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嘘つきレイラ 時をかける魔女と幼馴染の物語  作者: 織部
嘆きのレイラ

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海賊王の宝と新たなる島の魔女

 俺は、それまでの経緯を話した。

「そうなのか……それは良かった。宝の箱は、その柱の中にある。持っていけ」

 

少女は寂しげに投げやりに呟いた。

「お前、名前は? お前はここで何をしていた?」

「名は、ナイア。アクアリスに宝箱を守れと言われた。今、役目は終わったはず」

「ずっとか?」

「ああ、それは長い間だ。廃鉱になり、強盗たちを追い払ってからは、誰もここには来なかった」

 炭鉱の柱を壊し宝箱を取り出すと、突然、炭鉱が微かに揺れた。


「何が入っているのかな?」俺は少し期待に胸を膨らませた。

 ナイアも、初めて見る宝箱の中身に興味津々の様子で、目を細めて覗き込む。

「さあ、開けるぞ!」俺は鍵を穴に差し込み回すと、古びた木の蓋が軋む音を立てながら、ゆっくりと持ち上がった。中身は、見た目に反して特別なものではなかった。ただ、海賊王が使ったと思われる古い道具や遺品が無造作に詰め込まれているだけだった。


「ただの遺品か……」

 その時、箱の中で一枚の羊皮紙が目に入った。手に取って広げると、そこには手書きでこう記されていた。


 ナイアへ

 お前の役目は終わった。この場所にあらず。次の場所へ向かうがいい。

 島を守れ。我が愛しの子よ。

 アクアリス

 

 ナイアはその手紙をじっと見つめ、静かに息を吐いた。その表情には、解放された喜びと戸惑いが浮かんでいた。


「次の場所……」

「この島の海岸に、新たに人が住み始める」 

 俺は彼女に説明し、彼女は頷き、羊皮紙を丁寧に畳み、懐にしまった。

 

 炭鉱の天井が軋み、岩が崩れ落ち始める。

「くそっ、崩れるぞ!」俺は宝箱を担ぎ、ナイアの手を引いた。彼女の手は冷たく、どこか不安げだったが、それでもしっかりと握り返してきた。

 

 炭鉱を抜け出すと、急激に温度が上がり、暖かい風が炭鉱の中の氷を溶かす音が聞こえる。

「がらがらがら」と、背後で炭鉱が崩れる音が響き、砂塵が一面に舞った。

 

 ティアに乗り、空を飛びながら島を見下ろすと、ナイアの顔に驚きと喜びが混じった表情が広がった。

「こんなに広いの……あれが海か!」

 孤島の景色を眺める彼女の瞳は、新しい世界を見つけたかのように輝いていた。

 帰ってきた島の棲家で、レイラは俺とナイアを見比べ、呆れたようにため息をついた。


「……ねえ、いつの間に子供なんて作ったの?」

 俺はレイラの冗談に照れくさそうに頭を掻きながら、「いや、違うんだ…」と答え、説明をした。


「私は、水の精霊の子にして、アクアリスの娘。ナイア」

「そうなのか?」俺が驚いた声をあげると、レイラはまた呆れた顔をしていた。俺の理解が足りていなかった

ようだ。


「本当に、貴方は魔女たちに好かれてるわね」違う、いいように使われているだけだ。


 その後、海賊王の墓前に立つと、俺は慎重に宝箱を埋めた。あの遺品たちが、海賊王の墓の中に戻ることになった。

 その一方で、ナイアはアクアリスの墓に花を添えていた。彼女は静かに目を閉じたて誓った。


「アクアリス……あなたがこの島に残したものは、私が受け継ぐ」

 彼女はそっと懐に手を入れ、羊皮紙を取り出した。柔らかく広げ、その文字を指先でなぞる。

「島を守れ……わかった」

 静かに羊皮紙を胸に抱きしめると、ナイアはそっと微笑んだ。

 

 その瞬間、風がやさしく吹き抜けた。まるで、アクアリスがその声を受け止め、微笑んでいるような気がした。

新たな魔女がこの島に誕生したのだ。





 


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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