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嘘つきレイラ 時をかける魔女と幼馴染の物語  作者: 織部
嘆きのレイラ

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セーヴァス城 マルコとの対話

 


 俺達は、すぐに城の謁見の間に通された。予想に反して、城の中には雑然とした、どちらかといえば、活気のある雰囲気が広がっていた。


「やっぱり、リドリー、ティアをモルガンのところに派遣してもいいかな」レイラが、肩に乗っているティアの頭を撫でながら言った。


「構わないが、そんなに心配か? 奴等なら、難なく娘を確保できると思うけど」

「ええ。心配だわ。その後のことが……」


 マルコとハーゲンは、会議を中止して急いで謁見の間にやってきた。

「レイラ宰相、どうぞ、こちらへ」上座を譲ったのはマルコだ。苦渋の表情を浮かべているが、その中に、この男が根底に持っている明るさを消せずにいるのがわかる。悪い奴には見えないぞ!


 レイラは微笑み、席に着くと、俺はその隣に立つ。何の仕掛けもないと感じた。いや、少なくとも悪魔の気配すら感じない。しかし、誰かが無理をしているような空気が漂っている。


「ありがとうございます。ただ、父は原因不明の病気で床に臥しており、他の方に病気が移ることを避けるため、お会いはご遠慮願っております」

「そうですか、残念です。原因不明の病気だなんて心配ですね。でも、どうしてもその症状が気になりますわ……」

 レイラは、ほんのりと微笑みながら、少しだけ眉を寄せた。その微妙な表情には、その病気の本当の原因を知っているかのような印象が漂う。


「ところで、侯爵が政務を取れない間、誰が代わりにその仕事をしているのでしょうか?」

レイラは、マルコと隣に立つハーゲン子爵を交互に見ながら、ゆっくりと答えを待つ。

「私が、やむなく代行しております。マルコ様は、領主代行で忙しくて」

ハーゲン子爵が答えると、レイラは一度頷き、次に質問を続けた。


「そうですか? ところで、マリスフィア領の通行が閉鎖されていると聞きましたが、どういう事情でしょうか?」

「大森林の森から魔物が溢れ出すとの噂がありました。ですが、全面的に閉鎖しているわけではありません。商人のキャラバンも、それぞれの責任で許可を出しています」

「私が調べた限り、大森林の森でスタンピードが起きる兆候はありません。もしそのような理由ならば、王国騎士団や軍隊が通過するのに問題は無いはずです」


 ハーゲン子爵は一瞬、言葉を詰まらせた。その視線が、マルコの顔を探るように向けられる。マルコは内心で葛藤していたが決断を下した。


「レイラ宰相の情報であれば間違いは無いでしょう。全面封鎖を解除しましょう。私達も信頼できる兵士が少ないので」

「良かったわ。それと、もう一つ。おかしな噂を耳にしたのですが……」

「なんでもお聞きください」マルコとハーゲン子爵は、あきらめたように答えた。

「心配しなくても大丈夫よ。マリスフィア侯爵に、娘なんていたかしら?」

「いません」 「そうよね」レイラは、ほんのり笑った。


 城の鐘が鳴り響いた。鋭く、警告のように。その音は、城内を駆け抜けた。

「マリスフィア侯爵軍が、こちらに向かってきています」

 その言葉が響くと、部屋の空気が重くなった。俺は、目の前のレイラに視線を向けた。


「どうすればいいんだ?」俺は、起きている状況が理解できず、彼女に尋ねる。


「何言ってるの? こうなるように仕掛けたんでしょ?」


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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