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天界の神々、実はちょっと本気です  作者: よむよみ
第二章

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第十話 研究の神様

私たちは、言葉にしがたい感情を抱えながら、静かにコンテスト会場へ戻った。

インタビューはまだ続いているようだ。

司会者の声が、セレスティア・プラザに響き渡っている。


「今日の最後のインタビューはこの方。研究の神、エクスペリオさんです。

今の天界の最長老にして、初代研究を司る神、つまり、魔王を打ち破った5柱のうちの1柱とされています。」

よぼよぼのおじいちゃんが、付き添いに連れられてステージに登場する。会場には大歓声が巻き起こる。

皆この神様を知っているようだったが、私は正直、名前すら知らなかった。


神様は不老不死ではあるが、自己認識によって見た目が変わることがある。

それは、長く生きることで意識とともに外見も老いていくということ。

そして、長く生きた神様は使命を果たしたと感じると、自らの存在を無意識に消してしまう。

魔王を打ち破ったのは、150億年前とされている。150億年という時間は、神様の寿命・意思・天命・使命を遥かに凌駕する。

150億年生きているとはにわかには信じがたいが、この神様の年老いた姿を見ると、少しだけ信じてしまいそうになる。

会場では、長寿への敬意が感じられる一方で、時折お年寄りの戯言として笑いに変える雰囲気がある。

神々は、最長老という肩書には敬意を払っているが、それ以外の話には懐疑的なのかもしれない。


お年寄りのエクスペリオさんの声は、私には少し聞き取りづらかった。

ただ、興味深い話をしているようだったので、注意深く聞いてみた。


「長い間研究を司る神をされていたという話がありますが、本当ですか?」

「この宇宙は、たまたま偶然発見したんじゃよ。それまでもそれからも失敗ばかりじゃった。

失敗と成功なんて紙一重。失敗を恐れるなかれ、馬鹿にするなかれ。」


会話がかみ合っていないように感じる。

付き添いの研究員と思われる神が、フォローの言葉を発する。

「自分でも何を言っているかの認識は、もう既にないのかもしれません。

ですが、私はこの言葉にいつも勇気づけられる。私はこの言葉があるから研究員を続けられているのです…。」


お年寄りの深い言葉に、会場の雰囲気は笑いから敬意へと変わり、拍手が起こる。


「ありがとうございました!

それでは、恒例の質問コーナーへとまいりましょう!質問のある方、手を挙げて!」



子供たちが一斉に手を挙げる。

「じゃあ、一番手を挙げるのが早かった、緑の服を着た男の子。どうぞ。」

「おじいちゃんは何歳ですか?」見た目からは想像がつかなかったのだろう、子供の無邪気な質問が会場の笑いを誘う。

「年齢なんぞとうに忘れてもうた…。子供と会話するのは楽しいのう…。若返るわい。」

子供の甲高い声は、聞き取りやすいようだ。


「では、次の質問は?今度はこの列の3番目の子。どうぞ。」司会者が次の子を指さす。

「魔王は、まだ生きているんですか?」

会場の雰囲気によると、一般の神々は魔王なんて存在しないと考えているようだ。

無邪気な質問だと笑いが起こる。

「魔王はまだ生きとるよ。どこにいるかは知らんがね。

それが唯一、わしがこの世界に生きる理由じゃよ。」


会場は直ちに静まり返る。


「魔王の“強くなりたい”という心は、どうも憎めなくてな。わしは、逃がしてしまったのじゃ。

他の4柱は“倒せ”とか“封印しろ”とか言っておったがの。きっと今もどこかで生きておる。」

今まで戯言として受け止めていた神々の表情が、真顔に変わる。

もしかしたら、この話は真実かもしれない…。魔王はどこかにいるのかも…。

その空気を察して、隣で体を支えている研究員が言葉を発する。

「あまり信じないでくださいよ。最近、天界新聞を読んで、魔王の事を知ったんですから。」


会場は、ゆっくりと元の雰囲気に戻り、笑いが再び起こり始めた。

エクスペリオさんもお疲れの様子。研究員と共に退場していく。


これで今日の前夜祭は終了のようだ。

司会者の締めの挨拶が響き渡り、会場を後にする神々が増えていく。


私たちは、余韻に包まれながら、言葉少なく家へと帰宅した。

明日は、宇宙の法則コンテストが開催される。

皆、楽しみで仕方ない様子だ。


「みんなと来て、本当に良かった。」私はつぶやいた。


   第二章 宇宙の法則コンテスト『前夜祭』 完

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