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夢計画

この話考えたのがウマ娘に無人島シナリオが追加された時でした

朝の陽光が、インドラ洋を銀色に染めていた。

 どこまでも広がる海原。波は穏やかで、風は柔らかく――まるで新しい物語の幕開けを祝福するかのように。


 アクアたちの乗る船は、リナリブの港を離れて数時間。

 もう周囲には陸影ひとつ見えず、ただ青と白の世界が広がっていた。


「綺麗な海……地平線まで続いていますね……」

 紫苑が小さく呟く。潮風に揺れる銀髪が陽を反射してきらめいた。

 アクアはそんな彼女の肩をそっと抱き寄せる。

「うん……何度見ても飽きないな」

 互いの温もりだけが、果てのない海の中で確かにそこにあった。


 そんな空気の中、甲板の反対側でジョンが苦笑いを浮かべる。

「勢いで来ちゃったけどさ……メグ、一体何するんだ?」

 隣ではハンモックに寝転がったメグが、口にストローをくわえたまま片目を開ける。

「ん〜? まぁ見てなって!」


 いたずらっぽい笑顔を浮かべながら、

 ――新しい“夢”を創る旅が、今、始まろうとしていた。



「よし! 場所はここでイイね!」

 潮風に髪をなびかせながら、メグがぱんと手を叩いた。

「アクアきゅん、よろ〜!」


「……? え? なにを?」

 アクアは首をかしげる。


「あ? 気付いてなかった? ま〜説明するより実際にやった方が早いか!」

 メグはケラケラ笑いながら、船の縁に立つと指をさした。

「ほら、トライデントを水面に付けてみて♪」


「え、こう?」

 アクアが半信半疑で槍の穂先を海面へと沈める。

 その瞬間――海が震えた。


 どろりと、まるで大地が胎動するように水面が盛り上がる。

 風が唸り、波が逆巻き、空気そのものが震動した。


「な、なんだこれ!?」

 ジョンが慌てて船の手すりを掴む。


 メグは満面の笑みで親指を立てた。

「へへっ、今から見せるよ。アクアの

――“創造の共鳴”!」


 槍の穂先を中心に、海の色が変わっていく。

 青から、白へ。

 白から、黄金へ。


 そして――海の中から“島”が、姿を現した。


「わ、わぁっ!? なんだこれ!?」

 アクアが目を見開き、思わず船の手すりにしがみつく。

 海面が裂け、轟音と共に泡が弾け――そこから、巨大な大地がゆっくりと姿を現していく。


「島が……産まれた……!?」

 紫苑が言葉を失う。

 蒼い空の下、まるで大地そのものが海から“生まれ落ちる”かのような光景だった。

 白い砂浜、緑の丘、そして中央には陽光を反射する湖。


「アクアきゅん、あの時気絶してたしね〜。

 トライデントがこの時のために“天逆鉾”を吸収してたんだよ」


 風が止み、世界が静寂に包まれる。

 メグは目を細め、金色の光に染まる新生の島を見つめながら、

 静かに、しかしどこか誇らしげに呟いた。


「かつて創造神イザナギが日ノ本を生んだ御業、“国産み”……

 ――まさか、実際に見ることになるとはね」


 新たな大地が、アクアの槍から誕生した。

 それは、彼らの“夢”を形にした島――

 物語の次なる舞台の、始まりだった。


「え!? な、なにこれ!? 俺のトライデント、どうなったの!?」

 アクアは槍を両手で掴んだまま、ぽかんと口を開けていた。

 穂先からはまだ微かに光が漏れ、海面に揺らめく模様が広がっている。


 紫苑はその光を見つめながら、息を呑む。

「ゲイボルグに続いて……天逆鉾まで……!? まさか……神器同士の融合……?」


 紫苑の声がわずかに震えていた。

 その横で、ジョンはもう口を開けたまま固まっている。


「お、おい……島が生まれて、槍が光って、神器が合体って……

 君たち、どんな旅してきたの……?」


 そんな三人をよそに、メグは腕を組みながらニヤリと笑う。

「だから言ったでしょ? 説明より実際に見た方が早いって♡」


 アクアが頭を抱える。

「えぇぇぇ……! 俺の槍、どこまで進化するんだよ……!」

 紫苑は呆れながらも、どこか誇らしげに微笑んだ。


「殿……。やはり貴方こそ、運命に選ばれし御方なのですね」


「アクア……君は一体……? この能力は……?」

 ジョンはまだ震える声で尋ねた。目の前で海から島が生まれたのだ。

 信じろという方が無理だった。


 アクアは少し考えるように頭を掻き、照れくさそうに笑った。

「うーん……あんま大した話でもないんだけどさ。

 俺の母親、人魚なんだよ。で、先祖が海神で──この槍は、その海神から貰ったやつ」


「……え?」

「まぁ、血筋的にちょっと海とは相性いいのかも」


 さらっと言い放つアクアに、ジョンの顔が引きつる。

「いやいやいやいや!? 今の、絶対“大した話”だろ!? 人魚の母親!? 海神の血筋!? え、それ何系統の家系図なの!?」


 メグは楽しそうに手を叩いた。

「でしょ〜? 最初アクアきゅんが“俺、普通の人間っすよ〜”って言ってた時、

 アタシ内心めっちゃ笑いこらえてたもん♡」


 紫苑は微笑みながら、そんなやり取りを見守っていた。

「殿は……本当に、海と共に生きておられるのですね」


 アクアは穏やかに笑って、できたばかりの島を見渡した。

「まぁ……この景色見たら、俺も少し信じたくなるよ。

 ――俺の血も、“夢を形にするためにある”のかもってさ」


新たな大地に、アクアたちの船がゆっくりと寄せていく。

 海風が柔らかく頬を撫で、黄金の砂浜が陽光を反射して輝いていた。


「じゃあ上陸〜! アクアくん、あの辺の岸切り取って船着場つくって!」

 メグが指差した先は、まだ波に削られたばかりの不安定な岩場。


「わ、分かった……!」

 アクアは軽く息を整え、トライデントを構えた。


 穂先を海へ向けると――

 大地が唸り、岩盤がまるで意志を持ったかのようにせり上がる。

 次の瞬間、滑らかな即席の港が姿を現した。


「……完成っと」

 アクアが肩の力を抜いて微笑む。


 ジョンがぽかんと口を開けたまま叫ぶ。

「使いこなすの、早っ!!? 普通、神の力ってそんな簡単に扱えないよな!?」


 紫苑は静かに微笑んで、潮風に髪をなびかせた。

「殿の中で、すでに海が一つになっているのです……。

 “創造の槍”を真に御する者は、世界にただ一人――殿だけです」


 アクアは照れくさそうに頬を掻いた。

「いや……まだ練習中ってことで……」


 メグが肩をすくめながら、にやりと笑う。

「まったく……成長期が止まらないんだから♡」


上陸したばかりの島は、まだ名も無い原始の大地だった。

 風が熱を孕み、遠くの断崖には滝が流れ落ち、

 木々の間では見たことのない鳥たちが羽を休めている。


 アクアたちは足跡を刻みながら、密林を抜け、丘を登り、

 新しい世界の匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。


「すげぇ……。誰の手も入ってない、まっさらな大地だ……」

 アクアの言葉に、紫苑が微笑む。

「殿……この島はまるで、貴方に祝福された楽園のようです」


 そんな空気を破るように、ジョンが両手を広げて叫ぶ。

「いや!でもこの島で俺は一体何すればいいんだよ!?」


 すると、メグがにやりと笑いながら腰に手を当てた。

「ふっふっふ……ジョンくん、この島のオーナーはキミだよ♡」


「えぇっ!?」

 ジョンが声を裏返す。


「決まり!この島をリナリブにも負けないリゾートにしよっ!

 アクアと紫苑とアタシが手伝うから、

 ジョンくんは“夢の島リゾート”の支配人になるの!」


「支配人って……俺が!?」

「そう♡この島はね、ただの島じゃない。“夢を作る場所”なんだよ」


 アクアが笑ってトライデントを海へ向けた。

「夢を作る……いいね。それなら、俺たちの次の旅はここからだ」


メグは一歩だけ遅れて空を見上げた。

陽光がトライデントの穂先を照らし、まるで神々がこの島の誕生を祝福しているようだった。


(ま、滅ぼすよりも、こう使われた方が……イザナギくんも天逆鉾も本望だろうね……)


 夕陽が大海を染め、

 名もなき島に、新しい時代の第一歩が刻まれた。


 ――最終章、開拓と夢の物語がいま始まる。



陽射しが燦々と降り注ぐ無人島。

 潮の香りと新緑の匂いが混じり、どこか懐かしいような、胸の高鳴る匂いがした。

 アクア、紫苑、メグ、ジョンの四人は、手つかずの大地を踏みしめながら笑い合う。


「ジョン殿、まずはどのようなものを創りたいですか?」

 紫苑が柔らかく問いかけると、ジョンは思わず振り返った。


「えっ、俺が決めるの!?」

「当たり前じゃん?」とメグがニヤリと笑う。

「オーナーなんだからさ♡」


「……オーナー、ね……」

 ジョンは少し考え込み、やがて空を仰いだ。

「じゃあ……山とか?でっかい山と、そこから流れる川とか……」


 その一言に、メグがぱっと笑顔を輝かせる。

「了解〜♪ アクア、出番だよ!」


「分かった!」

 アクアがトライデントを構える。


「――天逆鉾!!」


 大地が鳴動した。

 砂が浮き、岩盤が隆起し、空を突くように山脈が姿を現す。

 土煙の中、風が吹き抜け、太陽に照らされた頂がまるで新しい世界の心臓のように輝いた。


 そしてアクアはもう一度、槍を構えた。

「トライデント!!」


 山頂から清らかな水がほとばしり、銀糸のような滝となって流れ落ちていく。

 それはやがて小さな川となり、草原を潤し、命の道を描いた。


「うおぉ……マジで出来た……!」

 ジョンが言葉を失って見上げる。


「ほらね? やってみるもんでしょ?」

 メグが肩を叩き、紫苑は穏やかに微笑んだ。

「まるで創世記を見ているようです……。殿、貴方はやはり海神の御子です」


 アクアは照れたように笑って、空を見上げた。

「いや……今回はジョンの夢があったから、だよ」


 潮風が吹き抜ける。

 島が、生まれた瞬間に“物語”を宿した。


いつしかジョンの表情から、不安も迷いも消えていた。

 荒れた潮風ではなく、希望の風が吹いている。


(……なんか、楽しくなってきた)


「海水浴以外にも、湖でレジャーとか……!」

 少年の瞳に、夢の青が映った。


 アクアが笑って頷く。

「いいね! じゃあ、もう一回――トライデント!!」


 槍の先が海風を裂いた瞬間、大地が震えた。

 島の中央に円を描くように地形が沈み、

 そこへ山頂から流れていた清流が一気に流れ込み、

 やがて鏡のような湖面が姿を現す。


 陽光を受けてきらめくその湖は、

 まるで島の“瞳”のようだった。


「森も少し切り開いて平地も必要かな?」

 ジョンが言うと、アクアは軽く構えを取り直した。


「切り倒す!――ゲイボルグ!!」


 光の矢尻が舞い散り、音もなく木々を薙ぎ倒していく。

 まるで春の風が雪を溶かすように、森が形を変えていった。


「お見事です、殿!」

 紫苑がすぐに駆け寄り、枝を丁寧に払っていく。

「この木々は、建材として使えるでしょう」


 彼女の動きは優雅で、無駄がない。

 戦いの剣も、いまは平和の道具として輝いていた。


「よし、これで湖と平地は完成!」

 メグがハンモックから顔を出し、満足そうに笑う。

「順調順調〜♡ あとは畑か宿か……夢が広がるねぇ〜」


 青い空の下、潮の香りと木の匂いが混ざり合い、

 “戦いの物語”は、いま“開拓の物語”へと姿を変えていく。


湖から流れる清水は、まだ自然のまま好き勝手に道を変えていた。

 アクアは槍を手に立ち、静かに息を整える。


「じゃあ次は、水路を整えようか。湖の水を村の畑まで引くんだ」


「承知しました、殿」

 紫苑が軽やかに頷く。

 裾をたくし上げ、裸足で湿った土に踏み込み、

 彼女は鍬を取り、慣れた手つきで土を掘り返していく。


 アクアは彼女の隣に立ち、トライデントを軽く地面へ突き立てた。

 瞬間、水が生き物のように脈動し、掘られた溝をなぞるように流れ込む。


「よし……。水が通った!」

 アクアが振り返ると、紫苑の頬に小さな泥がついていた。

「ふふ……殿にお見せできる姿ではありませんね」

「いや、紫苑が一番輝いてるよ」


 その言葉に、紫苑は少しだけ顔を赤らめた。

 春の風が二人の間を通り抜け、やわらかな草の匂いを運ぶ。


 その頃、少し離れた場所ではメグとジョンが畑を整えていた。

「肥料はこの辺の落ち葉で充分〜。あとは魔法で土の栄養を均してっと♪」

 メグが指を鳴らすと、畑一面の土がふかふかと息を吹き返したように膨らむ。


「な、なんか……地面が柔らかくなってる!?」

「でしょ〜♡ 魔法と科学の融合ってやつ?」

 

ジョンは笑いながら汗をぬぐった。

 泥だらけの手のひらが、どこか誇らしげだった。


 やがて、紫苑とアクアが合流する。

 彼女が両手で水をすくい、試しに畑へまいた。

 太陽を受けた水滴が光り、湿った土が小さく息をするように沈んでいく。


「これで……芽が出ますね」

 紫苑が微笑み、アクアが頷いた。

「うん。ここから始まるんだ、俺たちの世界が」


 四人はしばらく言葉もなく、流れる水の音を聞いていた。

 どこまでも澄んだ空の下――

 命が息づく音が、確かにそこにあった。


太陽がゆっくりと水平線に沈み、橙色の光が島を包み始めていた。

 風は一日の熱を運び去り、波の音だけが静かに響く。


 メグがふぁ〜っと大きく伸びをした。

「はぁ〜〜……疲れた〜〜……! でも、いい汗かいたわぁ〜♡」


 ジョンは手のひらの泥を払いながら、

 遠くに広がる畑と、流れ始めた水路を眺めていた。

「……なんかさ。今までぼぉーっと生きてた俺が、

 こうして“やりたいこと”見つけた気がするよ……」


 その横顔は、初めて見るような清々しいものだった。

 紫苑が優しく微笑み、アクアも頷く。

「うん、今日は本当によくやったよ。みんな最高の仲間だ」


「お疲れ様〜♡ あ!そうだ!」

 メグがピンと指を立てて振り向く。

「アクアきゅ〜ん! ご褒美に温泉出してよ〜♪」


「えっ!?……温泉!?」

 アクアが思わず笑う。

「まぁ、今日くらいはいいか」


 トライデントを地面へ突き立てる。

 すると大地がごぼごぼと鳴り、

 間もなく、温かな蒸気と共に透き通る湯が湧き出した。


「うわ〜♡本当に出た!アクアきゅん神〜!」

 メグが両手を広げて喜び、

 紫苑も思わず頬を紅潮させる。

「まさか本当に温泉が湧くとは……殿、恐るべしです」


 夜風が湯けむりを揺らし、星がひとつ、空に瞬いた。

 こうして――島の最初の夜は、静かで温かい笑い声に包まれながら、更けていった。


夜の島に、静かな湯けむりが立ち上る。

 満天の星空の下、湧きたての温泉は心地よい蒸気をまとい、

 潮風と混じって甘く香った。


 アクアは湯に肩まで浸かり、ふぅと息を漏らす。

 昼間の疲れが溶けていくようだった。


「殿……お隣り、よろしいですか?」


 振り向くと、湯けむりの向こうに紫苑が立っていた。

 月明かりに濡れた銀髪が、夜の水面に淡く揺れている。


「紫苑……いいよ、入ろう」


 彼女がそっと湯に身を沈めると、

 水面に小さな波紋が広がり、

 アクアの肩に湯気ごしの光が反射した。


「畑仕事、大活躍だったね。お疲れ様」

 アクアが穏やかに笑う。


「泥だらけで……少し恥ずかしいですが……」

「そんなことないよ。頑張ってる紫苑は、誰よりも綺麗だった」


 紫苑の頬が、湯の熱よりも赤く染まる。

「殿……そんなお言葉を……」


 風が湯気を払い、二人の間に星の光が差し込んだ。

 遠くでは波の音、近くでは虫の声。

 時間がゆっくりと流れ、ただ静かに、心だけが寄り添っていく。


 紫苑は目を閉じ、小さく呟いた。

「……この島、本当に不思議ですね。まるで殿と共に夢を見ているようです」


 アクアは彼女の手をそっと握り返す。

「そうだね……。でも、これは夢じゃないよ。

 俺たちの“始まり”の場所だ」


 湯けむりの中で、二人の影が重なる。

 星々が静かに流れ、夜は優しく、更けていった。


夜が明けて二日目の朝――。

 潮騒と鳥の声に包まれた島は、昨日よりも少しだけ賑やかだった。

 畑の水路には澄んだ流れが走り、草の間から小さな芽が顔を出している。


 そんな中、アクアたちは新たな挑戦に取りかかっていた。


「さて……今日からは“建てる”日だな」

 アクアが木槌を肩に担ぎ、木陰の資材置き場へ向かう。


 紫苑は昨日伐採した木材を綺麗に並べ、一本一本の強度を確かめていた。

「この木は節が多いので、梁に使えます。こちらは壁材向きですね」


「おお〜さすが紫苑ちゃん、もう職人みたい〜」

 メグがハンモックから転がり出て、魔法で木材の表面を削る。

 削られた木の粉が風に舞い、ほのかに甘い香りを漂わせた。


 ジョンは初めて手にする大工道具を握りしめ、ぎこちなく釘を打つ。

「うわっ、曲がった! くそ、難しいなこれ!」

「焦らない焦らない〜。DIYって“Do It Yourself”でしょ? つまり楽しんだもん勝ち♡」

 メグの笑い声が弾ける。


 アクアはトライデントを軽く地面へ突き立てた。

 大地がわずかに隆起し、建物の基礎となる台地が均されていく。

「よし、これで床が安定した。あとは俺たちの腕次第だね」


 四人はそれぞれの持ち場で動き始めた。

 ジョンは木枠を組み、紫苑は紐で梁を固定し、

 アクアは重い材木を軽々と持ち上げて屋根を載せていく。


 そして――。

 夕暮れ時、一本の旗が風にたなびいた。

 まだ壁も窓も途中だが、確かに“建物”と呼べる形が立ち上がっていた。


「やったな、ジョン!」

 アクアが笑って背中を叩く。

 ジョンは泥まみれの顔で、白い歯を見せて笑った。

「……ああ。これが“作る”ってことなんだな。

 誰かの手じゃなくて、自分の手で世界を作るって……最高だ」


 メグは木の階段に腰かけ、缶ジュースを開けて言った。

「ふふっ、最高の一言だね〜。リゾートって、まず“心”から作るものだよ」


 海風が新しい木の香りを撫でていく。

 まだ未完成の建物が、夕日に照らされて黄金色に輝いていた。


夕日が海を朱に染める頃。

 島にはもう、土と木と人の熱気が満ちていた。

 汗を拭う暇もなく、アクアとメグは視線を交わす。


「さぁ、仕上げに入ろうか」

「了解っ♡ 大賢者と海神の子、夢の共演〜♪」


 メグは両手を広げ、魔法陣を描いた。

 それは彼女の得意とする“万物創造”――

 空気から物質を生み出す奇跡の力。

 だが今日は、ただの魔法では終わらない。


 アクアがトライデントを構え、槍先を地へと突き立てた。

「――国産み」


 大地が震え、空気が弾ける。

 メグの魔法陣とアクアの神器が共鳴し、

 光の奔流が島全体を包み込んだ。


 波打つように地形が整い、建材が組み上がり、

 木の壁が立ち上がり、屋根が形を取っていく。

 釘を打つ音も、風を切る音も、まるで島が自ら息づくようだった。


 やがて――。


 潮風が止み、光が静まる。

そこには、まるで長い年月をかけて築かれたような、小さいながら立派な街並みが広がっていた。


 白い砂浜には港があり、

 そこから真っ直ぐ延びる道。

 道の両側には木造の家々と露店、

 中央には大きな広場と噴水が輝いている。


 山の麓には畑が広がり、清らかな水が潤していた。

 湖のほとりには船小屋が立ち、

 温泉の湯けむりが夜の帳に淡く揺れている。


 港には灯台が建ち、

 その光は遥かインドラ洋を渡って、

 まるで新しい時代を照らすように輝いていた。


「……できた、のか?」

 ジョンが呆然と呟く。


「うん、これが俺たちの――夢の島だ」

 アクアが微笑み、紫苑が静かに頷く。


 メグは肩をすくめ、満足そうに息を吐いた。

「ふふっ、これにて無人島リゾート計画、完・成♡」


遠くで波が寄せ、星が瞬く。

新しく生まれた街の中央広場に、四人は並んで立っていた。

 海風が吹き抜け、まだ新しい木の香りが漂っている。

 赤く染まった空の下で、アクアがゆっくりと口を開いた。


「じゃあさ、ジョン――決めてよ。

 君がこの島のオーナーだ」


 ジョンは一瞬、言葉を失った。

 波の音が耳に届き、夕陽が海に沈んでいく。

 ほんの少し前まで、何も持たなかった自分が――

 いま、確かに“何かを創った”実感が胸を満たしていた。


「俺が……?」

 ジョンの声が震える。


 紫苑が優しく微笑み、メグが軽く肩を叩く。

「そうだよ。最初に“夢”を言葉にしたのはジョンくんだもん♡」


「そう……でしたね。殿も仰いました。“夢を作る島”だと」


 ジョンは空を見上げ、息を整えた。

 ゆっくりと、言葉を紡ぐ。


「……“エスペランサ”。

 希望、って意味の言葉だ。

 この島に来て、生きる希望をもらったから……

 今度は、誰かに希望を与えられる場所にしたい」


 アクアが静かに頷き、微笑んだ。

「いい名前だな。――エスペランサ島。希望の島、か」


 風が吹き抜ける。

 潮の香りと木々の音が、まるで祝福のように響いた。


 メグがにっこりと笑って言う。

「決定〜!“エスペランサ島”の支配人、ジョンくん誕生〜♡」


 四人は笑い合い、夕陽の中で拳を重ねた。


 ――こうして、“夢を作る島”エスペランサは誕生した。

 それは戦いの果てに生まれた、ひとつの希望の形。

 誰かの絶望から始まった物語が、いま光へと変わった瞬間だった。


それから、ほんの数日後――。


 静かだったインドラ洋の一角が、急に賑やかになった。

 近海を航行していた商船や旅客船の乗組員たちは、

 夜空の彼方にきらめく光の帯を目にして息を呑んだ。


「なんだ……あの光?」

「海の上で、まるで街が浮かんでる……?」


 それは“エスペランサ島”から放たれる光だった。

 魔力灯が輝き、音楽と人々の笑い声が風に乗って海を渡る。


 翌朝、数隻の船がその島へと上陸した。


「うわっ……ここ、温泉あるじゃん!」

「なんだこれ!? 屋台まであるぞ!」

「飯うまっ……! これ、王都のレストラン超えてるって!」


 観光客たちの驚きと歓声が、次々と波の音をかき消していく。


 港では笑顔の従業員たち――

 いや、メグが生み出した“生体NPC”たちが、

 まるで人間そのものの自然な動きで客を出迎えていた。


「いらっしゃいませ〜! エスペランサへようこそ♪」

 その声と同時に、鮮やかな花びらが空に舞う。


 湯けむりに包まれた天然温泉。

 海辺のバンガロー。

 市場には焼きたての魚と南国の果物。

 そして、中央広場の噴水では子供たちが笑いながら水を掛け合っていた。


 まるで神話の楽園。

 戦いと苦悩の果てに築かれた、真の“幸福の島”。


 アクアは港の高台からその光景を眺め、微笑んだ。

「……やっぱり、人が笑ってるのが一番いいな」


 隣で紫苑も同じように目を細める。

「はい。これこそ、殿の作った“希望”の形ですね」


アクア、紫苑、メグ、ジョン――。

四人が創った小さな島は、あっという間に世界中の旅人たちの憧れとなった。


――そして数週間後。


 エスペランサ島の名は、瞬く間に世界中に広がった。

 “海に浮かぶ楽園”“インドラ洋の奇跡”“希望のリゾート”──

 あらゆる呼び名がこの島を讃え、人々の心を惹きつけていった。


 ついには各国の新聞社や放送局までもが取材に訪れる。

 その中心で、ひとりの青年がカメラに囲まれていた。


「ジョンさん! あなたがこの島の支配人だそうですね!?」

「この短期間でどうやってここまで開発を!?」


 照りつける太陽の下、ジョンは顔を真っ赤にして直立不動。

「あ、あの……はいっ! あの、みんなのおかげで……!」


 ガチガチの笑顔、引きつる頬、汗だくのシャツ。

 だがその姿に、集まった人々はむしろ胸を打たれていた。


「すごい少年だ……!」

「まだ十代なのに、こんな島を……!」

「まるで新しい時代の開拓者だ!」


 周囲から拍手が巻き起こる。

 記者がカメラを向け、フラッシュが光った瞬間――

 ジョンの緊張した顔が新聞の一面を飾ることになる。


 翌日。世界各国で販売された号外には、こう書かれていた。


> 『若きリゾート支配人、希望の島を創る!

“エスペランサ島”が世界を魅了!』




 その記事を見て、アクアたちは笑っていた。

「……カッコいいな、ジョン」

「私も仲間として誇らしいです」

紫苑が微笑む。


 メグは新聞を逆さに持ちながら、のほほんと呟く。

「いや〜、取材のカメラ写り最高だったね〜♡ 次はグッズ展開いけるよ!」


 ――戦いの時代は終わり、夢の時代が始まった。

 エスペランサ島は今日も、希望という名の光を放ちながら、

 世界中の人々の心に“幸福”を灯している。



 ――こうして、“エスペランサ島”は人々に夢を与える伝説のリゾートとして…





メグはハンモックに寝転びながら、アクア達に言った。

「SNSとか無いのに、口コミの拡散力エグ〜♡」


アクアは尋ねた

「SNSって、何?」

「後270年くらい経ったら分かるよ」

次回はリゾートで色々やります

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