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天界の神々、実はちょっと本気です  作者: よむよみ
第三章

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第十四話 質量0の物質

次の宇宙は、極めて実験的な目的で構築されたようだった。

どの宇宙も実験には違いないが、とりわけこの宇宙は、実験的要素が強かった。

研究の神様は、「質量0の物質があったらどうなるか」を試すため、複製した小型宇宙にばらまいた。


質量0の物質は、誰にも引っ張られることも、はじかれることもなく、ほぼ均等に宇宙に漂っていた。

星の生成時、質量のある物質が集まる中、質量0の物質も星の成分として微量ながら残存した。

ただ、振動などにより軽い物質が浮き上がることがある。

当然、質量0の物質も浮き上がり、気体に接触するとその軽さゆえに空気中へと消えていった。

空気中に一旦出てしまうと、質量0の物質は気体より軽いため、宇宙へと弾き飛ばされていく。


一旦は星の成分として残ったことに、研究の神様は少し喜んだようだった。

人類に発見できるかどうか、どう活用するかを確認するため、その星に人類を住まわせてみた。


質量0で気体より軽い物質は、非常に微量だったこともあり、長い間発見されなかった。

この物質が予言されたのは、原子レベルの質量を測定できるようになってからだった。


地中深くから掘り出した物質を気体に触れさせておくと、わずかに重くなっていくことが観測された。

この事実は当初、掘り出した物質が酸化されるなど空気と結びついて重くなったと解釈された。

しかし、想定以上に重くなる現象に、当時の研究者たちは測定器の故障を疑った。


ただ、一人の研究者が「質量0の物質が存在し、それが空気中に逃げたことで浮力を失ったのではないか」という説を唱え始めた。

多くの研究者には見向きもされなかったが、面白いと感じる者も少なくはなかった。


その後、研究者たちはすべての計器を、質量0の物質が存在する可能性を前提に作り直した。

古典的な実験器具も、遠心分離機も、気体に触れる可能性があるものはすべて、気体と接触しないように、あるいは接触した気体を収集できるように設計された。

こうして、ようやく質量0の物質は人類に発見されることとなった。

ただちに、それなりの量が集められ、性質の研究が始まった。


この物質は、空気より軽いため、個体でありながら気体のように浮き上がる。

物質どうし結合するための質量や電子を持たず、非常に崩れやすく脆弱だった。

そして、わずかな重力誘導が検知された。電磁誘導のように、極性が見られたのである。


電磁誘導が磁場を無効化できるように、重力場も無効化できるかもしれない——。

当初、多くの研究者が期待を寄せ、極性に関する研究が進められた。


しかし、重力誘導は重力場を無効化するものではなく、同質の物質を引き寄せる性質を持ち、結果的に重力場を強化する方向に働いた。

それに、力は非常に弱かった。

地球上で重力が最も強い力に見えるのは、地球ほどの量があるからであって、地球の重力ほどの力を生み出すには、地球並みの量を集めなければならなかった。

実用化するには、重力場の強化や反転といった追加の技術が必要だった。


研究者たちは、この物質の有効利用を模索する。

極性があるということは、負の質量があるということ…。

次は、この物質を分解しようと試み始めた。


ここで、研究の神様はこの実験——質量0の物質は、あまり効果的ではないと判断し、研究を打ち切ったようだ。

せっかく作っても、結局分解することでしか有効利用できないのでは、作った意味がない――そう考えたらしい。


「なかなか、面白い実験だと思ったけど、そう簡単には面白い事は起きないのね…。」

「そうですね。ただ、負の質量の存在が示されたこと自体、人類には大きな進歩なのですけどね…。」

「確かにそうね!」

私とミカエルは、頷きあった。


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