リドリーの推理
「どこなの? リド?」
「その前に、マルコはいつもどこにいる? 人質ならば近くに監禁するはずだ」
「セーヴァス城に居ますね。ですが、セーヴァス城では、そういった話は聞いたことがありません」
「だろうな。ネグロクサ商会の紹介とはいえ、新しい人を雇っている。探してみろと言わんばかりだ。いや、むしろ誘っているようだな」
「そうですね。確かに、行動の制約が思ったよりも少ないような……まあ、マルコは塵ですが」
レジーナは、この数日の彼女の動きを思い出していた。
「ところで、マルコは何がしたいんだ? 何が不満でこんなことをしてるんだ?」
「それは、自分が侯爵、いや、領主になる為かと。廃嫡の噂も出ていましたから」
「動きを見るとそんなに馬鹿とは思えないがな。それ前提の確認だ。マルコは、マリスフィア侯爵を城には置いておきたくない。いつ反乱されるかわからんからな。だが、侯爵派が反乱を起こすには、彼の娘の安全を確保、つまり、居場所を知らないと動けない、いや、動かない。合ってるか?」
「リドの言うとおりよ」
「彼の監禁場所と、王城の間に、監禁されているとは考えにくい。人質を取り返されて、進軍してくる危険性が高い。位置的には王城に近くて反対側。そして、普段から兵隊がいてもおかしくない場所。マルコを支えている有力な貴族の屋敷はどこにある?」
ドラムは地図を広げ、マルコ派の貴族の屋敷の場所に印をつけた。
「この屋敷は、誰の屋敷だ? 屋敷というよりも、地形的に砦みたいだ」
「ハーゲンですね。歴史のある貴族でして、マルコ派の重鎮です。古くからの大屋敷ですね。ネグロクサとの取引はほとんどありません」
「古い家ということは、知らない人を雇うことも少ないはずだな。王女監禁の噂が出なくても不思議じゃない。この屋敷が怪しいと思うが」
一気に考えをまとめて話した俺だったが――
(……あれ? 静かだ)
レジーナも、ドラムも、ナッシュ兄妹、その他の面々も、ポカンとした顔で俺を見ている。
モルガンは口を開きかけたが、結局、何も言わずに閉じた。全員、俺の言葉を消化しきれずに固まっているようだった。
何か……間違えたか?
やっちまったか?
俺は勉強ができない。ひょっとして、何かとんでもない勘違いをしているのかもしれない。ならば――
食事を続けよう!
とりあえず、何もなかったかのようにスープをすするんだ。
すると、レイラがぽつりと呟いた。
「驚いたわ、リド。その通りね」
俺は思わず、スープを噴き出しそうになった。
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