやって宇宙を創っているのだろう…。
どんな考え方をしているのだろう…。
質量0の宇宙は、実験的だった。
“無いもの”を宇宙に追加したらどうなるか――そう考えていた。
…今の宇宙に無いものか…。
“無いもの”を考えるって、意外と難しい…。
今の宇宙に無いもの、今の宇宙に無いもの…。
思いつくものは、すでにあるものばかり…。
「なかなか思いつかないものね…。」
私はまた、新しく初めから考えることにした。
次に考えたのは、経済の宇宙だった。
経済の宇宙は、天界をよりよくしようとして作られていた。
それはつまり、今の天界に問題点があると考えたから、新しい実験的な宇宙を創って試したという事。
…今の宇宙に感じる問題点か…。
もしかしたら、問題点を解消したくて、実験的な宇宙を考えたのかもしれない。
そう考えると、今回のコンテストの宇宙の展示も、いくつか思い当たる。
核分裂の展示は、もともと新しい生命を模索する目的で作られていた。
つまり、今の宇宙は水と酸素を利用した生命体に偏重していると考えられているということ。
今の宇宙では、生命の誕生は、水のある場所、ある程度の暖かさのある場所に限られている。
生命体として、水、酸素が有利すぎるということだ。
そのため、暖かさのない恒星から離れた星では、生命体が生まれないという結果につながっている。
この例は、問題点というより、“偏り”と言えるかもしれない。
「芸術の展示は、もしかして、今の宇宙は科学的・機能的に作られすぎているというメッセージ?
それに、熱エネルギーを電気に変換する宇宙も、エネルギーが熱になるのを問題意識があるってこと…?」
考えれば考えるほど、わからなくなる。
私はベッドに横になり、ぼんやりと考え続けた。
次第に頭が疲れていき、心に安らぎが広がっていく。
私は、考えているのか、まどろんでいるのか――
やがて、眠りにつくことになる…。
安らかな、心地のいい眠りに…。
おやすみなさい…。
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