海賊島
「リドリーの好きにして! でも、しばらくはこの島にいてもらうしかないわね」
「ああ、俺についてくる奴はその場に座り残れ。ただし、戦いで死ぬ覚悟のあるやつだけだ」
「それと、海軍に降伏しても、今回の件は恩赦を与えるわ」
レイラはクレオンに目配せしながら、海賊たちに呼びかけた。
レイラと俺の言葉で、海賊達の考えが変わったようだ。
「大陸の地を踏めるなら、その方がいいな」
「他人に指示されて戦争なんて、ろくなもんじゃない。今回の件で、よーくわかった」
「みんなが行くなら、俺も行く。こんな島から早く出たい」
ほとんどの海賊たちは、海軍兵に誘導され、手首を縛られ、武器を取り上げられても、喜び勇んでクレオンの船に乗り込んでいった。
残ったのは、生存者百名ほどのうち、十名ほどだった。
「クレオン、わかっているわね。恩赦を与えるのは、この件についてだけよ。ヴァルターク王国法に基づいて、処罰しなさい」レイラは冷たく言い放った。
「了解しました」
クレオンは姿勢を正し、レイラの目を見て、大きな声で一言だけ応答した。
「ところでクレオン、この中に賞金首や重罪人はいるかしら? リドリーに人殺しはさせたくないから」
「別に気にしないぞ、俺はティアじゃないからな」
俺は口を挟み、剣を抜いて肩に担いだ。残っている海賊たちの間に緊張が走る。
「いえ、覚えている限りではおりません」
クレオンが海賊たちの顔を見回して答えた。
「そう、それならここに残った人たちには、すべての恩赦を与えるわ。ただし、これからは軍紀に従ってね。もちろん、逃亡罪は重罪よ。リドリー騎士団長の話をちゃんと聞いておくこと」
「お前らも近衞騎士団の海兵ってことになるな」
俺が何気なくつぶやくと、クレオンはむくれた顔で、
「はぁ、こんな奴らが……誰もがなりたがるレイラ様の直属部隊の隊員に……私だってなりたいのに……」
と、悔しそうにつぶやいた。
「何言ってるの、クレオン提督。私は貴女を信頼してるのよ! この大陸の海の防衛に必要なのよ!」
「あり難き、お言葉。では海賊共を連れて行きます。情報を集めてるご報告致します」クレオンは、うって変わってやる気を出した。厳しい尋問をしそうな勢いだ。
「私達のことは秘密厳守よ。しばらくここに居るわ」
「もちろんです。それでは、後日」
クレオンの軍船は、一足早く帰港して行った。
「この島を住める場所に整えましょう。ドラム、必要な物を手配して運んでちょうだい。もう幽霊船は出ないから安心して。もちろん、お金は弾むわよ」
「ありがとうございます。それでは、食糧や、必要な建材を運んできます」
セーヴァスの海に浮かぶ、孤島は魔物の島として恐れられている。だが、昔は、海賊の島であり、彼らの拠点となっていた。
朽ち果てた、彼らの住居や、施設を整備して、軍事基地としようと彼女は考えているようだ。
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