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嘘つきレイラ 時をかける魔女と幼馴染の物語  作者: 織部
嘆きのレイラ

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マリスフィア侯爵の娘 ルミナ

 ドラゴンが旋回し、セーヴァス城の中庭の広場に悠々と降り立った。


 目の前に現れたその聖獣は、物語で知っている架空の存在。王都を守護したり、レメニア湖に現れたという噂が広がっていたが、実際に目にするのは、ここにいる者たちのほとんどが初めてだろう。


 すでに何度もセーヴァスの空を飛んでいるが、普段は隠蔽の魔法で見えないのだ。


 マルコとハーゲン子爵は顔面蒼白でレイラの動向を伺っている。


 マリスフィア領の兵たちは驚き、茫然としたり、座り込んで拝んだりと、さまざまな反応を見せていた。


 レイラはドラゴンの背に乗っている者に手を振りながら「さあ、行きましょう!」と声をかけた。


 モルガンが手を取って、一人の小さな女の子を優しくドラゴンから降ろしているのが見える。その女の子は白い髪、緑の目、透き通る白い肌を持つアルビノの小さな少女だった。ドラゴンは、乗っている全員を降ろすと、再び空へと飛び去って行った。


 ハーゲン子爵は、冷静沈着な佇まいから一転、驚いて「うわっ…!」と叫ぶ。するとレイラは、わざとらしく尋ねた。「あの子、ハーゲン子爵の知り合いなの? どなたなのかお教えいただけますか?」

 彼は少し沈黙した後、「マリスフィア侯爵の娘と偽っている者です。私が人質として拘束しておりました」と答えた。


 レイラは「貴方は味方にも隠し事をしているのですね!場所を変えましょう」と、会話を終わらせたが、俺はお互いの腹の探り合いが面白くて、笑いそうになった。彼女に睨まれた……


 その小さな女の子、ルミナは非常におとなしい様子で、ナッシュとナナが話しかけると、小さく答えて頷いている。


 俺は最初、悪魔に近い存在ではないかと思ったが、ティアが気づかないはずがないと思い直すと、悪魔の匂いや魔女特有の重い空気も感じないことに気づいた。


 レイラに「何、子供をじろじろ見てるの? いやらしい」と怒られたが、そのレイラの方が魔女に近しい存在に感じられた。決して冗談でも、彼女には言えない。


 ルミナの中には、別の何かがいるようだ。卵の中に包まれているように。


 俺が考え込んでいたら、レイラが新たな指示を出していた。

「モルガンとレジーナは城防衛戦の準備を。ナッシュとナナとティアは隣の部屋でルミナを守って」

 俺も防衛戦の準備をしようと動き出すが、またもやレイラに服を掴まれた。


「とても大切な話よ。リドの意見も聞きたいの!」レイラが、策謀ではなく懇願するような声で言った。その言葉は、彼女も知らない新たな選択であることを物語っていた。


 会議室には、マルコ、ハーゲン子爵、ドラムとリドたちだけが残り、緊張感が漂う中、ハーゲンが意を決したように静かに話し始める。


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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