島の探索
ドラム達も、船の積み荷を降ろすと、セーヴァスの港に帰って行った。
「それじゃあ、船着場の修繕と、家を二軒住めるようにしましょう」レイラが提案する。
「そうだな、お前に任せる。俺は島の探索に行く」
例の騎士風の海賊に話しかける。
「エーリヒです。承りました」手慣れた様子で、他の海賊達と作業を始めた。
「では、行ってくる」
「私も行くわ」レイラが、俺の腕を掴んだ。
「危ないぞ」俺が警告すると、
「守ってくれないの? 私、リドリーの隣が一番安全だと思ってるのに」
「当たり前だ」俺が胸を張って答えた。
歩き出した頃には、いつの間にかティアが彼女の肩にとまっていた。見た目は、綺麗な鳥にしか見えない。
「魔物相手なら、ティアに敵うもの無いわね」鳥になりすましたドラゴンを撫でながら、レイラはとても気持ち良さそうな顔をしている。
俺がその様子を凝視していると、「あら、リドリーも撫でて欲しいの?」と彼女が揶揄ってきた。
「ふざけるな」俺は歩幅を広げ、さっさと先へ進んだ。
数時間、森を捜索した。多くの魔物に遭遇したが、俺が剣を抜くまでもなく、ティアによって処分され、食糧になっていた。
「もう、疲れた。リドリー帰ろう」
「ああ、俺も腹が減った。ここ迄にして帰ろう」
レイラが俺の前に立ち、じっと見上げる。
少しの沈黙の後、彼女は当たり前のように腕を広げた。
俺はため息をつきながらしゃがみ込む。昔と同じだ。「探検に行こう」と言って、結局俺が背負って帰ってくる。周りには隠れて護衛の騎士達がいたものの、それでも彼女は俺に負ぶさることを選んだ。
ティアが、乗せて帰るかと翼を開いたが、「ありがとう、ティア、これは俺の役目だから、譲れない」
彼女が揺れないように、しっかりと背負って歩き出す。すぐに、レイラは俺の肩に額を乗せ、安心したように寝息を立てていた。
「また、繰り返しているのか……」
その事を、彼女は決して言わないし、俺も聞かない。彼女のシナリオに従って、全力を出すだけだ。迷いはない。
俺の背中の上で、彼女の寝息が静かに響く。少しの間でも安らぎを与えたい。
俺は、起こさないように、ただ歩いた。
深夜になり、船着場に着くと、見慣れない船影があった。
スネアの第一弾の船が、もう到着していたらしい。
エーリヒ達とスネア、それとスネアが連れてきた料理人や給仕係が並んで待っていた。彼らは、俺達が帰ってくるのを待っていたようだ。
「リドリー様、お待ちしていました。お食事を準備しております」
「何だ。喰ってれば良いのに」
「それは出来ません。すいませんが、さっそく……」
レイラは、するりと俺から降りると、自分の席だろう場所に座り、早く隣に座るようにと、椅子を叩いた。
「お腹減った!」 傍若無人な子だ……
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