島の朝
島の住まいに戻ると、既に朝食の準備ができていた。寝室の隣の、執務室らしき部屋に食事が運ばれていた。
朝から豪勢な肉料理が並んでいる。俺は遠慮なくがっつりと飯を喰っていると、レイラが呆れた顔で俺を見てきた。
「朝からよく食べるわね。ところで魔力は、戻ったの?」
「ああ、それなんだが、昨日の夜、魔女に吸い取られてしまってな」
「え? そうなの?」彼女は驚いて、俺の顔を覗き込んだ。
「ああ、いや、精力だったかな」
意味を察したレイラに殴られながら、朝食を続けていると、ドラムが現れた。
「おはようございます、レイラ様。朝食のところ失礼します。この島を建て直す資材と人を連れてきました。書類はこちらに」
「ありがとう。さすが、ネグロクサ、いや、ドラムね。この島にも、軍船が必要ね。至急、練習船と、新たな軍船をお願いするわ」
「わかりました。それと、モルガン様からリドリー様にお手紙です」
それは、東方聖教会についての報告だった。警備兵や出入りしている兵士は、マルコの直属部下に間違いないが、マリスフィア侯爵領以外の新たに雇い込んだらしい者も多い。
マリスフィア侯が幽閉されているかは不明。
「強硬策は不味いわね。囮の可能性もあるし……まだ、時間はあるわ。レジーナの方はどう?」
「さっそく、マルコに伽に誘われたみたいですよ、はっはっは」ドラムは愉快そうに笑った。
「殺傷沙汰にならないように、周りが助けに入るように」
あのレジーナが、尻とか触られて怒っている姿を妄想していると、又も、レイラに殴られた。本気なのだが、当たり前だが全く痛くも痒くも無い。可愛いものだ、昔はとても痛かったが。
「昨日の海戦が噂になっております」
「箝口令は引いてるのよね」
「勿論、馬鹿話はしますが、無駄話はしませんよ」
俺がようやく食事をとり終わると、待っていたかのように片付けられて、机の上にお茶と書類が並べられた。数字が並んでいる。
「俺は、森の探索に行ってくるよ。この島の安全の為にな」俺は着替えもそこそこに剣一本だけ持って、逃げ出した。
「待ちなさいよ、私の騎士団長でしょ」
「ああ、だから警戒警備をしてくるよ。お前を守るために」
別に書類仕事が出来ないわけでは無いが、いや、氷雪島の冬ですら、読書をすると眠気との闘いに負けていた俺だ。
「気をつけて! 行ってらっしゃい」
愛する者に見送られて出かけるのは、幸せな者だ。俺は小さな幸せを噛み締めていた。
宝探しの時間だ。俺は、わくわくしながらも、まだ見ぬ強敵に備えて身を引き締めた。
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