第十九話 天界の神々、実はちょっと本気です
私たちは、とても満足して、静かにコンテスト会場へ戻った。
特に、メモリナとルミエルが、とてもすっきりした表情をしているように見える。
メモリナが一時、叫び始めた時は少し心配したが、どうやら、あまりの快適さに思わず声が出てしまったようだ。
少し気持ちはわかる。それくらい面白い宇宙だった。
ミカエルももちろん、とても満足そうな顔をしている。
ルミエルは宇宙の中心に一時的でもなれたわけだし、気持ちよかったんだろうな…。
私は、ルミエルに聞いてみた。
「芸術の宇宙…。どうだった?とても楽しそうだったけど…?」
「ええ。日光浴も心地いいんだけれど、それの何倍も暖かで、でも熱くなく、居心地がよかった。
でも、周りの生命たちに少し悪いことしちゃったかな?」
「周りの生命たちも含めて、とてもきれいな絵になってたよ。」
ルミエルは、それはよかったと、笑っていた。
司会者が、今回のコンテストの結果を発表している。
まだ展示自体は続くが、審査員たちの評価は終わったようだ。
最優秀賞はなし。
どれも魅力的な宇宙ではあったが、影響を鑑みて採用には至らなかった。
「過剰な熱エネルギーは、即座に電気エネルギーへと変換される。」など、興味深い法則もあったが、やはり機械への影響を考えると、見送らざるを得なかったようだ。
審査員たちは、面白さだけでなく、現実への全体的な影響も考慮したうえで、しっかり評価している。
展示していた研究の神々も、もともと承知していたのか、満足そうな表情をしていた。
宇宙として採用されることは、とても栄誉なことではあるが、展示できただけでも十分に喜ばしいことなのだ。
隣でミカエルが、「経済政策だけは採用されて欲しかったな…。」とつぶやいている。
「労働者が増えて、欲しいものが増えたら、その分、給与が増えるってやつだったっけ?」
「そうそう、それです。」
「何が、悪いんだろうね…?私、経済疎いからわからないや…。」
「多分、物価があがるインフレを懸念したんでしょうね…。
それに、もともと給与が上がる仕組み自体はあることも、採用不要と判断された理由かもしれません…?」
ミカエルが、小難しい事を言っている…。そういうものなのかな?
私は、研究の手間や労力を思い返して、ふとつぶやいた。
「私、天界の神々って、少しだらけちゃうのかなって、時間が無限にあると怠けちゃうのかなって思っていたけど…。
そんなことなかったわね…。途方もない労力と情熱の結果、今の宇宙があるのかなって思うと…。
すこし見直しちゃった…。」
「はい…。天界の神々、実はちょっと本気です…。」
「ふふっ。なんか不思議な表現ね。ミカエルの言葉って面白いのね。」
私たちは、宇宙の法則コンテストの余韻を楽しみながら笑いあっていた。
第三章 天界の神々、実はちょっと本気です 完
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